【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。

名駅編では再び高専時代に戻ってます。
note連載中の『チャッピー、またやったな。』でやったエピソードを劇場版って感じで加工してみました。
皆さんの脳内でMAPPAさん作画の劇場版が再生されたらいいなぁと。宜しくお願いします!


142名駅編 13・14:朝食を冷ます理性の怒りと、上野天満宮へ導くフリーきっぷ

●13

 

 朝。

 

 わたしが目を覚ました時、隣のベッドにはすでにそよかの姿はなかった。

 

「ふにゃっ!? そよかぁ!?」

 

 飛び起きて、そよかの寝ていたベッドの上掛けをひっぺがし、シーツにぴとりと頬をつける。

 

「ほんのりあったかい……でも、そよかいない……しゅん」

 

 コンコンコンと部屋のドアがノックされた。

 

 ──すぐるだった。

 

「そよかなら、朝一の限定コラボを狙って十五分前の電撃戦に出かけたよ」

 

 すぐるの言葉に、わたしは「ふにゃ〜」と納得しながら、くしゃくしゃになった髪の毛を解かして整えてもらった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「すぐる〜。ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 わたしはすぐるとななみんやゆうと一緒にホテルの朝食ビュッフェへ向かった。

 

 テーブルの上には、手羽先、ひつまぶし、味噌カツ──

 名古屋名物が所狭しと並んでいる。

 

「わー。食べ物いっぱい! どれから食べよう〜」

 

「迷っちゃいますね!」

 

 わたしは大皿を前にして目をきらきらさせながら、

 手羽先をひょい、味噌カツをぱく、ひつまぶしをもぐもぐ──

 まるで幸せを吸い込むみたいに、次々と名古屋名物を平らげていく。

 

「ふにゃ〜! 名古屋って天国〜!」

 

 ゆうもわたしの勢いに負けじと、

 綺麗に盛り付けた皿を何度も往復しながら、

「これも美味しい!」「あ、これも最高です!」と嬉しそうに声を弾ませていた。

 

 ──

 

「ふにゃー。朝から手羽先、ひつまぶし、味噌カツ……たくさん食べてお腹ぽんぽん〜」

 

 せいらは満足げに小さなお腹をさすった。

 横では、皿を綺麗に空にした灰原が気持ちのいい笑顔で応じる。

 

「いやー。美味しかったですね!

 あれ? 七海、あんかけスパあんまり口に合いませんでした?

 合理的にうまいってさっき言ってましたけど……」

 

 七海は、冷めたコーヒーをじっと睨みつけていた。

 その指先はわずかに震え、カップの縁を静かに叩いている。

 

「…………」

 

 返事はない。

 ただ、低い沈黙だけが落ちる。

 

 その周囲には、冗談抜きで“物理的な呪力の残穢”が漂いそうなほどの重苦しい空気が立ち込めていた。

 

 味の問題では断じてない。

 

 朝起きたら──

 あの軽薄極まりない男、五条悟が。

 そよかを連れ出して、雨の中を二人きりでアイスを食べに行っていた。

 

 その事実が、七海の合理的な精神をすこぶる不機嫌にさせていた。

 

(まさか今頃外で、あの男が「セブンス!? 浮気!!」と大騒ぎし、挙げ句の果てに限界を迎えたそよかに「あー」とシャチホコ焼きを食べさせて頭をぽんぽんしているとは知る由もないが──)

 

 もしその光景を今の七海が知ろうものなら、間違いなく黒閃を繰り出す勢いだった。

 

「さて、そろそろ部屋に戻って荷物をまとめようか」

 

 食後のコーヒーを飲み終えた傑が、苦笑いを噛み殺しながらスマートに立ち上がる。

 

 チェックアウトの12時まではまだ時間がある。

 だが──

 

 あの白髪の問題児がそよかを連れて「ただいまー!」と嵐のように戻ってきた瞬間、

 ホテルのロビーが七海の怒りで戦場に変わる前に、

 身支度だけは済ませておくのが賢明だった。

 

 

◯過ごした部屋の記憶

 

(カシャシャシャシャシャ!)

 

 チェックアウト締切の直前。

 静まり返ったコラボルームの中に、そよかのカメラのシャッター音が忙しなく響いていた。

 

「入室した時にもっと写真をちゃんと撮るべきだったわね!!」

 

 そよかは壁の装飾、ベッドのスロー、立ち絵パネル──入室時には気づかなかった細かな意匠まで、取りこぼした思い出を拾い集めるように必死でカメラを向けていく。

 

「連戦の疲れで完全に失念していたわ……!」と悔しそうに唇を噛むそよか。

 

 その横で荷物を抱えたせいらが、のんびりと微笑んだ。

 

「わたしたちが過ごした部屋の雰囲気を撮るのも思い出になるし〜」

 

「……そうね。確かに、これはこれで良いわ」

 

 そよかは少し肩の力を抜き、最後の一枚を撮影した。

 

「朝食ビュッフェはどうだったの?」

 

「美味しかったよー? 名古屋名物がたくさんあったの!

