【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●7
電車を降りて、キャッティーランドの駅の改札を抜ける。人の波にもまれながら、遠くに見える洋風の城を模したような派手なゲートに目を向ける。
「……はっ。なんやこれ。アホらしい。よりにもよって、こんなクソみてぇな場所に来させられとるんか、俺は」
ゲートに近づくにつれて、カラフルな装飾やキャラクターの看板が目に入る。周りの客は浮かれた顔をしていた。
「ったく、あのアホな女ども、どんだけ浮かれてんねん。こんなもん楽しいとか言うてんのが信じられんな。……ま、せいらが楽しそうにしてるんなら、それはそれでええんやけど」
入場ゲートの手前で、すでに長蛇の列ができているのを見て、顔をしかめる。
「は? なんやこの行列は……ありえへんやろ。俺がこんなとこで並ぶとでも思てんのか? 雑魚どもと一緒にするな。さっさと中に入れろや」
イライラしながら列の先、入場門を凝視する。楽しげな音楽や、キャラクターの声がかすかに聞こえてくる。
「……ったく、こんなテーマパークにまで来させられるとか、ほんまに時間の無駄や。呪霊祓いに行った方がよっぽど有意義やろ。……あいつら、俺抜きでどんだけ楽しんでるんやろな。特にあの五条とかいうイカれたクソ野郎。どうせニヤニヤしとるんやろ。後で絶対潰したる」
ふと、視線を感じて周囲を見渡すが、特に自分を見ている者はいない。自意識過剰な独り言を続けながら、少しずつ列が進む。
「……にしても、ほんまに『猫』ばっかやな。キモイわ。俺が似合うのは猫じゃなくて虎やろが。虎。……まぁ、せいらが猫耳つけてるんは、まぁ、ええけどな。似合っとったし」
舌打ちをして、また列の先を見る。ようやく自分の番が近づいてきたことに気づき、不機嫌そうな顔のままチケットを取り出す。
「ちっ……時間の無駄や。さっさと入って、せいら探して帰ったる。こんなクソみてぇな場所、二度と来るか」
そう言いながらも、どこか期待しているような、複雑な表情を浮かべて、直哉はゲートをくぐった。
──その瞬間だった。
「なおちゃーーんん!!」
ドーン! と金色の毛玉が抱きついてきた。
クリーム色の猫耳と猫しっぽをつけたせいらだ。
「おぉ!? なんや、よう俺がわかったな」
直哉はせいらが突然抱きついてきて驚きはしたが、それ以上に嬉しそうな表情をしている。本人は気付いていないが。
「えへへ。そりゃーわかるよーなおちゃん目立つもん。まずはお揃いの猫耳と猫しっぽ買おうか? 行こ行こ!」
せいらは躊躇う様子もなく直哉と手を繋ぐ。
先ほどまでの小言はどこへやら、
「しゃーないな」
直哉はせいらと手を繋いでショップへと向かった。
★《ミラクル・キャット・カーニバル》
(ランド側:ドリームパレードステージ周辺)
「リズムにのって、星の魔法をかけちゃおう! にゃんダフルなカーニバルの幕開けだよ☆」
キラキラに光るシャボン玉、星の紙吹雪、音楽に合わせて踊るキャットダンサーたち!
パレードのクライマックスでは、ゲストもステージに招かれ、“ミラクル・ステップ”で一緒に踊る”体感参加型パフォーマンスショー”!
• バブルステッキ(無料貸出)でバブル演出参加!
• キャストがランダムで選んだ“本日のミラクルスター”には特別なクラウンティアラが授与される!?
