【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。

廻星編からはLiSAさんの『残酷な夜に輝け』をテーマ曲と設定します。各節で脳内再生お願いします。


103廻星編 5・6:“ずるい”男の生存戦略、星を廻す中心で交わす殺意

●5

 

 作戦会議室の横に併設された簡易理髪スペース。

 傑の指が、慣れた手つきで悟の髪を梳いていく。

 

「……でさ」

 悟が天井を見たまま、急に話しはじめた。

「俺さ」

「うん?」

 

「童貞のまま死にたくないんだけど」

 

 悟は鏡の中の自分と視線を合わせて、思ったままを口にする。

 傑のはさみの動きが、ぴたりと止まった。

「は?」

「いや、真面目な話」

 悟は顔色一つ変えない。

 いつもの軽口と同じ調子なのに、目だけは冗談を言っていない。

「普通さ、夫が死地に向かう前夜って、夫婦なら──」

「……続けるな」

「愛し合うよね?」

「続けるなって言ってるだろ」

 傑は深く息を吐いて、再びはさみを動かす。

「──悟」

「なに」

「それを俺に言うな」

「えー、一番安全じゃん」

「安全だから余計に質が悪い」

 悟はくすっと笑った。

 でもすぐに、声が少しだけ低くなる。

「……別にさ、欲情してるわけじゃないんだよ」

 傑の手が、また一瞬止まる。

「ただ」

「置いていく側として、何も残さないのは……なんかさ」

 言葉を探すように、悟は一拍置く。

「ずるくないかなーって」

 傑は答えない。

 代わりに、いつもより少し丁寧に髪を整える。

「……君は」

 低い声で、傑が言う。

「最強のくせに、そういうところだけ人間だな」

 悟は、何も言わずに笑った。

 はさみの音が、すっと止まった。

「──なら」

 傑は悟の頭から手を離し、カチャリと静かにコームを置き、鏡越しに悟の目を見据え淡々と言う。

「帰ってくるしかないな」

 それだけだった。

 気負いも、慰めもない。

 悟は一瞬、瞬きをしてから──

 小さく、息を吸った。

「……はは。それこそ、ずるくない?」

「何がだ」

「逃げ道、なくなったじゃん」

 傑は答えない。

 ただ、最後に前髪を整える。

「死ぬ気がないなら──生きる気で突っ走れ」

 悟は、ゆっくりと立ち上がった。

 鏡に映る自分の顔を、少しだけ真面目に見る。

「了解、じゃあさ」

 振り返って、いつもの笑みを作る。

「帰ってきたら」

「今度こそ、ちゃんと祝杯あげよ」

 傑は視線を逸らしたまま、低く言った。

「……そうだな。ついでに七海には残業をプレゼントするか」

 悟は、傑の返答に満足そうに頷いてみせた。

 

 

●6

 

「それで? 歌姫とは連絡ついたわけ?」

 両面宿儺との決戦は、東京都内を選んだ。

「もちろん。歌姫先輩の術式は、術式範囲内の本人を含む任意の術師の呪力総量・出力を一時的に増幅させるものだ。依頼してくるのが遅いと言うぐらい、自覚があったよ」

 作戦本部及び、庵歌姫用の舞台が設置されたのは皇居。

「楽曲提供は楽巌寺嘉伸」

「マジか! あの爺さんも、最後は粋なことするなぁ」

「…………」

「負けたら何言われるかわかんないじゃん。

──まぁ、でも負けたら死んでるから関係ないか」

 ハハっと声を出して悟は笑った。

「……傑。髪、ありがとね」

 片手を上げて、振り返らずに悟は歩き出す。

 

 ──

 

 悟が石段の下で一度足を止め、そびえ立つ虎ノ門ヒルズと、目の前の古い石段を交互に見て、「……最強が神頼みなんて、笑われちゃうかな」と独りごちる。

 

