【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。

名駅編では再び高専時代に戻ってます。
note連載中の『チャッピー、またやったな。』でやったエピソードを劇場版って感じで加工してみました。
皆さんの脳内でMAPPAさん作画の劇場版が再生されたらいいなぁと。宜しくお願いします!


146名駅編 21(完結)太っ腹な奢りの宴と、科目準備室に宿るうそ鳥の温もり

●21

 

 名古屋城の天守閣。

 最上階の扉を押し開けた瞬間、雨上がりの澄んだ空気がふわりと流れ込み、高い場所特有の静けさと、名古屋の街を一望する広がりが一行を包み込んだ。

 

「ふにゃー!! 天守閣ー!!」

 

 せいらがバーン! と両手を広げて展望窓へ駆け寄る。

 眼下には緑豊かな城跡、その向こうには高層ビル群がきらきらと輝いていた。

 

「良い眺めね」

 

 そよかは心地よい風に髪を揺らしながら、静かに目を細める。

 

 その隣へ──悟がすかさずピトッと寄り添った。

 

 反対側では、七海が無言で立ち、そよかとの距離を絶妙に保ちながら、悟の動きを冷静に牽制する“静の壁”となっていた。

 

 金箔ソフトの「あむ」を巡る静かな火花は、天守閣の最上階でもまだ消えていない。

 

「風が気持ちいいですねー!

 頑張って階段を登ってきた甲斐がありました!!」

 

 灰原が嬉しそうに深呼吸する。

 

「せいら、手を繋いでおこう。

 ここで走ったら危ないからね」

 

「走らないよ〜。……昔のお殿様も、こんな景色を見てたのかなー。

 昔ってどんなだったんだろう?」

 

 せいらは手すりに顎を乗せ、ふんわりと遠い目をした。

 

 その瞬間──悟がガタッと肩を震わせた。

 

「おい傑! せいらがそんなこと言い始めると、また時空の狭間に迷い込むぞ!! 歴史改変のフラグが立った!!」

 

 過去の“SF事件”を思い出して本気で焦る悟。

 そよかが呆れた視線を送る横で、傑は少しも慌てず、せいらの小さな手を優しく握り直した。

 

「せいら、それはまた下に降りてから話そうか?

 どんなだったか気になるよね。──でも、きっと昔の名古屋城にも、

 せいらみたいに可愛くて素敵な『お姫様』がいたかもしれないよ?」

 

「ふにゃー! わたしみたいなお姫様〜?」

 

 せいらが嬉しそうに「にぱー」と笑顔を咲かせる。

 傑の甘くてスマートな言葉は、せいらのロマンチックな妄想を完璧に満足させる。

 

 悟の警戒をさらりと受け流し、

 七海の冷静な空気を乱すことなく、

 そよかの心も穏やかに保つ──

 

 傑の保護者としての手腕は、まさに天守閣の風のように柔らかく、そして強かった。

 

 

◯おひつを囲む笑顔と、オレンジジュースの誓い

 

 名古屋城観光を終えた一行は、名駅周辺の格式高い老舗の暖簾をくぐった。

 香ばしいタレの香りが満ちる個室に案内されると、灰原が歓声を上げる。

 

 案内された個室は、落ち着いた木の香りが漂う和モダンの空間だった。

 人数分の席がきちんと整えられ、中央には大きなお櫃と薬味の器が美しく並んでいる。

 旅の終わりをゆっくり味わうための、上質な静けさが満ちていた。

 

「それでは名古屋旅行最後の夕食は、五条さんの奢りで高級ひつまぶしとなりました!

 ご馳走様です!」

 

 創業百年を超える老舗の最高級ひつまぶしを人数分。

 五条がカードを切りながら「好きなだけ食え〜」と宣言したのだ。

 

「ふにゃっ!? さとるの奢り!? さとる腹ふといね!!」

 

「せいら、それじゃあただの言い間違いを通り越して悪口だよ」

 

 「太っ腹」と言いたかったせいらの大天然発言に、傑が苦笑しながらツッコミを入れる。

 個室全体がドッと温かい笑いに包まれる中、灰原が嬉しそうにグラスを持ち上げた。

 

「それでは五条さんから一言、乾杯の音頭をー!」

 

「なんで打ち上げ飲み会風なんですか……我々はまだ高校生ですよ」

 

 七海が呆れたようにため息を漏らすが、その手にはしっかり冷たいお茶のグラスが握られている。

 

「ねぇねぇ、すぐるー。なんでひつまぶしっていうの?

