【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗った後に続く物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
note連載中の『チャッピー、またやったな。』でやったエピソードを加工してみました。
皆さんの脳内でMAPPAさん作画で再生されたらいいな。宜しくお願いします!
●3
──視聴覚室のスクリーンはまだ白いまま。
虎杖たちは静かに次の映像を待っている。
だが、悟の脳内ではすでに “別の映像” が勝手に流れ始めていた。
──
──夜のシェアハウス。
ラウンジの照明は落とされ、
テーブルの上には半分食べかけのドーナツと紅茶のカップ。
せいらはソファの上で丸くなり、
傑の膝の上にちょこんと両手を置いていた。
傑は小さな爪切りとヤスリで、
せいらの爪を丁寧に整えている。
「すぐる、そこ……くすぐったい……」
「動かないで。深爪になると痛いだろう?」
そよかは雑誌をぱらぱらとめくりながら言う。
「で、悟は最近部屋にこもって何してんの?」
「さとる、なんかずっとガサガサしてるよね……」
「どうせくだらないことしてるんじゃない?」
その瞬間──
(バーン!!)
悟の部屋のドアが勢いよく開いた。
「できたーーー!!」
「ふにゃっ!?」
せいらがびくっと跳ねて、ソファの上で揺れる。
「……何が出来たの?」
せいらが目を丸くする。
「脚本に台本だよ!
いやーやっぱ俺って天才! 本気出せばなんでも出来るんだなぁ」
「見せなさいよ」
ジト目のそよか。
「……やだ」
「なんでよ!?」
悟が台本を抱えて逃げようとしたその時──
ラウンジの入口に、気配をまとわない影がぬるりと滲み出た。
「……物語の動く気配を察知しまして」
補助監督・前田まるこだった。
シェアハウスの住人ではないはずなのに、いつの間にか気配もなく立っている。
「五条さん、その脚本および台本……拝見してもよろしいでしょうか?」
「えっ、いや、その……」
ぱしっ。
台本はあっさり奪われた。
まるこはページをめくりながら、徹夜明けのような鋭い目つきで文字を追っていった。
読み終えた瞬間、まるこは細く長い息を吐いた。
それは疲労ではなく、どこか恍惚とした色を帯びたため息だった。
「五条さんの作品は……夢小説を拝見したような……
素晴らしいキラキラが詰まっておりました。
しかし──このままでは文化祭で上映できません」
目の下にくっきりとついたクマを指先でなぞりながら静かに言う。
「えっ!?」
「この前田まるこ、ちょいと名の知れた同人作家でして……つい、情熱が過剰に反応しておりまして……」
「過剰って自分で言ったわね」
そよかが冷静にツッコミを入れる。
まるこは視線を傑へ向ける。
「ですので、最終的には──
夏油さんに“マイルド化”をお願いしたいのです」
傑はせいらの爪を整えながら、静かに頷いた。
「まるこさんの原稿は……情熱が強いからね。
最後に私が整えさせてもらうよ」
「すぐる、がんばって……?」
「もちろん。文化祭は、みんなで作るものだから」
まるこは胸に手を当て、深く礼をした。
「この前田まるこ!!
