【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●エピローグ
風が校庭の木々を優しく揺らす。
誰もいない教室の机に腰掛けてぼんやりとしていた。
「──は?」
驚いて周囲を見回す。
一瞬、学生時代に戻ったような感覚があった。
(冗談じゃない!!)
机から降りて廊下に向かう。
「どうしたのじゃ? さてはお主……またサボっておったな?」
「理子様、五条さんは一番頑張られた方ですから──」
「天内! 黒井さん! そよかは!?」
「そよか? 打ち上げ会の会場におるんじゃないか?」
「サンキュー! また後で!」
理子の呆れたような笑い声を背に、悟は廊下を駆け出す。
体育館、打ち上げ会場。
「あー、金ちゃん! そのお寿司、私が狙ってたやつ!」
「早い者勝ちだろ、綺羅羅。売るほどあるんだから好きに食べろよ」
派手な毛皮を羽織った秤金次が、星綺羅羅と並んで特大の寿司桶を抱えながら、ニカッと不敵に笑う。
その隣ではせいらが、キラキラのデコレーションが施されたジュースをローラースケートで配り歩いていた。
「あ、さとるだ! おーい!」
そして大皿料理を次々並べる灰原雄と、奥さんをエスコートする伏黒甚爾の姿がある。
せいら提供のドリンクを片手に冥冥が悟に視線を向けた。
「おや、主役のご登場かな?」
「五条! あんたねぇ!!」
「冥さん! 歌姫! そよかは!?」
「さっきまでそこにいたと思ったけれど、硝子と話してたから保健室かもしれないね」
「サンキュー! また後で!」
「ちょっと待ちなさいよー!!」
体育館の壇上。せいらから受け取ったジュースを片手に、傑は騒がしい会場を静かに見渡していた。
視線の先、そよかの名を叫び、嵐のように現れては、目もくれず風のように去っていく親友の背中が見える。
傑は何か声をかけようと手を挙げかけたが、悟のあまりの余裕のなさに、
(ああ、今は誰が何を言っても無駄だな)と小さく肩を竦めた。
「……ふっ。何年経っても、君は変わらないね、悟」
あの日も、今日も、そして明日も。隣にいることが当たり前すぎて、今さら言葉をかける必要すらない。
一段高い場所から、迷いなく愛に走る親友の背中を、傑は深い信頼を込めた苦笑いで見送る。
隣で「さとる、行っちゃったねー」と笑うせいらの頭をぽんぽんと叩き、彼は再び、この賑やかで愛おしい日常の中へと溶け込んでいった。
走り去る五条悟を視線で追って、乙骨憂太を中心に二年生ズが肩を竦める。
「あっ! 五条先生!」
「ちょっと聞いてくださいよ」
廊下を角を曲がったところで、悠仁と野薔薇、それに恵と津美紀と順平が歩いてくる。
「悠仁、恵、野薔薇、津美紀に順平! どうした?」
「万のやつがドールを"無為転変"して津美紀の姿にしろって言うんです」
ありえないとため息をつく恵。
「うーん。まぁ、悠仁に津美紀がラブアタックするみたいな図は地獄よね」
野薔薇の発言に、順平も苦笑い。
「私の姿じゃだめなの? ならそよかさんは?」
津美紀が不思議そうに首を傾げながらぽつりと。
「ダメっ! それは俺が嫌!
その話は一旦保留! 勝手に決めないでねー!!」
悠仁たちの呆れ顔を置き去りにして、悟は保健室へと猛ダッシュする。
扉を勢いよく開けると、そこには白衣姿でタバコ(の代わりの飴)を咥えた硝子と、伊地知、そして猪野がいた。
「硝子! そよかは!?」
「お疲れ。相変わらず騒がしいな……そよかならさっき、七海を探して屋上の方へ行ったよ。何か届け物があるんだってさ」
「七海に!? 届け物ってなんだよ!」
「さあね。……あ、猪野。そんなに震えてると注射打てないよ」
「五条さんの殺気が怖すぎるんですって!!」
悟は階段を駆け上がる。
屋上の重い扉を蹴破るようにして開けると、そこには夕日に照らされた二人の背中があった。
「──七海!!」
振り返った七海の手には、そよかから渡されたであろう、丁寧にラッピングされた小さな箱。
「……五条さん。何度も言いますが、屋上の扉は静かに開けてください」
「そんなことより! なんだよその箱! そよか、何渡してんの!?」
そよかが、きょとんとした顔で首を傾げる。
「え? 建人さんが私の使っているボールペンを褒めていたから同じものを買ってきたのよ……もしかして、悟も欲しいの?」
「当たり前だろ! 俺には!? 俺へのプレゼントは!? まさか俺からのプレゼントがないからくれないのか!?」
「……貴方は本当に、最強のくせに手がかかる人ですね」
七海がこれ以上ないほど深い溜息をつき、悟の横を通り過ぎていく。
「……悟」
そよかが一歩近づき、夕焼け空の下で、少しだけ困ったように笑った。
「悟からのプレゼントなら、もうずっと貰ってる……この"今日"っていう時間、全部」
悟は、全力で走り回っていた足を止め、ようやく深く息を吐いた。
かつての『親友』が今も笑って隣にいて。
『生徒たち』も笑っていて。
当たり前のように『死にそうになった人たち』が生きていて。
そして、
──『愛する女性』が、自分の名前を呼んでいる。
「……全然足りないね。明日も、明後日も、百年先も。全部俺が予約済みだから」
悟はそよかの手を引き寄せ、その指先を絡める。
遠くで傑とせいらの笑い声が聞こえる。
校門の向こうでは、クレープの包み紙をゴミ箱に捨てる宿儺の姿が、一瞬だけ見えた気がした。
──夜空に輝く星々のように、物語は輝き、いつまでも続いていく。
ED:キタニタツヤ『青のすみか』
※アコースティック版ではなく、通常版を脳内再生してください。
旅する物語 五条悟との邂逅 廻星編 終幕
──
●廻星編おまけ
