【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

135 / 135
【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


134碧淵編 19・20:深海を揺らす二つの術式と、海原を爆走する不穏な網籠

●19

 

 ──深海が揺れていた。

 沈没船の奥で、私は静かに目を細める。

 

 外の水流が荒れ、呪力の波がぶつかり合う音が水を震わせていた。

 

「呪霊操術……? しかもこの規模──。

 外の術師にしては、ずいぶんと“濃い”わね」

 

 沈没船の影に身を潜めながら現場へ向かうと、ルーグルと敵対する見慣れない人魚がいた。

 

「──あれが、呪霊操術使い……?」

 

 異形の呪霊たちを引き連れた、全身が黒い鮫の尾を持つ人魚。深海の掟から完全に逸脱したその禍々しさに、私は息を呑む。

 彼の放つ黒い影が、容赦なく深海の渦を切り裂いていく。

 

 対するルーグルは、死霊操術で呼び出した“深海の亡霊”をまとわせ、

 水圧を操りながら応じていた。

 

「ふふ……ルーグルも負けていない。

 深海の民の術式を、外の術師が簡単に上回れると思わないけれど」

 

 私は腕を組み、まるで観戦するように二人の動きを追った。

 

 ──だが、黒い人魚の動きが変わる。

 

 戦闘の最中にもかかわらず、呪霊を一体だけ呼び戻した。

 その呪霊は、小さな防水ポーチを抱えている。

 

 猫の顔が描かれたポーチ。

 紐は途中で切れ、急いで結び直された跡があった。

 

「あ、ラスト。あれオレが噛みちぎったやつだ」

「──GPS入りだったようなので……回収していたようですね」

 

 ウツボたちが私に寄り添っていた。

 

 どうやらあの黒い人魚も声を出せないらしい。

 

 呪霊はせいらのもとへ泳ぎ、そっとポーチを差し出した。

 

 せいらは驚きながらも受け取り、胸に抱きしめる。

 その瞬間、黒い人魚の呪力がわずかに揺れた。

 言葉はなくても、二人の間に確かなものが通ったようだ。

 

 ──しかし。

 

 せいらが二人の間に割って入ろうとした瞬間、

 水流が激しく巻き込み、せいらの身体を翻弄する。

 

 人魚化した身体は軽く、渦に巻かれやすい。

 

 せいらはぐるぐると回転しながら流され、

 止めようとしたはずが、逆に戦闘の渦へ吸い込まれていく。

 

「おやおや、あの様子ではどこか流されてしまいそうですね」

「あはは、あっぶなーい」

 

 ウツボたちがケラケラと笑っていた。

 

──『…………』

 

 誰かが耳元で囁くように──。

 

──『見ているだけでいいの?』

 

 ぞくりと全身が震えた。

 

 それは『魔女の囁き』──自身の想像や想定をこえさせようとする誰かの導き。

 

 古からの言い伝え。

 

「仕方がないねぇ」

 

 私が動こうとした、そのとき。

 

 上から巨大な影が落ちてきた。

 金属のきしむ音。

 深海用の捕獲網が広がり、沈没船の周囲を覆う。

 

「……あれは捕獲網!? 一体、誰が……」

 

 渦に巻かれたせいらは、意識を手放しかけていた。

 そのまま網の中へ吸い込まれていく。

 

「それは──貴重なサンプル!!」

 

 私は反射的にせいらへ飛び込んだ。

 腕を伸ばし、せいらの身体を抱き寄せる。

 

 だが次の瞬間、網が私たちを包み込んだ。

 

 水流が乱れ、視界が白く泡立つ。

 

「お前たちはルーグルに──!」

 

 私は網の向こうの影に叫びかけたが、声は水に溶けて消えた。

 

 そのまま、せいらと私は海上へと引き上げられていく──。

 

──

 

 ──海上。

 

「兄ちゃん兄ちゃん!!」

 

 弟の呪詛師が網を引き上げながら叫んだ。

 

「人魚が獲れたよ!! 本物だよ!!」

 

「はぁ!? マジか!! うおっ……二匹もいる!!」

 

 兄の呪詛師が網の中を覗き込み、目を輝かせる。

 

「やったなぁ!! ここ禁漁海域だって聞いてたし、絶対なんかあると思ってたんだ!!」

 

「兄ちゃん兄ちゃん、なんか下でタコみたいなのが暴れてるけどどうする?」

 

 弟が海中を指差す。

 

