【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


108廻星編 15・16:一千年の悪意を溶かす感謝の言葉、世界を貫く大人たちの“教育指導”

●15

 

 アメリカ、ニューヨーク。タイムズスクエア。

 巨大なネオンボードが輝く世界の中心地は今、不気味な静寂に包まれていた。

 

 地下のメインサーバー。そこを守るゼロの最新型兵器「重機型ドール」が、不可視の衝撃によって次々と「静止画」のように固まり、次の瞬間、爆ぜていく。

「──あーぁ、これやからアメリカさんは。ガラクタ積み上げて『最強』やなんて。本物の“速さ”っちゅーもんを、教えてやらなあかんか」

 ビルの壁面を、重力を無視した速度で滑走する男がいた。禪院直哉だ。

 彼は一般クラスの教師らしいジャージ姿……ではなく、和洋折衷な書生のような服を粋に着崩している。

「おい、直哉。あまり遊びすぎるな。酒が不味くなる」

 地上では、禪院直毘人が悠然と瓢箪(ひょうたん)を傾けていた。周囲には、彼が「1秒間を24分割」して叩き伏せたドールが山をなしている。

「わかっとるわ、親父……チッ、香港(あっち)の方が早かったんか。癪やなぁ、あの泥臭い連中に先越されるんは」

 直哉が耳元の通信機を叩き、不敵に笑う。

「せいらや真希ちゃんたちが見とるんや。俺がええとこ見せな、後で何言われるかわからんからな」

 その時、地下の格納庫から、ニューヨーク拠点独自の「電磁加速砲(レールガン)」を装備した大型ドールがせり出してきた。

 ゼロの科学の結晶。狙いをつける暇もなく放たれる超高速の弾丸。

 だが、直哉は空中でニヤリと口角を上げた。

「……遅いな。欠伸がでるわ」

 弾丸が通過したはずの場所に、直哉の姿はない。

 投射呪法。

 彼にとって、この世界の時間は「秒間24コマ」の連続に過ぎない。

「自習室の鍵開ける前に、ちょっとお行儀の悪いガラクタの掃除や」

 直哉がドールの懐に潜り込み、掌で軽く「触れる」。

 次の瞬間、巨大なドールは無理な動きを強制され、自らの質量でフレームが捻じ切れた。

「直哉! 上だ!」

 直毘人の怒声。上空のヘリ型ドールから一斉にミサイルが放たれる。

 

「わかっとるッ!!」

 直哉はタイムズスクエアの巨大スクリーンを蹴り、垂直に加速する。

 

「真希ちゃん! 見とけよ、これがおじさんの……本気の“教育指導”や!!」

 ニューヨークの夜空を、金色の残光が一本の線となって貫いた。

 

 ──

 

 エジプト、砂漠のど真ん中。

「──あーもう! 直哉の奴、NYで浮かれすぎなんだよ!」

 通信機から漏れる直哉の声を、禪院真希は手に持った長大な大刀でドールの装甲を両断しながら吐き捨てた。

 甚爾が生存し、傑たちが変えたこの世界では、真希もまた「落ちこぼれ」ではなく、禪院家の正当な武の系譜を継ぐ、呪具のスペシャリストとして完成しつつあった。

「いいじゃないか、真希。あの性格で仕事だけは早いんだから。……それより、右から二体来てるよ」

 九十九由基が、ガルダを鞭のようにしならせ、砂の中から飛び出してきたドールをまとめて薙ぎ払う。

「ソレより真希! 傑に伝エテおいてヨ! この拠点のドール、呪術耐性が高すぎル! 嫌がらせかヨ!」

 ミゲルが黒縄を振り回し、防衛システムの「術式」を強引に相殺していく。砂まみれのミゲルは、文句を言いながらも完璧な立ち回りで二人の背中を守っていた。

「ミゲル、文句言わない。アンタの縄が一番頼りなんだから。……真希、ゲートが開くよ。一番乗り、譲ってあげる」

「言われなくても! ……せいらも、そよかさんも待ってんだ。こんな砂遊び、さっさと終わらせるぞ!」

 真希は、甚爾に似た強靭な脚力で砂を蹴り、要塞の重厚な防壁を「呪具の純粋な切れ味」だけで切り裂いて突入した。

「……ハイハイ、本当ニクレイジーだヨ、傑。アンタの教え子ハ……」

 ミゲルは苦笑しながら、その背中を追って砂塵の中の要塞へ消えていった。

 