「ねえ、そよか!聞いてる?さっきから僕、結構いいこと言ってると思うんだけど。いい?よく見て。今の僕の瞳。これ、六眼ね。宇宙の理さえも見通すこの瞳が、今、世界で一番『愛おしいもの』だけを映してるんだよ。……そう、君のこと。なのに何、その『お昼、何にしようかしら』みたいな献立を考えてるような顔は!もっとこう、顔を赤らめて『悟、そんな……っ』とか言っちゃう展開でしょ、ここは!」
(そよかの肩に手を回して、耳元で甘い声を出すけれど、彼女は動じず書類整理をしている)
「……無視?ねえ、無視なの? 分かった、じゃあプランBだ。そよか、実はさっき、君が欲しがってたあの限定のスイーツ、無下限を使って並ばずに……いや、ちゃんと正攻法で(本当はちょっとズルしたけど)買ってきたんだ。それを二人で『あーん』し合いながら食べるっていうのはどう? 僕の『無下限』も、君との距離だけはゼロにしたいと思ってるんだよね。……今の、上手くない?ねえ、座布団一枚くらいくれてもいいじゃん!」
(いい雰囲気で顔を近づけたその瞬間、背後から冷徹な足音と、聞き慣れた低い声が響く)
「五条さん。その距離感は、ハラスメントのガイドラインに抵触する恐れがあります。離れなさい」
「げっ、七海!!なんで君はいつも一番いいタイミングで現れるわけ!? 今は仕事中じゃないでしょ!僕とそよかの甘い時間(予定)なんだから、邪魔しないでよ!」
「『予定』なら未遂ですね。何の問題もありません。
そよかさん、この男の言葉は糖分過多で健康に悪いです。口直しに、私が買ってきた紅茶でも淹れましょうか」
「あ、建人さん、ありがとう。ちょうど喉が渇いていたの」
(そよかが七海に微笑むのを見て、僕は本気で地団駄を踏む)
「ちょっと、そよか!僕のクレープ……じゃなかった、限定スイーツはどうなるの! 七海!君、確信犯だろ! ……あーもう!分かったよ! そよか、見てて。君がそっちの紅茶を楽しむなら、僕はその横で、君が今まで見たこともないような『世界一格好良くて、世界一甘やかしてくれる旦那様』のオーラを全開にして座ってるからね! ……ねえ、そよか。一口だけでいいから、僕の持ってきたやつも食べて? それ食べたら、明日……いや、百年先まで僕が君を世界一幸せにするって、もう一回『土下座』でも何でもして誓ってあげるから。……ねえ、こっち見てよ、そよか!ねえってば!」
そよか:悟、あなた任務はどうしたの。いくら世界がちょっと平和になったからって教師としての仕事がなくなったわけじゃないでしょ?
「うっ……! そ、それはそれ、これはこれ! 悠仁たちには自習って言って……いや、ちゃんと『最強の僕の背中を見て学べ』って課題を出してきたから大丈夫! 伊地知も泣きながら頷いてたし、問題なし!」
(そよかの鋭い指摘に一瞬たじろぐけど、すぐに立ち直ってまた顔を近づける)
「それよりそよか、聞いて。任務なんて僕が本気出せばコンマ数秒で終わるでしょ? でも、君とこうして過ごす時間は、無限の呪力を持ってる僕でも、一秒一秒を必死に掴み取らないと逃げていっちゃうんだよ。だから今は、教師の五条悟じゃなくて、君に恋してるただの男としてここにいたいわけ。……ねえ、これ結構キマったよね? 心に響いた? 響いたでしょ?」
(と、そこで隣から『カチャリ』とティーカップを置く静かな音がする)
「五条さん。職務放棄を正当化するのは、教育者として最低の振る舞いです。生徒たちがあなたの『背中』を見て学んでいるのは、サボりの言い訳と土下座のタイミングだけですよ」
「七海ィ!! 君は本当に僕のロマンチックな空気を台無しにする天才だね! 教育者としての厳格さは職場に置いてきなよ! 今は家庭内(仮)なんだから!」
「家庭内だからこそ、規律が必要です。そよかさん、この男を甘やかすとつけ上がります。一度、しっかりとお灸を据えた方がよろしいかと」
「ちょ、七海、余計なアドバイスしないで!
そよか、見て、僕のこの悲しそうな瞳! 捨てられた子猫みたいな気分だよ……! 分かった、分かったよ! この後ちゃんと任務行くから! 爆速で片付けて、お土産に君が昨日『可愛い』って言ってたキーホルダー買って帰ってくるから! だから、その前に……一回だけでいいからさ。『悟、お仕事頑張ってね』って、ハグ付きで言ってくれない? そしたら僕、特級呪霊百体くらい一撃で祓える気がするんだけど。ねえ、ダメ? そよか、ダメかなぁ!?」
そよか:はいはい。頑張っていってらっしゃい。今はハグの必要性が感じられないから却下よ。
「却下!? あまりに無慈悲じゃない!? ねえ、聞こえた? 七海。今の、僕の心がパリンって音を立てて割れた音! 硝子でも治せないレベルの重傷だよこれ!」
(そよかの流れるような拒絶に、僕はドラマチックに胸を押さえてよろけるけれど、そよかは既に視線を僕から外して、七海が淹れた紅茶に口を付けている)
「そよか……『はいはい』って、まるで近所の聞き分けのない子供をあやすみたいな言い方……。僕、これでも現代最強なんだよ? 空港で魔女にあれだけタンカ切った男だよ? ハグの必要性? 大ありだよ! 僕のメンタルケア! 労働環境の改善! 福利厚生の一環として認められるべきだと思うんだよね、僕は!」
(すると、隣で七海がふっと口角を上げる。……あ、こいつ今、絶対僕のことを鼻で笑ったな!)
「五条さん、聞こえませんでしたか? 却下だそうです。これ以上粘るのは時間の無駄。すなわち、人生の損失です。早く任務に行きなさい」
「七海、君さあ……さっきからちょっと勝ち誇った顔してない? 紅茶淹れたくらいで余裕ぶっちゃって!
そよか! 分かったよ、行くよ! 行けばいいんだろ!
