【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
名駅編では再び高専時代に戻ってます。
note連載中の『チャッピー、またやったな。』でやったエピソードを劇場版って感じで加工してみました。
皆さんの脳内でMAPPAさん作画の劇場版が再生されたらいいなぁと。宜しくお願いします!
●9
雨の名古屋城でジェラートを完食したそよかと悟は、屋根の下でひと息ついた。
冷たい甘さが、雨の名古屋の空気と混ざり合って体をシャキッと引き締める。
「食べ終わった? 次に行きましょう」
「へーい。……ゴミは?」
悟が空になったジェラートのカップを掲げる。
周囲を見渡すが、ゴミ箱になりそうなものはすべて使用不可になっていた。
「ゴミ箱になりそうなものは全部使用不可ね……販売カウンターも今は閉まってるし。
……持っていきましょう。私がまとめて持つわ」
「じゃあ次のやつは俺が買うよ」
気遣うように言う悟に、そよかはきっぱりと首を振った。
「いいのよ。付き合ってもらってるんだから私が買うわ!」
そよかは自分と悟の傘をそれぞれ開くと、雨の降る屋外へ足早に足を踏み出した。悟もまた、当然のようにそよかの隣へ寄り添うように傘を差し出して歩き出す。
◯10時前の悲劇
しかし──
「閉まってるわね……あ、そうか。まだ10時前だったわ」
「早すぎたわけね」
5時起床からの超スムーズな動線が災いし、まさかの二件目開店時間前フライング。
だがそよかは立ち止まらない。
「名古屋城駅で一日フリーパスを買いましょう!」
即座に踵を返し、地下へ続く階段を降りていく。
券売機の前に立つと、そよかは迷いなくボタンを押し、フリーパスをスマートに購入した。
◯トイレと“遠征民の知恵”
そよかは駅構内をきょろきょろと見渡し、動線を素早く頭の中で組み直した。
「どしたの?」
「トイレが改札の外にあるみたいだから行ってくる」
「さっきのゴミは? 持ってようか?」
「考えがあるの!」
そよかはジェラートの空きカップを持ったまま、トイレへと消えていった。
──数分後。
すっきりした顔で戻ってきたそよかは、手ぶらのままカバンをそっと持ち直し、悟の前に立った。
「ゴミ箱に捨ててきた感じ?」
「洗ってカバンに入れられるようにしたの」
「なるほどねー」
水気のない綺麗な状態にして、ビニール袋か何かに入れて仕舞ったのだろう。
その一切の無駄がない遠征ライフハックに、悟は深く感心した。
「そよかってさ……ほんと、遠征のプロだよな」
「当たり前よ。荷物は増やさない、ゴミは持ち帰る、動線は最短。
これが遠征民の基本よ」
胸を張って言い切るそよかの横顔を、悟は愛おしそうに見つめた。
「たくましいねぇ、うちのそよかは」
遠い雨音に紛れるようにふっと優しく笑うその声は、そよかの耳には届かないほど小さく落ちた。
●10
名古屋城駅の地下コンコースには、まだ朝の湿った空気が残っていた。
階段の上から差し込む薄い光が、雨の名古屋の気配を静かに知らせてくる。
「よし、10時になったわ。さっき閉まってたお店にリベンジよ!」
「へーい!」
そよかは先ほど購入した人数分のフリーパスが鞄の中にあることを確認して、階段を力強くのぼりはじめた。
湿った空気がふっと揺れ、地上の光が少しずつ視界を満たしていく。
悟はその後ろを軽快に追いながら、地上に出ると傘をそよかの頭上へ広げる。
「そよか、濡れるって」
「いいのよ。急ぐんだから!」
「はいはい、強気〜」
悟は笑いながら歩調を合わせる。
雨粒を弾く傘の音が、二人の距離を静かに近づけていく。
地下鉄の名古屋城駅の広場を横切ろうとした時。
さっきまで容赦なく叩きつけていた雨が、
ふっと、まるで街全体が息をついたように弱まった。
空気が少しだけ明るくなり、
駅前のカラフルなオブジェが、雨粒をまとったまま淡い光を跳ね返し、宝石みたいにきらりと光る。
「……あれ? 雨、弱くなった?」
そよかが立ち止まり、オブジェを見つめた。
見上げるほど巨大ではないけれど、
雨上がりの光を受けて、まるで舞台のスポットライトのように輝いていた。
「そよか、今のうちに撮ろうよ! ほら、ちょうどいい明るさ!」
悟が嬉しそうにスマホを構える。
そよかも「じゃあ一枚だけね」とオブジェの前へ歩み寄った。
二人は並んで立ち、自然にピースを作る。
悟はそよかの肩にそっと手を添え、
そよかは雨上がりの光に目を細めながら、少し照れた笑顔を向けた。
──次の瞬間だった。
空が、低く唸るように暗くなる。
ほどなくして、
雨がまるでスイッチを入れたように、
再び激しく叩きつけてきた。
「わっ、戻ってきた!」
「そよか、傘──!」
悟が慌てて傘を開こうとしたが、
雨は傘を広げるより速く、
横殴りの勢いで二人に迫る。
そよかが思わず目を閉じたその瞬間──
悟の周囲に、ふわりと透明な膜が広がり、雨粒が触れる前にそよかを包み込んだ。
膜の内側だけが、まるで別世界のように静かだった。
無下限呪術。
雨粒が二人の周囲だけ、
まるで見えない壁に弾かれるように軌道を変え、
触れることなく地面へ落ちていく。
激しい雨の中で、
二人の立つ場所だけが静かな円を描いていた。
「悟……あなた、呪力は無駄遣いするなって言ったでしょ」
「はいはい。でも、写真の時くらい濡れないようにしてあげるのは当然でしょ?」
悟は得意げにニッと笑う。
そよかは呆れたようにため息をつきながらも、その不器用で真っ直ぐな優しさに、ほんの少しだけ頬を緩めた。
「……ありがとう。じゃあ急いで行くわよ!」
「はいはい〜」
雨足がさらに強くなる中、
二人は再び駆け出した。
雨を切る足音が、名古屋城駅前の広場に軽やかに響いた。
オブジェの前に残ったのは、ほんの数秒だけ雨が止んだ奇跡のような空気。
そしてスマホの中に収まったのは、雨上がりの一瞬を閉じ込めた“名駅編の宝物の一枚”だった。
◯ホテル組の朝
その頃、ホテルでは──
「……悟たちは、まだ戻らないね」
身支度を整えた傑がスマホを見ながら眉を上げた。
「せいら、私たちは先に朝食の小倉トーストでも食べに行こうか」
「うにゃあ……お城のアイス、もう食べたのかなあ……? 私も食べたかったー」
寝起きのせいらは髪をくしゃくしゃに揺らしながら、空になったそよかのベッドをぽすぽす叩いていた。傑はそんな姿を愛おしそうに見つめ、困ったように笑う。
「ほら、髪をすいてあげるよ。こっちにおいで」
「うにゃー」
傑の言葉に反応して、むくりと起き上がったせいらは手招きする傑の前にぽてぽてと移動して着席した。
「後でも行く予定があるわけだし、私たちはその時に食べればいいよ」
ホテルの窓には、名古屋の雨が静かに流れ落ちていた。
悟とそよかがどこを走っているのか──
その気配だけが、遠くの街のざわめきとして微かに伝わってくるようだった。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
8月15日まで時間不定で毎日更新予定です。
うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/
◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)
お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
90は碧淵編のおまけを追加しました。次は95です。