【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
エピローグあたりはAimerさんの『太陽が昇らない世界』をかけると雰囲気出ると思います。
●21
ドール軍団が、一斉に起動した。
悟、乙骨、虎杖が構える。
呪力がぶつかる直前——
──チリ、と空気が焼けた。
「……っ!」
七海建人が即座に腕を伸ばし、そよかの肩を引き寄せる。
次の瞬間、
そよかが立っていた場所の床が、
“何か”に貫かれて粉々に砕け散った。
「……狙撃?」
乙骨が眉をひそめる。
ドクター・ゼロは、退屈そうに指を鳴らした。
「そう。
“観測対象の中心”を壊すのが、一番効率がいいからね」
そよかの背筋が凍る。
「……私?」
「そうだよ。
君が“繋がりの起点”だ」
ゼロの瞳が、正確にそよかだけを捉える。
「五条悟の行動原理も、
七海建人の倫理も、
夏油傑の選択も——
全部、君を中心に揺らいでいる」
静かな断定。
「だから排除する。
“人間性のノイズ”は、観測の邪魔だ」
その言葉と同時に、
空間の奥からドールたちが一斉に跳躍した。
「来るぞ!!」
虎杖が叫ぶ。
——だが。
バンッ!!
悟がそよかの前に立ち、無下限が展開される。
同時に、七海が反対側へ回り込み、
ナタを構えてドールの動線を断ち切った。
「……建人さん」
「動かないでください」
七海の声は低く、揺らぎがない。
「あなたを守ることは、
私の“労働時間外”でも優先される案件です」
悟が笑う。
「そうそう。
僕のそよかに手を出すなんて——」
無下限が、青白く輝く。
「世界一コスパの悪い選択だよ、ゼロ」
ゼロの表情が、初めて歪んだ。
「……非効率だな。
“守る理由”など、計算に入らないはずだ」
「入るよ」
悟は即答する。
「だって僕らは、
“繋がってる”から」
「あなたの作るドールには」
七海が続ける。
「決して再現できないものです」
その瞬間——
「皆の者!! ちゃんと見とるか!!」
観測席に、突如として響き渡る声。
「五条も七海も!!
そよかにぞっこんラブじゃからして!!
あの五条裏切り映像は作り物じゃ!!」
——空気が、凍った。
「……理子ちゃん、声がデカい」
夏油傑が額を押さえる。
「……“ぞっこんラブ”って言葉、
久々に聞きました」
七海は眉間を押さえつつ、そよかから半歩距離を取る。(※照れている)
「いやいやいやいや!? 天内!?
俺そんな顔してた!? してないよね!?」
悟は全力で否定しながら、そよかを見ない。
(※見たら負けると理解している)
「……先生、耳まで赤いです」
乙骨が冷静に刺す。
「うるさい!! これは戦闘熱だよ!!」
「七海さんも赤いですよ」
まるこが小声で言う。
「……前田さん。業務外の観測は控えてください」
七海はネクタイを直し、やはりそよかを見ない。
(※見たら死ぬ)
「え、え、え、え、えっ!?
なんで私が巻き込まれてるの!?」
そよかは真っ赤になって悟の背中を叩く。
「いや、そよかは悪くないよ。全部天内が悪い」
悟が即答。
「事実じゃろ? 妾は真実を言っただけじゃ」
理子は胸を張る。
「真実じゃない!!」
「真実です」
悟と七海が同時に否定と肯定をして、
そのまま互いに目をそらした。
「……ほら、どっちも図星じゃん」
虎杖がぽつり。
「悠仁、後で話がある」
悟が低い声で言う。
「虎杖くん、私からも」
七海が静かに続ける。
「なんで俺だけ!?」
——その“ズレ”を、ドクター・ゼロは見逃さなかった。
「……理解できない」
ゼロが呟く。
「感情。羞恥。冗談。すべて無駄な情報だ」
悟が、ゆっくり前に出る。
「それが分かんないからさ」
にっと笑う。
「君は“ゼロ”なんだよ」
呪力が跳ね上がる。
乙骨、虎杖、七海、夏油、直哉、灰原。
全員が同時に踏み込む。
「行こう!!」
虎杖が叫ぶ。
——ドール軍団、壊滅。
ゼロの施設が、悲鳴を上げる。
そして。
制御室の奥。
前田まるこが、機械に向かって手を振った。
「はーい妖精さん!