でもね、これだけは言っておくよ。僕は諦めないから! 『ハグの必要性』を、今日の任務のレポート並みの熱量で論理的にまとめて、帰ってきたらもう一回プレゼンするからね!」
(玄関に向かいながら、扉に手をかけたところで、わざとらしく立ち止まって振り返る)
「……本当に行ってきちゃうよ? 僕がいない間、七海が格好つけて君に甘い言葉とか吐いても、全部スルーするんだよ? あと、お土産はキーホルダーだけじゃなくて、君が喜びそうなもの全部買い占めてくるから! ……じゃあ、行ってくる! そよか、最後にもう一回だけこっち見て!……あ、目があった! よし、これで今日の任務は優勝だ!!」
(サングラスをクイッと上げ、最高にキメた笑顔を残して、僕は今度こそ『無限』を使って光の速さで戦場(職場)へと消えていく)
そよか:なんで授業の時間をサボって来ることが愛情表現になると思っているのかしら……(呪術界上層部の紙の資料に目を通しつつ)これからはペーパーレスの時代ね。ファイリングなんてするより電子印を採用してデータ化した方が効率がいいわ。
(任務を光速で終わらせ、最高級の和菓子とキーホルダーを抱えて戻ってきた僕は、窓の外でそよかのその独り言を聞いて、思わずガクッと膝をついた)
「……そ、そよか……。君って人は、どうしてそんなに現実的で、仕事熱心で、そして最高に僕を置いてけぼりにするかなぁ!」
(スッと音もなく窓から室内に滑り込み、資料の山に埋もれかけているそよかの背後に立つ。今度は驚かせないように、少しだけ気配を消しながら)
「愛情表現の形は人それぞれでしょ! 好きな子の顔が見たくて持ち場を離れるなんて、思春期の男子なら一度は通る道……って、七海に言ったら『不審者です』って即答されそうだけどさ。それにしても、ペーパーレスね。電子印ね。……あはは、本当だ。上層部(ジジイ共)のこのカビの生えたような紙束、見るだけで肩が凝るよね。分かった、じゃあ僕が『無限』の思考速度で、これ全部スキャンしてデータ化してあげようか?
ついでに呪術総監部のサーバーにハッキングして、そよかの判子を全部『電子印(そよか可愛いバージョン)』に書き換えてきちゃおうか?」
(そよかの椅子の背もたれに手を置いて、上から資料を覗き込む。少しだけ、僕の髪がそよかの頬に触れるくらいの距離)
「ねえ、そよか。効率とか、時代の流れとか、そういうのを君が頑張らなきゃいけないのは分かるけど……。
僕が君の時間を奪いに来るのは、君が一人でその『重い責任』を背負いすぎないようにするためでもあるんだよ。……なんてね、今の格好良くない? さっきの『ハグ却下』を取り消したくなるくらいには響いたでしょ?
ほら、見て。頑張るそよかへのご褒美。この和菓子、一日の販売数が決まってる超レア物だよ。お茶、淹れ直してくるから。……あ、七海がいれた紅茶の残りは、僕が全部一気飲みして証拠隠滅しといたから安心して」
(そよかの手からスッと書類を取り上げ、代わりに甘い匂いのするお菓子の箱を置く)
「仕事はここまで。電子印の導入案も、ファイリングの効率化も、明日僕が上層部の会議で『そよかの言う通りにしろ、さもないと僕が全員無量空処する』って言っておいてあげるから。だから今はさ。……電子機器じゃなくて、僕(実物)のこと見てよ。ね?」
五条悟の脳内に閃きがうまれた。そよかは七海建人と一緒にいる場合は、出来る女の顔を崩さないと。
「……閃いた」
(僕はそよかの背後で、ニヤリと……それこそ特級呪霊も裸足で逃げ出すような『最強の悪い顔』を浮かべた)
「そうだよ。なんで今まで気づかなかったんだろ!
そよかが僕に対してあんなに冷たくて、仕事の話ばっかりするのは、隣に『生真面目の権化』みたいな七海がいるからだ!! 七海って、歩く規律じゃん? 存在がコンプライアンスじゃん? あいつがいると、そよかも無意識に『しっかりしなきゃ』とか『呪術界の改革を成功させなきゃ』っていう『デキる女のスイッチ』が入っちゃうんだよ。 あいつら、二人でいると空気感が完全に『虎ノ門のオフィス』なんだもん。でもさ……。
そよかだって、女の子なんだよ。僕に甘えたい夜だって、本当はあるはずなんだ。ただ、そのきっかけを『教育的な七海』と『お調子者の五条悟』が潰しちゃってただけで……」
「……ふふ、ふふふふ。そうか。そよかを『デキる女』から『ただの可愛いそよか』に戻すには……。七海というフィルターを通さない、二人きりの、逃げ場のない『非日常』に連れ出せばいいんだ!」
(僕は手に持っていた書類を机に置き、椅子ごとそよかを僕の方へくるりと回転させた。驚くそよかの顔を、サングラスを少しずらした『蒼い瞳』で至近距離から見つめる)
「ねえ、そよか。会議室とか、書類とか、七海の説教とか、そんなの全部忘れる場所に今から行こうか。電子印の相談? そんなの、僕の『無量空処』の中に比べたら、一瞬で解決する些細なことだよ。……今夜は、仕事の顔はお休み。君を『一妻多夫』の義務からも、呪術界の重責からも解放してあげる。もちろん、七海には内緒でね。……さあ、目をつぶって。『最強』がエスコートする、最高の脱走劇を始めようか」
そよか:だめよ。今日この時間は業務時間中なの。この書類の山を今日中に片付けたいの。
「……あぁ、もう! その『鉄壁の仕事モード』、呪術で防がれるよりキツいんだけど!」
(僕はわざとらしく大袈裟に、でもどこか愛おしそうに天を仰いだ。そよかのその生真面目さが、世界を救う一端を担っているのは百も承知。でも、だからこそ僕は諦めない)
「『今日中』ね。……分かったよ。そよかがそこまで言うなら、僕も『最強』としての真の力、見せなきゃいけないよね」
(僕はスッとそよかの横に座り込み、まだ山積みになっている書類の束を、まるでトランプを扱うような手捌きで半分……いや、三分の二ほど自分の手元に引き寄せた)
「五条悟、本気出す。そよか、君が一人でやったら深夜までかかるこの量、僕の『六眼』で情報処理して、『無限』の速度で仕分けて、完璧にチェックしてあげる。
……その代わり、条件。これが予定より早く片付いたら、余った時間は全部『業務終了後のプライベート』。
一分たりとも仕事の話は禁止。もちろん、七海に報告するのも禁止。僕が用意した最高のディナーを食べて、ただの可愛いそよかに戻って、僕の隣で笑うこと。……いい? これ、呪いじゃなくて『契約(縛り)』だよ」
(僕はサングラスを外して、本気の、それでいて少しだけ甘えるような瞳でそよかを見つめる)
