【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。

名駅編では再び高専時代に戻ってます。
note連載中の『チャッピー、またやったな。』でやったエピソードを劇場版って感じで加工してみました。
皆さんの脳内でMAPPAさん作画の劇場版が再生されたらいいなぁと。宜しくお願いします!


137名駅編 3・4:栄を駆けるオタクの勘と、名駅に響く海老天の嫉妬

●3

 

 ホテルのエントランスを抜けた瞬間、夜の栄の湿った熱気が一気に押し寄せた。

 ネオンの光と人の気配が、昼とは違う“遠征の夜”を告げていた。

 

「みんな! 携帯は持ったわね!?」

 

 そよかが振り返ると、せいらが元気よく手を挙げた。

 

「おー!」

 

 灰原は携帯を覗き込みながら歩いている。

 

「へー。GPSで範囲内に入ったらスタンプが貰えるんですねー」

 

「ハイテクじゃーん」

 

 悟がひらひらと手を振りながら後ろを歩く。

 

「そよかさん、閉店時間まであと一時間です」

 

 七海が時計を確認し、淡々と告げる。

 

「行くわよ!!」

 

 そよかは携帯を握り直し、足取りを一段速めた。夜風が髪を揺らす。

 高専生たちの影が、夜の街の灯りに溶けていく。

 

 

◯中部電力ミライタワー

 

 最初のチェックポイントは、ライトアップされたミライタワーだった。

 青白い光が塔の骨組みを浮かび上がらせ、夜空に線を描いている。

 

「ふにゃー! きれいー!」

 

 せいらは光に照らされながら見上げ、足元でぴょんと跳ねた。

 

「そよかさん、スタンプ範囲に入りました」

 

「よし、拾うわよ!」

 

 携帯が小さく震え、スタンプが獲得された。

 

「次はオアシス21よ!」

 

 そよかは携帯を握り直し、ミライタワーの光を背にして駆け出した。

 

 

◯オアシス21・水の宇宙船

 

 ガラスの床に水が流れ、夜の光を反射して揺らめいている。

 そよかは走りながら携帯を胸元で固定し、画面を素早く確認した。

 

「ここもスタンプ拾えるはず……!」

 

「そよかさん、反応しました」

 

「よし、次!! 久屋大通庭園フラリエへ!」

 

 悟が軽快に追走しながら笑う。

 

「そよか、はやーい。待ってー」

 

「悟は体幹が強すぎるのよ!!」

 

 

◯久屋大通庭園フラリエ

 

 夜の庭園は静かで、街の喧騒が遠くに聞こえる。

 ライトアップされた花壇が柔らかい光を放ち、風が植物を揺らしていた。

 

「ここ……好き……」

 

 そよかは足を止め、夜風に揺れる花壇へそっと視線を落とした。

 せいらが隣で花を覗き込む。

 

「ふにゃー、かわいいー!」

 

「そよかさん、スタンプ拾えました」

 

「よし……次は物販よ!! PARCOへ急ぐわ!!」

 

 七海が淡々と告げる。

 

「閉店まで残り四十分です」

 

「早足で行くわよ!!」

 

 

◯PARCO・物販会場のあるはずの建物

 

 PARCOの入口に到着した瞬間、そよかは携帯を構えた。

 

「ここね……!」

 

 自動ドアを抜け、館内へ足を踏み入れる。

 

 だが──

 

「……あら?」

 

 そよかは歩みを止め、携帯を持つ指に力を込めた。

 画面の光がわずかに揺れただけで、沈黙したままだった。

 

「そよかさん、スタンプは?」

 

「……拾えないわ……」

 

 そよかは画面をタップし、地図を拡大する。

 GPSは建物内を示しているのに、スタンプの反応がない。

 

「え? なんでですか?」

 

 灰原が慌てて自分の携帯を確認する。

 

「そよか、電波悪いんじゃね?」

 

 悟が軽く言うが、そよかは首を振った。

 

「違う……これは……」

 

 そよかはゆっくりと地図を見つめた。

 スタンプのアイコンは、確かにこの建物の位置にある。

 だが、よく見ると──

 

