【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●9
都内某所、有名ホテルのレストランが提供するアフタヌーンティーラウンジ。
呪術高専への天内理子入学歓迎の催しが女子メンバーだけで密やかに行われていた。
天内理子を中心にせいら、そよか、硝子、歌姫、冥冥も同席している。
既にアフタヌーンティーといえば定番の3段タイプのケーキスタンド(スリーティアーズ)はセットされており、初回のドリンクのオーダーも今終わったところだった。
「ふふふ。女子会……ね。声をかけてもらえて光栄だよ。この会のことを話して、次期学長の夜蛾先生からポケットマネーをいただいてきたから──会費の足しにしてくれるかい?」
「あ、ありがとうございます」
厚みのある封筒を幹事のそよかに手渡す冥冥。
「わー! 私、こういうの憧れてたの! 誘ってくれて硝子ありがとねー!」
感激した様子で硝子に抱きつく歌姫。それぞれの前にオーダーしたドリンクが運ばれてくる。
「それでは理子の呪術高専入学を祝して──」
かくして『波乱の』アフタヌーンティーパーティーが始まった。
ゆっくりと紅茶を注ぐ硝子。
「へー。沖縄でそんなことがあったんだ」
事実も憶測もダイナミックに織り交ぜて、天内理子は恋話(コイバナ)が止まらない。
「なかなか情熱的だね──」
微笑を浮かべる冥冥。
「あの五条がねー」
歌姫はケーキを一口。
「それで? 当人からの情報提供は?」
冥冥は手にしたスプーンでそよかを指した。
「は?」
「そよかっ! 場はあっためたぞ! 存分に話すと良い!」
胸を張ってどこか誇らしげな理子。
「あー。あれねー。海岸で二人きり、月夜の告白でしょー?」
せいらがスコーンを口に頬張りながら言う。
「せいら?」
そよかの顔にせいらの裏切り者と書かれている。
「んー?」
クロテッドクリームぬりぬり、もう一口を幸せそうに口に入れるせいら。
一同「おー」
「あれ? でもこの間、五条が珍しく荒れてたから揶揄ったら、七海がそよかに告白しやがったとか言ってたけど? つまり──」
一同「あー」
歌姫の発言に思い思いに頷く。
「で? どっちを選ぶのかな?」
微笑を浮かべ、問う冥冥。
「選ぶって──」
視線を泳がせるそよか。
「ん? 君は選ばずに男心を弄ぶタイプ?」
小首を傾げる冥冥。
「はっ!?」
「小悪魔だね〜」
せいらがにやにや。
「せいらこそ! 傑と直哉さんに好かれてるじゃない!」
「わたしはすぐるが一番だもーん!」
「ちょ、直哉が聞いてたら間違いなく泣くやつ!?」
大袈裟にずっこける歌姫。
「二人から言い寄られて迷っているのはそよか、君だけみたいだよ?」
ティーカップに優雅に唇をつける冥冥。
「──どうして選ばないといけないの?」
そよかの発言に一同動きが止まる。
「選ばなかったら、一緒にごはん食べたり、遊んだり、寝たりできないぞ?」
理子の何気ない一言に更に一同、カップを持つ手が止まった。
「寝る……?」驚愕した様子の歌姫。
「ん? 一緒にゴロゴロしたり、お布団で映画観たり……そういうのじゃ! あと頭撫でてもらったり!」
「──うん、まぁ間違ってはない。むしろ理想的なカップル像とも言えるな」
ティーカップを静かに置く冥冥。
「それを、不特定多数としていたら、どうなると思う?」
じっと視線をそよかに注ぎ、翔子が静かに口を開く。
「……区別がつかなくなる?」
「正解。だからそういう相手を決める。“付き合う”っていうのはね──境界線を引くためにあるんだよ。“誰でも”じゃなく、“あなた”を特別に思ってる、そんな“縛り”ってわけさ」
ケーキをすくったフォークを片手に呟く冥冥。
「──でも、私は一緒にゴロゴロとか布団で映画を観たいとか……思わないわ」
「おっと、これはなかなか手強いな。もしくは両方ありなしで言えばなしということ、なのかな?」
冥冥は不敵な笑みを浮かべる。
「私は五条は無いから選ぶなら七海だけどなー。硝子は?」
さらりと自分の意見を言う歌姫、話題をふられて渋い顔をする硝子。
「……私はどっちもなしかなー。どっちもめんどくさそうだから」
「なら仕方ない──結局、“好き”の定義が曖昧ならさ。いっそ、“どれだけ見つめ合えるか”で試してみたら?」
冥冥はティーカップを傾け、相変わらず涼しい顔をしている。
「恋愛感情がない相手とは、10秒すら見つめ合えないらしいからね」
──その場が、凍る。
硝子だけが「なるほど」と淡々とした表情をしていた。
●10
「あら、二人揃ってどうしたの?」
「あ! すぐるー! おーい!」
調理実習室でお菓子を作っているせいらとそよかに近付く夏油と五条。
「文化祭の思い出の1ページに、なんちゃってインタビュー冊子でも作ろうかなと思って」
五条が雑誌を丸めたものをマイクもどきで近付ける。
「ま、気楽に答えてみてくれ」
──とりあえずまずは名前とかヨロシク!
