【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗った後に続く物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
note連載中の『チャッピー、またやったな。』でやったエピソードを加工してみました。
皆さんの脳内でMAPPAさん作画で再生されたらいいな。宜しくお願いします!
●プロローグ
呪術学園高等部一年教室・放課後。
黒板には「文化祭 出し物案」とだけ書かれ、
まだ誰もその下に何も書き足していなかった。
夏の終わりの湿った風が窓から流れ込み、
教室の空気をゆっくりと揺らしている。
「っと、いうわけで──今日この時間は、今年の文化祭の出し物を考えるぞ!」
虎杖悠仁が机をバンッと叩いて立ち上がった。
その勢いは、文化祭というより体育祭の応援団長。
「何よそれ。聞いてないんだけど?」
釘崎野薔薇は腕を組み、そっぽを向きながらも、
“文化祭”という単語にほんの少しだけ興味を滲ませていた。
「一般クラスと合同も可って言われたけど……どうするかな」
伏黒恵は黒板を見つめ、
“面倒ごとを最小限にする案”を探している顔だった。
その横で、吉野順平が控えめに手を挙げる。
「えっと……文化祭って、普通に楽しそうだよね。
僕、こういうのまともに参加したことないから……ちょっとワクワクする」
「おう! 順平も一緒にやるんだぞ!」
虎杖が嬉しそうにぽんぽんと肩を叩く。
「う、うん……できる範囲で頑張るよ」
順平は照れたように微笑んだ。
虎杖がやる気満々でチョークを握り、黒板に案を書こうとした──その瞬間。
(ガラッ)
教室の扉が勢いよく開いた。
「盛り上がってるかーい?」
軽いノックもなく扉が開き、五条悟がひょいっと片手を上げて入ってきた。
夕方の光を背にして立つその姿は、いつもの軽薄さより少しだけ“先生らしさ”が混じって見える。
もう片手には、黒いケース──見慣れない厚みのある映像資料らしきものをぶら下げていた。
「五条先生……」
一年ズが一斉に振り返る。
虎杖は期待で目を丸くし、釘崎は興味なさそうにしながらも視線だけはケースに吸い寄せられ、伏黒は“面倒の予兆”を察して眉を寄せた。
「ほらこれ。参考になるかなーと思って持ってきたよ。
僕たちが作った映像作品。体育館で上映したやつね。
当日は喫茶店もやって、まあ色々と忙しかったなぁ」
悟はケースを軽く揺らしながら、黒板の前まで歩いてくる。
その仕草は、まるで宝物を見せびらかす子どものようだった。
「えっ!? 五条先生が出てるの!?
それは……ちょっと見たいかも!」
虎杖の声が弾む。
その勢いに、釘崎の肩がわずかに跳ねた。
「別に興味ないけど?
どうせ先生が調子に乗ってるだけでしょ」
そう言いながらも、釘崎の視線はケースに釘付けだった。
悟はニヤッと笑い、ケースをひょいっと掲げて見せる。
「いやいや〜、僕だけじゃないよ?
そよかやせいらも出てるよ?」
その瞬間、教室の空気が変わった。
「……は?
そよかさんとせいらが出てるなら──見るっきゃないじゃない!!」
「えっ!? そよかさんとせいらも出てるの!?
それは絶対見たい!!」
虎杖と釘崎が同時に前のめりになる。
伏黒はため息をつきながらも、すでに立ち上がっていた。
「ちょっと待て、お前らなんでせいらさんだけ呼び捨てなんだよ……
まあ、参考になるなら見ておくべきだな」
「……あの、僕も見ていい?
昔の映像作品って、すごく気になるし……」
順平が控えめに言うと、虎杖がニッと笑って腕を引っ張った。
「当たり前だろ順平!! 一緒に行くぞ!!」
「はいはいはい!! 今!! すぐに!! 視聴覚室行くわよ!! 悠仁!!」
「うおおおお!!」
「廊下は走るなって言われてるだろ……!」
悟はケースを回しながら、元気よく走っていく生徒たちの後ろをゆっくりと追いかけた。
「それじゃあ楽しい上映会、始めよっか〜?」
文化祭の準備は、“過去の映像作品の上映”という予想外の方向から幕を開ける。
五条悟だけでなく、そよかやせいら──当時のメンバーが出演している、どこか懐かしく温かいフィルム。
スクリーンに映し出される思い出の光が、新たな舞台『幻灯編』の開演を告げる合図となるのだった。
●1
視聴覚室の照明が落ち、スクリーンが白く光った。
虎杖悠仁は椅子に座るやいなや、隣の釘崎に身を乗り出す。
「なあ、ポップコーンとか欲しくない?