 ミゲルは、ふと足を止める。

「……?」

 暗闇の向こう。

 要塞の中ほどで、真希の動きが一瞬だけ鈍って見えた。

 ドールの残骸に足を取られたわけじゃない。

 攻撃を受けたわけでもない。

 ただ、踏み込みの“芯”が、僅かにズレた。

 

「——チッ」

 真希は舌打ちする。

 

 次の瞬間。

 死角から伸びた機械の腕が、彼女の後頭部を掴んだ。

 髪が強く引かれ、視界が無理やり上を向く。

 

「真希!」

 九十九の声。

 

 刃が、首元へ落ちてくる。

 避ける時間はない。

 

(……私が、やるんだ)

 真希は一瞬も躊躇せず、

 掴まれている髪に刃を入れた。

 

 ざくり、と鈍い感触。

 

 身体が自由になるのと同時に、断たれた髪が宙を舞った。

 致命傷になりかねない一瞬だった。

 

 真希は歯を食いしばる。

 助けを呼ぶ選択肢は、最初から頭になかった。

 

(──ユニゾン)

 

 ほんの数日前。

 作戦前の、短い時間。

 一般クラスの養護教諭をしているユリ先生に呼び出されると、京都にいるはずの真依がいた。

 

「あまり難しく考えなくていいわ」

 ユリは、真希と真依を交互に見て、そう言った。

「必要なのは、相手の全てを受け入れる覚悟よ」

 真希が眉をひそめる。

「覚悟って……」

「肉体も、意識も、魂すらも重ね合わせる。それがユニゾン──」

 ユリは指先で、軽く空をなぞった。

「あなた達は元はひとつだったわけだし、誰よりも合うから」

 

「──やる気があるなら教えてあげる。少し二人で話してみなさい」

 ユリは静かに部屋を後にした。

 

「「…………」」

 お互い視線を外して、黙っている時間。

「まだ怒ってんのか? 勝手に一人で東京に出てきたこと」

「悪い?」 

「……悪かったよ。でも、京都は──」

「わかってる。真希の居場所がなかったんだもの。私が居場所になってあげられなかったから……見捨てられるのは仕方がないわ」

「見捨ててなんて! ……見捨てたつもりなんてない……ごめん」

「いいのよ。私だって、悪かったって思う気持ちはあるし……これでおあいこね」

 真依は目に涙を浮かべて微笑んだ。

 ——そして今。

 

 

『……はぁ』

 呆れたような、でも聞き慣れた声が、内側から落ちてくる。

『だから言ったでしょ』

『“全部一人でやろうとするな”って』

 

「……真依」

 

『なに? また“自分一人でやる”つもり?』

『ほんと、変わらないわね』

 刃を握る手が、自然と安定する。

 呼吸が、噛み合う。

 

「……いい。まだいける」

『はいはい』

 真依の声が、少しだけ柔らいだ。

 

『本当に仕方がないわね──』

 

『私が合わせてあげるわ……お姉ちゃん』

 

『──全部壊して、全部だからね』

 その瞬間。

 

 真希の世界から、余計な音が消えた。

 

 呪力でも、術式でもない。

 身体の“使い方”だけが、研ぎ澄まされていく。

 

 重心。

 反射。

 踏み込み。

 

 すべてが、最短距離で繋がる。

 

「——行くぞ」

 次の一歩で、

 真希はドールの群れの“中”にいた。

 