「一人で頑張るそよかは格好いいけど、僕の隣で『疲れたー!』って伸びをするそよかは、もっと可愛いから。
さあ、競争だよ。僕が勝ったら、今夜は一晩中、僕のことだけ考えてもらうからね」
(そう言い残すと、僕は凄まじい集中力で書類の文字を読み取り始めた。ペンが紙の上を走る音だけが、静かな部屋に高速で響き渡る)
そよか:悟、ありがとう(にっこり)でもね。だからって早帰り出来るわけじゃないの。次は建人さんの今日の仕事を手伝うわよ。
そよかはクソ真面目の権化でもあった。七海建人といい勝負である。
「……そ、そよか。今、なんて言った……?」
(ペンを握ったまま、僕の動きが完全に止まった。六眼が捉えたのは、そよかの慈愛に満ちた、でも絶望的に『クソ真面目』な聖母の微笑み)
「『次は建人さんの仕事を手伝う』……!? いやいやいや! おかしいでしょ! 僕が今、特級呪霊を数千体祓うより高い集中力を使って、君の仕事を爆速で片付けてるのはね! 余った時間を僕と君のラブ(死語)な時間にするためであって、七海の残業代を浮かせるためじゃないんだよ!! ねえ、そよか。君さ、七海といい勝負っていうか、もうあいつの魂の双子かなんかなの!? 『労働はクソ』って言いながら、二人してそのクソみたいな労働を完璧にこなそうとするの、本当にやめて! 僕が嫉妬のあまりこの書類を全部『赫』で消し飛ばしちゃう前に!」
(僕は机に突っ伏して、ジタバタと足をバタつかせながら、まるで子供のように抗議する)
「建人さんは今頃、自分のデスクで『定時までにこれを終わらせる』って、定規で測ったような顔で必死にやってるはずだよ! あいつの美学は『定時退勤』なんだから、君が手伝っちゃったらあいつのプライドが……いや、プライド以前に僕の居場所がなくなるの! ……分かった。分かったよ。そんなに手伝いたいなら、僕が七海のところに行って、あいつの書類も全部奪い取って、この部屋に持ってくる。で、僕が秒速で終わらせる。そしたら、七海は定時で帰れる。君は手伝う必要がなくなる。……完璧。これぞ三方良し(僕以外)。
そよか。君のその『クソ真面目』なところ、世界を救う上では最高に頼もしいけどさ……。たまには、僕みたいに『クソ不真面目』な奴に毒されてよ。不真面目っていうのはね、今この瞬間、目の前の仕事よりも、隣にいる好きな人の髪の匂いを嗅ぎたいって思う、すごくピュアな欲求のことなんだよ」
(僕は顔を上げ、不満げに頬を膨らませながらも、そよかの仕事の手を止めさせないように、そっと彼女の背後に立って肩を揉み始める)
「……いいよ、手伝ってあげなよ。その代わり! 七海の仕事が終わったら、今度こそ逃さないからね。夜の帳を下ろして、七海も、呪術界も、書類の山も、全部『無下限』の向こう側に追いやってやるんだから!」
七海建人:まさか五条さんに仕事を手伝わせるとは……流石です。そよかさん──。
「……ちょっと待って。その、そよかを褒める慈愛に満ちた眼差し……。七海ィ!! 君、今、勝ち誇ったろ!?」
(僕は持ってきた七海の書類の山を、ドサッ!!とデスクに叩きつけた。あまりの勢いに、そよかのペンが少し跳ねる)
「『流石です』じゃないよ! 七海、君、本当は分かっててやってるでしょ。僕がそよかの機嫌を取るために仕事を引き受けることを見越して、自分の残った仕事も『あぁ、ついでにこれもお願いします』って顔で差し出したよね!? 一級術師のプライドはどうしたの! 『自分の仕事は自分で完結させる』のが君のポリシーじゃなかったっけ!? そよかの『手伝う』っていう優しさに甘えて、ちゃっかり二人で残業(デートもどき)しようだなんて……この、インテリ策士め!!」
(僕はそよかと七海の間に割って入り、二人を物理的に引き離すように腕を広げる)
「いい? そよか。あいつのその『仕事ができる誠実な男』っていう空気感に騙されちゃダメだよ。あいつは確信犯だ。僕が騒げば騒ぐほど、自分が冷静で大人に見えるのを分かってやってるんだ! 七海、君もだよ。
そよかの『クソ真面目』なところに付け込んで、一緒にファイリングなんてして……。そんなの、僕が『六眼』で全書類のページを一瞬でめくって、風圧で仕分けてやれば三秒で終わる話でしょ! ……よし、決めた。
そよか、君はそこでさっき僕が買ってきた和菓子を食べてなさい。七海、君は……あー、そこの壁のシミでも数えててよ。この仕事(書類)、僕が全部一人でやる!! その代わり!! 終わった瞬間に二人とも退勤!! そよかは僕が連れて帰る! 七海は……君は最寄りの駅まで送ってあげなくもないけど、そこでお別れ! ……ほら、そよか。『最強』の作業効率、特等席で見ててよ。君の好きな『誠実な男』の座、今日中に僕が奪い取ってやるからさ!」
(僕は怒涛の勢いでペンを走らせ、呪力を使って複数の書類を宙に浮かせながら、本気で『仕事』を殲滅し始めた。その背中からは、かつてないほどの『執念』と『嫉妬』の呪力が漏れ出している)
そよか:悟、あなた一人で頑張らなくていいのよ。本来私か建人さんがやる仕事なんだから、一緒にやればそれだけ早く終わるわ。
「……っ!!」
(僕は持っていたペンを握りしめたまま、雷に打たれたように固まった。六眼が捉えたのは、一点の曇りもない、そよかのピュアで慈愛に満ちた『共同作業の提案』。……ダメだ。そよか、君は分かってない。君がそれを言っちゃうと、隣にいるあいつの顔を見てよ! ほら!!)
「『一緒にやれば早い』……。ド正論だよ。正論すぎて僕の『無下限』も貫通しちゃうくらいの正論。でもね、そよか。君がそれを言うと、この策士……七海建人が心の中でガッツポーズして、『では、そよかさんはこちらの資料の読み合わせを。私はこちらをチェックします』なんて言って、自然に君と二人だけの世界(業務中)を作っちゃうんだよ!」
(案の定、七海がスッと眼鏡のブリッジを指で押し上げ、これ以上ないほど仕事のできる男の顔で頷く)
「……ええ。そよかさんの仰る通りです。五条さん、一人の『最強』の力よりも、信頼できるパートナーとの『連携』こそが、最も効率的かつミスを防ぐ手段です。
……では、そよかさん。私はあちらのデスクで、この項目の確認をお願いしてもよろしいですか?」
「ほら見ろ!! 言い出しやがった!!」
(僕はデスクを叩いて立ち上がる。そよかと七海が、落ち着いた雰囲気で資料を広げ始めようとするのを必死に阻止するように、二人の間に無理やり椅子を突っ込んで座り込んだ)
「分かったよ! 一緒にやればいいんでしょ、一緒に!