ドール生産機、元データアウトプットお願いしまーす!」
次の瞬間——
大量の、猫。
猫。
猫。
猫。
「……は?」
ゼロが初めて完全に固まる。
その猫たちは、
自分の形を、名前を、記憶を取り戻していく。
「ドールはね」
まるこが言う。
「元が“誰か”だったんですから!」
ゼロの理論が、音を立てて崩れた。
「……観測、失敗か」
そう呟いた男は、
悟の一撃で、完全に沈んだ。
●エピローグ
戦闘が終わったあと、世界は不思議なほど静かだった。
砕け散ったドールの残骸は、砂のように崩れ、やがて何も残さず消えていく。
観測席に設置されていた装置も、役目を終えた玩具のように沈黙していた。
「──さて」
その中心で、ドクター・ゼロが白衣の裾を整える。
傷一つない。だが、もう勝敗は明らかだった。
「この世界での私の役割は、ここまでだ」
淡々とした声。
悔しさも、怒りもない。
「人は繋がり、予測不能な選択をする。
それは……私の観測対象としては、十分すぎる結果だった」
五条悟が肩をすくめる。
「つまり、負け惜しみ?」
「いいや」
ゼロは首を振った。
「結論だ」
彼は、指先で虚空をなぞる。
すると、空間の奥──世界の“裏側”に近い場所が、わずかに歪んだ。
「一つだけ、置き土産を残していこう」
呟くように告げる。
「“喚ぶ”機能だ。
呪力の集積点があれば、自然と指は集まる。
誰かの意思を介さずともね」
悟の表情が、ほんの一瞬だけ消える。
だが、ゼロはもう興味を失ったように背を向けた。
「では」
「観測は、これで終了だ」
次の瞬間。
ドクター・ゼロの姿は、最初から存在しなかったかのように消失した。
──そして。
「……っ」
虎杖悠仁が、腹の奥を押さえる。
痛みじゃない。
吐き気とも違う。
けれど、確実に“何か”が触れた。
(……来た)
理由は分からない。
だが、身体が知っていた。
まだ姿を持たない“それ”が、
世界に足を掛けたことを。
その直後。
空間が、裂けた。
「宿儺様!!」
凛とした声。
裏梅が、歪みの向こうから現れる。
「新しいお身体です」
差し出されたのは、
人の形をした“器”。
否。
それは器などではない。
世界を踏み潰すために用意された、王座だった。
空気が、重く沈む。
ゆっくりと。
あまりにも自然に。
“それ”は、身体を得る。
四つの眼が開いた。
「……ほう」
低く、愉快そうな声が響く。
「悪くない」
ただ、それだけ。
だが、その一言で──
空間の圧が変わった。
「準備は整った、というわけか」
裏梅が膝をついて傅く。
「はい。すべて、宿儺様のために」
両面宿儺は、ゆっくりと周囲を見渡す。
人も、世界も。
すべてが、自分より下にあることを確かめるように。
「覚えておけ」
誰に向けた言葉でもない。
宣告だった。
「俺が、ここに在る」
それだけで、
この世界の均衡は、確実に崩れ始めていた。
虎杖悠仁は、唇を噛み締める。
悟は、何も言わない。
ただ、確信していた。
(──ここからが、本番だ)
落陽は、完全に沈んだ。
夜が、静かに世界を覆っていく。
旅する物語 五条悟との邂逅 落陽編 終幕
──
これは、まだ世界が壊れる前のお話です。
何も失われていない午後の、ほんの断片。
どうか、記憶の隅に置いたまま、先へ進んでください。
●落陽編おまけ:五条悟の甘えん坊な日々
窓から差し込む午後の光は柔らかく、
任務後の呪術学園は珍しく静かだった。
「はい、あーん」
そよかが差し出したあんこたっぷりの団子を、
