【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗った後の物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
エンディング後のお遊び編です。
●グランドエピローグ
呪術学園、科目準備室。
時折昔を懐かしむようにせいらとそよかが訪れるその場所で、今日はせいらとそよかが何やら「ごそごそ」と慌ただしく荷物をまとめていた。
「何してんの?」
ひょいと首を突っ込んだのは、最強の術師・五条悟だ。あまりに必死な二人の様子に、目隠しの下で目を丸くしている。
「にゃっ!? さとる、どいてどいて! 今日はねー、煉獄さんのお誕生日なの!」
「早くお祝いしに行かないと。時間がもったいないわ」
せいらが風呂敷を振り回し、そよかがテキパキと身支度を整える。その言葉に、悟はポカンと口を開けた。
「は? マジで言ってる? ……おい傑」
助けを求めるように隣の親友へ視線を送ると、夏油傑は困ったように、けれどどこか楽しげに肩をすくめた。
「君、知らなかったのかい? 私は事前に聞いていたけれど」
「悟、私随分前にも言ったわよ!! 言ったら『へー』って聞き流してたじゃない!!」
そよかの鋭いツッコミが飛ぶ。
「マジか!? 俺そんなこと言ったっけ!?」
「言ったの!! もういい、こっちからお祝い(生もの)は持ち込めないから現地調達しかないわ! 急がないと! 向こうでおはぎとか芋ご飯とか、とにかく美味しいものをかき集めるのよ!」
鼻息を荒くするそよかの背後で、いつの間にかスーツを完璧に着こなした七海建人が、時計をチラリと確認した。
「……スピード重視です。五条さん、呆けている暇があるならゲートの維持に集中してください。遅れるのは労働における最大の損失です」
「ちょ、七海まで!? みんな冷たくない!? 待ってよ、俺も行くから!!」
大慌てで準備室を飛び出す最強術師。
その背中を追いかけるように、せいらとそよかは光り輝くゲートの向こう──「煉獄邸の朝」へと足を踏み入れた。
──
ゲートを抜けた先。
そこは、先程までの無機質な高専とは打って変わり、朝露に濡れた新緑の香りと、けたたましい鴉たちの祝福に包まれていた。
「カァーッ! 炎柱、誕生日! おめでとう! カァーッ!」
屋根を埋め尽くす鎹鴉たちの声。
主寝室の静かな畳の上、杏寿郎はゆっくりと意識を浮上させた。腕の中には、まだ夢の中にいるユリの温もりがある。
「……ふむ。実に、素晴らしい朝だ」
杏寿郎が小さく呟いたその時。
廊下から、元気な子供たちの声と、少しだけ「聞き慣れた、騒がしい大人たち」の気配が混ざって近づいてくる。
「「父上、お誕生日おめでとう!!」」
「煉獄さーん! 誕生日おめでとぉぉぉ!!」
勢いよく襖が開く。
子供たちに混ざって、なぜか風呂敷を背負ったせいらと、息を切らしたそよかが真っ先に飛び込んできた。
「わははは! ありがとう! みんな、朝から実に元気でよろしい!」
杏寿郎はユリを抱いたまま、空いた腕で子供たちと、そして「異世界からの使者」であるせいらたちをまるごと抱きかかえるように笑った。
「あらあら……ふふ、おはよう、杏寿郎。それに、せいらにそよかも。朝早くから賑やかね」
ユリも優しく微笑み、世界を跨いだ「最高の誕生日」が幕を開けた。
──
広間では、五条が杏寿郎と声の大きさを競い合い、
千寿郎が嬉しそうに料理を運び、鎹鴉たちがなおも騒がしく祝福の歌を歌っている。
「あっ……初めまして。煉獄千寿郎と申します。兄上と姉上がいつもお世話になっています」
料理を運ぶ手を止めずに丁寧に頭を下げる千寿郎に、せいらは「にゃ〜ん!」と手を振り、そよかは「礼儀正しいのね」と微笑んだ。
千寿郎は少しだけ頬を赤くしながら、再び台所へと戻っていった。
そんな喧騒から少し離れた縁側で、ユリは穏やかに目を細めていた。
「毎年毎年、賑やかで良いことだわ」
その視線の先には、子供たちや異世界の友人たちに囲まれ、太陽のような笑顔で笑う夫・杏寿郎の姿がある。
平和そのものの光景にユリが心を満たしていると、背後から二つの柔らかな気配が忍び寄ってきた。
「お師匠〜」
「お師匠様」
せいらとそよかだ。二人は何やら後ろ手に何かを隠しながら、いたずらっぽく、けれどどこか緊張した面持ちで近付いてくる。
「これ受け取ってよー!!」