「はーい! せいらです! 呪術高専の2年生です!」
「同じく呪術高専の2年生兼五条悟の教育係……主に躾をしています。そよかです」
「俺、躾されてたの!?」
「あら、自覚はなかった?」
──呪術師になった理由は?
「五条家でお世話になっている関係で、呪術師になれそうだったからなったといったところかしら」
「そだねー」
──自分の術式、もっとこうだったら便利なのに…って妄想したことある?
「私は特に不満はないわ」
「そよかの術式はわりと万能だもんね〜。わたしの術式はあんまり目立ったところがない打撃強化系だから、もっとキラキラした感じがあるといいな!」
──呪霊の味ってどんな味だと思う?
「色んな呪霊がいるし、色んな味がありそう!」
「祓い方によって味が変わったりするんじゃないかしら?」
──呪術師やってて一番『わたし、天才じゃない!?』って思った瞬間は?
「すぐるの術式が暴走して、誰も近づけなかったんだけど……なんか、わたしが抱きしめたら止まったの! 癒し系だからかな?」
「癒し系ってレベルじゃねぇ!」
「助かったけど、危ないからやめようね」
「えー?」
「ある任務で、味方の術式と呪詛師の術式が複雑に干渉して、誰も動けない状況になったんだけど、上手く味方の術式が先に効果を発揮するように組み替えて圧勝してみせたわ」
「それ、時間操作までしてない?」
「チートすぎんだろ……」
──逆に、呪術師やめたい…って思った最悪の日は?
「うるさくてしつこい人に付き纏われている時……かしら」
「最悪の日?」
「……ほぼ毎日?」
「おいおーい! 呪術師関係ないじゃん!!」
「わたしは補助監督の人とも仲良くなりたいなって思って色々話しかけてたら、そういうのいいんでって言われた時……」(涙目)
「名前覚えてる? どんな感じの人だった? 詳しく教えてくれる?」(夏油は穏やかな口調だが内心キレてる)
──これはおすすめっていうトレーニングは?
「最近、“好きな人とペアでやる健康体操”ってのがあるって聞いたの。体幹が鍛えられて、すごく健康にいいんだって!」
「……へぇ、それはいいね」(色々想像中)
「でも、やり方がよくわかんなくて……すぐる知ってる? 一緒にしようよ!」
(即答)「もちろん」
「え? 健康体操? なにそれ? えっ? 知らないの俺だけ?」(困惑する五条)
「私はどこでも出来る筋トレという特集を見てから興味を持ったわ、悟その机を使ってちょっと広背筋を鍛えてみなさい」
「俺!?」
──高専に入って一番ヤバかった先輩/同期は誰?
「んー? 誰とは言わないけど、高専に来てからやたらと毎日テンション高くなったなーって人しってるよ」
「それ俺のこと!?」
「私はそうねぇ、特にこの人って一人を挙げるのは難しいけど──全体的に、情緒が乱高下する人が多いと感じたわ。面倒見のよさと情緒不安定は比例するのかしら?」
「なんか、ごめん……」(申し訳なさそうな夏油)
──ぶっちゃけ、尊敬してる人って建前で、本当は『あの人、ここがイラつくんだよな〜』ってとこ暴露して
「尊敬ねぇ……まぁ最強って言葉にあぐらをかいて努力を怠ってる人とかいたらイラつくわね」
(ギクっ)
「すぐるに近付く人は許せなーい!」(両手ぶんぶん)
(そういうことじゃなーいと思いつつ微笑む夏油と五条)
──オフの日は何してる? もしかして、こっそり隠れオタクとか?
「わたしはねー。すぐるの呪霊みつけてすぐるの事聞いてるー」
「私のことを、聞いてる?」(地味に驚く夏油)
「すぐるが今なにしてるとか言える子と言えない子がいて可愛いよ。あと一緒に遊ぶの。それから野良呪霊とかを拾ってきたり?」
「野良呪霊とか!? いやいや、拾ってきちゃだめじゃない!?」
「私は図書室で読書をしたり、借りた本を持ってクラシックな喫茶店めぐりをしたりするわ」
「おいー! 俺を誘えよ!!」
「……静かな場所で一人になりたいのになんで悟を誘うの?」
「ぐぬぬ……」
「あとたまに原稿を書いたりもしてるわ」
「原稿? そよかって小説書くの!?」
「主に呪術界への提言書よ。制度改革の草案も含めて」
「そっちかーい!!」
──もし呪霊が絶滅したら、何して食っていく?
「公務員」
「わたしはねー。すぐるに飼ってもらうの」
「かってもらう?」
(そよかがせいらに耳打ち)
「えー? 人間だと飼われるのは変? すぐるー。わたしどうしたらいい?」
「なら、一緒に暮らそうか?」
「それ実質プロポー(そよかに無言で殴られる五条)」
──呪術界の『ここがダメだよ!』ってところ、叫びたいことある?