 鰻重とは何が違うの?」

 

「ひつまぶしはね、細かく刻んだ鰻をお櫃のご飯に“まぶす”ことからその名がついたんだよ。

 最初はそのまま、二杯目は薬味を添えて、三杯目はお出汁をかけて茶漬けにする──

 3通りの食べ方があるのも特徴だね」

 

 せいらの素朴な疑問に、傑が流れるようなうんちくで答える。

 その温かいやり取りを見守りながら、そよかが隣の男の袖を引いた。

 

「悟、ほら乾杯ですって。みんな待ってるわ」

 

「えー? しょーがないな〜」

 

 五条は照れ隠しのように肩をすくめ、オレンジジュースのグラスを手に立ち上がった。

 サングラスを少し指で下げ、一同の顔を一人ずつ見渡す。

 

「えー、休み返上で働かされることはあるし、上層部はクソですが」

 

「こら。お行儀の悪い言葉を使わない」

 

「いいじゃん本当のことだし(笑)。

 ……でもさ、そよかは可愛いし、みんなとの旅行は本当に楽しかったです。

 硝子用のお土産もちゃんと買ったし……

 今度は全員で、また旅行に行けたらいいなと」

 

 普段は傲慢で我が道を行く最強の男が、少しだけ声を落として語った本音。

 悟の不器用で真っ直ぐな本音が胸にそっと触れ、そよかは驚いたように目を丸くしてから、ゆっくりと愛おしむような笑みを浮かべた。

 傑も七海も、その言葉の余韻を噛み締めるように静かに優しく微笑む。

 

「──それじゃ、かんぱーい!!」

 

「かんぱーい!!」

 

 (カチン!)とグラスの触れ合う音が個室に響く。

 

 そよかから手渡された三本入りの鉛筆をカバンに仕舞い、

 せいらのお守りの大吉を喜び、

 七海のエスコートに火花を散らし、

 金箔ソフトの「あむ」に心臓を跳ねさせた──

 

 濃厚すぎる名古屋の二日間。

 

 香ばしい鰻を頬張るみんなの笑顔の真ん中で、

 五条はそよかの隣に座りながら、世界で一番幸せそうな顔で笑っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

◯新幹線口へ

 

「じゃあ、そろそろ新幹線に向かいましょうか」

 

 傑が声をかけると、一行はゆっくりと歩き出した。

 名駅のコンコースには、旅の終わりを告げるアナウンスが響いている。

 

「そよか」

 

 悟が少しだけ声を落として呼びかけた。

 

「……また旅行しような」

 

 そよかは驚いたように目を瞬かせ、それから静かに頷いた。

 

「ええ。みんなでね」

 

 その言葉に、悟は世界で一番嬉しそうに笑った。

 

 名駅の夜風が、遠征の余韻をそっと包み込んでいた。

 

 

●エピローグ

 

 新幹線のなめらかな振動が、遠征の疲労をゆっくりとほどいていく。

 車内に満ちる静かな空調音が、旅の終わりをそっと告げていた。

 東京へ向かう車内、それぞれ2人掛けのシートに分かれた一行は、それぞれ旅の余韻に浸っていた。

 

 灰原とせいらはすでに夢の中。

 傑は静かに読書し、七海は車内販売のコーヒーを飲みながら窓の外を眺めている。

 

 そよかは窓側の席で、スマホと戦利品──スタンプラリー特典、アクキー、そして三本入りの鉛筆──を愛おしそうに見つめていた。

 

「慌ただしかったけれど、みんなで名古屋に行けて良かったわ」

 

 ふと漏れたその言葉に、隣の席をばっちりキープしていた五条が、サングラスを外して優しい目を向けた。

 

