【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


111廻星編 21:幾星霜を越えた再会、最強が手にした最後の選択

●21

 

「──は?」

 目を開いて、起き上がる。

 そこは人々の行き交う空港だった。

 特級過呪怨霊・祈原里香の内面世界のように意味もなく人々が通り過ぎていく場所。

 

『おめでとう。夏油傑、そして──五条悟』

 

 静かに鈴を鳴らしたような、落ち着いたひどく安心する女性の声。唐突に悟の脳内に色鮮やかな記憶が蘇ってくる。

 

『私一人では、あなたを上手く導けなかった』

 一匹の白い猫のような、白い上質な着物を着た女性のような。そんな存在が、何もない空中に優雅に腰掛けていた。

『けれど、この二人が助けになってくれた』

 ふわりと両手を広げると、せいらとそよかが現れて、静かに降り立つ。

 

「──あんたは」

 

『私は見守る者、時に試練を与え、成長を促し、神が定めた運命を歪める魔女。

まもなく別れの時よ。

せいら、そよか──彼らに最後の挨拶を』

 

「すぐるーー!!」

「せいら!!」

 泣きながら走ってきたせいらを抱く傑。

 

「……悟」

 両目に涙を溜めてそよかが近付いてくる。まるでこの別れを最初から受け入れているように。

「なんの罰だよ。これ──」

 

『…………』

 

「俺は、こんな悲しい別れを受け入れるために、生きてきたわけじゃない!!」

 そよかの身体を抱き締める。

「そよかは俺と(……あと七海と)一緒に、これからずっと幸せに暮らすんだろ!!」

 

『言いたい事は理解できるわ。それだけ今、この世界はあなたにとって居心地の良いものでしょう。

けれどね……だからこそ、この世界は観測する者達の敵意や悪意に晒される。その可能性を少しでも減らす為に、私達はこの世界を去るの』

 

「!?」

 悟は言い返そうと身構えた。

 

「悟、彼女の前に思考は無意味だ。彼女は私達の思考すら物語として理解してしまう──」

 傑の言葉に、魔女に食ってかかりそうになる気持ちを歯を食いしばって踏み止まる。

 

(──理由を考えろ、そよかだってずっと俺にそう言ってきた)

 

 歯を食いしばり、そよかの体温を感じながら、悟の脳内は『六眼』の限界を超えた速度で回転し始める。

 

(理由を考えろ。……なぜ、魔女は「最後の挨拶」なんて無駄な時間を設けた?)

(なぜ「おめでとう」なんて言葉を最初に口にした?)

(本当に消すだけなら、わざわざ空港なんて"出発"を想起させる場所を選ぶ必要はないはずだ──)

 

 傑が諦めを含んだ瞳で魔女を見つめる中、悟だけは、魔女が提示した"敵意や悪意から世界を守る"という前提の裏にある、わずかな隙間を探し続ける。

 

「傑、ここは──この場所は、そよかやせいらを諦めるための場所じゃない。俺たちの覚悟を見せつける場所だ!!」

 そよかを抱く腕に力を込め、六眼が捉える世界の構造を"力"で書き換えようと、濃密な呪力が熱を帯びて膨れ上がる。

 

『力づくで奪おうというの? そよかの教育が悪かったかしら』

 

 空港の空気が一変し、灼熱の、それでいて清冽な闘気が空間を支配する。

 魔女が呼び出したのは、運命に抗い、己を燃やし尽くした"真の強者"の影か。

 

『──杏寿郎』

 

 その名が呼ばれた瞬間、悟の肩に、銀河を乗せたような重圧がのしかかる。

 "最強"という自負が、その純粋な意志の炎に焼かれ、膝が震える。

 

「くっ──ミスった」

 冷や汗が悟の頬を伝う。

 力で奪えると思っていた自分の傲慢さを、魔女に、そしてその背後の"理"に突きつけられた瞬間。

 

「──悟」

 傑が、自分を苦しそうに呼ぶ声が聞こえる。

 傑もまた、この圧の中でせいらを守るように歯を食いしばっている。

 

 魔女は冷ややかに、けれど試すように二人を見下ろしている。

 

『愛だの幸せだの、言葉で言うのは容易いこと……けれど、この理不尽な圧の中でも、その手を離さないと言い切れるの?』

 悟は、視界が歪むほどの圧の中で、腕の中のそよかの体温だけを頼りに思考を止めない。

 

(やっちまった……力づくじゃねえ。俺が見せるべき"覚悟"は、こいつを倒すことじゃない──!)