「その質問は、呪術界が抱える根深い構造的課題を提示しろという認識でいいかしら? 私個人の見解だけれど、現在の呪術界における最も看過できない点は、その組織的脆弱性と、将来を見据えた持続的発展戦略の欠如にあると分析しているわ。
具体的な問題点を詳細に検討すると、まず第一に、人材の最適化とその流動性に関するシステムの不備が挙げられるの。現行の呪術師育成プロセスは、個々の資質に応じたパーソナライズされたカリキュラムが不足しており、特に若年層の適性評価においては、客観性に欠ける側面が見受けられるわけ。結果として、限られた高専への集中が生じ、広範な母集団からの潜在的な才能の発掘機会を逸失している状態なのよ」
「ま、待て。そよかっ!」(ドン引きの五条)
「次に、情報連携におけるプロトコルの未整備も重大な問題だわ。各呪術師、あるいは各組織間で共有されるべき呪霊発生情報や、任務遂行データが断片化されており、これが全体的な脅威インテリジェンスの構築を阻害していることはわかる? つまり戦略的な呪霊排除活動における予測分析の精度向上、ひいてはリソースの効率的な展開を妨げるボトルネックとなっていて、この情報格差が、不必要なリスクや非効率性を生み出していると判断するわけ」
「これは──こんなところでさらっと聞いて終わりにしたらもったいないやつ」(驚愕の夏油)
「さらに、危機管理体制の不全さも無視できないの。任務中における予期せぬ事態、いわゆる不確実性への対応策は、個々の術師の経験則に依存する傾向が強く、組織としての包括的なセーフティネットや、危機介入メカニズムが十分に機能しているとは言えない。これは、術師の精神的負担を増大させ、長期的な職務継続における心理的安全性を著しく損なう要因ともなっているわ。これは結果として、術師の離職、あるいは呪詛師への転落といったリスクを助長している可能性も否定できないから──」
「そよか、ありがとう。続きは後でゆっくり聞かせてくないか。出来ればレポートにして夜蛾先生に提出しよう。せいらはどうかな?」(若干引きながらも、やんわりと切り出す夏油)
「わたしはねー。もっとお友達たくさん欲しい!」
(揃って微笑む夏油と五条)
──『実は私、○○なんです…』ってカミングアウトしたい秘密を教えて?
「カミングアウトしたい秘密って何よ?」
「わたしはねー! すぐるが好きー!」
(知ってるーと微笑む夏油と五条)
「そよかは? なんかないの?」
「……悟のにおいがす──」
「す?」(キラッキラに目を輝かせて聞き返す五条)
「酢豚みたいなにおいで……気になるっ」(顔をしかめるそよか)
「本当は俺の香り好きなんだろ!?」(立ち上がってシャツをバタバタさせる)
「やめろ」(顔面パンチ)
──好きなタイプは?
「わたしはねー! すぐるー!」
(知ってるーと微笑む夏油と五条)
「そよかは?」(期待の眼差しの五条)
「……一緒にいて落ち着く人」
「それって七海ってこと!? ちょっと待ってよ! 俺は!! 俺と一緒にいても落ち着くよね!? そよか! それ浮気だよ!! わかってる!? ねぇ!」
「うるさい……」
──高専の寮で、忘れられない珍事件があったら教えて?
「わたしあるよ……」(せいらが珍しく落ち着いた声で話しはじめた)「その日は朝からとても暑くて、自販機で飲み物を買ったの……そしたら、冷たい飲み物を買ったはずなのに、ホットのおしるこが出てきて──」
「ヒッ……」
「しかも2本も……」
「地味に当たってるのが更に辛いな……」
「──私のアイスレモンティーどこいったの?」(涙目)
「後で私が買ってあげるよ」
「すぐるー」(うるうる)
「そよかは?」
「寮の部屋にはしっかり鍵をかけているし、そもそも女子寮は簡単に入れないはずなんだけど──」
「……」
「何日かに一回、目覚めると……見知った顔が私を覗き込んでいるの」(五条をガン見しながら言うそよか)
「……」(視線を逸らす五条)
「悟?」(困惑した表情の夏油)
──最後に、このインタビュー、どうだった? 本音で言っていいからね?(五条と夏油が至近距離で顔を覗き込む)
(夏油の頬にキスするせいら)「えへへ、すぐるの顔が近くにきたからちゅーしちゃった」
「……」(嬉しそうに頬を染めて微笑む)
「ちょっとー! そよか! 俺も俺も!」
「……」(無言で顔面パンチ)
「ですよねぇ! 知ってた!」
「ところで何を作っていたの?」
「なんでもいいから、ちょーだい!」
「マドレーヌだよー。はい! あーん」(夏油の口にマドレーヌを入れるせいら)
「そよかー。俺もー。あーん」
「……」(ガッとマドレーヌを突っ込む)「グボっ!?」
「とても美味しいね。ありがとう」(微笑む夏油)
「ちょっとそよかさん!?」(ゲホゲホむせる五条)
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