【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●5
朝の集合場所に五条さんが現れなかった。その時点ですぐに気がついた。
「夏油さん──」
そよかさんを五条さんのいる部屋に誘導した夏油さんに声をかける。その言い方と、視線で夏油さんはしまったなといった表情を浮かべ指先で頬をかく。
その内に五条さんを置いていこうという話になり、我々はゆっくりと駅に向かって歩き出した。
「わーい! キャッティーランドー! たーのしみー! 手ぇつないでいこー!」
せいらさんが理子さん硝子さんと手を繋いで歩き出す。
「あれ?」
駅について電車に乗り込んでから灰原が何事かに気付いて周囲を見回していた。
「どうしましたか?」
「禪院って結局誘ってなかったんだっけ?」
禪院直哉……そういえば──。
「あ、なおちゃん? 聞いてみるねー」
ぽちぽちと携帯を操作するせいらさん。いっそこのまま声をかけずにいた方が平和なのではないかと思いつつ、私を含め誰もせいらさんを止めはしない──私は吊り革に手をかけて立っている夏油さんに近付く。
「夏油さん。今朝、私は気付きましたが邪魔をしませんでした。その意味がわかりますね?」
「え? いや、どういう意味かなー」
「五条さんがそよかさんと二人でランドに行けるように仕組んだでしょう」
「…………」
「お昼になったら我々と合流してもらって、そこからは私がそよかさんをエスコートします。構いませんね?」
「えっ、それは──」
「構いませんね?」
「わかったわかった。悟にメールしておくよ。でも夜は悟をそよかと一緒に過ごさせてあげてくれないか? 楽しみにしているみたいだから」
「……夏油さん、それなら直哉さんにもせいらさんとの時間を提供してもいいですよね?」
せいらさんがにこやかに「なおちゃん遅れて来るってー」と天内さんと話している。夏油さんの目付きがほんの僅かに鋭くなったが、次の瞬間にはいつもの微笑みを浮かべていた。
「七海、落ち着いて話そう──」
「私は落ち着いていますし、むしろ冷静です。今回の一件、五条さんは朝と夕に自由行動があり逆の時間帯は夏油さんの自由行動の時間ということですよね」
「…………」
理詰めで責めても五条さん夏油さんは上級生、歩み寄りをみせなければ──
「そのかわり、帰りは私が全体の引率を担当します。それならいかがですか?」
夏油さんがわざとらしく咳払いをした。
「更にもうひとつ。これは私の推測ですが、後日せいらさんとのランドかシーでのデートのご予定がありますよね?」
「!?」
「そよかさんと私も含めてのダブルデートにしていただけるなら、今回は不問とします」
「……無理だと言ったら?」
「せいらさんに今回の行き違いについて天内さん経由で説明してもらいましょうか」
天内さんの特に恋話(コイバナ)に関する食い付きは凄まじく、インプットされた情報にかなりの脚色がされることは既に誰もが認知していることだった。せいらさん以外は。
「!!」
夏油さんが言葉を失う。私はじっと次の言葉を待った。
「…………」
「──わかったわかった。変なところで七海も頑固なんだから。悟に連絡しておくよ」
携帯電話を取り出して五条さんにメールを送ろうとする夏油さん。
「私のアドレスもCCに入れてくださいね」
「……はいはい」
まだ朝も早く座席は空席も目立つ。私は灰原の隣に座った。
「上手くいったみたいだな」
ニヤリと灰原が笑いかける。
「……あなたは誰の味方なんですか?」
「え? うーん……」
そこで考え込むということは、どうやら私の味方ではないらしい。
「あえていうなら女の子の味方かな?」
「あまり引っ掻き回さないでほしいものです」
「えぇ? そんなつもりないよー! ないない!」
「どうですかねぇ」
灰原と二人、電車で隣あって座りながら笑って過ごした。
●6
──まったく。わかりすぎるんだよこいつらは。
昼休憩からのパートナーチェンジ。
そよかは七海と、せいらは直哉と、悟と傑は私(硝子)とランド内のライドに乗ることになった。灰原と天内は絶叫コースター系を周回している。
◆ミャウロスト・シー(Meowlost Sea)
(ランド内:月波湾ゾーン)
「海を忘れた猫たちが、再び夢を取り戻す——」
むかしむかし、海を失った猫たちがいました。
彼らは星のかけらをたよりに、夜の海をさまよい、やがて“忘却の入り江”へと辿り着いたのです。
このアトラクションでは、ゆっくりと進むボートに揺られながら、
猫たちの記憶が映し出される静かな海底をめぐります。
光の魚たち、星を紡ぐクラゲ、そして誰かの「最後の願い」。
幻想的な風景のなかで、胸の奥の小さな灯りを探す時間。
それは、今を見つめ直す旅にもなるかもしれません。
所要時間:約8分
撮影:不可(フラッシュ厳禁)
定員:1ボート3〜4人(グループ専用)
エリア:月波湾エリア(ランド側西端)
水に反射する青白い光が、揺れる瞳に映る。
三人は誰も喋らない。ただ静かに、ボートは幻想的な水辺を進んでいた。
「……おーい。揃いも揃って暗い顔してー」
頭に着けてる猫耳も元気がないように見えるから面白いものだ。
悟は、前の座席で揺れる黒い猫しっぽの幻影を見つめながら、頭の中がそよかでいっぱいのようだった。
「だってさー。今頃そよかと七海が二人で手を繋いだりしっぽを絡めたりしているかと思うと、俺は──俺は──」
そして大袈裟に頭を抱える。
一方、一見全然気にしてないといった表情をしているくせに魂が抜けてる傑。
「…………」
「まったく、私がランドに行きたいって言ったのに乗っからずに最初から自分たちで動いていたら、こんなことにはならなかっただろうに」
「そりゃそうだけどー。いつもならこんな一日遊び回るようなところ、緊急の任務だってよく入るし来られるもんじゃないんだぜ?」
「でも今日来られたじゃん」
「…………」
最強だーなんて言いながら、やんちゃしてたお前らが。女絡みで一喜一憂する日がくるとはねぇ。
「──ハハッ」
つい声を上げて笑ってしまった。
「──なんだよ?」
「んー? いやぁまぁ、頑張れよーって思ってさ」
悟と傑は大袈裟にため息を吐く。
──まぁ静かでいいか。こういう辛気臭さもたまにはね。次に乗る乗り物は絶叫できるやつにしようと一人で決めた。
ここまでご覧いただきありがとうございました。