【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
名駅編では再び高専時代に戻ってます。
note連載中の『チャッピー、またやったな。』でやったエピソードを劇場版って感じで加工してみました。
皆さんの脳内でMAPPAさん作画の劇場版が再生されたらいいなぁと。宜しくお願いします!
●7
──むくり。
午前5時。
アラームより早く、そよかの意識はすっと浮上し、静かな気配に耳を澄ませた。
隣のベッドでは、せいらが「すぴー……うにゃ……ざらめえびせん……」と幸せそうに寝息を立てている。
(……よし、朝風呂にでも行きましょう)
そよかはそっと布団を抜け出し、タオルを手に取って静かな廊下へ出た。
◯朝風呂後の廊下
40分後。
湯上がりの肌にホテルの浴衣をまとい、そよかはまだ薄暗い廊下を静かに歩いていた。
まだ誰も起きていない静かな早朝。
窓の外では、しとしとと雨が降り始めている。
その時──
「おっはよー。そよか〜」
眠そうに髪を少し乱した高身長の男が歩いてきて、そよかと視線がぶつかった。
悟だった。
「早起きじゃん。朝風呂行ってたんだろ? 俺も行ってくるわ」
寝起きのふにゃっとした笑顔。
ほんのり湯気と石鹸の香りを纏ったそよかの浴衣姿を、悟の視線が一瞬だけ上から下へと舐めるように往復した。
昨夜の騒動が嘘みたいに、どこか穏やかで甘い声だった。
「空いてて良かったわよ。男湯は知らないけど」
「男湯は一人二人はいるかもなぁ」
悟は壁に背を預け、興味深げに尋ねた。
「それで、今日はこれからどうするの?」
窓の外からは、静かな雨音が聞こえている。
そよかはスマホを開きながら、淀みなく答えた。
「12時まで部屋が使えるから、荷物を置いたまま名古屋城近くのコラボアイスを食べようかと。
でも外は雨ね……。フロントで傘が借りられるか確認して、無理ならコンビニで調達するわ」
悟の目が、ニカッと悪戯っぽく輝いた。
「ねえ、他のみんなまだ爆睡中でしょ?」
「まあ……そうでしょうね」
「傑や灰原もわざわざ起こすのも悪いしさ──
これ、俺とそよかの二人だけでサクッと行ってきちゃわない?」
「え? 二人だけで?」
「そ。朝イチならお店も空いてるだろうし」
悟はすっと顔を近づけ、そよかだけに聞こえる低めの声で囁いた。
「──って、いってもそうね……出発は9時すぎぐらいが妥当かしら」
「いいじゃん9時集合。俺、朝風呂終わらせて服着替えてくるから、ロビーで待ち合わせ!
異論は認めませーん! 朝イチデートだぞー!」
そう言うが早いか、悟は嬉しさを隠しきれない足取りで、宣言通り嵐のように大浴場の暖簾の向こうへ消えていった。
残されたそよかは、誰もいなくなった廊下でポツンと呆れたようにため息をつきながらも──
胸の奥で、トクンと小さく跳ねる熱い鼓動を感じていた。
(もう……本当に強引なんだから……)
静かな雨音だけが響く廊下で、そよかは浴衣の袖をぎゅっと整え、赤くなりそうな頬と鼓動をそっと押し隠すように自室へ戻っていった。
●8
そよかが荷物整理をして着替えを済ませ、静かなロビーへ降りてきたのは午前9時過ぎ。
まだ他のメンバーは誰も起きていない。
雨の名古屋の朝は、しっとりとした静けさに包まれていた。
ロビーのソファには──
すでに私服へ着替えた悟が、長い足をゆったり組んでソファに腰掛けていた。
「時間通りじゃーん」
悟はふにゃっとした笑顔で手を振る。
「別にそんなに意識してなかったけど……。
悟は良いの? 朝食のかわりがアイスで」
そよかが呆れたように身を少し屈めて覗き込むと、悟は嬉しそうに立ち上がった。
「うん? まぁたまにはいいんじゃない」
やけに機嫌がいい。
そよかはその理由を考えるのをやめて、傘のことを思い出した。
「行くわよ。まずはフロントで傘借りるの」
「はいはい」
◯ホテルのレンタル傘・第一関門
そよかがフロントへ向かい、スタッフに声をかけると──
大きめのレンタル傘が2本、手渡された。
悟はそれを見て、あからさまに不満そうに唇を尖らせる。
「一本でも良かったのに」
「なんでよ」
そよかが当然のように2本の傘を渡そうとすると、悟はニヤニヤしながら言った。
「俺は無下限で雨弾くぐらい楽に出来るし」
「そういう無駄なことに呪力を使わないの!