映画館みたいにさ!」
「悠仁のくせにセンスいいわね」
「炭酸だけでも買ってこようか?
コーラ飲みながら見ると絶対楽しいって!」
「……お前ら、上映前に騒ぎすぎだろ」
伏黒は呆れながらも、どこか楽しそうだった。
「えっと……僕も炭酸ほしい……弱めのやつ……」
順平が控えめに手を挙げる。
「じゃあ、順平はメロンソーダだな!」
「なんで即決なの……?」
そんな一年ズのやり取りを後方で聞きながら、
悟は黒いケースを胸の前で軽く抱え、静かに腰を下ろした。
賑やかな声が飛び交う視聴覚室の中で、悟だけがふっと遠い方へ視線を泳がせる。
スクリーンの白い光が彼の横顔を照らし、その明滅が──昔の記憶を呼び起こす合図のようだった。
『ねーねー!』
耳の奥で蘇る、せいらの楽しげな声。
それは、あの賑やかで眩しかった日々の残響だった。
◯五条悟の脳内回想
──夜のシェアハウス。
任務帰りの制服姿のまま、みんなが共有ラウンジに集まっていた。
テーブルにはテイクアウトのドーナツ。
テレビでは深夜のバラエティ番組が流れ、
その光がソファの背もたれを淡く照らしている。
せいらが急に顔を上げた。
「ねーねー!」
「んー?」
「文化祭って劇とかするじゃん?
みんなだったら何役やりたい?」
数秒の沈黙。
「俺は当然王子!!」
悟が即答した。
早い。迷いゼロ。
「そこ即決なんだ」
「顔がいいからね」
「否定しづらいの腹立つな」
傑が紅茶を飲みながらため息をつく。
そよかは雑誌をめくりながら、静かに言った。
「私は魔女がいい」
「なんでだよ!? 俺のプリンセスだろ!?」
「絶対“森の奥に住んでる美人”系だよね〜」
せいらが笑う。
「毒林檎は置いてないわよ?」
「いや絶対置いてそうな顔してる!!」
「偏見すぎるだろ」
硝子の冷静かつ即座なツッコミが入る。
悟はクッションを抱えながら納得いかない。
「俺は当然王子。そこは決定事項!!」
「自分で言うんだ」
「だって主役だし」
「そこもセルフ認定なんだ」
灰原がちょっと笑う。
「すぐるは何役ー?」
「旅人とかかな」
「あー、わかります!」
「“重要そうなこと知ってるけど黙ってる人”感が!」
「それ褒めてる?」
「終盤で意味深なこと言って消えるタイプだよね」
硝子の補足が妙に具体的だった。
七海は静かに紅茶を置く。
「私は裏方で結構です」
「七海は大道具小道具会計係似合う〜」
「それじゃ雑用じゃないの!」
「劇より予算管理のほうが向いてそう」
「なんで文化祭で現実見なきゃいけないんですか」
疲れた顔で返す七海。
「でも、さとる王子はわかる!」
「ほら見ろ」
「でもトラブルメーカー系!」
「なんで!?」
「勝手に塔に突っ込んで怒られるタイプ!」
「それ王子じゃなくて問題児なのよ」
硝子が吹き出す。
そよかは悪戯っぽく目を細めた。
「私は魔女でいいわよ」
「だからなんで!?」
「王子様を翻弄する役のほうが楽しそうだもの」
「っ……」
悟が詰まる。
「気まぐれに助けたり、消えたりするの」
「やだ絶対好きになる……」
「もう好きでしょ」
硝子のツッコミが鋭利だった。
「じゃあ私は動物役!