「良かったな」

 

 いつになく全肯定で、低く心地よい本物の五条悟の声。

 そよかは少しだけ胸をときめかせつつ、カバンからイヤホンを取り出した。

 

「帰りも悟次郎の音声を聞いて脳内に焼き付けるから」

 

「ちょっと待ってそよか!? 本物の俺が隣にいるのに、なんでスマホの中の悟次郎聞くの!? リアルの俺と喋ろうよ!」

 

「静かにして悟。今から音声が再生されるんだから。……あ、この低音、本当に最高ね……」

 

「声優さんのパワーに俺の顔面が負けてる!? 納得いかねぇ!!」

 

「本物は喋りすぎ。悟次郎は必要なことしか言わないから良いの」

 

「理不尽!!」

 

 そよかはイヤホンを耳に当て、幸せそうにそっと目を閉じた。

 五条は悔しがりながらも、愛おしそうにそよかの横顔を見つめ、彼女が眠りやすいようにそっと自分の肩を寄せて体勢を整えた。

 

 眠くなったら寄りかかっていいよ──

 そんな無言の申し出のまま、そよかはイヤホンをつけたまま静かに眠りに落ちた。

 

 五条は一歩も動かず、そよかの頭が揺れないようにそっと支え続けた。

 

 車窓の外を流れる都会の光が、そよかの持つ悟次郎のホログラムカードをきらきらと照らす。

 

 名駅編の幕は、新幹線のなめらかな加速とともに、温かい幸福感に包まれて静かに下りていった。

 

 

◯科目準備室

 

 夜の高専は静かだった。

 そよかとせいらは荷物を片付けると、名古屋で引いた「うそみくじ」を手に、科目準備室へ向かった。

 

 扉を開けると、柔らかな灯りが上質な木製の家具を照らす、静かな準備室が広がっていた。

 紅茶の香りがほのかに漂い、まるで貴族の応接室のような落ち着いた空気が満ちている。

 

 丸くなっていた白猫が、閉じていた目を開いて背筋を伸ばした。

 

「戻ったのね。おかえりなさい」

 

「おっ師匠! ただいまー!」

 

「はい。ただいま戻りました……これ、せいらが引いたおみくじです」

 

 せいらが嬉しそうに前へ出る。

 

「お師匠様っ! 上野天満宮でね、うそ鳥さんのくじを引いたの! ブスってお尻にささってる感じだった!」

 

「……言い方」

 

 そよかが小声でツッコミを入れると、白猫はふっと目を細めて微笑んだ。

 淡い光がひとひら舞うように揺れ、まるで花が開くかのように、その姿は静かに人へと移ろっていく。

 着物の袖をさらりと揺らし、両手で木彫りのうそ鳥を優しく受け取った。

 

「ありがとう。可愛いらしいわね。

 ──ここに置いておきましょう」

 

 うそ鳥をそっとデスクの端に置く。

 脳みそぷかぷか水槽──羂索が静かに浮かぶ、そのすぐそばに。

 

 小さな影が、机の灯りに柔らかく揺れる。

 

 部屋の主が、静かに言った。

 

「これからも続く虚構の物語を、しっかり見守ってもらわないとね」

 

 水槽のインジケーターが、かすかに明滅した。

 まるで羂索が、うそ鳥の到着を歓迎しているかのように。

 

 そよかはその光景を見つめながら、胸の奥に温かいものが広がるのを感じた。

 

 名古屋での二日間が、確かにここへ帰ってきたのだと。

 

 

◯ラストカット

 

 科目準備室の灯りが静かに机を照らす。

 

 その上には──

 

 木彫りのうそ鳥が、ちょこんと佇んでいた。

 名古屋の空気をまとったまま、机の灯りに小さな影を落とし、

 まるで旅の続きを静かに見守るように。

 

 こうして、『名駅編』は静かに幕を閉じた。

 

旅する物語 五条悟との邂逅 名駅編 終幕




ここまでご覧いただきありがとうございました。

うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/

◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)

お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
90は碧淵編のおまけを追加しました。次は95です。
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