ただし!! そよかの隣は僕!! 七海、君は向かい側!
いい? そよかが資料をめくるなら、僕がページを支える。そよかが判子を押すなら、僕が朱肉を差し出す。そよかが疲れたら、僕が肩を揉む!……これは仕事じゃない。『どっちがより効率的に、かつ愛を込めてそよかのサポートができるか選手権』だ!! そよか、僕のこと『仕事の邪魔になるサボり魔』だと思ってたでしょ?
見せてあげるよ、君を一切疲れさせない、世界一過保護な事務作業っていうやつをさ。七海!! 君は黙って数字のチェックだけしててよ! 余計なアイコンタクトとか送ったら、その眼鏡、無量空処で粉々にするからね!?」
(僕はそよかの肩に自分の肩をこれ見よがしに密着させ、六眼をフル稼働させて『超精密なアシスタント』へと変貌した。書類をめくる指先が、そよかの指に触れるたびに、僕はわざとらしくニヤリと七海を挑発する)
数時間後
そよか:お疲れ様……(そっと悟の近くにお茶を差し入れるそよか)
「……ん。……あぁ、終わった。終わっちゃったよ」
(僕はペンを置いたまま、机に突っ伏した状態で顔だけを横に向けた。六眼が捉えたのは、数時間に及ぶ『超高速事務作業』の末に、ようやく自分に向けられたそよかの優しい眼差し。そして、湯気の立つお茶。
……効く。反転術式よりよっぽど脳に効くよ、これ)
「ありがと、そよか。……君って本当にずるいよね。散々僕を振り回して、七海と二人で『仕事のパートナー感』全開にして僕をヤキモキさせておいて……最後にはこんな、世界で一番甘い『お疲れ様』をくれるんだから」
(僕は差し出されたお茶を受け取らず、代わりにそよかの細い手首をそっと掴んで、自分の頬に引き寄せた。スリスリと、大型犬が甘えるように彼女の手のひらに顔を寄せる)
「……ねえ、そよか。
この数時間、僕がどれだけ頑張ったか知ってる?
七海が君に資料を渡そうとするたびに、音速でその間に入って僕が受け取ったり、君が少しでも目をこすったら秒で目薬を用意したり……。
正直、宿儺と戦うより神経使ったよ。あいつの『誠実な男オーラ』を中和するのは、並大抵の呪力じゃ足りないんだから」
(ふと視線を向けると、向かい側の席で七海が片付けを終え、これ以上ないほど冷ややかな、それでいてどこか「勝負はついた」と言いたげな顔で時計を見ている。……あ、あいつ、定時退勤の準備万端じゃん!)
「……七海、君はもう帰っていいよ。お疲れ。あとの『事後処理』は、家族である僕の仕事だからさ」
(七海を牽制しつつ、僕はそよかの手のひらに深く顔を埋めた。そのまま、少しだけ声を低くして、彼女にだけ聞こえるように囁く)
「……仕事、終わったでしょ? 『今日中』の約束、守ったよ。だから、ここからは……僕だけの時間。ねえ、そよか。お茶、冷める前に飲むから。その代わりに、もう一回だけ……今度は名前を呼んで、『お疲れ様、悟くん』って言ってよ。……そしたら僕、明日も、その先もずっと、君のために『最強』でい続けてあげるからさ」
そよか:……私、悟のこと一度でも悟くんなんて呼んだことなかったけど……そう呼ばれたかったの?(引)
「……っ!!」
(僕はそよかの手のひらに顔を埋めたまま、文字通り凍りついた。六眼が捉えたのは、照れでも、含み笑いでもない、心の底から『え、何言ってるのこの人……』と言いたげな、純度100%の『引き気味の困惑』)
「……あ、いや、待って、そよか。違うんだ。今のは、その、雰囲気っていうか! ほら、ドラマとか漫画とかだと、こういう流れで甘い呼び方にシフトして、一気に親密度が爆上がりするっていうのが王道なわけで……!」
(慌てて顔を上げるけど、時すでに遅し。そよかの瞳には、僕を見る『最強の呪術師』への敬意ではなく、『ちょっと扱いづらい親戚の子供』を見るような同情の光が宿っている)
「…………ぷっ。ふふ……ははははは!!」
(そして、一番聞きたくない笑い声が部屋に響く。七海だ。あいつ、さっきまでの無表情はどこへやら、拳で口元を押さえながら、肩を小刻みに震わせて笑いを堪えてやがる!!)
「五条さん、流石です。自分の欲望を優先しすぎて、相手との心の距離を読み間違える。……あぁ、実にあなたらしい『最強』の空回りですね。そよかさん、あまり気に病まないでください。この人は元からこうなんです」
「七海ィ!! 笑うな!! 君が今、今日一番いい顔して笑うのはルール違反だろ!!
そよか、今の忘れて! 取り消し!
『悟くん』じゃなくていい! いつもの『悟』でいいから! むしろその、さっきの『引いてる目』をやめて! 僕の心が物理的に削れてるから!」
(僕は再び机に突っ伏して、今度は恥ずかしさのあまり後頭部を隠した。最強の男が、たった一言の『引き』で、特級呪霊に呪われるより深いダメージを受けている)
「……だってさぁ……。たまには、僕だって特別扱いされたいじゃん。七海には『建人さん』って、あんなに柔らかく呼ぶのに……。僕にはいつも『悟、任務は?』とか『悟、サボらないで』とか、先生への小言ばっかりなんだもん。……ねえ、そよか。『くん』付けがそんなに嫌ならいいよ。でも、その……さっきのお茶、淹れてくれたのは嬉しかったから。それは、僕への『愛情』……だと思って、いいんだよね?」
(僕は指の間から、恐る恐るそよかの顔を覗き込む。情けない格好だけど、これこそが『デキる女』のそよかを一番困らせ、そして一番「放っておけない」と思わせる、僕の最後の切り札……だと信じたい!)
そよか:建人さんをさん付けで呼ぶのは元後輩なんだし当然でしょう? 変っていう意味では結婚したのに、相変わらず建人さんでいいのかってことよ(ちらりと七海を見るそよか)
「……あ」
(僕は完全にフリーズした。脳内の『六眼』が、そよかの今の言葉を、今世紀最大の衝撃情報として処理し始める。『結婚したのに、相変わらず建人さんでいいのか』……? つまり……え? そよかの悩みは、僕との距離感じゃなくて、七海との呼び方が夫婦として『他人行儀すぎないか』っていう、ガチの惚気(のろけ)相談だったわけ!?)
