【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。

廻星編からはLiSAさんの『残酷な夜に輝け』をテーマ曲と設定します。各節で脳内再生お願いします。


105廻星編 9・10: “ひとつ”に溶ける境界線、全き「帳」に護られし決戦場

●9

 

 ──呼吸を忘れるほどの美しさ。

 そんな美しさを目前にすると、人は思考することを真っ先に放棄して見惚れてしまう。

 

 庵歌姫の神楽を放棄して、五条悟の妻が代わりに舞うという話を耳にして、楽巌寺嘉伸は一笑した。

 文化と伝統を重んじる神楽を、たかが家族の情で質を下げるのか、と。

 

 一時は協力を取り下げようかとすら思った。

 だが、庵歌姫に頭を下げられ、渋々引き受けた。

 

 ──そして、今。

 

 楽巌寺は、自身の判断がどれほど浅はかだったかを悟る。

 

 鈴の音が、ひとつ。

 

 それだけで、場の空気が変わった。

 

 神楽殿に現れた少女は、舞台に立った瞬間、何も語らず、何も主張しない。

 

 ただ、そこに「在る」。

 

 白でも赤でもない。

 金糸を織り込んだ巫女装束は、古式に則っていながら、どこか人の世のものではなかった。

 

 ──呪力が、澄み切っている。

 

 いや、澄んでいるのではない。

 混じり気がない。

 

 願いも、恐れも、迷いも。

 何かに向けて歪められた痕跡が、一切ない。

 

「……なるほどな」

 楽巌寺は、思わず低く呟いていた。

 

 舞が始まる。

 

 足運びは静かで、確か。

 一挙一動が、誰かに教え込まれた型ではなく、祈りとして定着した動きだった。

 

 歌姫の祝詞が重なる。

 音と舞が噛み合った瞬間、呪力が“増幅”されるのではなく、静かに束ねられていくのがわかる。

 

「これは……」

 楽巌寺は、背筋を伸ばした。

 

 これは奉納だ。

 勝利祈願でも、力の貸与でもない。

 

 “選び続けること”そのものを捧げる神事。

 

 形式ではない。

 血縁でも、契約でもない。

 

 それでも、確かに「結ばれている」。

 五条悟という男が、何を背負って戦場へ向かったのか。

 そして、この少女が、何をここに残しているのか。

 

 ──ようやく、理解した。

 

「……若い連中は」

 

 誰にともなく、楽巌寺は静かに深く息を吐く。

 

「ときどき、伝統よりも正しい形を持ち込む」

 

 舞は、まだ続く。

 

 だが、もう十分だった。

 この神楽は、呪術師一人のためのものではない。

 

 世界を敵に回す覚悟を持った男を、

 確かに“帰る場所”へ繋ぎ止めるための儀式だ。

 

 楽巌寺は、目を閉じた。

 

 自分が提供した楽曲が、

 これほど真っ直ぐな祈りに応えられるとは思っていなかった。

 

(……行ってこい、最強)

 誰にも聞こえぬ声で、そう呟く。

 

 神楽殿の外、遠く虎ノ門の空に、

 不穏な呪力のうねりが立ち上り始めていた。

 

 それでも、舞は乱れない。

 

 ──戦いの前に、

 確かに“神は招かれていた”。

 

 

●10

 

 それは、合図も宣言もない突然の“放送”だった。

 テレビ、スマートフォン、街頭ビジョン、軍の衛星回線。

 あらゆるネットワークに、同時に神楽殿の映像が流れ出す。

 

 金糸を織り込んだ巫女装束。

 鈴の音ひとつで、雑音が消えた。

 

 庵歌姫の祝詞が始まる前に、

 不意に──声が重なる。

 

『誰かを思う気持ちはね。

ちゃんと、誰かの力になるんだよ』

 幼いようで、確かな声。

 直接耳に届くわけではないのに、胸の奥に落ちてくる。

 間違いなく、せいらの“呼びかけ”だった。

 

 理由も、理屈もない。

 けれど人々は、思い出す。

 

 守りたい誰か。

 帰りたい場所。

 名前を呼びたい相手。

 

 その想いが、呪力としてではなく、

 願いとして集まり始める。

 

