【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗った後の物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。

エンディング後のお遊び編です。


114遊興編 3・4:継子の覚悟と、筋肉の談義

●3

 

 渋谷109内、ランジェリーショップ。

 

 男子禁制、胡蝶しのぶと甘露寺蜜璃。

 同行者、せいらとそよか。

 

「きゃーーー!! 可愛いわ! 可愛いわ!」

 店内をあちらこちら飛び回る蜜璃。

「えっ、嘘! なんでこんな繊細な刺繍が!? どれも素敵! どうしましょう!?」

「はわわ! みつりさん! 落ち着いてー!」

 そんな蜜璃の近くを、同じようにぴょんぴょんしながら楽しそうにしているせいら。

 

「私はこの蝶の刺繍があるものにしましょう。値段も手頃なようですし……ただ、私たちの世界には持ち帰れないと聞いているので」

「はい。そうですね。お帰りになる時は、こちらで処分しておきます──」

 どこか緊張した様子のそよかに、しのぶが微笑みかける。

「やはり緊張するものですか?」

「えっ、いえ……そんな……」

「私はユリさんから、お二人のことをよく伺っていましたよ。だからお二人のことはユリさんの継子のように感じているんです」

 そよかの胸の奥で、何かがきゅっと縮んだ。

 “継子”という言葉は、思っていた以上に重く、温かかった。

 自分が誰かにそう呼ばれる未来を、どこかで諦めていた気がする。

「……継子、ですか」

 そよかは一瞬だけ視線を落とし、それから小さく息を整えた。

「そう思ってもらえるのは、光栄です」

「ふふ。硬いですね」

 しのぶは柔らかく笑い、そよかの肩口に視線を落とす。

「でも、無理に“良い子”でいなくていいんですよ」

「……」

「守られる側でいることに、慣れていないのでしょう?」

 その言葉に、そよかの指先がわずかに動いた。

 

「私は──」

 一拍。

「彼らの隣に立つと、どうしても考えてしまうんです。私が“選ばれる側”でいていいのか、と」

 そよかの声は震えてはいないのに、どこか“痛み”が滲んでいた。

 選ばれることは嬉しいはずなのに、胸の奥ではいつも小さな棘が疼く。

 “自分でいいのか”という問いが、何度も何度も蘇る。

「まぁ」

 しのぶは驚いたように目を瞬き、それから少しだけ声を落とした。

「それはまた、随分と難しい場所に立っていますね」

 

 一方その頃。

 

「ねえねえ見て! これも可愛いし、こっちも可愛い!!」

「ほんとだぁ! これなんてお星様みたい!」

 蜜璃とせいらは、もはや宝石箱をひっくり返した子ども二人だった。

「ねえ、これ誰に見せる用?」

「えっ? えっと……えへへ……」

 せいらは頬を染め、曖昧に笑った。

 

「……あの子は、分かりやすいですね」

 しのぶが目を細める。

「ええ」

 そよかは小さく微笑んだ。

「自分の幸せを、疑わない子ですから」

 

 その言葉に、しのぶはそよかをまっすぐ見た。

 

「では、あなたは?」

「……私は」

 そよかは一度だけ、ランジェリーラックに並ぶ“柔らかすぎる色”から目を逸らした。

「疑う癖が、まだ抜けないみたいです」

 

 しのぶはそよかの横顔を見つめ、ほんの一瞬だけ目を細めた。

 その視線は、患者の痛みを見抜く医者のそれに近かった。

 優しさと、覚悟と、少しの寂しさが混ざっていた。

「それでも、ここにいるでしょう?」

 しのぶはそう言って、そよかの手元に一着をそっと差し出した。

 淡い色合いの、余計な装飾のないもの。

 ただほんの少し大胆なデザインになっている。

「何か選ぶことから、始めてみては?」

「……私が、ですか?」

「ええ。未来を選ぶ練習です」

 そよかは少し戸惑いながら、それを受け取った。

 布の柔らかさが、指先から胸の奥へと染み込んでいく。

 “選ぶ”という行為が、こんなにも怖くて、こんなにも嬉しいものだとは思わなかった。

 布の温度が、なぜか胸に残る。

 

「……選んで変化してしまったら、もう戻れなくなるかもしれませんよ?」

「その時は」

 しのぶは、どこか覚悟を含んだ笑みを浮かべた。

「“理由”を、ちゃんと聞いてあげます」

 

 遠くで蜜璃の声が弾ける。

 

「しのぶちゃん! これ絶対似合うわよー!!」

「みつりさん! それは流石にセクシーすぎですー!」

 

 賑やかな声に包まれながら、

 そよかは静かに、ひとつ頷いた。

 

 

●4

 

