【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


31余燼編 17・18:子猫が見た地獄と温かな煮物、身代わりの崖とお姉ちゃんの約束

●17

 

 お菓子やペットボトルを手に、せいらと美々子菜々子は円になって座って語り合っていた。

「お腹空くと苦しいよねぇ。わたしも昔は虫とかよくとって食べてたなー」

 うつろな目でせいらは言う。

「せいら虫食べてたの!? やばくない!!」

「お腹壊したりしない?」

「お腹痛いし、吐いたりしてたよー。でも食べないと死んじゃうし……食べても死んじゃうってことを学んだんだー」

「食べても死ぬって──せいら、うちらよりほんとヤバいよ」

「……ヤバいよ」

「知ってる? カラスって雑食だから、弱ってると肉を食べにくるんだよ。くちばしでつついてきて、まだ生きてるかなーって確認したりね」

 ふふふとせいらは笑う。美々子と菜々子は表情を引き攣らせた。

「──高専がそういう場所なの?」

 高専という言葉にせいらはハッとなる。

「あ、ごめんね! 今は虫とか食べてないし! 高専は良いところだよ! みんな優しいし!」

 美々子や菜々子の話しを聞くうちに、せいらは遠い昔の出来事を思い出していた。子猫として生きて子猫のまま死ぬ運命。傑に飼ってもらった時間はほんの僅かで、無力な子猫のまま全力で生きて死ぬ運命を何度も繰り返していたのだ。

「あのね! ゆうが美味しいものたくさん作ってくれるから! 特に煮物がすごく沁みるの。この間作ってくれたオムライスがすーごく美味しくて!

 

あとしょーこはね! 怪我しても、骨が折れてても、なんでか笑って“はい治った”って言ってくれるんだよ。ちょっと怖いけど、やさしいよ。爪とかもすぐ綺麗にしてくれるし!

 

さとるはね。いつもうるさくて、ちょっかい出してくるけど──本当はすっごく強いんだ。いつもさいきょーって言ってドヤ顔してる。世界で一番強いのかな? あと、たまにお菓子くれる。でも、たいがい溶けてる。

 

りこちゃんはワクワクしたものが好きで、色んなことを教えてくれるの! 今度プール行こうねって言われてるんだけど、わたしはちょっと泳いだりするのは苦手!

 

あとななみんはー。頭が良くていつもビシッと制服を着こなしてる。文字がたくさん書かれてるしんぶんしってやつを毎朝みてて、その上で転がってたらこの間すごく怒られた。

 

なおちゃんは、ちょっと癖のある話し方をするんだけど。まわりの人たちをよくみてて、気付いたことをたくさん話してくれるんだー。よく真っ赤になっててかわいいんだよ。

 

それと、そよか! そよかはわたしと生まれた時から一緒にいるの双子みたいな。わたしより頭が良くて難しいこといつも考えてる。さとるのこと一番好きなのに、素直になれないところが可愛いんだよ。

 

あと、すぐる!

すぐるはねー。わたしの一番大事な人。

 

わたしはみんなが大好き。だから、高専はすっごくいいところなんだー。……ずっといたいなって、思うところなのー」

 せいらの話した内容に驚いている美々子と菜々子。しかし次の瞬間に吹き出して笑い始めた。

「そんなところなら、うちらも言ってみたいかも……ね、美々子」

 ぬいぐるみを抱き締めて美々子も小さく頷く。

「でしょー?」

 せいらも笑顔を返し、笑い合った。

 

 

●18

 

 せいらって、変わってるけど面白い人。お菓子や飲み物もたくさんくれるし、うちや美々子のことをちゃんと知ろうとしてくれてる気がする。

 ──ねぇ美々子?

 隣に座る美々子と視線が合う。美々子もせいらのこと苦手じゃないみたい。

 ……信じていいのかな。

 せいらはうちらが助けてって言ったら、きっと助けて──

 

「──あら、こんなところにいたのね」

 せいらが立ち上がり、うちらとそのおばさんとの間に立ち塞がった。

「その子たち、村の人が探してた子でしょ? こんなところで相手してないで村に連れ帰れば良いじゃない」

「せいら、あの人誰?」

「高専の関係者だよ」

「でも村に連れ帰ればって言ってる」

 美々子が疑いの眼差しをおばさんに向ける。

「補助監督っていう、わたしたちを助けてくれる人なの。ね? しおりさん」

「そうよ。私は貴女たちの味方」

 おばさんはうちと美々子の二人を見てそう言った。それってせいらの味方ではないって言ってる?

「わたしだって村の人たちがこの子たちを探してるって知っているけど、様子がおかしかったでしょ?」

「そうね。何か操られているみたいな残穢があるようだったわ」

 残穢……それってなんだろう。おばさんの身体にも村の人たちについているような、何か黒い影のようなものがついているように見える。

「村の人たちにこの子たちを預けたらひどいことになるかも……だから、しおりさんに匿ってもらいたいの」

「…………」

「しおりさん?」

「──なんで私がお前の言うことをきかないといけないの? 私はお前よりも歳上で、物事の判断だって正しく出来るのよ?」

「!? う、うん。そうだよね。しおりさんの言う通りだと思う。でも、しおりさんだってそう思っていたでしょ?」

「……そうね。そう思っているかも──でも、だからってお前の言う事を聞いているような気がして不愉快ね」

「まぁまぁそう言わずに……」

 その後、せいらはなんとか村人たちからうちらを守ることをおばさんに約束させた。

「わかったわ。仕方ないわね……」

 せいらがほっとした顔で振り返る。うちらも微笑みを返した。

「じゃあ、お前はとっとと元凶の呪霊を祓ってきなさいよ。その崖から行くと近道よ」

「え? それはー……崖を回り込める山道とかあったり──」

「猫みたいにしなやかに動けるんでしょ? 崖から飛び降りるぐらいやってみなさい」

「…………」

「──せいら?」

 心配になってせいらの袖を引く。この崖下は岩場だ。周囲も暗くなっているし、飛び降りたりなんてしたら死んでしまうかも──。

「えへっ」

 せいらは振り返ってうちと美々子を抱き締める。しばらくの抱擁の後に、せいらはおばさんに向き直った。

「じゃあ、みみこちゃんとななこちゃんをお願いします」

 せいらは深々とお辞儀をした。

 おばさんは追い払うように早く行けと手を払う。

「せいら!」

「行かないで!」

 うちも美々子もせいらの手を服を掴もうとする。

「大丈夫! 大丈夫!

お姉ちゃんを信じて!」

 せいらは両手を胸の横でぎゅっと握って、「むんっ!」と小さくガッツポーズ。そして笑顔のまま、うちらを安心させるように優しく両手のひらで頭を撫でてくれた。

 

 そして──

 

 真夜中の崖下に向かってせいらが飛び込んでいった「またね!」と元気な声を残して。




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