開店は9時半! あと15分後! 行くわよ!」
そよかは傘の柄を悟の胸元へぐいっと押し付け、そのまま自動ドアの向こうへ足早に踏み出した。
「えー、冷たいなー」
ぶつぶつ言いながらも──
悟は手渡された傘をパッと開き、そよかが自分の傘を持っているにもかかわらず、彼女の頭上へそっと傘を寄せて歩調を合わせた。
その顔には、隠しきれない笑みが浮かんでいた。
◯名古屋城コラボジェラート店・開店5分前
雨の名古屋城近くにあるコラボジェラート店へ、二人は滑り込んだ。
すでに数組の先客がいる。
「まずは9時半開店のジェラートね。
……男女ペアと、あそこに女性が一人。
雨なのに来てるってことは、みんなコラボ目的ね。
販売はテイクアウトのみ? よね?」
そよかはスマホの告知画面と店構えを交互に見ながら呟く。
シャッターは上がっているが、注文口の案内が少し分かりづらい。
「あ、前のカップル客が聞きに行ってくれたな。
朝一だからスタッフの数が足りてないみたいだ」
悟がそよかの背後から長い身を乗り出し、その肩にあごを乗せる勢いで状況を教えてくれる。ふわりと漂う湯上がり特有の石鹸の匂いに、そよかの心臓が跳ねた。
「と、とりあえず並んで待ちましょう……」
雨の冷気でジェラートが溶ける心配はないが、タイムリミットはある。
少し焦りながら列に並び、ようやく自分たちの番が回ってきた。
「いくつ買うの? 俺いるし、いっそ全4種買っちゃう?」
「等身のやつは昨日のえびざらめせんべいで出たから、ここで悟次郎が出なくてもいいわ。
ふたつにしましょう」
そよかは冷静に2個を注文する。
無事にジェラートとランダム景品を受け取り、近くの建物の屋根の下へ避難した。
◯W悟次郎の奇跡
「写真撮ったー?」
「撮ったけど……まだランダム景品開けてない。……あ」
そよかの手が止まる。
「あ? ……おー! W悟次郎じゃん。
なにこれ、全一種?」
「違うわよ!」
袋から出てきたのは、まさかの 悟次郎×2枚。
少し離れた場所から、他の客の声が聞こえてきた。
「あ〜、悟次郎だと良かったけどなー」
どうやら外れたらしい。
「ランダムだから偏る時もあるのよね。
でも、逆にランダムじゃなかったら、この時期に来て悟次郎は手に入らなかったかもしれないわ」
そよかはしみじみと2枚の悟次郎を見つめ、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
前回の遠征の悔しさを思えば、この偏りはむしろ愛おしい。
「へー。でもさ、せめて選ばせてくれたらいいのにな。
お姉さん、その右から二番目のやつにしてーってさ」
悟がサングラスの隙間から箱を覗こうとする。
「六眼禁止よ!!」
そよかが即座に止める。
「……よし、並べて撮影っと。
さ、次のお店が開店する前に、このジェラート食べるわよ!」
「えー、減るもんじゃないのに」
悟はそう言いながら、「一口ちょうだい」とそよかの手元へ顔を寄せ、勝手にジェラートを一口すくって口へ運んだ。
「ん、うま。はい、そよかも俺の分一口あげる」
二人は雨の名古屋の冷たい甘さを急いで味わう。
その冷たさは、どこか甘く身体にしみわたり、雨の名古屋の空気と混ざり合って体をシャキッと引き締めていくようだった。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
8月15日まで時間不定で毎日更新予定です。
うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/
◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)
お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
90は碧淵編のおまけを追加しました。次は95です。