 後で移動しながら写真見せるね〜」

 

「そうね。聞かせてほしいわ」

 

 そよかは、五条に「あー」と食べさせてもらったシャチホコ焼きのことを胸の奥にそっと仕舞い、楽しそうに頷いた。

 

「じゃーそろそろ行くー?」

 

「行きましょう。最後に忘れ物がないか確認するわ」

 

 そよかは部屋をぐるりと見渡し、机の上、ベッドの下、クローゼット──

 遠征民らしい抜かりないチェックを終えると、ふとせいらのポケットに視線を向けた。

 

「……あ、カードキーは宿泊特典だからフロントに返却しちゃだめよ?」

 

「そうなのー!? 危なかったー」

 

 せいらは目を丸くし、慌ててポケットからカードキーを取り出した。

 そこには、等身イラストそのままのスタイリッシュな悟次郎と傑之の姿が鮮やかにデザインされている。

 

「そよか、持ってて〜」

 

 せいらはそれをそっとそよかの手のひらへ乗せた。

 そよかは大事そうに指先でなぞり、胸元のポーチへしまう。

 

 その背後──

 エレベーターホールへ向かう途中の廊下に、微かな気配が漂ってきた。

 

 一足先にロビーで待っているはずの七海建人が、五条悟への怒りの残穢を静かに滾らせている気配。

 そして、その隣で「まあまあ」となだめている傑の苦笑い。

 ふたりの気配は、まるで嵐の前触れのように下の階から階上へと静かに伝わってきていた。

 

「……行きましょうか」

 

 そよかはカードキーを握りしめ、せいらと並んでエレベーターに乗り込んだ。

 

 1階へ降りていく表示灯を見つめながら──

 

 ここから始まる波乱の予感を孕み、雨上がりの名古屋の空気が静かに揺れていた。

 

 

●14

 

 チェックアウトの時刻が迫り、コラボルームの扉が静かに閉じられた。

 名古屋の雨上がりの光がロビーに薄く差し込み、過ごした時間の余韻をそっと照らしていた。

 

 そよかとせいらがエレベーターで1階ロビーへ降りると、すでに他のメンバーが荷物を揃えて待っている。

 

「予定通りだね。そよか、せいらも」

 

 傑が穏やかに微笑んだ。

 その横で、悟が能天気に手を振る。

 

「そよかー! 早く行こうぜー!」

 

 その瞬間──

 

 七海の視線が、悟の方へ静かに向けられた。

 刺すような鋭さではない。

 しかし“理性の圧”のような静けさが空気をひやりとさせ、無下限の術式を貫通して悟が「ぶぇっくしゅ!」と小さくくしゃみをする。

 

「……なんか今、すっげーゾクッとしたんだけど」

 

「気のせいよ。行くわよ、悟」

 

 そよかは淡々と悟の袖を引き、空気を軽く流した。  七海はその様子を見て、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。

 

「じゃあ、上野天満宮へ向かおうか」

 

 傑が声をかけると、全員が自然に歩き出した。

 

 

◯地下鉄への移動

 

 地下鉄駅のホームへ向かう途中、雨に濡れた石畳が薄く光を跳ね返し、名古屋の朝の静けさを映していた。

 せいらがそよかの腕にぴとっと寄り添う。

 

「そよか〜、アイス美味しかった?」

 

「美味しかったわ。……ちょっと量が多かったけど」

 

「ふにゃ〜、いいなあ〜」

 

 せいらが羨ましそうに頬を膨らませると、悟が横から口を挟んだ。

 

「そよか、途中でギブしてさ。俺が残り食べたんだよね〜」

 

「悟、余計なこと言わないの」

 

 そよかが軽く睨む。

 悟は「へへ」と笑い、七海はそのやり取りを見て、わずかに眉を寄せた。

 

 だが、怒りというよりは──

“そよかが困っていないか”を確認するような、静かな保護者の色だった。

 

「七海、どうかした?」

 

 灰原がそっと声をかける。

 

「……いえ。問題ありません」

 

 七海は短く答え、歩調をそよかたちに合わせた。

 

 

◯地下鉄車内

 

 電車が滑り込んできて、全員が乗り込む。

 車内は午前の観光客でほどよく賑わっていた。

 濡れた傘のしずくが床に点々と落ち、雨の名古屋の気配を静かに運んでいる。

 

 そよかは吊り広告を見上げながら、携帯でルートを確認する。

 

「上野天満宮はこの駅で降りて、少し歩くわ。

 フリーきっぷがあるから、移動も乗り換えも楽ね」

 

「そよか、今日も頼りにしてるよ〜」

 

 悟が隣で軽く肩をぶつけてくる。

 そよかは「はいはい」と受け流した。

 

 七海はその様子を見て、深く息を吸った。

 

「五条さん」

 

「ん?」

 

「……そよかさんを振り回して困らせないようにしてください」

 

「え、俺そんな困らせた? むしろシャチホコ焼き助けてあげたんだけど」

 

「昨日と今朝の行動を総合的に分析すると、十分に困らせています」

 

「えぇぇぇぇ……ひどっ」

 

 悟が大袈裟にしゅんと肩を落とす。

 そよかは苦笑しながら七海の方へ向き直った。

 

「建人さん、もういいのよ。大丈夫だから」

 

 その一言で、七海の表情がほんの少しだけ柔らかくなった。

 

「……なら、良いのですが」

 

 七海は視線をそよかから外し、窓の外の雨が降る街を見つめた。

 その雨は、これから向かう上野天満宮への道を静かに洗い流しているようだった。




ここまでの名駅編に一枚ずつ挿し絵を置いてきました。
良ければ一緒にお楽しみください。

今回もご覧いただきありがとうございました。
8月15日まで時間不定で毎日更新予定です。

うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/

◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)

お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
90は碧淵編のおまけを追加しました。次は95です。
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