【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
名駅編では再び高専時代に戻ってます。
note連載中の『チャッピー、またやったな。』でやったエピソードを劇場版って感じで加工してみました。
皆さんの脳内でMAPPAさん作画の劇場版が再生されたらいいなぁと。宜しくお願いします!
●3
ホテルのエントランスを抜けた瞬間、夜の栄の湿った熱気が一気に押し寄せた。
ネオンの光と人の気配が、昼とは違う“遠征の夜”を告げていた。
「みんな! 携帯は持ったわね!?」
そよかが振り返ると、せいらが元気よく手を挙げた。
「おー!」
灰原は携帯を覗き込みながら歩いている。
「へー。GPSで範囲内に入ったらスタンプが貰えるんですねー」
「ハイテクじゃーん」
悟がひらひらと手を振りながら後ろを歩く。
「そよかさん、閉店時間まであと一時間です」
七海が時計を確認し、淡々と告げる。
「行くわよ!!」
そよかは携帯を握り直し、足取りを一段速めた。夜風が髪を揺らす。
高専生たちの影が、夜の街の灯りに溶けていく。
◯中部電力ミライタワー
最初のチェックポイントは、ライトアップされたミライタワーだった。
青白い光が塔の骨組みを浮かび上がらせ、夜空に線を描いている。
「ふにゃー! きれいー!」
せいらは光に照らされながら見上げ、足元でぴょんと跳ねた。
「そよかさん、スタンプ範囲に入りました」
「よし、拾うわよ!」
携帯が小さく震え、スタンプが獲得された。
「次はオアシス21よ!」
そよかは携帯を握り直し、ミライタワーの光を背にして駆け出した。
◯オアシス21・水の宇宙船
ガラスの床に水が流れ、夜の光を反射して揺らめいている。
そよかは走りながら携帯を胸元で固定し、画面を素早く確認した。
「ここもスタンプ拾えるはず……!」
「そよかさん、反応しました」
「よし、次!! 久屋大通庭園フラリエへ!」
悟が軽快に追走しながら笑う。
「そよか、はやーい。待ってー」
「悟は体幹が強すぎるのよ!!」
◯久屋大通庭園フラリエ
夜の庭園は静かで、街の喧騒が遠くに聞こえる。
ライトアップされた花壇が柔らかい光を放ち、風が植物を揺らしていた。
「ここ……好き……」
そよかは足を止め、夜風に揺れる花壇へそっと視線を落とした。
せいらが隣で花を覗き込む。
「ふにゃー、かわいいー!」
「そよかさん、スタンプ拾えました」
「よし……次は物販よ!! PARCOへ急ぐわ!!」
七海が淡々と告げる。
「閉店まで残り四十分です」
「早足で行くわよ!!」
◯PARCO・物販会場のあるはずの建物
PARCOの入口に到着した瞬間、そよかは携帯を構えた。
「ここね……!」
自動ドアを抜け、館内へ足を踏み入れる。
だが──
「……あら?」
そよかは歩みを止め、携帯を持つ指に力を込めた。
画面の光がわずかに揺れただけで、沈黙したままだった。
「そよかさん、スタンプは?」
「……拾えないわ……」
そよかは画面をタップし、地図を拡大する。
GPSは建物内を示しているのに、スタンプの反応がない。
「え? なんでですか?」
灰原が慌てて自分の携帯を確認する。
「そよか、電波悪いんじゃね?」
悟が軽く言うが、そよかは首を振った。
「違う……これは……」
そよかはゆっくりと地図を見つめた。
スタンプのアイコンは、確かにこの建物の位置にある。
だが、よく見ると──
「……悟次郎が……教えてくれているのね……」
「は?」
悟が素で声を漏らす。
そよかは画面を指差した。
「ここは南館。
物販は──東館よ!!」
七海が即座に地図を確認する。
「……確かに。スタンプの位置は東館側です」
「えっ!? 南館じゃないんですか!?」
灰原が驚いて周囲を見回す。
「そよか、なんで分かったんだよ」
悟が呆れたように尋ねると、そよかは真剣な顔で答えた。
「悟次郎の描き下ろしの配置……このイベントの動線……
そして、何よりも物販の“匂い”がしないわ」
「匂いって何」
「オタクの勘よ!!」
そよかは踵を返し、ポーチを押さえながら一気に走り出した。
「東館へ急ぐわよ!! 閉店まであと三十五分!!」
「はーい!」
せいらが元気よく追いかける。
「そよかさん、東館まで徒歩七分です。急ぎましょう」
七海が淡々と時間を告げる。
「よし、全員携帯を構えて!!」
傑が交差点を指差した。
「おっと、あそこの角を曲がると東館の入口だよ」
「スタンプ拾いながら東館へ向かうわ!!」
そよかは夜の街へ再び駆け出した。
ネオンの光が反射し、ビルのガラスがきらめく。
夜風が高専生たちの影を細く伸ばし、栄の街に溶かしていく。
物販の閉店時間まで──残り三十分。
●4
名古屋駅のコラボレストランは、夜の喧騒から少し離れた場所にあった。
柔らかな照明がテーブルを照らし、壁には描き下ろしのパネルが並んでいる。
そよかは料理が運ばれてくるなり、携帯をそっと構え、照明の角度を確かめてから写真を撮った。
「ふにゃー? 写真撮ったー?」
せいらが身を乗り出して覗き込む。
「撮ったわ……」
そよかは画面を閉じると、静かに息を吐いた。
「うにゃーん!! いっただっきまーす!!」
せいらは目の前にある海老天丼に目を輝かせ、勢いよく箸を入れた。