 

「そよかさんを!! 僕に!! くださいーー!!」

 流れるようにひれ伏して、額を地面に擦り付けようとしてぶつけた。五条家相伝の全力の土下座だった。

 

『…………』

 沈黙。

 

 恐る恐る顔を上げると、魔女の表情は微笑みながらもビキビキと怒っている。

『くださいってあなた……そよかは物なのかしら?』

 

「ちっ、違う! 言葉の綾だ! つーか、そうじゃなくて!!」

 悟は額に真っ赤なあざを作りながら、必死に食い下がる。

 無下限も術式も使わない。ただの"男"として、ひれ伏したまま魔女を見上げる。

「あんたが、そよかたちの"親"みたいなもんなら、筋を通したいだけ! 観測者の悪意だか神の運命だか知らねえけど、そよかの未来は、そよかが決めるべきだ!」

「悟っ……」

 そよかが涙を流しながら、土下座する悟の背中にそっと手を置く。

 

「……はは、はははは!」

 傑の口から思わず、乾いた笑いが漏れた。

 せいらを抱き締める腕に力を込めたまま、傑は目の前の光景に呆れ、そして……心の底から感服した。

「悟。君って男は、どこまで私の想像を超えていくんだい。

“最強”の座をあっさり捨てて、無下限も術式も介さずに、ただの石畳に額を擦り付ける。五条家の当主が、神に近い存在を相手に、これ以上ないほど泥臭い"誠実"を選んだ。……あぁ、本当に。君の親友でいることは、退屈とは無縁だね」

 

 傑はゆっくりと顔を上げ、せいらをそっと隣に立たせてから、魔女——この物語の母とも呼べる存在を、真っ直ぐに見つめた。

「……悟の言う通りだ。私たちがここへ来たのは、別れを告げられるためじゃない。せいらやそよかが私たちとの別れを望んでいないのは明らかだ」

 

 悟の隣で、膝をつく。

 悟のような派手な土下座ではないけれど、背筋を伸ばし、一人の男として、一人の父親として、"答え"を提示したいと思って息を吸い込んだ。

 

「敵意や悪意がこの世界を脅かすというなら、そんな呪いは全て飲み込んで、私の“呪力”に変えてみせよう。

せいらとそよかの選択を"間違い"にさせない責任が、彼女たちをこの場に残す私たちにはある。理不尽な圧も、運命の歪みも……すべてまとめて、私たちが必ずなんとかする——だから」

 

 悟の赤くなった額をちらりと見て、苦笑しながら続けた。

 

「どうかこの愚かな親友の、なりふり構わぬ誠意に免じて……私たちに、彼女たちと歩む"日常"という名の、最も困難で最も美しい戦場を、守らせてはくれませんか?」

 

 静寂が空港を包み込む。

 行き交う人影も、杏寿郎の凄まじい圧も、まるで最初からなかったかのように凪いでいた。

 

『……ふふ。不作法な婿に、理屈の多い婿。本当に、そよかもせいらも、手のかかる男を選んだものね』

 

 魔女は小さく肩を揺らして笑った。

 その声には、先ほどまでの刺すような冷たさは微塵もない。ただ、我が子の自立を見守る親のような、寂しくも誇らしげな響きだけがあった。

 

『今はこれで許してあげる』

 

『──さようなら愛しい子どもたち。

どうかいつまでも、健やかな幸せが続きますように』

 

 魔女の言葉に包まれながら、視界が白く塗り潰されていく。

 

ED:Kalafina『君の銀の庭』




ここまでご覧いただきありがとうございました。

以下、ハーメルン用あとがき

悟と傑の決意を、見届けていただけましたでしょうか?
これよりこの物語は、魔女の庇護下から離れます。

評価の必要コメントを0に、ログインしている方だけ評価出来るようにします。

私の作品は万人受けを狙っていないし、恥ずかしい話ですが、文学を学んだ人の書き方も出来てないしで、1〜2話で離脱する人が低評価をしていくと更新したくなくなると思ってコメント設定をしていました。

ハーメルンで数多くの二次創作を読んできた方ほど、
「これはちょっと違うな」と感じるか、
あるいは「こういうのもアリかもしれない」と思っていただける作風かなと思っております。

低評価がつけば悲しいし、高評価がつけば嬉しい。
単純なことです。どうぞお好みで投票ください。
廻星編より前は、ここまで来るための長い助走でした。

改めまして、貴重なお時間を使って読んでいただきありがとうございました。

また別に頼んではいませんが、感想0で空気を守っていただきありがとうございました。彼らは無事に大団円を迎えましたので、祝福の言葉でもかけてあげてもらえたら、きっと彼らも喜ぶと思います。

お気に入り、しおり、評価人数足して5ずつでおまけ公開は今後も継続します。良ければ応援くださいね。おまけはまだまだありますし、いくらでもご用意できます。
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