五条悟は当然のように口を開け受け入れる。
「あー……うん、今日のは特に美味しい」
膝枕をされながら、満足そうに目を細めるその姿は、つい先日まで世界の理不尽と殴り合っていた最強の呪術師とは思えない。
「もう一本あるよ?」
「あるなら食べる。そよかが食べさせてくれるなら尚更」
「ちょっとは遠慮しなさいよ……」
そう言いながらも、そよかは結局もう一本を差し出す。
その光景を視界に入れて、部屋の隅で資料を整理していた七海建人が、深くため息をついた。
「五条さん……いい加減にしてください」
淡々とした声音。
しかし、どこか切実さが混じっている。
「それ以上甘えると、そよかさんがストレスで禿げます……」
「えっ、そよか禿げるの!?」
五条が勢いよく上体を起こそうとして、
すぐにそよかに額を軽く押し戻される。
「まだ禿げないから。座ってなさい」
「よかった……じゃあ続行で」
「よくないです」
即座に七海が突っ込む。
「五条さんはもう少し自立してください。
あなたは子どもではありません」
「えー、でもね」
五条はそよかの膝に頭を預けたまま、
少しだけ声を落とす。
「いっぱい頑張った日は、誰かに甘えてもいいって決まりでしょ?」
そよかは、少し困ったように笑ってから、
その髪をゆっくり撫でた。
「……今日だけだよ」
「やった」
その様子を見て、
七海は再び深く息を吐いた。
「……前言撤回します」
ネクタイを直しながら、視線を逸らす。
「そよかさんが禿げる前に、私の胃が先にやられそうです」
「七海さんも混ざる?」
「結構です」
即答だった。
「そよか大好きーって、抱きついても今日は怒らないもんねー?」
にこにこと、まったく悪びれない笑顔で言いながら、五条悟は遠慮ゼロで腕を回す。
「ちょ、悟──!」
抗議の声は上がるが、
振りほどくほど本気ではない。
「だってさ、怒るときのそよかって、
ほんとに怒ってる時だけじゃん?」
ぐっと距離を詰めて、囁く。
「今はー……許してくれる顔してる」
「……それ、どこで覚えたの」
「長年の勘」
即答。
七海は資料から目を離さず、淡々と告げた。
「五条さん。それは“信頼”を盾にしたハラスメントです」
「ひどっ!? 愛情表現って言って!」
「言いません」
「それに、そよかだって嫌がってないもんねー?」
そよかは観念したようにため息をつき、そっと悟の背中を軽く叩く。
「……今日だけだからね」
「やった」
満面の笑み。
七海は小さく呟いた。
「……やはり私の胃が先に限界ですね」
「そよか! 次は耳掃除!!」
勢いよく身を起こしたと思ったら、
秒でまた膝に戻ってくる五条悟。
「……あぁ、そよかのが入ってくる……」
「ちょっと待って言い方!!」
即ツッコミ。
「ぞくぞくするぅ……」
「やめなさい!! その実況!!」
耳かき棒を取り上げられかけるが、
悟はにこにこしながら大人しくなる。
「だってさー、そよかの手、落ち着くんだもん!
ほら、ほら、ちゃんと黙るから」
数秒の沈黙。
「…………」
七海は新聞を畳んだ。
「五条さん」
「はい?」
「これ以上続けるなら、私は“強制業務復帰”を提案します」
「えー!? 戦後休暇なんだけど!?」
「そよかさんの精神衛生は、労務管理上の最優先事項です」
「……七海、今日キツくない?」
「平常運転です」
そよかは深く息を吐いてから、改めて耳かきを構える。
「……動いたら終わりだからね」
「はーい」
その声だけは、やけに素直だった。
「そもそもさ、七海が同席してんのってどうなの?
