【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


10黎明編 19・20:最強の全能感と慈愛の祈り、炎を継ぐ少年の殺意と天元の代弁者が贈る「自由」

●19

 

 俺は焦っていた。焦っていたから見誤った。

 そんな焦りすら、あの男の思惑通りになった。

 

「──ようやく、術式頼りの守りに入ったな」

 

 無下限呪術を纏った俺に、男の刃は届かないはずだ。

 ──しかし、現実は違った。

 男の振るった刃はことごとく、俺の身体を切り裂きさいていく。スローモーションのようにゆっくりと。

 焼けるような痛み、飛び散る鮮血。

 

 ──何もかもが赤く染まっていった。

 

 

 ……真っ暗になった視界に光が差した。

 死ぬ間際で会得した反転術式。

 周囲には先ほどの男も、呪霊もいなかった。

 思ったより時間がかかってしまったようだ。

 

 何もかもが見え、理解出来てしまう。

 それがまるでひどく面白いことのように感じて、笑いが込み上げてくる。

 

 そして俺は、あの男を見つけ出し戦いを挑んだ。

 今は何よりあの男を見つけ出して決着をつけないといけないと思ったから。

 

 とても気分が良かった。

 晴れやかな気持ち。

 清々しくて戦っていることすら、どうでもいいと感じるほどの全能感。

 

 男は知っていた。五条家の人間がどんな術式を使うのか。だから対策が出来ていた。それならば──

 

 順転と反転を衝突させ生じるのは、五条家でも限られた者しか知らない術式。

 

 虚式 『茈』

 

 男の身体の一部を吹き飛ばした。

 

 明らかな致命傷、反転術式でも治せない。それでもこの男が立っているのは、それだけの実力者ということだろう。

「最後に何か言い残したいことある?」

 男に声をかける。

「──これで終わりか。ここまでやられるとは思っていなかったぜ……このまま見殺しにするつもりか?」

 男は誰にともなくそう言った。

「何を言って──」

「悟!」

 そよか、せいら、傑まで。慌てた様子で走ってくる。

「あなたを一人にしてしまってごめんなさい」

 今にも泣き出しそうな表情でそよかは言った。

「無事だったんだな」

 ホッと息をつく。急に現実に引き戻されたような……。

「そよか! おじさんがたいへん!」

 せいらが慌てている。

「お願い」

 そよかが腕を上げると、白猫の姿をした呪霊が腕に据えた。呪霊? 本当に呪霊か? 俺の六眼はその白猫に途方もないエネルギーを感じてぞくりと震える。

「力を貸して──」

 そよかが白猫と額同士を合わせると、白猫の姿がそよかの中に消えた。

 

 莫大な呪力がそよかを中心に渦巻き始める。

『其は長き旅の果ての到達者、其は厳しくも温かい運命導き手、開門せよ──癒しの力を、私に!』

 まばゆい光が視界を埋め尽くす。

 

 

●20

 

 生まれて何も俺は持たなかった。

 それはそれで別にいい。期待することもなければ、絶望することもない。出来ることをやって、そこそこ楽しめればそれでいいと思っていた。

 禅院家に居場所はなく、その内に穀潰しだと追い出された。

 そんなもんだと思っていた。何もかも面倒で、煩わしい。そういうことから離れて生きることは楽だなと感じるほどに。

 

 そんな無意味な日々を送っていると、一人の女に出会った。変わった女だった。こんな俺の手をしっかりと掴んでくれた。

 

 生まれて初めて手にした確かなもの。失いたくないなんて、柄にもないことを考える日々が続いた。

 その後、息子を一人授かって、あいつも喜んでいたから俺も初めて父親ってやつを意識したんだ。

 

 

 なんてことのない仕事。

 人を一人殺すなんて、俺にとっては造作もない。

 五条家のぼんを相手にするには骨が折れたが、これまでの経験と知識が役に立って倒すことが出来た。

 

 ──呪霊から拳銃を取り出し、天内理子の頭に狙いをつける。

 ぞくりと寒気がした。内臓をいきなり掴まれたような感覚、俺に向けた明確な殺意だ。

「あ、本当に動きが止まった。やっぱりやる気だったんですね~。でもやめましょうよ。不意打ちなんて」

 なんとも気の抜けた声だった。高専の制服、腰に刀を下げている。しかし、殺意は間違いなくその男から発せられたものだとわかった。拳銃を向けて発砲する。視界から消えた!?

「危ないなぁ。でも拳銃って不便ですよねー。避けられやすいし、こうして近付くと撃ちにくいし」

 背後から刀が首にあてられていた。

「灰原? 東京の空港で分かれたのに……」

「なんか心配で来ちゃいました! お疲れ様です!」

 呪霊操術使いの呼び出した呪霊が、天内理子を守るように前に出る。肉の壁のように広がったその影の中に──先ほど殺せなかった女がいた。

「あなた、伏黒甚爾ね。私を殺さなかったのは、まだ呪霊に取り込まれた奥さんを助けたいと思っているからかしら?」

 ──記憶力のいい女だ。俺が五条家に泣きついた時のことを覚えていたな?

「わかったわかった。降参だ」

 足元に銃を落として両手を上げる。

「夏油さん! この人拘束しといた方がいいですよ!」

「あぁ、そうしよう」

 呪霊操術使いが一体の呪霊を指先で招く。

 そいつは地を這うように近づき、俺の身体に巻き付き拘束しようとした──が。

 

『拘束は不要よ』

 どこからか声がした。薨星宮に続く複雑な構造の空中に椅子にでも腰掛けるような様子で、こちらを見据える女がいた。白い着物を身に纏った、白い百合の花のような美しい女だ。

「……誰だ?」

『天元の代弁者、とでも思ってくれればいいわ』

 呪霊は俺の身体から離れ、ゆっくりと戻っていく。

『星漿体と天元との同化は行わない事にしたのね。

天元も選ばれし未来に賭けると言っているわ。

星漿体との同化は中止──良いでしょう』

 女はゆっくりと天内理子へと視線を向ける。

『天内理子』

「はいぃ!」

『あなたには、これから“天元の眼”として生きてもらえないかしら? 同化ではなく、天元の認識と記憶を補う“外部の視座”として。年に数日、拘束される時間は生まれるけれど──それでも構わない?』

「勿体ないお言葉です」

 深々と頭を下げていた。

『……よろしい。では告げましょう』

 女は一瞬、異なる何かの気配を纏い、声の調子が変わる。

『天内理子の殺害は、天元に仇なす大罪とする。今後この決定を覆す意志を持つ者には、我らの全力をもって対処する』




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