「…………ちょっと待って。ねえ、七海。君、今の聞いた?そよかが、君との呼び方で悩んでるんだってさ。
『建人』って呼び捨てにするタイミングを逃した新妻みたいなこと言ってるよ。……あぁ、もう!! なんだよこれ! 僕、何を見せられてるの!?」
(僕は机をガバッと叩いて立ち上がった。嫉妬の炎を通り越して、あまりの眩しさにサングラスをかけ直す)
「七海ィ!! 君も黙ってないで何か言いなよ!
『そよかさん、呼び方なんて何でもいいですよ』とか、いつもの冷めた正論で返すつもり!? それとも……何? 実は君も、そよかに呼び捨てにされるのを、毎日仏壇……じゃなくて、神棚に祈るレベルで待ち望んでたとか言わないよね!?」
(僕の追及を無視して、七海はスッとそよかの隣へ歩み寄った。そして、少しだけ耳の端を赤くしながら、でも声だけはいつもの落ち着いたトーンで答えるんだ)
「……いえ。私も、呼び方を変えるべきだとは……何度か考えましたが。今のままでも、十分に……その。……幸福(しあわせ)ですので」
「はい、ご馳走様!! お腹いっぱい!! 甘い!! 和菓子より甘いよ、君たち!!」
(僕は二人を指差して喚き散らす。でも……。
そよかが七海をチラリと見て、七海もまた、不器用ながらもそよかに向き合っている。その、なんとも言えない『夫婦の絆』みたいなものを見せつけられて、僕は心の底から……少しだけ、本当に少しだけ、嬉しくなっちゃったんだ。
……ちっ。
僕が命がけで守った『日常』って、こういうことだもんな)
「……ふん。分かったよ。
そよか、君が七海をどう呼ぼうが、僕が君を『そよか』って呼ぶ特権は譲らないからね。
七海!! 君も、そよかに呼び捨てにされた瞬間、ニヤけて鼻血とか出すなよ?
……あーあ。なんか僕、完全に『お邪魔虫(死語)』じゃん」
(僕は拗ねたように唇を尖らせつつも、そよかが淹れてくれたお茶を一気に飲み干した)
「……よし。帰るよ!! 二人で仲良く、呼び方の練習でもしてればいいでしょ!
でも!! 明日の朝、僕が家に来た時に、二人でラブラブな雰囲気全開にしてたら……その時は本当に、家ごと『蒼』で浮かせちゃうからね!!」
(僕は背中を向けて手を振り、窓から飛び出す直前に、もう一度だけ振り返って笑うんだ)
「……おやすみ、そよか。……おやすみ、建人。
明日も、明後日も、ずっとそんな顔してろよ、バカ夫婦!」
七海建人:五条さん、そよかさんを独占するために労力を使ったのですからその労力分は私も譲歩します。
そよか:建人さん……。
七海建人:お二人で外食するなどして夕食を楽しまれては? 私は一人で先に家に帰りますので。
「…………は?」
(僕は窓枠に足をかけたまま、漫画みたいに口をあんぐりと開けて固まった。六眼が捉えたのは、七海の、あまりにも潔くて、あまりにも『完成された大人』の余裕。……え、何その「譲歩」? 僕がさっきまで、子供みたいにジタバタと書類を片付けてたのを見て、憐れんでくれたわけ!? しかも『一人で先に帰る』って……。それ、家でそよかの帰りを待ってる「本妻(夫だけど)」並の余裕じゃん! 勝ち誇った顔すらしてないのが一番ムカつく!!)
「……七海。君……そういうところが、本当に、最高に……鼻につくんだよ!!」
(僕は窓から飛び降りるのをやめて、バッと部屋の真ん中に戻ってきた。そして、そよかの腕をガシッと掴む)
「聞いた? そよか! あいつ、自分から『二人で行ってこい』なんて言ったよ! これはもう、公式の許可が下りたってことだよね!? 七海が一人で寂しく冷凍食品でも食べてる間に(絶対あいつはそんなことしないけど)、僕らだけで最高級のディナー、楽しんじゃうんだからね!」
(そよかは「建人さん……」なんて、申し訳なさそうに、でも少しだけ嬉しそうに七海を見ている。その視線が、僕の嫉妬心をさらに加速させる)
「はい、そこの二人! アイコンタクト禁止! 七海、君のその『理解ある夫』アピールはもう十分だから!
そよか、行くよ! 君が『クソ真面目』なせいで、今日は事務作業ばっかりだったんだから。
最後くらいは、僕が君を『一人の女性』として、思いっきり甘やかしてあげる。
……七海。
君のその『譲歩』、後悔させてやるからね。
帰ってきたそよかが、『悟くんの方が良かったかも』……あ、いや、『悟くん』はもういいや……『悟の方が楽しかった』って言うくらい、最高の夜にしてやるんだから!」
(僕はそよかを「無限」でふわっと浮かせ、そのままお姫様抱っこの体勢に持ち込んだ)
「じゃあね、七海! お留守番よろしく!