 海の下では、ウツボの護衛たちが網に噛みつこうと暴れていた。

 しかし兄弟はそれが“ウツボ”であることすら分かっていない。

 

「タコなんか知るか! とりあえずこの人魚二匹を水槽にぶち込め! 金山になるぞ!」

 

「兄ちゃん兄ちゃん! 後ろからなんかヤバそうなクルーザーと漁船が追ってくる!!」

 

「漁協か!? 監視船か!? 構うな、アクセル全開だァ!!」

 

 兄弟は相手が術師だとは露ほども思っていない。

 

「と、とりあえず水槽にぶち込め!! ずらかるぞ!!」

 

 エンジンが唸り、舟が急加速する。

 

 網の中で、せいらとラストの身体が揺れた。

 

 深海から追い上げる黒い影──

 傑とルーグルが、同時に海面へ向かっていた。

 

 

●20

 

 ──海上。

 

「……動いたな」

 

 海人が舵を握り直し、低く呟いた。

 先ほどまで停泊していた小舟が、急に方向を変えて逃げ始めたのだ。

 

「兄ちゃん兄ちゃん!! なんか追ってくる!!」

「うるせぇ!! こっちは“改造済み”だ!! 漁船なんかに負けるか!!」

 

 小舟のエンジンが、常識外れの唸りを上げる。

 違法改造された推進機が海面を削り、白い尾を引いた。

 

「なんやあれ!? 速っ……!?」

 直哉が目を見開く。

 

「海人さん、あれ……普通の舟じゃないですよね」

「違法改造だ。あんなの、漁協に見つかったら一発で免許取り消しだぞ……!」

 

「つまり、速いってこと?」

「めちゃくちゃ速いぞ!!」

 

 海人の舟も加速するが、距離は縮まらない。

 

「チッ……逃げ切る気か知らんが、舐めやがって……!」

 

 直哉が苛立ちを露わにスロットルを押し込む。

 

「七海ぃぃ! あの船に間違いなくせいらの反応あるんやろうな!?」

「微弱ですが……間違いなくあの舟にあります!」

 

「んー……あっちは逃げ切る気満々だねぇ」

 

 甲板で悟の六眼が細く光る。

 

 

「兄ちゃん兄ちゃん!! なんか光ってる!! あれ何!?」

「知らねぇ!! 見んな!! 気にすんな!!」

 

 兄弟は、追ってくる舟が誰なのか理解していない。

 

 

「……あいつら、本当に何も分かってないな」

 海人が苦笑する。

 

「分からなくていいよ。止めよう」

 

 悟が甲板の前方へ歩き、海面を見据える。

 

「七海、直哉。俺があの舟の進路を塞ぐ。

 海人はそのまま真っ直ぐ。

 そよかは陸から位置誘導を」

 

「了解」

「了解です」

(通信機越しに)『わかったわ!』

 

 海上組が一斉に動き出す。

 

 波が高く跳ね、海風が唸り、

 逃げる舟と追う舟が一直線に並ぶ。

 

 しかし──

 

「──速い。追いつけません」

 建人が歯を食いしばる。

 

 

「兄ちゃん兄ちゃん!! 逃げ切れる!! このまま行ける!!」

「当たり前だ!! この舟にどんだけ金かけたと思ってんだよ!!」

 

 そのとき──

 

「……深海から、何か来ます!」

 

 建人の声と同時に、海面が盛り上がった。

 

 黒い影が二つ、海を割って飛び出す。

 

 傑とルーグルだった。

 

「兄ちゃん兄ちゃん!! なんか後ろから化け物みたいなの来てる!!」

「うるせぇ!! 見んなって言ってんだろ!!」

 

 兄弟が振り返るより早く──

 傑の呪霊が海面を滑るように迫り、網の端を掴もうと伸びる。

 

 同時に、ルーグルの死霊が海中から巻き上がり、

 舟の下を通って推進機を絡め取ろうとした。

 

「兄ちゃん兄ちゃん!! なんか黒い手ぇ伸びてきた!!」

「知らねぇ!! 避けろ!!」

 

 兄弟の舟が急旋回する。

 呪霊の腕が海面を裂き、死霊の影が水柱を上げる。

 

 だが──

 

「──ギリギリで避けましたか……」

 建人が息を呑む。

 

「兄ちゃん兄ちゃん!! もう無理だって!!」

「バカ野郎!! こうなったら──」

 

 兄が舵を蹴り上げ、床板を外す。

 

「とっておきだぁぁぁぁ!!」

 

