【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●19
エイの姿をした飛行呪霊に飛び乗って、崖から飛び降りたせいらをキャッチした。
「──もう大丈夫だよ」
目を閉じて、身体を小さくさせて震えているせいら……もしかして、私が近くで待機していたことに気付いていなかったのかな? だとしたら随分な無茶をする。
「うにゃ?」
閉じていた目を開いて、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。
「すぐるー!!」
首に両腕をまわして抱きついてくる。
「無策で崖下に飛び降りたのかい?」
「すぐるが助けにきてくれると思って!」
にこにことせいらは言う。
「……あまり私を過大評価しないでくれないか?」
頼りにしてもらえるのは嬉しいが、毎回せいらの無茶をフォロー出来るかどうか──
「えー? でも、すぐるだってさいきょーでしょー?」
「──善処するよ」
遠隔でせいらを守るための工夫が必要だ。いっそせいらを守る呪霊部隊でも作ってみるといいのかな。
「呪霊の場所わかったの?」
せいらが私にお姫様抱っこされたまま話しかけてくる。
「うん。でも少し厄介なんだ」
「どういうこと?」
「依頼してきた村人を数人、人質にしているみたいでね。無理矢理何かしようとすると、呪力量も多いし暴走する危険がある」
「それは確かに危険かも! どうしようね!」
「私も今それを考えているところさ」
そうこうしていると廃村まで到着した。
せいらを繭のところに案内する。
「わー! すごーい! 大きいね! それにこの呪力量……」
「だろう?」
さてどうしたものかと考えていると、せいらが片本のこぶしをもう片方の手のひらで受けて、背負っていたリュックから何かを取り出した。
「じゃーん!」
「それは……」
編みかけの何かと毛糸玉だった。色は藤色……ラベンダー色とでもいうのか。
「これに呪力を込めまーす」
「呪力を込めまーすじゃないよせいら。一体、何するつもりだい?」
「編み上がってるこっちを、すぐるに持っててもらいまーす」
ほいと編み上がっている何かを手渡された。
「は?」
「じゃあ行ってくるね!」
「せいら!!!」
止める暇もなく、丸い毛糸玉を持ってせいらは繭の中に入っていった。
●20
子猫の時はすぐるに抱っこされて頭や身体を撫でられるのが好きだったなぁ。
繭の中に入るとすぐに幸せだった頃に包まれた。
ほんの一時だったかもしれないけど、わたしにとっては大切で一番のたからものだった。
『ずっといっしょだよ』
そんな風に声をかけてもらったりもしたかもしれない。今ならその言葉の意味もわかるんだよ。
がぶりとすぐるの指を噛んで、わたしは子猫の姿で床に降り立った。近くにある毛糸玉を確認して、その毛糸玉を前脚で蹴りながら走る。
『待って! いかないで!』
ごめんね。わたしのすぐるは外で待ってるから。
小さい頃のすぐるのことも──ずっとずっと忘れないよ。
見知った場所を離れていく、同時に姿も"せいら"としての姿に変わっていった。
「うそ! せいらじゃん」
「せいら?」
美々子と菜々子のにおいを辿って、せいらは二人のいるところにやってきた。この呪霊は幼い二人の憎しみや悲しみといった感情の一部を取り込み自身の力を高めていると、せいらは残穢を追いながら突き止めた。とある戸建ての、縁側に座る二人を見つけて。
「みつけたー!!」
「せいら! 大丈夫だった?」
「さっきはなんで崖下に飛び降りないといけなかったの?」
美々子は持っていたぬいぐるみを胸の前で抱きしめて言う。
「あれは、そうしないとしおりさんが納得しなさそうだったから──」
「あのおばさんやばい奴?」
「そうなの?」
「違うよ。普段はそこまでじゃないんだけど、呪霊に操られてるみたいな。そんな感じだったかな」
「……呪霊」
「呪霊っていけないものなの?」
「呪霊はね。人の負の感情から生まれるものなんだって、でも呪霊操術とかで呪霊を操ったり助けてもらったりしてもらうことも出来るんだよ」
美々子と菜々子は少しだけほっとしたような表情をする。
「でもね。呪霊はそのままにしちゃいけないの。呪霊は自分のためにしか存在できないから」
「どういうこと?」
「…………」
「呪霊は生きてる人たちの呪力や生命力を奪って、更に強くなろうとするんだよ。そうすると呪霊だったものは、いずれ災厄と呼ばれるぐらい強力なものになって世界に牙を剥く」
「──でもこの呪霊は優しいよ?」
「そうだよ。うちらがこれ以上傷付かないように守ってくれてる!」
「違うよ。守ってるんじゃない。利用してるんだ。その証拠に現実のふたりはまだ苦しんでる」
「「…………」」
「夢をみることは悪いことじゃないよ。幸せになりたいと願うことだって大事なこと。でもそれは現実から目を背けていい理由にはならない」
「……でも今更だよ」
「そうだよ。もうすぐこの呪霊は完全な姿になるって」
「大丈夫だよ!」
「何が大丈夫なの?」
「みみこちゃん、ななこちゃんが私を信じてくれるなら──必ずわたしがふたりを助けてあげる!! 誰かを助けたいって気持ちは力になるんだって教えてもらったから! ね! お師匠様!」
ふわりと音もなく一匹の美しい白猫が空間を割いて現れた。そしてせいらが白猫と額同士を合わせると、白猫の姿がせいらの中に消える。
莫大な呪力がせいらを中心に渦巻き始めた。
『其は長き旅の果ての到達者、其は厳しくも温かい運命導き手、開門せよ──変革する力を、私に!』
まばゆい光が視界を埋め尽くす。
ここまでご覧いただきありがとうございました。