笑ってるだけで、女の子が病みます。   作:東◯版蜘蛛男

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プロローグ

 

 

「ねえ、なんで私のことだけ見てくれないの……?」

 

 そう言いながら、目の前の女の子は虚ろな表情を浮かべ、じりじりと私に近づいてくる。

 なんだか、空気がどんよりしてる。ホラー映画みたい。

 

 彼女の名前は──黒瀬澪。

 私の親友であり、そして今、なぜか私に迫ってきている女の子だ。

 

 彼女は私の手を取り、指を絡めて、ゆっくりと顔を寄せてくる。

 うーん、これは一体どういう状況なんだろう。

 

 この子、ついこの前までツンツンしてて、

 私に対して「うるさい」とか「さっさと消えて」とか、しょっちゅう言ってたはずなんだけどなぁ。

 ……よく考えても、全然理由が分からない。

 

「ねえ、なんでそんなに怒ってるの?」

 

 そう聞くと、澪はハイライトの消えた目で私を見据え、

 息がかかる距離で囁いた。

 

「だって、まひるが私を見てくれないじゃない。

 次から次へと他の女の子ばっかり構って、私には全然目をくれないじゃない。

 ねえ、なんで? 私、なにか怒らせるようなことした? 

 ねえ、ねぇ、ねぇ、ねぇ!!」

 

 ……怒らせるようなこと? うーん。思いつかない。

 だって、今までの暴言も親友同士の軽口でしょ? 

 怒らせることはあっても、怒る理由なんてないよね? 

 

 あ! もしかして、そういうことか! 

 

「ねえ、澪……ごめんね。気づいてあげられなくて」

「ようやく分かったの? だったらこれ以降、金輪際、他の女と──」

「お腹空いて、気が立ってるんだね! よーし! 今からファミレス行っちゃお!」

「……は?」

 

「嫌なことでもあった? こういう時は美味しいご飯でリセット! 

 あそこのファミレス、新発売のスイーツ出たんだって! さあ、出発~!」

 

「え、いや、ちょ、待っ──」

 

 いやぁ~、気づかなかったなぁ。

 そりゃ女の子だし、「お腹空いた」なんて言いづらいもんね! 

 大丈夫、まひるちゃんはちゃんと分かってるよ! だって親友だもん! 

 

 こうして私──天野まひるは、

 黒瀬澪を連れてファミレスへ向かうのだった! 

 

「え? ……は?」

 

 ──ーまひるはまだ知らない。

 彼女が能天気バカに笑っている裏で、数々の少女たちが病んでいき、彼女の周りがとんでもない闇鍋パーティになる事を。

 そして、そんな彼女が気づくはずもない。

 だって、底なしのバカで鈍感なのだから。

 

 空気も読まない、そこにある暗い雰囲気なんか吹っ飛ばしてしまう程の底抜けに明るいパワーで。

 

 そして、病んでいく彼女たちはまだ知らない。

 そんなまひるの圧倒的パワーによって、病むという選択肢は与えられない事を。

 

 まひるはそんな彼女たちを救っていく。

 

「ど、どうしてこうなるのよ……」

 

 知らない。




続くかどうかは分かりません
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