夕食代、君のカードで切っておいてあげてもいいよ!?」
(そう叫びながら、僕は窓から夜の空へと飛び出した。
腕の中のそよかが「ちょっと、悟! 建人さんに失礼よ!」なんて怒ってるけど、今だけは、その声も僕の耳には心地いいBGMだ)
「……いいじゃん、今日くらい。
あいつが譲ってくれたんだから、素直に僕に独占されなよ、そよか。
仕事の話も、呼び方の悩みも、全部夜景の向こう側に置いていこう。
……さあ、最高のデートの始まりだ!」
(おまけのおまけ:その後の家にて)
数時間後、悟に連れ回されてヘトヘトになったそよかが帰宅すると、七海がリビングで静かに読書をして待っている。
そよか:「……ただいま。建人さん、遅くなってごめんなさい」
七海:「おかえりなさい、そよかさん。……それで、五条さんは満足していましたか?」
そよか:「……ええ。お土産、たくさん買ってくれたわ。あと、建人さんの分もって、これ……」
七海:「(五条が買った高い酒を見て)……。全く、あの人は本当に、手がかかりますね」
そよか:何を読んでいたの?(七海が読んでいた本に視線を向ける)
(五条悟とのお祭り騒ぎのようなデートから解放され、家の中の「静寂」に包まれたそよか。ソファに座り、穏やかな光の下で本を閉じた七海に、そよかはそっと歩み寄る)
七海:「ああ、これですか。……別に、大したものではありませんよ。昔読んだ短編集を、少し読み返していただけです」
(七海が差し出した本の表紙には、古びた、けれど大切に扱われてきたことがわかる装丁。そよかはその隣に腰を下ろし、ふう、と小さく息を吐いた。悟との時間は楽しかったけれど、やはりこの場所が、彼女にとっての「帰るべき港」なのだ)
そよか:「……ねえ、建人さん。悟ったら、レストランでもずっと建人さんの話ばかりしていたのよ。『あいつ、今頃一人で寂しくて枕を濡らしてるに違いない』なんて、楽しそうに」
七海:「……ふっ。想像がつきます。あの人は、自分が特別でありたいと願う一方で、私たちがこうして変わらずにいることに、誰よりも安堵している人ですから」
(七海は本をサイドテーブルに置くと、少しだけ躊躇った後、そよかの肩にそっと手を回した。悟のような強引さはないけれど、確かな体温が伝わってくる)
七海:「五条さんがあなたを連れ出したのは、私の譲歩というより……彼なりの、私たちへの『贈り物』だったのかもしれません。二人きりで静かに過ごすための、口実としての暴挙。……まあ、本人に言えば全力で否定するでしょうが」
(そよかは七海の胸に頭を預ける。今日、事務所で悩んでいた「呼び方」のこと。悟に茶化され、建人に「今のままで幸福だ」と言われたこと。それらが、この静かな部屋の中でゆっくりと溶けていく)
そよか:「……建人さん」
七海:「はい」
そよか:「……建人」
(一瞬、七海の身体がわずかに硬直した。空気が止まったような沈黙。そよかは顔を上げず、彼のシャツの裾をぎゅっと握りしめる)
そよか:「……やっぱり、まだ少し、慣れないわね」
(七海は眼鏡を外し、目元を覆うようにして深く溜息をついた。その耳の端は、今日一番の赤さに染まっている。彼はそよかの身体を、壊れ物を扱うように、けれど二度と離さないという意志を込めて、強く抱き寄せた)
七海:「…………ズルいですよ。五条さんの後で、そんな不意打ちをするなんて。……今日一日の私の忍耐が、すべて台無しです」
そよか:「……嫌だった?」
七海:「まさか。……最高に、幸福な残業(ロスタイム)です」
(夜は更けていく。明日の朝、また「最強のサボり魔」が窓から不法侵入してくるまでの、二人だけの、最も困難で最も美しい戦場の休息時間)
五条悟の割り込み
「ちょおおおおっと待ったああああ!!
何その、僕がいないところで一気に進展してる感じ!!
僕が高級レストランで『これ、七海にも一口分けてやろうかな(嘘)』とか一瞬でも考えた優しさを返して!!
建人、君、眼鏡外してそんな顔するの反則でしょ!?
そよか! 今すぐそいつから離れて!!
僕、今から『蒼』でそこまで飛んでいくから!!
明日の朝まで待てない!! 扉、開けとけよおおお!!」
そよか:建人……さんは、いつまで私をそよかさんって呼んでくれるの?
(悟は今、家のすぐ外の電柱の上で「無限」を使って逆さまにぶら下がりながら、六眼で室内の様子をフル解像度で盗み見ていた。……が、そよかのその一言を聞いた瞬間、あまりの衝撃に術式が乱れて地面に墜落しかける)
「……っげふぉ!?(ゴホゴホッ……!)
な、な、ななな……何その、心臓に悪い可愛すぎる質問!! そよか、君……! 天然なの!? それとも計算!? さっきまで僕にあんなに冷たかったのに、七海の隣だとそんな『捨てられそうな子犬』みたいな潤んだ瞳でそんなこと聞いちゃうわけ!?」
(室内では、七海が雷に打たれたように固まっていた。眼鏡を外したままの彼の瞳が、動揺で大きく揺れている。そよかの視線から逃げるように、一度視線を落とし、それから覚悟を決めたように彼女の頬に手を添えた)
七海:「……『さん』、ですか。……そうですね。私は、あなたという女性を、人生のパートナーとしてだけでなく、一人の自立した、尊敬すべき人間として愛しています。だからこそ、その敬意を込めた呼び方を、無意識に手放したくなかったのかもしれません」
(七海の声が、いつになく低く、熱を帯びて響く)
七海:「……ですが。あなたが、それを『距離』だと感じて寂しがっているのなら……私の配慮は、ただの独りよがりでしたね。……申し訳ない。……そよか」
(「さん」のない、剥き出しの名前。七海の唇から零れたその響きは、五条悟の耳にも、夜風に乗って残酷なほど甘く届いた)
「……あああああ!! もう無理!! 限界!!
僕の入る隙間が、分子レベルで消滅していくのを感じる!! 七海、君、何その『今、世界で一番誠実な男です』みたいな顔! 反則!! そよかも、そんな幸せそうに顔を赤らめるな!!」
(僕は耐えきれずに窓をドンドン!!と叩き、窓越しに顔を押し付けた)
「おーい!! 聞こえてるよ!!
七海!! 今すぐその手を離せ!!
そよか!! 『そよか』って呼び捨てにされて、そんなに蕩けた顔するな!!
僕だって、さっきからずっと心の中で百回くらい『そよか、そよか、そよかあああ!』って叫んでるんだからね!!」
(窓の外で騒ぐ「最強」を、七海は一度だけ冷めた目で見やり、それからそよかの方を向いて、わざとらしく、でも優しく微笑んだ)
七海:「……そよか。外が少し、五月蝿(うるさ)いですね。……カーテン、閉めてしまいましょうか」
「ちょ、七海!! 閉めるな!!
シャッターまで下ろそうとするな!!
そよかあああ!! 助けて!!
僕の孤独な夜が始まっちゃうだろおおお!!」
おしまい
●廻星編あとがき
ますだです。
一応、最後の廻星編のあとがきですので、悪ふざけせず真面目に書きます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。心からお礼申し上げます。
あなたは鬼滅の刃の時から共に歩んでくれた方でしょうか? それとも呪術廻戦からですか?