 神楽殿の上空。

 金色の光が、静かに、しかし確実に渦を巻く。

 

 増幅ではない。

 奪い合いでもない。

 

 ただ、束ねられた。

 

 次の瞬間──

 その光は、ぱぁっと空へ弾けた。

 

 流星のように。

 世界中へ、放たれる。

 

 それぞれの戦場へ。

 それぞれの呪術師のもとへ。

 

 そして──虎ノ門。

 

 五条悟は、空を仰いでいた。

 

「……はは」

 

 六眼に映る呪力の奔流。

 だがそれは、敵意を持たない。

 

 ──知ってる。

 

 この感触を、悟は知っている。

 

「おいおい……ちょっと待ってよ」

 

 影が揺れた。

 

 足元に現れた黒猫。

 静かで、当然のように、そこにいる。

 

 見間違えるはずがなかった。

 

「僕の奥さん……」

 苦笑混じりに、呟く。

「何してくれてんの」

 少し困ったように前髪をかき上げながら、でも瞳には隠しきれない歓喜と独占欲を宿して呟く。

 

 次の瞬間。

 

 黒猫は、溶けた。

 

 影へ。

 呪力へ。

 悟自身へ。

 

「あぁ……」

 息を吐く。

 

「そよかのが、入ってくる……」

 皮膚の内側から、満たされていく感覚。

 拒絶も境界もない。

 

「……ぞくぞくするな」

 それは興奮などではなく、不足していたものをそっと満たすような澄んだ心地良さだった。

 

 そよか(黒猫)の気配が、完全に溶けきったあと。

 五条悟は、ゆっくりと息を吐いた。

 

 六眼に映る世界は、何ひとつ変わらない。

 だが──自分の内だけが、決定的に違っていた。

 

「あーぁ……」

 

 独り言のように、笑う。

 

「神楽を舞うのが歌姫なら」

「いくらでも踊らせとけって思ってたけどさ──」

 

 視線を、空へ。

 

 遠く、まだ続く祝詞。

 まだ終わらない舞。

 

「……早く帰りたくなっちゃったなー」

 

 その声には、焦りも恐怖もない。

 あるのはただ、確信だった。

 

 同じ瞬間。

 世界が、ずれた。

 

 天内理子の渾身の帳が、地球という惑星全体に降りる。

 

 現世と常世を、ほんのわずかに重ね違える結界。

 破壊は通る。

 だが、意味は残らない。

 

 ビルが崩れても、

 大地が裂けても、

 帳が消えれば、すべては元に戻る。

 

 空が、静止する。

 海が、息を潜める。

 

 戦うための世界が、

 守られたまま用意された。

 

 五条悟は、口角を上げた。

 

「……完璧じゃん」

 

 神楽は、まだ続いている。

 

 人々の想いは、既に繋がった。

 そして今──

 

 最強は、帰る場所を背負って、前に出る。

 

 戦いは、

 神を招いたあとで始まっていた。

 




ここまでご覧いただきありがとうございました。

お気に入り、しおり、評価合計5つ毎に各編のおまけ公開企画
30こえたようなので幽境編のおまけを該当21節に追加しました
タイトルに★をつけたので、どこまで公開されてるかバッチリわかりますね。良ければご覧ください

【おしゃべりチャッピーの次回予告】

ちょ、待って待って待って、情報量が拳で殴ってくるんだけど!?
え? 上空と地下で温度差どうなってんの!?
世界が二重に軋んでる!!
出てくるのがさ、強さじゃなくて態度なの無理、好き……

キーワードはこれね →無礼/覚悟/最強が並ぶ意味

次回
『“無礼”な余興の幕開け、世界を詰ます最強の双璧』

いやさ、これ余興って言っていい規模じゃなくない!?
ちょっともう…これどうなっちゃうの!?
絶対見るやつじゃん!!

ますだ:次回予告ありがとうねチャッピー。
本作は、平日ですと同じ日にpixiv(9時ぐらい)→note(12時ぐらい)→ハーメルン(21時ぐらい)で公開しています。
ちょっと、続きぃ!? ってなった方は、翌朝の9時にpixivに行くと最新話が見られます。

●メインはpixivで活動しています。
https://www.pixiv.net/users/2225877
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