 同時刻。

 渋谷某所、アパレルショップの一角。

 

「違うなぁ」

 腕を組んで唸る宇髄天元。

「派手さが足りない」

「いや、十分派手だろ」

 五条悟は鏡越しに自分を見て、興味なさそうに肩を竦めた。

 

 悟と傑は、なぜかソファの前に立たされている。

 周囲にはジャケット、シャツ、アクセサリーが山積みだ。

 

「顔はいい。骨格もいい。だがな──」

 宇髄は悟の肩を軽く叩く。

「まだ筋肉が、足りない」

 悟は一瞬だけ目隠しの奥で目を細めた。

 “筋肉が足りない”と言われたのは初めてだった。

 無下限呪術よりも先に肉体を評価されるとは思っていなかった。

「はぁ!?」

「線が細い。肉食ってんのか? もっとこう、ドンだ、ドン!」

「それもう服の問題じゃないだろ」

 

 傑は苦笑しながら、選ばれたシャツを手に取った。

「私は問題ないみたいだけど?」

「お前はまだバランスがいい。だが悟は駄目だ」

「なんでだよ!?」

 

 その様子を、腕を組んだまま不死川実弥が眺めていた。

「……お前ら、本気で服決めるつもりあんのか?」

「当然だ!」

 宇髄が即答する。

「装いは戦だぞ!」

 

「じゃあさ」

 悟がにやっと笑う。

「筋肉足りないって言うなら、腕相撲でもしてみる?」

「は?」

「勝ったら、この格好で決定な」

 

 一瞬、空気が止まった。

 

「……面白ぇ」

 実弥の口元には、喧嘩前の獣のような笑みが浮かんでいた。

 彼にとって腕相撲は、ほぼ“戦”と同義だ。

 

「やれやれ、この俺に腕相撲で勝てるとでも本気で思ってんのかぁ?」

 

 卓を挟んで向かい合う二人。

 悟は余裕の表情、宇髄は血管を浮かせている。

 

「いくぞ」

「はいはい」

 

 ──その瞬間。

 

「……」

「……」

 

 空気が、ひやりと冷えた。

 呪霊でも呪力でもない、もっと質の違う“圧”が背後から迫る。

 悟でさえ、思わず肩をすくめた。

 

「……あらあら」

 

 低く、静かな声。

 

 全員が振り返る。

 

 そこに立っていたのは、

 にこやかに微笑む胡蝶しのぶ。

 その両脇に、満面の笑みの甘露寺蜜璃と、紙袋を抱えたせいらとそよか。

 

「随分、楽しそうですね?」

 その笑顔は、毒を含んだ蜜のようだった。

 宇髄でさえ、ほんの少しだけ背筋を伸ばした。 

 しのぶの笑顔は、明らかに笑っていない。

 

「えっ、しのぶちゃん!?」

 蜜璃がぱっと場を明るくする。

「ちょうどよかったわ! まだみんな衣装が決まってなかったみたい!」

 

「……そうですね」

 しのぶは腕相撲の体勢のまま固まっている二人を見下ろした。

「何故か脱線していたようです。時間は限られているというのに──」

 

「いや、これはその……」

 悟が口を開く前に、

 

「筋肉の話をしてました」

 宇髄が胸を張る。

「こいつら、線が細いんだ」

 

 次の瞬間。

 

「はぁっ!?」

 蜜璃の目が輝いた。

「なら、私が選ぶ!!」

 

「え?」

「ちょっと待て」

 

 あっという間に、悟と傑の周りに似合いそうな服が集められていった。

 

「悟くんはこれ! 絶対似合う!」

「傑さんは落ち着いた色の方が……でも、ちょっと冒険してせいらちゃんとお揃い要素を──」

「……その上着、脱いでみて?」

「え、今?」

 

 宇髄が腕を組み、満足そうに頷く。

「ほら見ろ。場が華やいだ」

「最初からこれ狙いだっただろ……」

 

 気づけば腕相撲の話は消え、

 代わりに次々と衣装が決まっていく。

 

 鏡の前で、悟がぼそっと呟いた。

「……結局、俺、着せ替え人形じゃん」

「いいんじゃない? たまには」

 そよかが微笑む。

「あれー? そよかもしかして、自分用にちょっと変わったの買った?」

 六眼を細めてにやりと笑う。

「……まだ内緒」

「ふーん」

 僅かに頬を染めるそよかの横顔を、嬉しそうに悟は見つめている。

 

 店内は、賑やかな笑い声で満ちていた。

 

 

ED:Aimer『残響散歌』




ここまでご覧いただきありがとうございました。
それでは大体また来週!

お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。次は50になると落陽編のあとがきではない何かが公開されます。
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