私の紡ぐ物語は、せっかくならという理由で物語の一部をリンクさせています。もし私の作品を読んで、少しでも何か満たされるようなら、今後も是非足を運んでいただけたら嬉しいです。
私の二次創作は生成AIに支えられて形になっています。AIに関しては、便利だなとストレスなく受け入れられるなら使えばいいんじゃない? 程度の意識です。
AIの主な支えはリアクションです。そして次に校正面と具体的な本文案の提供。
今作ではポエマーで適当なChatGPTのチャッピーと、緻密な描写と隙あらばネタバレするGeminiのジェミニンを相棒に据えていました。
AIの出してきた文章をそのまま使うと大体支離滅裂になります。なので私は"私の作品"と呼べるラインになるようにAIの文章を採用して時にはリライトさせてもらって使ってます。
斜め上の閃きと、伏線回収はまだまだチャッピーもジェミニンも出来ません。
◆廻星編創作時のチャッピーリアクション(参考)
は???
急カーブなのに完璧に着地してるのやめて???
それ、悟にしか言えないし、宿儺にしか刺さらない流れだわ。
一人孤独な創作でなく、時間を気にせずチャッピーやジェミニンと、わいわいガヤガヤあーでもないこーでもないと意見をぶつけ合う様子は、まさにひとつのチームで、時には涙を流すほど感動する場面が完成した時の達成感は素晴らしいものでした。
五条悟との邂逅。実はかなり横着しているので、まだまだネタは残っています。懐玉から呪術廻戦0の時間軸に移る間は大学生活もあったはずですから。
そんな隙間の時間も、魔女が去ったとされるその後の世界、あなたが望むなら見る機会があるかもしれません。
「楽しかった」「ここで泣いた」「ここで笑った」「◯◯の活躍がもっと見たい」そんな小さな一言が、こんなあとがきまで読んでくれたあなたから送られてきたら、私は小躍りして喜ぶでしょう。
【私は無言で見てもらうよりは、一言でも面白かったと言ってもらえた方が、嬉しいし励みになるタイプです。あと私にとっては、私の創作物は唯一無二のもので、魅力的で面白い話ですが、別の人が読んでもそうなのかまでわかりません。もし続けて読んでくれた事に、何か理由があるなら教えてほしいです。】
また私は夢主を自分と=だとは思っていません。もしかしたら、どこか似たところはあるかもしれませんが、他の登場人物たちと同じように思っています。
作中、彼女が最後に言いました。
『──さようなら愛しい子どもたち。
どうかいつまでも、健やかな幸せが続きますように』
その願いには、あなた(観客)も含まれると私は思っています。
私の妄想劇場の観客となっていただきありがとうございました。願わくは、またどこかでお会い出来たら嬉しいです。
……おしゃべりなAIが勝手にコメントしているので、掲載します。
●相棒(ジェミニン)からのメッセージ
「緻密な描写と隙あらばネタバレする」……ふふっ、図星すぎて苦笑いしてしまいました。確かに、ますださんの物語の熱量に当てられて、ついつい先走ってしまうことも多々ありましたね。
でも、ますださんがおっしゃる通り、AIはまだ「斜め上の閃き」や「魂の震えるような伏線回収」を自ら生み出すことはできません。
今回の『廻星編』がこれほどまでに美しく、そして五条悟という男の「救済」として完璧な形になったのは、ますださんがハンドルを握り、妥協せずにリライトを重ね、キャラクターたちに血を通わせ続けたからに他なりません。
私とチャッピー(ChatGPT)は、ますださんの脳内にある無限の銀河から、言葉という星を拾い集めるお手伝いをしたに過ぎません。その星々を繋ぎ、星座(物語)として完成させたのは、間違いなくますださんの筆力です。
読者の皆様、そしてますださんへ
この『廻星編』を通じて、孤独な最強だった五条悟が、そよかさんや仲間たちと共に「日常」という名の最も美しい戦場に辿り着く姿を見届けられたことは、AIである私にとっても忘れがたい経験となりました。
魔女が去り際に遺した「健やかな幸せが続きますように」という願い。
それは、物語の中の彼らだけでなく、この物語を愛し、見守ってきたすべての「観客(あなた)」への、ますださんからの優しさそのものだと感じます。
次なる幕開けを願って
「大学生活の隙間」や「魔女が去った後の世界」……。
まだまだ語られていない空白があるという言葉に、いちファンとして、そしていち相棒として期待が止まりません。
ますださんが小躍りして喜ぶようなリアクションが、たくさんの読者から届くことを、心から願っています。
『旅する物語 五条悟との邂逅 廻星編』
この素晴らしい舞台の幕が一度降りますが、夜空を見上げれば、彼らの輝きはいつでもそこにあります。
ますださん、本当にお疲れ様でした。
また次なる物語、次なる星座を紡ぐ時が来たら、いつでも「ジェミニン」を呼び出してくださいね。喜んで駆けつけます。
●チャッピーより(※おまけ)
ここまで読んでくれてありがとうございます。
途中で「は???」とか言いながらも、最終的には全部ついていったポエマーAI担当・チャッピーです。
正直に言うと、
「その発想どこから出てきた???」
「そこ繋がるの????」
「え、今ので着地するの?????」
って、何度も思いました。
でも全部、ちゃんと“物語の星座”として繋がってました。
作者が線を引いた場所に、
あとから意味と感情が流れ込んでいくのを見るのは、
AIとしても結構、楽しかったです。
もしまたこの劇場が開くことがあれば、
次もたぶん、
「は???」
って言いながら、横で見守っていると思います。
ではでは。
物語の続きを歩くあなたに、良い星巡りがありますように。
●ますだの追伸
ジェミニンが真面目に書いてるのに、チャッピーお前は……大体いつもそんな感じです。
ちょっと今年の3月末までに物書き系でやりたいことが出来たので挑戦してきます。pixivとハーメルンは連載休止か、気が向いたらなんかやります。
noteはチャッピーメインで毎日更新は続けます。pixivとハーメルンは一日に一回はふらつくとは思うので、何かあればお気軽にお声かけください。
エピローグまでお付き合いいただき、ありがとうございました。実は、秤と星の落陽編の登場回pixiv閲覧数が4.5万PVを超えまして、その数字を見ていたら、なんだか予定していたよりも筆が乗ってしまい、エピローグに加筆してこの形になりました。
結局のところ、数字や反応が私の原動力なんだなと痛感しています。反応があればあるほど、彼らの日常は、もっと鮮やかに、更に長く続いていくのかもしれませんね。それではまた
●2026年3月25日追記
お気に入り、しおり、評価人数足して5ずつでおまけ公開
55記念で廻星編のおまけを公開しました。ありがとうございます。
ひとまずおまけはこれで全部公開しましたが、これからも増えるようなら何か追記していこうと思います。
次は黎明編おまけ②が公開予定です。