黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

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短めですが調印式編ラストです。


調印式編エピローグ 食事会

 スクワッドメンバー全員との面談を終え、3人でシャーレ居住区の食堂に向かう。

 どことなく緊張した面持ちの錠前サオリを連れ、食堂の中に進むと、予定通り、スクワッドのメンバーが待ち構えていた。

 

「あっ……リーダー!」

 錠前サオリの姿を見つけた槌永ヒヨリが、こちらに駆け寄ってくる。

「ヒヨリ……」

 続いて、秤アツコと戒野ミサキも近寄ってくる。

「待ってたよ。サッちゃん」

「リーダー……」

 

「アツコ……ミサキ……皆無事で、良かった」

 錠前サオリはそう言って、相好を崩した。

 

 スクワッドが再会を喜んでいる間に、食事の準備が進められていた。専属の調理師がいるわけではないので、基本的に普段はここの厨房も生徒たちが自主的に使用するのがメインだ。

 つまり現在は、ここで生活しているSRTシャーレ支部の生徒たちと、日頃からアルバイトでシャーレからの仕事を請けながら節約生活をしているジャブジャブヘルメット団の団員達が主なユーザーとなっている。

 しかし本日は、それに加えて数人のゲストが厨房に加わっていた。

 厨房から準備ができたことを知らせる連絡が届く。

 

「皆さん、料理の準備が整ったみたいなので、テーブルに戻っていただいてもよろしいですか?」

 私の言葉で、スクワッドの生徒たちが席に戻る。

「何だか、わくわくするね。特別扱いされてるみたい」

 秤アツコがそう言って微笑みながら席に着く。4人の生徒たちが固まって座るが、大きめのテーブルには、それより多くの人数分のカトラリーが用意されていた。

「先生、他にも誰か来る予定なのか? あ……」

 錠前サオリが尋ねるが、その疑問はすぐに解決することになる。厨房から配膳用カートを押しながら生徒が現れたのだ。

 

「アズサ……」

 誰が現れたのか、錠前サオリは当然すぐに気が付いたようだ。

「サオリ……それにみんなも、久しぶりだな」

 エプロンを身に着けた白洲アズサが、そう言って配膳を始めた。

 

「ど、どうしてアズサちゃんがここにいるんですか?」

 槌永ヒヨリが驚いた様子で尋ねる。

「どうしてって、皆と会いたかったから。先生が呼んでくれたんだ。みんな、元気そうで良かった」

 白洲アズサが笑顔でそういうと、槌永ヒヨリもつられて笑顔になった。

「そ、そうなんですね……えへへ……」

「料理を作るのも手伝った。ミカから教えてもらいながらだけど……」

「ミカ……? ミカも来ているのか?」

 白洲アズサの言葉に、錠前サオリが反応する。

「来てるよー。久しぶりだね、サオリ」

「あ……ああ」

 

 同じく厨房から現れた聖園ミカが錠前サオリに手を振る。言われた方は複雑な表情を浮かべていた。騙して、そして騙された関係だ。素直に再会を喜ぶ気分になれないのも仕方ないかもしれない。

 

「色々あったけど、今日は皆のために料理作ったから、食べてくれると嬉しいな」

 聖園ミカが笑顔でそう言ったあと、全員の席に料理が並べられる。

「わ~~!? お、美味しそうですぅぅ!!」

 

 槌永ヒヨリが感動で叫んでいるが、料理はサラダと、オムライス。丁度調印式前日に愛清フウカが料理教室で教えていたものだ。料理を作っていた吉野ニコと聖園ミカと白洲アズサ、そして案内をしていた七度ユキノも席に着く。

 

「いただきます!」

 秤アツコが代表でそう言って、食事会が始まった。

 

「おかわりは無いけど、ニコちゃんが作ったおいなりさんもあるよ」

 

 食べ始めたところで、聖園ミカがそう言って隣のテーブルを指し示す。

 そこには彼女の言った通り、稲荷寿司の入った寿司桶と、トリニティから聖園ミカが持ってきたケーキや、お菓子類などが置かれていた。

「……オムライスといなりずしってどうなの?」

 口数が少なかった戒野ミサキが小声で指摘する。

「何か変なのか? そもそも、()()()()()()()()()()()()から分からない」

 錠前サオリがそれに反応した。戒野ミサキは、

「まあ、私もないけど……」

 と全く納得していない様子でオムライスを食べ始めた。

 

「うわああん! 美味しいですぅ!!」

 会話の内容を一切気にせずオムライスを食べていた槌永ヒヨリが泣き叫ぶ。

「ありがとっ、ヒヨリちゃん! オムライスは逃げないからゆっくり食べてねっ」

 聖園ミカが笑顔でそういうが、槌永ヒヨリにはあまり聞こえていないかもしれない。

「アズサ、こんなに料理できるようになったんだね」

 秤アツコは、食べながら白洲アズサに話しかける。

「殆どやったことは無いけど、今日はミカに教えてもらったんだ」

「私も()()()()()()にこの間ここで教えてもらったばかりだけどね」

 白洲アズサから、話を振られた聖園ミカがそう言って、先日の料理教室について話す。

「フウカちゃんはゲヘナの給食部の部長さんで、料理がとっても上手なの。かなり忙しいみたいだけど、今度やるときはみんなも参加してみない?」

 そう誘った彼女の様子は、以前のような屈託を一切感じさせなかった。

 

「ゲヘナの……?」

 錠前サオリが、少し驚いた様子で聖園ミカを見る。ゲヘナ嫌いであることは知っていたのだろう。

「うん、そうだよ」

 しかし、その辺りの葛藤は既に乗り越えている。聖園ミカは含みの無い笑顔でそう答えた。

「私は参加したいな。料理も、他の学校の子達と遊ぶのも、今までできなかったから。サッちゃんもやろうよ」

 秤アツコが率先して、そう言いながら、錠前サオリも誘う。

「……そうだな……私も良ければ、そういうのもやってみたい」

 誘われた彼女は、目を閉じてそう言った。

 

「……」

 歓談中だったが、戒野ミサキが席を立った。彼女の皿にはサラダが残っており、オムライスもまだ食べ終わってはいなかった。

「ミサキちゃん、もういいの?」

 隣に座っていた吉野ニコが少し心配そうにそう言う。

「……ちゃんと食べるよ」

 そう言った彼女は歩いて隣のテーブルに移動し始める。そちらのテーブルには既にケーキを物色し始めていた槌永ヒヨリがいたが、そちらには目もくれず、稲荷寿司をいくつか、近くに置かれていた皿に取っていた。

 

「おかえりなさい、ミサキちゃん」

 席に戻った彼女を待っていたのは、笑顔で嬉しそうにしている吉野ニコと、生暖かい視線を向ける他の生徒たちだった。

「……な、何? 言いたいことある?」

「いや……ミサキがそんな気に入ったのなら、私も食べてみようかな」

「べ、別に……気に入った何て言ってない」

 戒野ミサキは憮然とそう言って座る。しかし、持ってきたそれを食べる姿は彼女がそれをどう思っているのかを何よりも物語っていた。

 

「先生」

 それらすべてを眺めていた私の向かい側で、同じく黙って様子を見ていた七度ユキノが、不意に私に話しかけてきた。

「何でしょうか」

「先生が今回の作戦を立て、そして私がそれに加わったことを、私は誇りに思います」

 他の生徒に聞こえないように、彼女は確かに私にそう言った。

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