【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。



03黎明編 5・6:陽だまりの教室と薨星宮の密談 、なでなでのご褒美とおはぎの甘い誘惑

●5

 

 傑と硝子を連れて、歌姫と冥さんが行方不明になった洋館までやってきた。

「さてと、どうしたもんか──めんどくせぇから外側からぶっ壊すか?」

『悟、あなたのオツムはスカスカなの? 帳も下ろさずに洋館を外側から壊したらどんな事になるか──』

 間髪入れずに脳内のそよかが小言を口にする。

 

 俺はハッとなった。自分たちで帳を下ろすからと補助監督を置いてきた事を思い出す。

「悟? どうかしたのか?」

 俺の動きが止まったことに気付いた傑が声をかけてきた。

「いや、帳を下ろしてなかったなと思って」

 傑は少しだけ驚いた表情をする。

「なんだよ、その顔」

「確かにその通りだ。なぜか俺は帳を下ろさずに悟が洋館を壊してしまうものと思っていたから──」

「なんだよそれ、失礼な奴だな」

「まったくもってその通りだ。申し訳ない。

硝子に頼もうか?」

 傑が少し離れたところにいる硝子に声をかけるのを、俺はぼんやりと見ていた。

 せいら、そよかと一緒にいる時間が長いからか度々あの双子のイメージが無意識に浮かんでくる。

「──なんなんだよ」

 しかし不思議と悪い気はしなかった。

「あいつらも今頃頑張ってるのかな……」

 青空を見上げる俺、遠くにいる二人のことを考えていると、

「悟!」

 傑から声がかかり意識を戻す。

「へいへい。それじゃあいっちょぶっ壊しますか!」

 硝子が下ろした帳の中で、俺は存分に呪力を使った。

 

 

「やれば出来るじゃないか」

 夜蛾──先生が渋い顔で言う。

「センセーなんでそんな渋い顔してるんですかー?」

「どこかの誰かが帳は自分たちで下ろすからと、補助監督を置いていったからだ! 誰だ! そんなことを言ったのは!」

 左右にいる硝子と傑から指を刺される俺。

「犯人探しは良くないと思いまーす!」

「今回は大事にならなかったから良かったが、決められたルールを勝手に変えようとするな」

 はぁと深いため息をついて、眉間の皺が更に深くなる。

「たっだいまー! おはようみんなー!」

 バーンと教室のドアを開けてせいらが入ってきた。

「先生、遅くなりすみません」

「いや、深夜までの任務ご苦労だったな。席に座りなさい」

 自分の席に優雅に着席する二人を横目に。

「センセー、遅刻した二人に甘くないですかー?」

「お前は……人の話を聞いとらんのか。二人は深夜まで任務を遂行し明け方帰ってきたんだ。休んでいいと言ったのにわざわざ登校してきているんだぞ」

 せいらはいつもより眠たそうにしているが、そよかは普段通り涼しい顔をしている。休めって言われたんなら休めばいいのに──。

「別にあなたに会うために登校したわけではないわ」

 視線も向けずにそよかは俺にしか聞こえないぐらいの声量で言葉を口にする。むっとする俺に、

「みんなに会いたかったんだよ〜」

 せいらの気の抜けた発言に、先生すらふと微笑んでいた。

 

 休み時間。机に座ってぼんやりしているとそよかがやってきた。

「悟、聞いたわ。帳も下ろさずに洋館を呪力で壊そうとしたって」

「してねーよ。直前でちゃんと気付いた」

「……あなたのおつむがスカスカではないかと、常々心配していたけど杞憂だったようね。偉いわ」

 そよかがすっと俺の頭に手を伸ばす。

 ふわりと優しくそよかの手が俺の頭の上に置かれ「偉い偉い」と頭を撫でられる。

 ──はぁ!? 何子供扱いしてんだよ! 俺は──……まぁいいか。

「ふふふ。さとる嬉しそう」

 近寄ってきたせいらが俺の顔を覗き込む。

「べ、別に特別嬉しいわけでもねーし!」

「嬉しいには嬉しいんだね」

 あははとせいらが笑う。そよかもふと微笑んでみせる。陽だまりの中にいるような心地よい時間。

 