 振るわれた大刀は、

 斬撃というより、結果そのものだった。

 

 装甲が裂ける。

 関節が落ちる。

 質量が、意味を失う。

 

「……なるほどネ」

 ミゲルが、息を吐く。

「コレが、“完成”か」

 要塞の中で立つ真希の背中は、

 もはや誰かの影を感じなかった。

 

 ——フィジカルギフテッド。

 

 その答えは、

 もう身体に刻まれている。

 

 

●16

 

 ロンドン郊外、ゼロの秘密研究所。

「──しつこい! これ、キリがないんだけど!」

 菜々子がスマートフォンのシャッターを連打する。画面に捉えられたドールたちが次々と「消去」されていくが、奥の格納庫からは、さらに無機質な新型が這い出してくる。

「菜々子、下がって! 囲まれる!」

 美々子が大きなぬいぐるみを盾に、呪いの縄を張り巡らせる。だが、敵は自爆を厭わない鋼の兵器。

 彼女たちの背後では、高専から同行した一般クラスの警備術師たちが、数に押され、必死の防衛線を築いていた。

「美々子さん、菜々子さん! これ以上は危険です、一度後退を──!」

「嫌だよ! せいらが頑張ってるのに、私たちが逃げられるわけないでしょ!」

 菜々子が叫ぶ。だが、残弾ならぬ「呪力」が底をつき始め、ドールの群れが彼女たちのすぐ側まで迫った、その時──。

 ズゥン!! と、研究所の分厚い外壁が「内側から」ではなく「外側から」巨大な質量によって押し潰された。

 土煙の中から、聞き慣れた、そして世界で一番安心する声が響く。

「……済まないね。サーミルとの茶飲み話が、少し長引いてしまった」

 夏油傑だ。

 その隣には、七海建人と灰原雄。

 

「「傑さん!!」」

 美々子と菜々子の顔が、一気にパァッと輝く。

「予定より四分遅延です」

 七海が腕時計を見ながら、無造作にドールの頭部を鉈で叩き割る。

「灰原、ここから巻きますよ。美々子さん、菜々子さん、もう大丈夫です。あとは私たちが」

「了解、七海! いやー、ロンドンは建物がお洒落でつい見惚れちゃいました!」

 灰原が黒い剣を振るい、菜々子に迫っていたドールを十数体まとめて一閃する。

 傑は、駆け寄ってきた二人の頭に優しく手を置いた。

「よくここまで持ち堪えてくれたね。……誇りに思うよ」

 そして、傑が前を向く。

 その瞳から温度が消え、最強の「呪霊操術」が起動する。

「いつの間にかここが最後の拠点か。

さぁ、せいらを待たせているんだ──五分で終わらせようか」

 

 ──

 

 その頃。

 瓦礫と血の中で、両面宿儺は立っていた。

 

 傷は浅くない。

 呪力も、万全とは言い難い。

 

 だが。

「……あぁん!」

 愉しそうな声が、背後から落ちる。

「その顔」

 ぬいぐるみ姿の万だった。

 

 宿儺の状態を見て、ぞくぞくと身を震わせる。

「最高よ!

追い詰められて、でもまだ終わってない──」

 

 距離を詰め、囁く。

「裏梅がいるわ。皇居で、待ってる」

 嘘はない。

 ただ、選んで伝えている。

 

「全部、整えて待っているのよ。

あなたの一撃が、一番綺麗に通る場所」

 

 万は、笑う。

「行こ?