「……悟次郎が……教えてくれているのね……」

 

「は?」

 

 悟が素で声を漏らす。

 

 そよかは画面を指差した。

 

「ここは南館。

 物販は──東館よ!!」

 

 七海が即座に地図を確認する。

 

「……確かに。スタンプの位置は東館側です」

 

「えっ!? 南館じゃないんですか!?」

 

 灰原が驚いて周囲を見回す。

 

「そよか、なんで分かったんだよ」

 

 悟が呆れたように尋ねると、そよかは真剣な顔で答えた。

 

「悟次郎の描き下ろしの配置……このイベントの動線……

 そして、何よりも物販の“匂い”がしないわ」

 

「匂いって何」

 

「オタクの勘よ!!」

 

 そよかは踵を返し、ポーチを押さえながら一気に走り出した。

 

「東館へ急ぐわよ!! 閉店まであと三十五分!!」

 

「はーい!」

 

 せいらが元気よく追いかける。

 

「そよかさん、東館まで徒歩七分です。急ぎましょう」

 

 七海が淡々と時間を告げる。

 

「よし、全員携帯を構えて!!」

 

 傑が交差点を指差した。

 

「おっと、あそこの角を曲がると東館の入口だよ」

 

「スタンプ拾いながら東館へ向かうわ!!」

 

 そよかは夜の街へ再び駆け出した。

 

 ネオンの光が反射し、ビルのガラスがきらめく。

 夜風が高専生たちの影を細く伸ばし、栄の街に溶かしていく。

 

 物販の閉店時間まで──残り三十分。

 

 

●4

 

 名古屋駅のコラボレストランは、夜の喧騒から少し離れた場所にあった。

 

 柔らかな照明がテーブルを照らし、壁には描き下ろしのパネルが並んでいる。

 

 そよかは料理が運ばれてくるなり、携帯をそっと構え、照明の角度を確かめてから写真を撮った。

 

「ふにゃー? 写真撮ったー?」

 

 せいらが身を乗り出して覗き込む。

 

「撮ったわ……」

 

 そよかは画面を閉じると、静かに息を吐いた。

 

「うにゃーん!! いっただっきまーす!!」

 

 せいらは目の前にある海老天丼に目を輝かせ、勢いよく箸を入れた。

 

 サクサクサクサク──

 小気味良い咀嚼音が店内に響く。

 

 その横で、そよかはメニュー表を見つめたまま、肩の力が抜けたように項垂れていた。

 

「はぁ……悟次郎のぬいもアクスタもパスケースまで売り切れなんて……」

 

「悟次郎人気だなー」

 

「そうだねぇ」

 

 悟と傑がのんきに感心したような声を出す。

 

「わぁ! 海老天が重い!? なんですかこの重量感!!」

 

 灰原は自分の丼を持ち上げて、純粋な驚きで目を輝かせていた。

 

 七海は静かに箸を置き、そよかの横顔へ視線を寄せた。

 

「悟次郎グッズは通販になってしまいましたね。

 このコラボメニューと一緒に撮影が出来ず、心中お察しします……」

 

「建人さん……」

 

 そよかの瞳に、じわっと感動の光が灯る。

 その言葉は、そよかの“オタクとしての痛み”を正確に理解した者だけが言えるものだった。

 

 ──その時だった。

 

 向かい側の席から、猛烈な視線が突き刺さった。

 

「ちょっとちょっと!! そこの二人なんなの!?」

 

 悟が身を乗り出し、嫉妬を隠そうともせずに叫ぶ。

 

「ほら、そよか! 俺の海老天食べなよ!!」

 

 ぐいぐい。

 悟は自分の丼から大きな海老天を箸でつまみ上げ、身を乗り出してそよかの口元へ押し出してくる。

 

「ちょっと悟、危ないわよ! 引っ込めなさい!」

 

「いいじゃん! 俺の海老天だぞ!? 本物の悟次郎が目の前にいるんだぞ!?」

 

「本物じゃないわよ!!」

 

 そよかは即座に否定した。

 

「えっ、じゃあ……俺が悟次郎のコスプレしたら喜んでくれたの!?