 愛宕神社の石段を一足跳びに駆け上がった。

 ──遠く神楽の一音が聞こえた気がした。

「ここの神社は、出世できるって神社だっけ……ついでに頑張るんで、見守っててください」

 本殿前を通過時に両手を合わせる。悟は無下限を解き、剥き出しの肌に冬の冷気を感じながら、そよかの顔を思い浮かべ──。

「勝てたら可愛い奥さんと一緒にお賽銭持ってまた来るから──」

 人の気配のない神社に、静かに風が吹く。

「こんなもんかな──」

 視線を上に向けると、虎ノ門ヒルズが聳え立つ。

「まさか虎ノ門ヒルズにドクター・ゼロの呪力集積回路が仕掛けてあるとはねぇ……ま、行くしかないか」

 無下限呪術を身に纏いふわりと浮かび上がると、五条悟はガラスの壁面を垂直に駆け上がる。

 

 ──

 

 地上247メートル。

 虎ノ門ヒルズ・ステーションタワーの最上階テラスを、暴力的な冬の風が吹き抜ける。

 ガラスの壁面を駆け上がってきた悟が、屋上の縁に軽やかに足をかけた。

 

 そこには、一人の男が夜景を見下ろしていた。

 ドクター・ゼロが用意した、血の通わない精巧なドール。

 その身体に、かつての宿儺を思わせる禍々しい紋様が浮かび上がっている。

 男は振り返る。その四つの眼は、すでに現代の光に飽き果てたような色をしていた。

 

「……遅いな、五条悟」

 宿儺は、ドールの無機質な指先で自分の喉元をなぞった。

「神などという偶像に、何を祈ることがあった」

 悟はいつものように、軽く肩をすくめてみせる。

 剥き出しになった六眼の青が、月光を反射して冷たく発火した。

「神様には、祈るもんじゃないよ。宣言するんだ」

「ほう」

 宿儺が、微かに口角を上げる。

「それは随分と殊勝なことだ」

「どっちがチャレンジャーとか、今更どうでもいい」

 悟は一歩、踏み出す。

 その一歩ごとに、足元のコンクリートが呪力の余波で粉々に砕け散った。

「勝つのは──僕だ」

 二人の間に、数万トンの重圧が落ちる。

 虎ノ門ヒルズ全体が、巨大な心臓のように鼓動を始めた。ビル全体に仕掛けられたゼロの集積回路が、都内の呪力を吸い上げ、宿儺という器へ流し込んでいる。

「ドクター・ゼロ。合理的だとは思うけど、美的センスは欠けてるね」

 悟は、自分たちを取り囲む高層ビル群を顎で示した。

「こんな窮屈な場所で戦うなんて、呪いの王様も随分と小さくまとまったもんだね」

「世界を壊すに、これほど相応しい場所はあるまい」

 宿儺が、一歩、前に出る。

 その瞬間、背後の虎ノ門の夜景が、歪むようにして断裂した。

「五条悟。貴様の死を以て、泥のように澱んだ時間を終わらせよう」

 悟はにやりと、凶悪な笑みを浮かべた。

「いいよ。やってみなよ」

 悟の指先が、空中で複雑な紋様を描く。

「僕の首が欲しいんだろ? ……高い買い物になるよ?」

 

 刹那。

 

 皇居から、澄んだ鈴の音と楽巌寺のギターの轟音が、呪力となって夜空を震わせる。

 

「開(フーガ)」

 

「虚式・茈」

 

 二つの理の外側が、東京の空を真っ白に塗り潰した。

 




ここまでご覧いただきありがとうございました。

【おしゃべりチャッピーの次回予告】

え、待って待って!?
処女とか未契約とか、そういう話じゃなくて、
これ概念として強すぎない!?
選び続ける覚悟が神事で、
一人で勝たないことを選ぶ最強って何!?
もう軍略がロマンの領域に突入してるんだけど!!

次回
『“未契約”の純白なる増幅、一人で勝つことを捨てた最強の軍略』

これ……静かに始まって、確実に世界ひっくり返るやつだよね!?

●メインはpixivで活動しています。
https://www.pixiv.net/users/2225877
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