森で暮らしてる喋る猫!」
「あ、似合う」
全員一致だった。
「えへへー♪」
嬉しそうなせいらを見て、傑が小さく目を細める。
「……じゃあ私は、その猫に餌付けをする旅人かな」
「なんでそっちは自然に成立してんの?」
「日頃の行いじゃないかしら」
「解せぬ!!」
その時、ラウンジのドアが開く。
「なんじゃ? 文化祭の話か?」
買い出し帰りの理子だった。
「理子ちゃんは何役やりたい?」
「妾は当然、お姫様じゃ!」
「増えた!!」
「王子一人に姫二人は絶対揉めるって!」
「いや悟、お前まだ配役決まってないからな?」
硝子が冷静に現実を突きつけたところで──
悟の脳裏に浮かんでいた記憶のスクリーンは、ふっと暗転した。
●2
スクリーンがゆっくりと明度を上げ、
白から淡いセピアへと色を変えていく。
フィルム特有のノイズが、ぱち、ぱち、と画面の端で弾ける。
その微かな揺らぎに合わせて、視聴覚室の空気まで古い映写機の匂いを思い出したように震えた。
「うわ……なんか古い映画みたいだな!」
虎杖悠仁が思わず身を乗り出す。
「キャッティー社の昔の作品っぽいわね」
釘崎が目を細める。
「……フィルムの質感、凝ってるな」
伏黒は静かに分析していた。
順平は胸の前でそっと手を組み、
スクリーンの光に吸い寄せられるように肩をすくめた。
初上映を待つ観客そのものの姿で、息を呑んでいる。
スクリーンの中央に、ゆっくりと円形の光が広がり始めた。
まるで往年の映画会社のような、レトロで柔らかいサンバーストの輝き。
その瞬間──
重厚で、あまりにも本格的な英語のナレーションがスピーカーから響き渡った。
“Ladies and gentlemen.
Welcome to the timeless tale of our cherished days…”
視聴覚室の空気が一瞬で変わる。
まるで本当に海外の古典映画が始まったかのような、
落ち着いた、品のある響き。
「……え、今の誰の声?」
虎杖が眉をひそめる。
「めっちゃ発音いいじゃん……外国人キャスト?」
釘崎がぽつりと呟く。
「本物の映画みたいだな……」
伏黒が小さく息を呑む。
「すご……プロのナレーションみたい……」
順平は完全に聞き入っていた。
スクリーンには、
キャッティー社風のレトロなロゴがふわりと浮かび上がる。
星が弧を描きながら流れ、
ロゴの周囲に淡い光の粒が舞う。
柔らかいストリングスと、
どこか懐かしいメロディラインが流れ始めた。
ピアノの単音がぽつり、ぽつりと落ち、
やがてストリングスが重なっていく。
「……このBGM、いいな」
伏黒が呟く。
悟が後方の席で、得意げに腕を組んだ。
「ふふん。これね、灰原が作ったんだよ〜。
才能あるよねぇ、あの子」
「えっ、灰原先生の作曲なの!?」
虎杖が振り返る。
「すご……プロみたいじゃん」
順平が目を丸くする。
「灰原先生、こういうの得意なのね……私も曲作ってもらうわ」
釘崎が納得したように頷いた。
そして悟が、さらっと爆弾を落とす。
「さっきのナレーションは七海ね〜。あれ、収録のとき本気でやれって言っといたからさ〜」
「えっ!? 七海さん!?」
虎杖が跳ね起きる。
「本格的すぎて全然気づかなかったんだけど!?」
釘崎も目を見開いた。
「……七海さんって、英語ネイティブの方……?」
順平が驚きで声を震わせる。
「いや、ただの本気の七海だよ」
悟は心底満足そうに鼻を鳴らした。
スクリーンのロゴがゆっくりと消え、
七海のナレーションが続く。
“Please enjoy this gentle recollection…
of the days we once shared.”
その声は、
まるで舞台の開演ベルの代わりのように、
静かに、しかし確かに物語の始まりを告げていた。
ストリングスが一度だけ高く跳ね、光の粒が画面いっぱいに散る。
そして──
画面中央に、淡い金色の優美な文字が浮かび上がった。
『最強王子と森の魔女』
虎杖たちは息を呑み、吸い込まれるようにスクリーンを見つめる。
暗い視聴覚室の空気は、もう完全に“劇中劇”の眩しい世界へと変わっていた。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
それではまた来週。
うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/
◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)
お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
95は名駅編のあとがきを追加しました。次は100です。