 ──同時に一人教室で、机の上に座る自分のイメージが流れ込んできた。

 

 

●6

 

 ──それは、美しい毛並みをした一匹の白猫だった。

 

 高専の地下深くに存在する巨大な結界空間、薨星宮(こうせいぐう)。

 

 本来、私が招いた者しか入れないその場所に、一匹の白猫がやってきた。誰かなどと、悪意なくそんなことが出来るのは僅かしか心当たりがない。

 

「──君か。久方ぶりだな」

 彼女は誰よりも優しく、白い百合の花のように美しく、絶望に囚われそうになる私に、希望を示してくれる。

「久しぶりね」

 ふわりと白猫の姿が変化した。白い着物を着た女性の姿に。

「安定したようだな。以前、訪れた時とは別人のようだ」

「そうなの! とうとうやり遂げたわ」

 微笑みを返す彼女につられて、私の表情も僅かに変化の兆しがあった。何かあたたかなものが、内側に触れるような。

「……相変わらずここは殺風景なところね」

「そうだな。そうかもしれない」

「なら夢をみましょう」

「夢?」

 夢の見方なんて遠い昔に忘れてしまった。

「大丈夫よ天元、私の手をとって」

 恐る恐る彼女の手に触れると、心地よい風が吹き抜けていく。周囲は静かな中庭のある日本家屋へと変化した。そして私の身体も……まるで人として生きていた頃のようだ。

 これは彼女にしか出来ない領域展開、対象に夢として全ての事象を受け入れさせる。強制されるものではないから強い力ではないが、対象の切望するものを見抜き展開される内容を拒むことは難しい。

 ──ただの夢であったなら、こんなにも揺らぐものではない。鼻腔をくすぐる新緑の香り、踏み締める土の感触。

「天元、こっちよ」

「あぁ、いま行く」

 彼女の声のする方に、ゆっくり歩いて近付いていく。近付くにつれて甘い香りが強くなってきた。

「これは、おはぎかな?」

「そうなの、最近食べて美味しかったから、お裾分けよ。いまお茶をいれるわね。座って?」

 勧められるままに座布団に座る。

「実弥っていう、顔も身体も傷跡だらけの剣士がいるんだけど、平和になった世界で時間を持て余していてね。好きこそ物の上手なれって言葉があるじゃない? だからおはぎを作るように勧めてみたのよ」

「なるほど。それはそれは……いただきます」

 ぱくりと口におはぎを入れる。甘すぎず上品な味だ。ほどよく塩気も感じさせる。味わい深い……

「まだまだ沢山あるから」

「うん。ありがとう──」

 

 庭の木々の葉が揺れて、爽やかな音が心地良いと感じる。

「それで? 君はあの頃と、どう違うんだ?」

 懐かしい気持ちもあり目を細める。何よりも彼女の口から聞いてみたかった。

「えぇ。私のね、探していた彼とようやく再会できたのよ」

 嬉しそうに報告する彼女を見て、私も同じように微笑む。

「杏寿郎だね。おめでとう。あの頃の君と今の君はまったくの別人のようだ。今の君は満たされていて、不安定さがまるでない。不可能なことなど何もないとでもいうような強い光として感じるよ。それなのに隠匿も上手になった。既にこの世界にも一手を投じているのだろう?」

「そうよ。前の私では上手く導けなかったけど、今回は違う」

 彼女の表情が輝くのを見て、私も嬉しくなった。かつての私は、こんな風に誰かの喜びを自分のことのように感じただろうか──

「ふふ──。それは楽しみだな」

「詳しく聞かなくていいの?」

「おや、ネタバレは厳禁だと昔から君に散々聞かされたからな。今更だよ。今回も何か知恵を貸してくれるのかい? ……君がいてくれるなら、星漿体との同化は今回は見合わせようかな」

「それは困るわ」

「ふむ──」

「私を誰だか忘れたの?」

「あぁ、そうだな。君は恐ろしい魔女だ。時に試練を与え、成長へと導く。

 ──ならば私も役割を全うするとしよう」

 彼女の淹れてくれた緑茶を一口、優しい香りが心地良かった。




ここまでご覧いただきありがとうございました。
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