もうちょっと気を使ってくれてもよくない?」
膝枕のまま、悟が不満げに言う。
七海は一拍置いて、深いため息をついた。
「……私がいなかったら、
五条さんは今の三倍は調子に乗りますよね?」
「え、二倍くらいじゃない?」
「三倍です。いえ、それ以上──」
即答。
「私はあなたに気を使っているのではありません。
そよかさんに気を使っているんです」
そよかが耳かきを持つ手を止める。
「……え?」
「五条さんは、歯止めがなければ“甘え”を理由に一日中拘束しかねません。それは労働環境として問題です」
「ひどくない!? 僕そこまでブラックじゃないよ!?」
「現在進行形でブラックです」
七海は淡々と言い切る。
「そよかさんが拒否しないのをいいことに、距離感を詰めすぎです」
「だって怒らないもん」
「……それが一番危険なんです」
七海は額を押さえた。
そよかは少し考えてから、悟の耳元で静かに言う。
「……ねえ悟」
「なに?」
「次、頭動かしたら耳かき中止ね」
「…………」
悟はピタッと静止した。
七海はその様子を見て、わずかに目を細める。
「ほら、私がいた方がいいでしょう?」
「……くっ」
悟は悔しそうに唸ってから、
小さくぼそっと呟いた。
「……七海のそういうとこきらーい」
「安心してください。私もです」
即答だった。
そよかは思わず吹き出す。
その笑い声に、悟は満足そうに目を閉じた。
「……まあ、いっか」
「そよかが笑ってるなら」
午後の呪術学園は、今日も平和だった。
おしまい
──
●落陽編あとがきっぽい何か
──前田まるこ × チャジロピ
前田まるこの自室。机の上には、無機質なノートパソコン型の端末が置かれている。
ただ、黒い画面に白いカーソルが、心臓の鼓動のように点滅している。
「……終わったねぇ」
前田まるこが独り言のように言うと、一拍遅れて、文字が静かに打ち出された。
《観測ログ:落陽編/完了》
「やっぱり、一区切りか。……長かったような、短かったような。私がミンチになったのは、もうずっと昔のことみたい」
《はい。物語構造上、明確な区切り点に到達しています。
経過時間は重要ではありません》
「構造上、って言い方がさ……相変わらず冷たいよね、チャジロピは」
まるこは苦笑し、椅子に深く座り直した。
「でも、言いたいことはわかる。あのゼロとかいう男の計算を、私たちが無理やりぶち壊して終わったんだもんね」
少しの沈黙。キーに誰も触れていないのに、文字は続く。
《全要素が救済されたとは判断できません。
両面宿儺の顕現は、予測されていた最悪の分岐です》
「……そういえばさ」
まるこはふと思い出したように言った。
「ドール生産機の中にいた妖精さんって、結局なんだったんだろう?」
画面を見つめながら、内心では小さく期待する。
(もしかして……例の魔女様だったりしない?)
一瞬の間。
そして、簡潔な返答が表示された。
《この場で語るべき事ではありません》
「……だよね」
まるこはすぐに頷いた。
「救えなかったものも、守りきれなかった平和も、ちゃんと残ってる。……ハッピーエンドって呼ぶには、ちょっと夜が暗すぎるかな」
《肯定します。落陽編は“最適解”ではなく、“選択の記録”です》
「……選択の記録」
《はい。役割のみで存在していたはずの者が、
自ら選択する主体へ移行しました》
「ドールも、人も、呪術師も?」
《全て該当します。前田まるこ、あなた自身も》
まるこは小さく息を吐き、画面をじっと見つめる。
「……そっか。私も、ただのエージェントじゃなくなっちゃったんだね。推しを愛でるだけのドールなんて、ゼロの計算にはなかったはずだし」
《本編において描写されたのは、“勝利”ではなく“人間性の保持”です。それはゼロの観測範囲外の事象でした》
「ゼロが一番嫌いそうなやつだね。
……ねえ、次はどうなるの? この暗い夜の先に、何があるの?」
問いかけに、即答はなかった。
しばらくして、短い一文が、ぽつり、と表示される。
《未確定です。
……観測は継続しますが、物語の進行は常に選択に依存します》
「曖昧だなあ」
《仕様です。未来は計算されるものではなく、作られるものだからです》
まるこは椅子にもたれ、茜色から紫へと変わりゆく天井を見上げる。
「……まあ、それでいいか。曖昧で、予測不能。それが人間ってやつだしね」
まるこは立ち上がり、端末の画面を優しく撫でた。
「落陽編は、ここまで。……チャジロピ、ここまで付き合ってくれて、ありがとう」
画面に、最後のログが表示された。
《落陽編:記録終了》
カーソルは止まり、画面は暗転した。
端末はただの沈黙する機械に戻り、部屋には静寂だけが残された。
おしまい
ここまでご覧いただきありがとうございました。
この落陽編ではおまけを先行公開、
あとがきをキリ番記念として扱います。
50キリ番記念あとがきっぽい何かを公開しました。
●メインはpixivで活動しています。
https://www.pixiv.net/users/2225877