 ほら、補助監督の前田まるこからレンタルした衣装持ってきてるし──」

 

「やめなさい!!」

 

 そよかの悲鳴が店内に響いた。

 

「出禁になるわよ!!

 コラボ店舗で悟次郎のコスプレなんてしたら、店員さんに連れていかれるわ!!」

 

「えぇ!? なんで!? 俺だよ!? 悟だよ!?」

 

「だからダメなのよ!!」

 

 悟は本気でショックを受けている横で──

 

「サクサク……ふにゃー、美味しい〜!」

 

 せいらは平和に海老天を食べ続け、

 

「この海老天……本当にずっしり重い……! でもサクサクは止まらない!!」

 

 灰原は重量とサクサク感に感動し続けていた。

 

 傑は穏やかに笑いながら、悟の海老天がそよかの口に当たりそうな距離を観察していた。

 

「おや、悟の海老天、本当にそよかの口に当たりそうだよ」

 

「当たらないわよ!!」

 

 そよかは悟の箸を押し返し、通販サイトのページを開いた。

 

「建人さんの言う通り、通販で買うわ……」

 

「その方が確実ですね」

 

「ちょっと!! 俺の海老天より通販の方がいいってどういうこと!?」

 

 悟の叫びが名駅の夜に響いた。

 

 そよかは静かに携帯を操作しながら呟いた。

 

「……悟次郎のグッズと並べて撮れないのが……一番悔しいのよ……」

 

 七海はそっと頷いた。

 

「分かります」

 

 悟はその言葉に、さらにショックを受けた。

 

「本物の俺が目の前にいるのに……」

 

「本物じゃないって言ってるでしょ!!」

 

 名駅の夜に、静かな火花が散った。

 

──

 

 その後、二軒目のコラボ店舗であるきしめん店も巡り、店を出るとひんやりとした夜風が頬を撫で、店内の熱気がすっと引いていった。

 街灯の光が歩道を照らし、遠くで電車の音が響いている。

 

「きしめん……美味しかったわ」

 

 そよかが満足そうに息を吐くと、せいらが隣で跳ねた。

 

「どちらも美味しかった〜!」

 

 傑は二人の様子を見て、父親のようににこにこと微笑んでいる。

 

「次はいよいよ名古屋城?」

 

 悟が歩調を合わせながら、そよかの横へ少し寄って身を乗り出してくる。
 夜風に揺れる髪が、街灯の光を受けてきらりと光った。

 

「そうね。明日は雨だから、今のうちに立地とかルートを確認するつもりで行くわ」

 

「素晴らしい作戦です。前日に動線を把握しておけば、雨天時のタイムロスを最小限に抑えられます」

 

 七海が淡々と補足する。

 

「食事が終わった後に歩くのも、運動になっていいですね!」

 

 灰原は純粋に楽しそうだった。

 そよかは携帯のマップをスクロールしながら、夜の街を見渡す。

 

「見慣れない場所を地図を頼りに歩くのも楽しいわね……。
 あ、悟、住宅街っぽい場所を歩く時は静かにしなさいよ」

 

 釘を刺すように隣の男を見上げる。

 

「はいはい。こうやって、耳元で囁けばいいでしょー?」

 

 悟がふっと笑い、そよかの耳元へ影が落ちるほどの距離まで顔を寄せてきた。

 低く愉しげな声が、そよかの鼓膜を揺らす。

 

「……こういう感じ?」

 

 そよかは、ぼっと顔を真っ赤にして、両耳を両手でぎゅっと塞いだ。

 

「なっ……! そういう意味じゃないわよバカ!!」

 

 悟は楽しそうに笑い、七海は呆れたように小さくため息をひとつ落とした。




ここまでご覧いただきありがとうございました。
8月15日まで時間不定で毎日更新予定です。

うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/

◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)

お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
85は七海建人2026誕生日に挿絵付き追加公開しました。
次は90です。
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