「いつも、本当に……ありがとうございます……」
差し出されたのは、燃えるような、けれどどこか優しい赤色をしたカーネーションの花。
「あら……。私に?」
ユリが驚きに瞳を揺らしたその時、せいらたちの後ろから、椋寿郎とルリもまた、小さな手に一輪ずつ花を握りしめて歩み寄ってきた。
「母上、わたしたちからも……」
「……おめでとうございます、母上」
四つの手から差し出された、色鮮やかな感謝の印。
今日は杏寿郎の誕生日であると同時に、彼女たちが「母」と慕う女性に想いを伝える日でもあった。
「ありがとう。……本当に、嬉しいわ」
ユリは四人を包み込むように抱き寄せ、花束を胸に抱いた。
花びらの赤は、杏寿郎の纏う羽織の色に似て、温かく力強い。
領域という暗闇の中で長く過ごしたせいらにとっても、激動の時代を駆け抜けるそよかにとっても、ユリの存在は迷いの中に見つけた正真正銘の「光」だった。
「ユリ、実に似合っているぞ! 四人の真心、俺も鼻が高い!」
いつの間にか気付いていた杏寿郎が、広間から大きな声を上げる。
ユリは照れたように笑い、手の中の花を愛おしそうに見つめた。
呪いも、鬼も、世界の壁も。
この温かな庭に咲く花の前では、何の意味も持たなかった。
──
ユリがカーネーションを胸に抱いたその時、煉獄邸の呼び鈴が再び、今度は「派手に」打ち鳴らされた。
「おっと、派手に出遅れたか! 煉獄、誕生日おめでとう!!」
風を切り、誰よりも目立つ着こなしで現れたのは宇髄天元だ。その後ろからは、桜餅の香りをさせた子連れの甘露寺蜜璃が、目に涙を浮かべて駆け寄ってくる。
「煉獄さーん! 間に合って良かったですぅ! 煉獄さんの笑顔、やっぱり太陽みたい!」
庭先には、いつの間にか「元鬼殺隊」の面々が続々と集結していた。
「……誕生日、おめでとう」
静かに、けれど確かな祝意を口にするのは冨岡義勇だ。
「今日もお元気そうで何よりです、煉獄さん」
隣では胡蝶しのぶが、いつもの微笑みを絶やさず頭を下げる。まだ幼い我が子と手を繋いでいた。
「……遅れた。だが、祝いは持ってきた」
木の上から不機嫌そうに、けれど腕の中の包みを大事そうに抱えて見守るのは伊黒小芭内。
「煉獄……おめでとう……。南無……」
悲鳴嶼行冥が、溢れる涙を拭いもせず、大きな数珠を鳴らして祝詞を捧げる。
「ほらよ、重いから気ぃつけろ」
ぶっきらぼうに大きな風呂敷包みを突き出したのは実弥だ。その中身が、せいらと一緒に選んだ「とっておき」であることを皆が知っている。
そんな喧騒の中、一歩遅れてひょっこりと姿を見せたのは時透無一郎だった。
「……煉獄さん。おめでとう。……えーと、これ。誕生日の、お祝い。……いつまでも、元気でいてね」
少しだけ首を傾げながらも、清涼な風のように差し出された無一郎の言葉に、杏寿郎はこれ以上ないほどの笑みを返した。
「うむ! 皆! 実に素晴らしい贈り物、心から感謝する!!」
せいらは宇髄の嫁たちと談笑し、そよかはしのぶと医療知識の交換を始めていた。
「にゃーん! みんな揃って、楽しいねぇ!」
せいらが重箱を掲げると、杏寿郎は集まったかつての同胞たちをぐるりと見渡し、大きく胸を張った。
「うむ! 我らの絆は不滅! 今日この日に、皆とまたこうして笑い合えること、これ以上の誉れはない!!」
空には、数え切れないほどの鎹鴉が祝福の舞を踊っている。
呪術学園の「最強」たちと、大正の世を護り抜いた「柱」たち。
二つの世界の最強が混ざり合い、重なり合う感謝の声は、五月の陽光よりも熱く、煉獄邸を黄金色に染め上げていった。
おしまい
ここまでご覧いただきありがとうございました。
また気が向いたら更新しにきます。
煉獄杏寿郎さん、お誕生日おめでとうございます。
うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/
良ければご覧ください
◆ノベマ!にて全文公開中。完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)こちらも良ければご覧ください
お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
次の75は遊興編のおまけ微エロな内容を公開します。
他、気が向いたらおまけを追加してます。
件名に★がついてたら意味もなくおまけが増えてるかも!?