「母になる病」   作:蛙先輩

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「外の世界へ」

私はミレニアムサイエンススクールを自主退学した。ユウカちゃんに見つかった以上、情報の漏洩は避けられない。きっと今、学内ではかなり広まっているはず。

 

 でも今の私にはそんな事は瑣末な事。今はこの子がいる。腕の中で我が子が小さな寝息を立てている。

 

 椅子に座りながら、息子を抱く私の元に黒服さんがやって来た。

 

「あやすのにもだいぶ慣れて来ましたね。さすが完全記憶の持ち主」

 

「いえいえ、大したことでは。それより私に何か話があると言っていましたね」

 

「ああ、そうでした。生塩ノアさん。キヴォトスの外で暮らしませんか」

 

「えっ?」

 彼の提案に思わず、目を見開いた。

 

「キヴォトスは銃社会。この子もキヴォトス人の血を引いているので銃弾は無事でしょうが、それが当たり前と言うのは子供の教育上あまりよろしいとは言えません」

 

「確かにそうかもしれませんね」

 生前、先生は銃があまり使われていない世界から来たと言っていた。そんな世界で息子と平穏に暮らす。悪くない。

 

「住むとしたらどういった場所に?」

 

「先生が元いた世界です」

 

「先生が元いた世界……」

 

「そこであれば警察組織や軍隊のみが銃を所持する事を許可されています。治安もここより遥かに安全です」

 

「分かりました」

 

「ククク。では決定ですね」

 先生が元いた世界。私はそこで息子と新しい生活を、人生を始める。

 

 それから私はキヴォトスを去る準備を始めた。私がいた痕跡を一切、残さないために準備をして、ついに当日を迎えた。

 

 

 当日の朝。私は息子を抱えながら、黒服さんが用意した車に乗った。

 

 彼のプランは端的に言えば電車に乗り、キヴォトスの外に出るというものだ。先生も電車でキヴォトスにやって来たという。

 

 新聞配達やトラックが目立つ早朝の道路をただ進んでいく。あと少しでこの光景ともお別れだ。

 

 突然、車のフロントガラスと窓に激しい音が響いた。いくつも同じ音がしたのでおそらく銃撃だと理解した。

 

「銃撃。何者かが我々の動きを予測していたのでしょうか?」

 

「黒服さん。下ろしてください」

 

「ですが」

 

「このまま逃げても車から下車したところを襲撃されます。きっと襲撃者も電車に乗り込んでくるでしょう」

 

「生塩さん……」

 

「大丈夫。必ず戻りますから」

 私は側で寝息を立てる息子に誓った。

 

 黒服さんと息子を見送った後、私は銃を装填した。飛んできた銃弾の方向と襲撃された窓の位置から場所は大体、分かった。同時に犯人も。

 

「そこにいるのは分かっています。出てきて下さい」

 私がビルとビルの間の暗がりに語りかけると、その中から青髪の少女が姿を見せた。

 

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