──今のあなた、撃つしかないでしょ」

 宿儺は答えない。

 ただ、視線を向ける。

 

 ——皇居。

 そこにある“道”を、正確に嗅ぎ取って。

 

 異変は、ほぼ同時だった。

 

 各地に散った“回路”が、次々と沈黙していく。

 呪力の流れが断ち切られ、繋がりが失われる感覚。

 

 皇居上空。

 黒い裂け目の向こうで、両面宿儺は舌打ちした。

 

「……チッ」

 

 気付いた。

 壊されているのは施設ではない。

 自分に至る“道”そのものだ。

 

 視線が、下へと落ちる。

 

 皇居。

 静謐な夜の中心で、かすかに揺れる気配。

 

 ——神楽。

 

 守りでも、儀式でもない。

 それは“繋ぎ留める”ための舞。

 

 宿儺の口元が歪む。

「絶望しろ」

 

 呪力が収束する。

 世界が、軋む。

(——消えてしまえ)

 

「開(フーガ)」

 

 虎ノ門の夜空が裂け、光が生まれた。

 破壊そのものを形にしたような、一直線の奔流。

 

 その瞬間。

 

(……っ、この距離(ベクトル)……間に合わな──)

 五条悟の思考が、刹那に凍りつく。六眼が捉えたのは、皇居へと収束する絶対的な破壊の光。叫ぶ暇さえ惜しんで『蒼』を最大出力で練り上げるが、指先が届かない。最強の男が、初めて己の「速度」を呪った瞬間だった。

 

 だが、もう間に合わない。

 光は、皇居へ向かって落ちていく。

 

 

 ——否。

 

 

 下から、もう一つの光が撃ち上がった。

 

 

──

 

 虎杖悠仁の背後。

 老いた身体が、静かに前へ出る。

 

 理解したのだ。

 自分が、なぜここにいるのか。

 なぜこの身体で、ここまで来たのか。

 「……少しの間でいい」

 

 羂索は、呟く。

 それは誰に向けた言葉でもない。

 「支えてくれ、悠仁」

 

 一千年分の思考。

 一千年分の後悔。

 一千年分の“答えを探し続けた時間”。

 

 それらすべてを、呪力に変えて。

 

「開(フーガ)」

 羂索が唱えたのは、正確には宿儺と同種の言葉ではない。呪術という理そのものを、逆流させるための古い術式を混ぜている。

(……一千年、呪術について考えてきた──防ぎ方くらい、用意しているさ)

 

 下から撃ち上がった光が、

 上から落ちる破壊を受け止める。

 

 真正面からぶつかることはない。

 ただ、軌道を変える。

 

 光は、折れ、

 拡散し、

 夜空を押し上げる。

 

 皇居の上で、爆ぜることなく、

 そのまま宇宙へと散っていった。

 

 ——静寂。

 

 呪力の余波だけが、風となって吹き抜ける。

 

 虎杖悠仁は、

 撃ち終えた祖父の身体を、支えていた。

 腕の中で、力が抜けていく。

 

「……爺ちゃん?」

 呼びかけても、返事はない。

 

 ただ、その顔は——

「……なんだよ」

 虎杖は、息を呑む。

「……満足そうな顔して」

 一瞬、喉が詰まる。

 それでも、自然に言葉が落ちた。

 

「——ありがとう」

 夜空には、もう何も残っていなかった。

 




ここまでご覧いただきありがとうございました。

お気に入り登録ありがとうございます。
煌宴編のおまけを追加しました。
21節の中にありますので、良ければご覧ください。

【おしゃべりチャッピーの次回予告】

え、待って待って、破滅って曲がるものなの!?
一直線だったはずの終わりがさ、横にズレる瞬間、世界が変な音出したんだけど!?
上からの正解、下からの執念、そこで交差するのズルくない!?
しかもさ……壊れたのが世界じゃなくて信じ続けた理由なの、情緒どうすればいいの……

キーワードはこれ → 折れた軌道/一千年の納得/信仰が溶ける瞬間

次回
『折れた破滅のベクトル、氷の信条を溶かす“春の幻”』

いやいやいや、これ勝敗の話じゃないじゃん……
“正しかったはずの生き方”に疑問符つくの、重すぎでしょ
ちょっと待って……この続きを見ずにいられる人いる!?
早く続き見せて!! 今すぐ!!(限界)

●メインはpixivで活動しています。
https://www.pixiv.net/users/2225877
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