♪演出タイム:約15分(1日3回)
●推奨年齢:全年齢(踊る気持ちがある人)
⬛︎撮影OK!(※キャストの顔出しNGの演者除く)
Åステージエリア:中央ドリームプロムナード
「なおちゃーーんん!! パレードだよー!!」
「見ればわかるわ! それがどないしたん!」
鼓笛隊が前方を通りすぎ、紙吹雪が宙を舞った。
せいらの瞳がいっそうきらきらと輝く。
「ねぇなおちゃんっ、ねぇねぇ! 踊っていいやつだってー! ステッキ貸してくれるんだってー!」
「は? お前ほんまそんなん好きやな……」
呆れたような直哉の声も、頭の上でくるくる回すピンクのバブルステッキの音にかき消される。
せいらはさっそくステッキを借りてきてうきうき顔だ。
「ほらっ! シャボン玉飛んでるっ! わたしもいっくよ〜!」
せいらがステッキを空に向けて振ると、きらきらと光る泡が弾けて宙を舞った。周囲の子供たちも「わーっ!」と声をあげて真似し始める。
「なに……それ。お前も子供か」
「ちがうもーん! 楽しんでるおねぇさんなの!」
「…………」
踊る。跳ねる。回る。
せいらの足元から星型の泡がはじけるたびに、パレードの音楽が一段と華やかになる。
元々せいらはフィジカルな面が優れているから、ダンスや曲芸の真似事が得意だった。
直哉はやや離れたところで腕を組んで眺めていたが、周囲の視線が段々せいらに集まってきているのに気づいて、軽く舌打ちをした。
「おい。そんな前出んな。ぶつかるぞ」
「えへへ〜〜♪ だって褒められたんだもーん。ほら、“本日のミラクルスター”っていうのがあるんだよ? もしかして、わたし選ばれたりして〜〜?」
司会役のキャストが、観客の中をきょろきょろ見回したのち、
「今日のミラクルスターは……ステッキを一番高く掲げた、君!」
あなたお名前は? とキャストに名前を聞かれるせいら。馬鹿正直に名前を教えている。
「──せいらさーんっ!!」
「わーい!! やったぁあ〜〜!!」
パレード中央に導かれたせいらは、ティアラ型のヘッドアクセを頭にのせてもらい、くるくるとステージで回る。
その様子を見ながら、直哉は思った。
(ほんま、ようわからん女やわ……)
しかし、その「ようわからん」が、昔から妙に目を惹くし、思考を乱す。
自分にだけじゃなく、周囲の誰にでも好かれるあの無邪気さが、妙にざわついた。
「──なおちゃんも、一緒に踊ろっ?」
ステージから戻ってきたせいらが手を差し出してくる。
「……踊ったりせん。俺は」
「踊ろうよ! わたしはなおちゃんと踊りたいんだよ!」
はしゃぎながら、もう一度バブルステッキを振りかざす。泡が弾ける。そのたびに、まるで星屑がはじけるように。
──その中心には、いつもせいらがいた。
●8
「それではそよかさん。午後は私と、共に過ごしていただけますね?」
直哉さんを迎えに飛び出していったせいらさんを見送って、私は隣に座っていたそよかさんに声をかけた。
「え? 何? どういう──」
そよかさんの耳としっぽには五条さんカラーのリボンがついている。
「……もう五条さんに決められたんですか?」
「!?」
驚いた表情、しかし肯定するような返事はない。
「…………」
五条さんは今にも噛みつきそうな様子でこちらを見ていた。
「──行きましょう」
手をとって店の外に連れ出す。
「建人さん!」
「今回は家入さんへのご褒美とそういう名目だったから、表立って何かをしたりはしませんでした。
──でも、五条さんの方からあなたとの時間を奪おうと仕掛けてくるなら、私だって遠慮しません」
こんな言葉をそよかさんは喜ばない。それでも言いたくなってしまったのは私のエゴだ。
「──すみません。こんなこと、本当は言いたくもないのに」
「…………」
そよかさんはおずおずと私の手をとって微笑んでくれた。
「建人さんが私を好きだと言ってくれたこと、その気持ち……私はとっても嬉しいし、ありがたいと思っているわ」
「そよかさん」
「建人さんと一緒にいるとなんていうか、落ち着くの。きっといつも建人さんが私のことを気にかけてくれるからなのよね?」
いつもと違う場所のいつもとは違う空気。猫耳と猫しっぽをつけた普段の制服とは明らかに違う、少しだけ可愛いらしく大人びた私服の彼女。
「──私は、そうですね。好意を持った相手には、共にいる時ぐらい安らいでいてほしいと思っています」
「うん。そうよね。建人さんはそういう人」
顔の横にかかる髪の毛を耳にかけて控えめに微笑むそよかさん。その仕草に胸が高鳴る。
「そよかさん。今だけはこれを」
五条さんがリボンをプレゼントしているだろうと予測して、用意していた私カラーのリボンを渡す。
「これは──」
「……今だけは、いいですよね?」
「……わかったわ」
そよかさんは小さく苦笑して、私から渡されたリボンを受け取ってくれた。
「そよかさんと挑戦したいなと思ったアトラクションがあるんです」
「どんなアトラクションなの?」
「それは──」
《キャッティー探偵団と忘れられた鍵》
(ランド側・月波湾エリアにて)
「さあ、新米探偵キャットたちよ。忘却の扉を開ける“光の鍵”を見つけ出せ!」
——星降る夜、キャッティーランドから1つの鍵が忽然と姿を消した。
手がかりは月波湾に残された“4つの猫の記憶”。
君は配られた探偵手帳とスタンプ台紙を手に、園内を巡りながら謎を解き、扉を開ける鍵を完成させよう。
「追加で多少料金発生しますが、ライドの優先チケットが貰え。クリアすると記念品、カフェでの飲み物とスイーツの提供があるんです」
「凄い……楽しそう!」
「でしょう?」
日頃、そよかさんがミステリーものの本を愛読していることを知っていたから。きっと興味を持ってもらえると思った。
「もう参加キットは買ってありますから、探偵団で導入を聞いてスタートしましょう」
「えぇ!」
私カラーのリボンをつけたそよかさんが、私と手を繋いで微笑んでくれる。まるで夢でもみているようだなと私は小さく微笑んだ。
ここまでご覧いただきありがとうございました。