 小舟の後部がガコンと音を立てて開き、

 内部から違法改造の追加推進機がせり上がる。

 

「兄ちゃん兄ちゃん! それ、使っちゃダメなやつ!!」

「黙れ!! 今使わずいつ使うんだ!!」

 

 次の瞬間──

 

 爆音。

 

 小舟が海面を跳ね飛ばし、

 まるで弾丸のように加速した。

 

「なんや!? 更に加速しおった……!?」

 直哉が目を見開く。

 

「海人さん、速度が……!」

「バカみたいに上がってる!! あれ、船体もつんか!?」

 

 傑の呪霊が追いすがるが、

 舟は水を切り裂き、白い軌跡だけを残して遠ざかる。

 

「……チッ、あの速度じゃ下手に俺の術式をぶち込んだら、せいらたちの乗る船体ごと消し飛びかねない」

 

 悟が珍しく苦々しく指先を下げる。

 瞬間移動で距離を詰めることもできるが、あの違法推進機の急加速と急旋回では、接近した瞬間の風圧だけで船体が粉々に砕け、せいらたちを巻き込む──五条悟ゆえに踏み込めない状況だった。

 

 ルーグルの死霊が海中から伸びるが、

 推進力が強すぎて追いつけない。

 

「兄ちゃん兄ちゃん!! オレたち逃げ切った!?」

「当たり前だ!! これがオレたちの“とっておき”だ!!」

 

 兄弟の舟は、海上組も深海組も振り切り、

 水平線の向こうへ消えていった。

 

 残されたのは──

 海上に浮かぶ泡と、深海から上がった二つの影だけだった。

 




ここまでご覧いただきありがとうございました。
それでは大体また来週!

うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/

◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)

お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
85は七海建人2026誕生日に挿絵付き追加公開しました。
次は90です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。 (作者:まだら模様)(原作:僕のヒーローアカデミア)

※【全100話・完結済み】+【掲示板形式、強敵との戦闘などの番外編33話】予約投稿済み▼本編、および後日談編、映画編、八年後の未来を含めた全100話、そして番外編の33話分全ての設計図を引き終えました。▼現在、最終話まで予約投稿を設定済みです。▼37話〜44話は、56話〜59話は日常と積み重ねのパートになります。▼この期間の出来事や関係性は、後半の展開・戦闘…


総合評価:2682/評価:7.65/完結:133話/更新日時:2026年06月28日(日) 19:00 小説情報

黒閃が死ぬほど撃てる天与呪縛の女の子(作者:リアオットー)(原作:呪術廻戦)

ドブカス更生物語、幼馴染の女の子が黒閃めっちゃ打てる子だったらというIF、面白そうだから書けるだけ書いてみよう。


総合評価:2783/評価:7.85/連載:52話/更新日時:2026年06月16日(火) 16:38 小説情報

【完結】残火の太刀を持ってるタイプの禪院扇(作者:照喜名 是空)(原作:呪術廻戦)

なお、刀の中の人は山じいだし、山じいに本気指導されて頭禪院のままでいられるほど扇は意思が強くないとする


総合評価:6739/評価:7.16/完結:30話/更新日時:2026年03月26日(木) 10:00 小説情報

とある転生者、2周目(作者:kotedan50)(原作:呪術廻戦)

かつて、伊地知潔高の双子の妹に生まれた転生者。▼兄のなり代わり人生を歩んでいたが、渋谷事変を発生させないため、最終的に夏油につき高専を裏切った。▼夏油の死体と共に焼身自殺をして生涯を終え、北に向かった彼女。▼新しい自分はどんな自分だろうか。▼目の前に金髪翠眼の子供がいて、睨みつけてくるんですが。▼嘘だろ、なんでよ。今度は七海さんの妹???▼しかも、七海さんが…


総合評価:1141/評価:8.08/連載:35話/更新日時:2026年06月20日(土) 21:13 小説情報

戦国転生 4歳から始める十種影法術(作者:匿名希望)(原作:呪術廻戦)

R08.06.19完結しました。▼今後日談的なエピソードを更新していきます、3エピソード予定でしたが、長くなりそうです。▼つまみ食いのような感じなので期待せずお待ちください。▼慶長に行われる御前試合から逃げ切りたい転生者くんの話です。▼10〜14歳のどこかの影久のイメージです。AIくんありがとう・・・。▼【挿絵表示】▼下の画像はネタバレあるので気をつけてくだ…


総合評価:4074/評価:8.2/完結:65話/更新日時:2026年07月09日(木) 12:28 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>