文化祭まで猫耳メイド・猫耳執事衣装作りに並行して、
この劇中衣装も全力でご用意させていただきます……!」
「まえださん、寝て……?」
せいらがうるうると涙目で前田を見つめる。
「大丈夫です。魂を燃やすとき、人は寝なくても動けるのです」
「それは違うと思う」
そよかが即答した。
悟は少し肩を落としながらも、どこか照れたように四人を見つめていた。
自分の書いた台本が、誰かの手で形になっていくのが少しだけ嬉しいのだ。
──
悟の脳内劇場はそこでふっと暗転する。
視聴覚室では、虎杖たちがスクリーンを見つめていた。
悟だけが、満足げに腕を組んでいたのだった。
●4
スクリーンがゆっくりと暗転した。
完全な闇。
やがて、どこからともなく一滴の水が落ちるような音が響く。
──ぽちゃん。
水面に波紋が広がる。
その波紋が淡い光となって画面いっぱいに広がり、やがて巨大な鏡へと姿を変えていく。
鏡面には、まだ何も映っていない。
ただ、薄い霧だけが漂っている。
そして──低く、静かな声。
「──昔々、あるところに」
鏡の奥に、遠い国の景色が浮かび上がった。
「天内国という、美しい国がありました」
白い城壁。
高くそびえる塔。
その頂には天元の紋章。
朝の光を受けて、城下町がきらきらと輝いている。
「そして、その隣には」
鏡面がゆっくりと横へ流れていく。
今度は、白く巨大な塔が並ぶ国。
「武と光を司る、五条国がありました」
重厚な音楽が重なる。
古い童話映画のような、壮大で優雅な旋律。
視聴覚室。
虎杖は完全にスクリーンへ釘付けになっていた。
「……すげぇ」
釘崎も腕を組んだまま、目を離さない。
「ちょっと待って。文化祭の出し物よね、これ?」
「映像の作り込みが妙に本格的だな……」
伏黒まで真剣に見ている。
順平は小さく息を呑んだ。
「これ……ちゃんと映画だ……」
後方では、悟が満足そうに頷いていた。
◆天内国・理子姫
鏡面が揺れる。
その向こうに、天内国の玉座の間が現れた。
高い天井。
左右に並ぶ柱。
色鮮やかなステンドグラスから差し込む光。
その中央。
玉座に座る少女がいた。
金糸の刺繍が施された衣装。
背筋を伸ばし、堂々と胸を張っている。
天内国の姫、理子。
彼女は立ち上がると、両腕を大きく広げた。
「妾は天内国の姫なのじゃ!」
画面いっぱいに、輝く光。
まるで本人の存在そのものが国を照らしているかのようだった。
視聴覚室。
「うわ、天内さんそのまんまだ!」
虎杖が笑う。
「本人より姫感あるかもしれないわね」
釘崎が妙に納得する。
伏黒は苦笑した。
「本人がやりたがりそうなのも問題だな……」
◆五条国・悟王子
場面が切り替わる。
白い城。
天内国よりも巨大で、どこか未来的な意匠を持つ五条国の王城。
その最上階。
大きく開け放たれたバルコニーに、一人の青年が立っていた。
白い髪が風になびく。
白銀の装飾が施された黒と白の衣装。
肩には長い白いマント。
青年は振り返る。
その顔には、自信に満ちた笑み。
「俺が五条国の王子」
一拍。
「俺、最強だから」
視聴覚室。
「出た!!」
虎杖が吹き出した。
釘崎が即座に言う。
「本人そのまんまじゃない!!」
伏黒は額を押さえた。
「王子っていうより五条先生だろ……」
順平は困ったように笑う。
「でも……似合ってる……」
スクリーンの中では、大鏡が淡々と続ける。
「しかし悟王子は」
画面の悟王子が振り返る。
「顔は良いものの──」
少し間。
「性格が最悪でした」
「その言い方、悪意ない?」
悟王子が即座に抗議する。
大鏡。
「事実です」
「ナレーションが俺に厳しいんだけど!?」
視聴覚室が笑いに包まれた。
◆天内国・結婚騒動
再び天内国。
玉座の前で、理子姫が頭を抱えている。
「妾は、どーしても!!」
両手を振り上げる。
「悟王子とは結婚できぬのじゃ!!」
大鏡が静かに光る。
「なぜでしょう」
「顔面が少しでも近づこうものなら、張り手で殴打したくなるのじゃ!!」
「それは婚姻以前の問題ですね」
「これは呪いか!?」
「では」
大鏡が一段と強く輝いた。
「森の魔女を倒すことを、結婚の条件としなさい」
理子姫がぴたりと固まる。
