【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●13
──海が揺れていた。
まだ幼いルーグルは、珊瑚の柱の陰に身を潜めていた。
大人たちの声が、海流に乗って低く響く。
普段は穏やかなその声が、今日はどこか震えていた。
「……海底火山の噴火で、アトランティスの防衛装置が誤作動した」
「《オルフェウス》が起動しかけている。
このままでは……海も、地上も、消える」
ルーグルは息を呑む。
“消える”という言葉の意味は分からない。
でも、海そのものが震えているのを感じた。
「地上に助けを求めるべきだ」
「馬鹿を言うな。我らには誇りがある」
「誇りで子どもたちを死なせる気か」
「……犠牲は、我々大人だけで払う」
静寂。
海の底に沈むような、重い沈黙。
「王族の子どもたちだけは、必ず守れ。
あの子らは……未来だ」
その言葉に、幼いルーグルの胸がきゅっと縮む。
“守られる側”でいることが、こんなにも苦しいとは知らなかった。
次の瞬間、海が轟いた。
遠くで光が爆ぜ、海流が乱れ、砂が舞い上がる。
水圧が変わり、胸が痛むほどの衝撃が走る。
──大人たちは、戻ってこなかった。
ルーグルは、ただ立ち尽くすしかなかった。
海は静かだった。
あまりにも静かで、耳が痛いほどだった。
(……どうして)
胸の奥が熱くなり、視界が滲む。
涙がこぼれた──水中なのに、涙は水に溶けず、
小さな光の粒となってふわりと浮かんだ。
その瞬間、足元で白い影が動いた。
小さな乳母貝がぱくぱくと口を開け、光の粒──涙をそっと食べるように、淡い光を灯した。
「……きみ」
貝は、まるで「泣かないで」と言うように、そっと寄り添う。
ルーグルはしゃがみ込み、貝をそっと抱き寄せた。
涙は止まらない。
でも、貝はずっとそばにいてくれた。
(……守られたくなんて、なかったのに)
幼い心に、どうしようもない無力感が沈んでいく。
大人たちが払った犠牲の意味も、
自分が“生き残った側”であることの重さも、
まだ理解できないまま。
ただ、胸が痛かった。
ふと──
せいらの顔が浮かぶ。
泣きそうで、でも泣けなくて、
声も出せずに震えていた、あの表情。
(……あの子も、こんな気持ちだったのかな)
胸の奥が、幼い頃と同じように痛む。
光る涙がまた一粒、ふわりと浮かぶ。
乳母貝がそれをぱくりと食べた。
「……ありがとう」
ルーグルは小さく呟いた。
──そして、せいらのもとへ戻る決意を固めた。
●14
ルーグルは、せいらの手をそっと離した。
──ラピスラズリの外れ。
光が弱く、泡の音だけが静かに響く場所。
足元で、小さな白い真珠貝がぱくぱくと口を動かした。
「ここなら……落ち着けると思って」
ルーグルの声に、せいらは小さく頷く。
ルーグルは足元の貝を愛おしそうに見つめた。幼い頃から彼の悲しみに寄り添った、あの「乳母貝」だ。寄り添うように、水中でふわふわと漂っている。
真珠貝が足元でぱくぱくと口を動かし、寄り添うように漂っていた。
ルーグルはしばらく黙っていたが、
やがて、迷うように口を開いた。
「……ねぇ、君は……どこから来たの?」
息を呑む。
声が出ない。
尾びれが震える。
胸の奥がきゅっと痛み、視界がにじむ。
光る粒がひとつ、ふわりと浮かんだ。
真珠貝がその涙をぱくりと食べた。
ルーグルはその様子を見て、胸が痛むように眉を下げる。
「ごめん。無理に聞こうとしてるわけじゃないんだ。
ただ……知りたいだけで」
優しい声。
でも、その奥に“確かめたい”という揺れがあった。
「君は……僕たちの海の生まれじゃないよね。
尾びれの動きも、この海の流れに慣れていない。
それに……君の目は、ずっと“上”を見てる」
ルーグルの言葉に胸がぎゅっとなる。
(……帰りたい)
でも、言えない。
──セバスクンとの会話が頭をよぎる。
『ルー様は……ずっとお一人なのです。
あのお方の一族は、古代遺跡の兵器が暴発しかけた時にその命を犠牲に世界を守った……。
そして僅かに生き残った者たちも、何者かに連れ去られ──』
『ルー様は外の海で助けた子のことも、ずっと気にかけておられた。
あの子が来られない場所だと分かっていても……
それでも、誰かを守りたいと願っておられるのです』
『……だから、お嬢さん。
どうかルー様を悲しませないであげてくださいませ』
胸に手を当てた。
帰りたい。
でも──ルーグルの孤独を思うと、言えない。
ルーグルはその仕草を見て、
“迷っている”と解釈した。
「……そっか。
君も、分からないんだね。
どうしてここに来たのか」
胸が小さく跳ねる。
図星だった。
ルーグルは少しだけ視線を落とす。
「……君がここにいてくれたら、嬉しい。
でも……君は、本当はここに来るはずじゃなかったのかもしれない」
息を呑む。
ルーグルは続けた。
「だから……無理にここにいろとは言わないよ。
でも、君がここに来た意味は……きっとあると思うんだ。
僕も、それを知りたい」
(……意味)
胸が熱くなる。
帰りたい気持ちと、知りたい気持ちが同時に揺れる。
ルーグルはそっと手を伸ばした。
「……そうだ。君の“呼び方”、まだ知らなかったね」
ルーグルは胸元にそっと触れ、迷うように微笑んだ。
「……せいら。そう呼んでいい?
外の海でね……君に、よく似た子を見かけたんだ。
その子が、そう呼ばれていて」
せいらは驚く。
(……似てる子? わたしのこと……知ってたの?)
名前が違うわけじゃない。
ただ、“どうしてその名前を知ってるのか”を聞きたい。
でも声が出ない。
ルーグルは、せいらの反応を“肯定”だと受け取ったように微笑んだ。
「ありがとう。せいら」
真珠貝がぱくぱくと口を動かす。
せいらの涙を食べて、そっと寄り添う。
ルーグルはその光景を見て、
胸の奥がきゅっと締めつけられるようだった。
「──大丈夫」
せいらは目を見開く。
ルーグルは優しく笑った。
「君が……ここに来た意味。
一緒に探そうか」
──ズレは、静かに深まっていく。
でも、二人の距離は確かに近づいていた。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
それでは大体また来週!
うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/
◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)
お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
80は遊興編のおまけ微エロな内容を更に公開しました。
次は85です。