【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


131碧淵編 13・14:古代の兵器が奪った一族の過去と、光る涙を糧に寄り添う乳母貝

●13

 

 ──海が揺れていた。

 

 まだ幼いルーグルは、珊瑚の柱の陰に身を潜めていた。

 大人たちの声が、海流に乗って低く響く。

 普段は穏やかなその声が、今日はどこか震えていた。

 

「……海底火山の噴火で、アトランティスの防衛装置が誤作動した」

「《オルフェウス》が起動しかけている。

 このままでは……海も、地上も、消える」

 

 ルーグルは息を呑む。

 “消える”という言葉の意味は分からない。

 でも、海そのものが震えているのを感じた。

 

「地上に助けを求めるべきだ」

「馬鹿を言うな。我らには誇りがある」

「誇りで子どもたちを死なせる気か」

「……犠牲は、我々大人だけで払う」

 

 静寂。

 海の底に沈むような、重い沈黙。

 

「王族の子どもたちだけは、必ず守れ。

 あの子らは……未来だ」

 

 その言葉に、幼いルーグルの胸がきゅっと縮む。

 “守られる側”でいることが、こんなにも苦しいとは知らなかった。

 

 次の瞬間、海が轟いた。

 遠くで光が爆ぜ、海流が乱れ、砂が舞い上がる。

 水圧が変わり、胸が痛むほどの衝撃が走る。

 

 ──大人たちは、戻ってこなかった。

 

 ルーグルは、ただ立ち尽くすしかなかった。

 海は静かだった。

 あまりにも静かで、耳が痛いほどだった。

 

(……どうして)

 

 胸の奥が熱くなり、視界が滲む。

 涙がこぼれた──水中なのに、涙は水に溶けず、

 小さな光の粒となってふわりと浮かんだ。

 

 その瞬間、足元で白い影が動いた。

 

 小さな乳母貝がぱくぱくと口を開け、光の粒──涙をそっと食べるように、淡い光を灯した。

 

「……きみ」

 

 貝は、まるで「泣かないで」と言うように、そっと寄り添う。

 

 ルーグルはしゃがみ込み、貝をそっと抱き寄せた。

 涙は止まらない。

 でも、貝はずっとそばにいてくれた。

 

(……守られたくなんて、なかったのに)

 

 幼い心に、どうしようもない無力感が沈んでいく。

 大人たちが払った犠牲の意味も、

 自分が“生き残った側”であることの重さも、

 まだ理解できないまま。

 

 ただ、胸が痛かった。

 

 ふと──

 せいらの顔が浮かぶ。

 

 泣きそうで、でも泣けなくて、

 声も出せずに震えていた、あの表情。

 

(……あの子も、こんな気持ちだったのかな)

 

 胸の奥が、幼い頃と同じように痛む。

 光る涙がまた一粒、ふわりと浮かぶ。

 乳母貝がそれをぱくりと食べた。

 

「……ありがとう」

 

 ルーグルは小さく呟いた。

 

 ──そして、せいらのもとへ戻る決意を固めた。

 

 

●14

 

 ルーグルは、せいらの手をそっと離した。

 

 ──ラピスラズリの外れ。

 光が弱く、泡の音だけが静かに響く場所。

 

 足元で、小さな白い真珠貝がぱくぱくと口を動かした。

 

「ここなら……落ち着けると思って」

 

 ルーグルの声に、せいらは小さく頷く。

 

 ルーグルは足元の貝を愛おしそうに見つめた。幼い頃から彼の悲しみに寄り添った、あの「乳母貝」だ。寄り添うように、水中でふわふわと漂っている。

 

 真珠貝が足元でぱくぱくと口を動かし、寄り添うように漂っていた。

 

 ルーグルはしばらく黙っていたが、

 やがて、迷うように口を開いた。

 

「……ねぇ、君は……どこから来たの?」

 

 息を呑む。

 声が出ない。

 尾びれが震える。

 

 胸の奥がきゅっと痛み、視界がにじむ。

 光る粒がひとつ、ふわりと浮かんだ。

 

 真珠貝がその涙をぱくりと食べた。

 

 ルーグルはその様子を見て、胸が痛むように眉を下げる。

 

「ごめん。無理に聞こうとしてるわけじゃないんだ。

 ただ……知りたいだけで」

 

 優しい声。

 でも、その奥に“確かめたい”という揺れがあった。

 

「君は……僕たちの海の生まれじゃないよね。

 尾びれの動きも、この海の流れに慣れていない。

 それに……君の目は、ずっと“上”を見てる」

 

 ルーグルの言葉に胸がぎゅっとなる。

 

(……帰りたい)

 

 でも、言えない。

 

 ──セバスクンとの会話が頭をよぎる。

 

『ルー様は……ずっとお一人なのです。

 あのお方の一族は、古代遺跡の兵器が暴発しかけた時にその命を犠牲に世界を守った……。

 そして僅かに生き残った者たちも、何者かに連れ去られ──』

 

『ルー様は外の海で助けた子のことも、ずっと気にかけておられた。

 あの子が来られない場所だと分かっていても……

 それでも、誰かを守りたいと願っておられるのです』

 

『……だから、お嬢さん。

 どうかルー様を悲しませないであげてくださいませ』

 

 胸に手を当てた。

 帰りたい。

 

 でも──ルーグルの孤独を思うと、言えない。

 

 ルーグルはその仕草を見て、

 “迷っている”と解釈した。

 

「……そっか。

 君も、分からないんだね。

 どうしてここに来たのか」

 

 胸が小さく跳ねる。

 図星だった。

 

 ルーグルは少しだけ視線を落とす。

 

「……君がここにいてくれたら、嬉しい。

 でも……君は、本当はここに来るはずじゃなかったのかもしれない」

 

 息を呑む。

 

 ルーグルは続けた。

 

「だから……無理にここにいろとは言わないよ。

 でも、君がここに来た意味は……きっとあると思うんだ。

 僕も、それを知りたい」

 

(……意味)

 

 胸が熱くなる。

 帰りたい気持ちと、知りたい気持ちが同時に揺れる。

 

 ルーグルはそっと手を伸ばした。

 

「……そうだ。君の“呼び方”、まだ知らなかったね」

 

 ルーグルは胸元にそっと触れ、迷うように微笑んだ。

 

「……せいら。そう呼んでいい?

 外の海でね……君に、よく似た子を見かけたんだ。

 その子が、そう呼ばれていて」

 

 せいらは驚く。

(……似てる子? わたしのこと……知ってたの?)

 

 名前が違うわけじゃない。

 ただ、“どうしてその名前を知ってるのか”を聞きたい。

 でも声が出ない。

 

 ルーグルは、せいらの反応を“肯定”だと受け取ったように微笑んだ。

 

「ありがとう。せいら」

 

 真珠貝がぱくぱくと口を動かす。

 せいらの涙を食べて、そっと寄り添う。

 

 ルーグルはその光景を見て、

 胸の奥がきゅっと締めつけられるようだった。

 

「──大丈夫」

 

 せいらは目を見開く。

 

 ルーグルは優しく笑った。

 

「君が……ここに来た意味。

 一緒に探そうか」

 

 ──ズレは、静かに深まっていく。

 でも、二人の距離は確かに近づいていた。





ここまでご覧いただきありがとうございました。
それでは大体また来週!

うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/

◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)

お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
80は遊興編のおまけ微エロな内容を更に公開しました。
次は85です。
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