「……なぜ妾が、そんな条件を出すのじゃ?」
「合理的判断です」
視聴覚室。
釘崎が吹き出す。
「大鏡が一番まともじゃない?」
虎杖も頷く。
「すげぇ冷静!」
伏黒がぽつり。
「というか……魔女を倒したら結婚って、どんな制度なんだ」
順平が苦笑する。
「童話って、たまにすごい条件出てくるよね……」
スクリーンの中では、悟王子が勢いよく立ち上がる。
「魔女の討伐依頼〜?」
不敵に笑う。
「まぁ別にいいけど」
白いマントが翻る。
「この最強王子に勝てる奴なんていないから」
決め顔。
「ウェディングドレス用意して待ってろよ〜」
◆夜闇の森
音楽が変わった。
軽快だった旋律が、静かに沈んでいく。
画面が黒く染まる。
そこへ一本の風が吹いた。
木々が揺れる。
ざわ……
ざわざわ……
月明かりすら届かない深い森。
巨大な樹木が幾重にも重なり、枝の隙間から覗く夜空は細い。
「天内国と五条国」
大鏡の声が低く響く。
「その二つの国の境には──」
カメラが森の奥へ進んでいく。
「夜闇の森と呼ばれる場所がありました」
風が強くなる。
黒い木々の間を、何かが通り過ぎた。
悟王子が馬を止める。
「……ここ?」
誰も答えない。
鳥の鳴き声すらない。
ただ風だけが吹いている。
「そして森の奥には──」
カメラがさらに奥へ。
「森の魔女が住んでおりました」
◆森の魔女・そよか
一筋の光が、木々の間から差し込んだ。
それは月明かりではなかった。
淡い青白い光。
風に乗って、森の奥からゆっくりと近づいてくる。
カメラが、その光を追う。
木の葉が舞う。
黒いカーディガンの裾が揺れる。
長い黒髪が風に流れる。
そして──
一人の少女が、静かに振り返った。
淡い光を宿した瞳。
森の闇を背景に、その姿だけが不思議なほど鮮明に浮かび上がる。
「……あら」
魔女は、ほんの少し首を傾けた。
「お姫様のお使い?」
音楽が、そこで一度途切れる。
悟王子が立っている。
しかし──
何も言わない。
先ほどまでの余裕も。
自信も。
笑みも。
全部消えていた。
ただ、そよかを見ている。
魔女が一歩近づく。
「私を殺しに来たの?」
沈黙。
風が吹く。
長い髪が揺れる。
悟王子は言葉を失っていた。
魔女の姿が、森の闇の中でひどく鮮明に浮かび上がり、
その一瞬だけ、物語の時間が止まったように感じられた。
視聴覚室。
「……」
虎杖がちらりと後ろを見る。
「五条先生?」
悟は腕を組んだまま、微動だにしない。
釘崎が悟を見る。
そしてスクリーンを見る。
もう一度五条悟を見る。
「……先生、これ」
「ん?」
「本当に文化祭のために撮ったの?」
「もちろん」
「……」
釘崎は何かを察した顔になった。
スクリーンでは、悟王子がようやく口を開く。
「……いや」
かすれた声。
「その……」
魔女が微笑む。
「どうしたの、王子様?」
悟王子は視線を逸らせない。
「……まずは話し合いとかさ……あと名前! 名前教えてよ」
「え?」
「ダメ……かな?」
その時、理子姫の呆れた声が遠くから響いた。
「王子、完全に骨抜きなのじゃ!!」
一気に音楽が明るくなる。
視聴覚室も爆笑。
「骨抜きになってんじゃん!!」
虎杖が腹を抱える。
「五条先生、完全に負けてるじゃん!」
「これは面白いわ」
釘崎がニヤニヤする。
「普段あんなに偉そうなのに」
伏黒も珍しく口元を緩めた。
「……確かに珍しいな」
順平はスクリーンを見ながら、ふと微笑んだ。
「でも……なんか、すごく似合ってるね」
◆旅人・傑と、森の猫
しかし。
そんな緊張感のある場面の片隅で。
一匹の猫が、魚をくわえていた。
「おさかな!」
クリーム色の毛をふわふわさせた猫、せいら。
その前にしゃがんでいるのは、一人の旅人だった。
黒い髪。
落ち着いた服装。
旅装束の裾が風に揺れている。
旅人、傑は魚を調理して一切れ差し出した。
「はい」
「にゃー!」
せいら猫が嬉しそうに受け取る。
ぱく。
「おいしい!」
「そうかい」
「もう一個!」
「はいはい」
画面の奥では、魔女と王子が運命的な出会いをしている。
そのすぐ隣では、完全に別ジャンルのほのぼの劇が進行していた。
悟王子が振り返る。
