【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


21静謐編 19・20:別れの予感と運命の列車、産土神の罠と付箋だらけの旅本

●19

 

 山間を走る電車の中、向かい合った座席にギョロちゃんが座っている。

 彼は目を閉じて寝ているように見えるが、精神集中している状態で、きっと話しかけたらすぐにその両目が開くだろう。

 僕が物心ついた頃から、ずっと共にいてくれた人。

 一人前になった時が別れの時だと聞かされていた。

『この任務が正念場だ』

 ぽつりと彼は言う。

 ──いつか訪れると聞かされていた、僕の運命の分かれ道。

 

「──灰原」

 肩に手を置かれ、七海に声をかけられる。

「もうすぐ目的の駅に着きます」

「あぁ、ありがとう」

 笑顔を返す。向かいの席にギョロちゃんの姿はもうない。

「自分に出来る事を、精一杯頑張るぞ!!」

「……なんですかいきなり」

 訝しむような表情を七海が向けてくる。

「いや、なんか気合いを入れたくなって」

「天内さんも、そろそろ起きてください」

「んあ?」

 七海に軽く揺さぶられて、天内さんも目を覚ます。

「なんじゃ? もう着くのか」

 大きく欠伸をしてから伸びをする天内さんを横目で見つつ、僕は七海に話しかける。

「駅前にお土産屋さんとかあるかな? 夏油さんに甘いもの系のお土産を頼まれたんだけど」

「知りませんよ私は」

「お土産かー? これに書いてあるかのう?」

 天内さんが付箋だらけの旅本を鞄から取り出し、ページをめくりはじめた。凄い付箋の数だ……誰よりもこの任務を楽しみにしてるんじゃないか?

「ほらほら、後にしてください。もう着きますよ」

 僕たちが乗っていた電車はゆっくりと減速し、目的の駅へと到着した。

 

「真っ暗じゃな……」

 見事なまでの無人駅、駅の明かりすら僕たちの乗っていた電車が発車してからは消えてしまった。

「あそこの店、売店っぽい! でもこの時間は閉店時間みたいだ。残念だなぁ、明日買いに行けるかな?」

 不機嫌そうに携帯を操作している七海。

「──もうすぐ補助監督の車が到着します。そこのベンチで座って待ちましょう」

「はーい!」

「遠方の任務だというから、もっとキラキラしてると思ったのに」

 ぶんむくれた天内さんに苦笑いを僕は返しつつ。

「キラキラって?」

「ほら! 青い海、白い砂浜とまでは期待せんが。旅館で卓球したり、お風呂あがりに瓶のフルーツ牛乳飲んだり……色々あるじゃろ!!」

「それは任務ではなく完全にレジャーですね。沖縄のような場所に任務を行く事は本当にごく稀ですし、宿泊先は安価なビジネスホテルが基本ですよ……」

 七海は結構ピリピリとした返答をしていた。

 

 遠くからクルマのヘッドライトが近付いてくる。僕たちは補助監督の運転する車に乗り込んだ。

「まずは一度現場に連れて行っていただけますか?」

 七海の言葉に初老の補助監督の男性が頷いて車を発進させる。普段はタクシーの運転手もしているということで、丁寧な運転をする人だなと思った。

 助手席にいる七海が話し始める。

「では今回の任務ですが、山間のニュータウン開発現場に呪霊が大量発生しているというものです。今日は電車での移動のみでしたので、体力は残っていますよね? 今日の内になるべく数を減らして、明日仕上げをする。そのつもりで任務にあたってください」

「ふっふっふ」

「なんじゃあ?」

 いきなり笑い始めた僕に訝しむ目線を送る天内さん。

「つまり、今日中に全て祓いきれれば……明日は自由行動ということだよね!」

「……そうですね。全て祓えたかどうかの確認をして、明日は帰るだけとなります」

「なら、それ目指しちゃってもいいよね!!」

 ビシッと親指を立てる。

「勢い重視で手を抜かないでください」

 再び静かになる車内。車通りの少ない郊外の道をひたすら進んでいく。

 

 

●20

 

 ──妙だな。

 

 ニュータウン開発現場、呪霊を次から次に祓っていく灰原を見守っている。彼が言っていた通り、もしかしたら今日中に終えることが出来るかもしれない。しかし──。

「数は多いが三級レベルの呪霊ばかりのようにも見える」

「よーし! こんなもんかな?」

 祓い終えた灰原が、刀を鞘に収めて歩いてくる。

 ──ぞくりと全身の肌が粟立つような感覚があった。

「七海!!!」

 灰原が私を抱きかかえて倒れ込む。私が背にしていた森の木々が数本薙ぎ倒される音がする。

 土煙の中、落武者のような姿をした呪霊が大きな刀を手に近付いてきていた。

「あれは──」

「あの呪力量、二級……いや一級かもしれない」

 二人同時に立ち上がり身構える。このまま二人で戦って勝てるのか?

「一旦退きましょう」

「賛成……って言いたいところだけど、完全にロックオンされてるから。二人して逃げるは出来ないんじゃないかな──」

 ……一目散に別方向に逃げたとしても、一方に追撃がくることは容易に予想できる。それでも二人で相手をして勝ち筋が見えてくるとも思えない。

「七海! 大丈夫だよ。僕が時間を稼ぐから」

 私の背中を強く叩いて、灰原が言った。

「あの呪霊の身につけてる着物……家紋みたいなものがあるみたいだ。あれが何かヒントになるんじゃないか?」目を凝らす。その瞬間だった「──来るぞ!! 走れ!!」

 補助監督と天内さんがいるところへ全力で走り出す。背中を削ぎ落とされそうな呪力を感じる。

「七海!! 右に大きく跳べ!!」

 言われるままに右に大きく跳ぶと、私が走っていた地面が大きく抉れた。同時に灰原の背中が視界に飛び込んでくる。

「まだ走れるか? 急げ!!」

 

「──盛炎のうねり!!」

 刀を振りかざし、灰原が炎の壁を作った。暗闇を切り裂く炎の勢いに呪霊も怯む様子が見える。

 

 私は立ち上がって再び走り出す。

 彼は呪力を刀に纏わせて戦う。身体中の筋肉をバネのようにしならせて、その太刀筋に炎が見えた時、最初はひどく驚いた。今もきっと、そのように戦っているのだろう。

 

 

「どうした!? 何があったのじゃ!?」

 慌てて駆け寄ってきた天内さんを片手で止めて、息を整える。

「応援要請を──」

 ごくりと喉を鳴らす。

「これは二級案件ではなく、一級案件の可能性があります」

 慌てて補助監督の男性が携帯を取り出し連絡を始める。

「天内さん、何か書くものを」

「これで良いか?」

 彼女が持っていた筆記用具セットを受け取り、先ほどの呪霊が身に纏っていた家紋のようなものを書いてみる。

「これも伝えてください。何かヒントになるかも──」

 電話中の補助監督に話しかけた。

「その形……」

 私の手元を覗き込んでいた天内さんが呟く。

「どうしました?」

「見覚えがあるのじゃ!!」

 先ほど電車の中で手にしていた付箋だらけの旅本を取り出してページをめくっていく。

「ほらこれ!! 似てるじゃろ!?」

 天内さんが開いて見せたページに確かに似たマークがあった。

「産土神信仰──」

 自分が書いたマークと旅本の記号を見比べる。

「うぶすな?」

「土着の神ですよ。間違いない。これは一級案件だ」

 震える手で天内さんから旅本を受け取り、読み進めた。

「近くに神社があるようです──向かってみましょう!」




ここまでご覧いただきありがとうございました。
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