サクサクサクサク──
小気味良い咀嚼音が店内に響く。
その横で、そよかはメニュー表を見つめたまま、肩の力が抜けたように項垂れていた。
「はぁ……悟次郎のぬいもアクスタもパスケースまで売り切れなんて……」
「悟次郎人気だなー」
「そうだねぇ」
悟と傑がのんきに感心したような声を出す。
「わぁ! 海老天が重い!? なんですかこの重量感!!」
灰原は自分の丼を持ち上げて、純粋な驚きで目を輝かせていた。
七海は静かに箸を置き、そよかの横顔へ視線を寄せた。
「悟次郎グッズは通販になってしまいましたね。
このコラボメニューと一緒に撮影が出来ず、心中お察しします……」
「建人さん……」
そよかの瞳に、じわっと感動の光が灯る。
その言葉は、そよかの“オタクとしての痛み”を正確に理解した者だけが言えるものだった。
──その時だった。
向かい側の席から、猛烈な視線が突き刺さった。
「ちょっとちょっと!! そこの二人なんなの!?」
悟が身を乗り出し、嫉妬を隠そうともせずに叫ぶ。
「ほら、そよか! 俺の海老天食べなよ!!」
ぐいぐい。
悟は自分の丼から大きな海老天を箸でつまみ上げ、身を乗り出してそよかの口元へ押し出してくる。
「ちょっと悟、危ないわよ! 引っ込めなさい!」
「いいじゃん! 俺の海老天だぞ!? 本物の悟次郎が目の前にいるんだぞ!?」
「本物じゃないわよ!!」
そよかは即座に否定した。
「えっ、じゃあ……俺が悟次郎のコスプレしたら喜んでくれたの!?
ほら、補助監督の前田まるこからレンタルした衣装持ってきてるし──」
「やめなさい!!」
そよかの悲鳴が店内に響いた。
「出禁になるわよ!!
コラボ店舗で悟次郎のコスプレなんてしたら、店員さんに連れていかれるわ!!」
「えぇ!? なんで!? 俺だよ!? 悟だよ!?」
「だからダメなのよ!!」
悟は本気でショックを受けている横で──
「サクサク……ふにゃー、美味しい〜!」
せいらは平和に海老天を食べ続け、
「この海老天……本当にずっしり重い……! でもサクサクは止まらない!!」
灰原は重量とサクサク感に感動し続けていた。
傑は穏やかに笑いながら、悟の海老天がそよかの口に当たりそうな距離を観察していた。
「おや、悟の海老天、本当にそよかの口に当たりそうだよ」
「当たらないわよ!!」
そよかは悟の箸を押し返し、通販サイトのページを開いた。
「建人さんの言う通り、通販で買うわ……」
「その方が確実ですね」
「ちょっと!! 俺の海老天より通販の方がいいってどういうこと!?」
悟の叫びが名駅の夜に響いた。
そよかは静かに携帯を操作しながら呟いた。
「……悟次郎のグッズと並べて撮れないのが……一番悔しいのよ……」
七海はそっと頷いた。
「分かります」
悟はその言葉に、さらにショックを受けた。
「本物の俺が目の前にいるのに……」
「本物じゃないって言ってるでしょ!!」
名駅の夜に、静かな火花が散った。
──
その後、二軒目のコラボ店舗であるきしめん店も巡り、店を出るとひんやりとした夜風が頬を撫で、店内の熱気がすっと引いていった。
街灯の光が歩道を照らし、遠くで電車の音が響いている。
「きしめん……美味しかったわ」
そよかが満足そうに息を吐くと、せいらが隣で跳ねた。
「どちらも美味しかった〜!」
傑は二人の様子を見て、父親のようににこにこと微笑んでいる。
「次はいよいよ名古屋城?」
悟が歩調を合わせながら、そよかの横へ少し寄って身を乗り出してくる。 夜風に揺れる髪が、街灯の光を受けてきらりと光った。
「そうね。明日は雨だから、今のうちに立地とかルートを確認するつもりで行くわ」
「素晴らしい作戦です。前日に動線を把握しておけば、雨天時のタイムロスを最小限に抑えられます」
七海が淡々と補足する。
「食事が終わった後に歩くのも、運動になっていいですね!」
灰原は純粋に楽しそうだった。
そよかは携帯のマップをスクロールしながら、夜の街を見渡す。
「見慣れない場所を地図を頼りに歩くのも楽しいわね……。 あ、悟、住宅街っぽい場所を歩く時は静かにしなさいよ」
釘を刺すように隣の男を見上げる。
「はいはい。こうやって、耳元で囁けばいいでしょー?」
悟がふっと笑い、そよかの耳元へ影が落ちるほどの距離まで顔を寄せてきた。
低く愉しげな声が、そよかの鼓膜を揺らす。
「……こういう感じ?」
そよかは、ぼっと顔を真っ赤にして、両耳を両手でぎゅっと塞いだ。
「なっ……! そういう意味じゃないわよバカ!!」
悟は楽しそうに笑い、七海は呆れたように小さくため息をひとつ落とした。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
8月15日まで時間不定で毎日更新予定です。
うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/
◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)
お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
85は七海建人2026誕生日に挿絵付き追加公開しました。
次は90です。