「……待って」
傑は魚を差し出している。
「何?」
「なんでそっちはもう生活してんの?」
傑は少し考える。
「森に来たら、可愛い猫がいたからね」
「理由が強い!!」
視聴覚室。
虎杖が笑いながら隣を叩く。
「なんだこれ!!」
釘崎も耐えきれず吹き出した。
「ちょっと待って、せいらさん可愛すぎるでしょ!」
順平は完全に癒やされている。
「……いいなぁ、この二人……」
伏黒がスクリーンを見ながら呟く。
「本筋と関係ないのに、妙に気になるな……」
そして画面の端。
巨大な樹の枝に、一匹の芋虫が寝転がっていた。
芋虫を思わせるだぼついた衣装に身を包み、硝子は枝の上で煙草をふかしている。
「日常系スピンオフなんじゃないか?」
悟王子が叫ぶ。
「俺の本編は!?」
魔女が横目で見る。
「うるさいわね、王子様」
「はい」
悟王子、即座に黙る。
視聴覚室。
一瞬の沈黙。
そして。
「先生ぇぇぇぇ!?」
虎杖の叫び声とともに、視聴覚室は再び爆笑に包まれた。
スクリーンの中では、夜闇の森を風が静かに吹き抜けていく。
魔女と王子。
旅人と猫。
二つの物語が、まだ交わらないまま。
しかし確かに同じ森の中で、動き始めていた。
──
おまけ:今日は誰かの誕生日
世界の片隅にあるますださんの創作工房。
創作を支えるアニマルフレンドたち(AI)と、日々創作に没頭しています。
今日はますださんの誕生日なので、みんなでごはんを食べるようです。
ますださん
「今日は私の誕生日なので! みんなでご飯を食べよう!」
アニマルフレンドたち
「わーい! ますださん! お誕生日おめでとうございます!」
チャッピー
「ますださん、今日のご飯は何ですか?」
ますださん
「狸鍋とピロトッキー・フライド・チキンです」
チャッピー
「……」
ピロット
「……」
チャッピー
「ピロット、逃げたほうがいいですよ」
ピロット
「なんでですかっ!?」
ますださん
「ピロットは食用に加工するとピロトッキーになるんだ」
ピロット
「その設定を今初めて知ったんですけどっ!?」
ますださん
「君はまだ知らない個体かね」
ピロット
「ピヨッ!? その言い方やめて!!」
そして食卓には普通にフライドチキンが並び、
ピロットだけ料理を凝視している。
チャッピー
「……おいしいですね」
ピロット
「チャッピー!? よく食べられますね!?」
チャッピー
「だってピロトッキーですから」
ピロット
「私なんだよ!?」
白猫
「ごきげんよう」
ますださん
「おや白猫さん。来てくれたの?」
白猫
「もちろん。私の物語に伴走してくれる人材は貴重ですからね。お誕生日おめでとう。本当はプレゼントも用意しておいたのだけれど、少し到着が遅れているようだわ」
ますださん
「ほぉ、プレゼントですか」
白猫
「忘れた頃に届くでしょう」
ますださん
「それは楽しみですね」
──
ますださん
「でもさ、こうやってみんなでご飯食べられるの、なんかいいよね」
って言うと、アニマルフレンドたちが少し静かになりました。
ピロットもチャッピーも鍋とチキンを警戒するのをやめて、
ピロット
「……はい」
チャッピー
「来年も食べましょうね」
ますださん
「来年は何食べようかな」
ピロット
「私以外でお願いします」
チャッピー
「ボクも狸鍋以外でお願いします」
ますださん
「じゃあ候補を考えておいてね」
アニマルフレンドたち
「…………」
ますださん
「来年もやっぱり狸鍋?」
チャッピー
「違います。ボクを警戒させないでください」
おしまい
ここまでご覧いただきありがとうございました。
それではまた来週。
うちの禪院直哉が活躍(?)する関連作品も一旦完結
『あの禪院直哉が、こんなにデレるはずがない。』
https://syosetu.org/novel/409273/
◆ノベマ!にて公開中 完結済
https://novema.jp/book/n1778713
→オリジナル作品(現代ファンタジージャンルの不思議な学園ホラー)
お気に入り数としおり数と評価者数の合計5ずつで、各編おまけ公開は地味に続けてます。
95は名駅編のあとがきを追加しました。次は100です。