【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
34遷光編 1・2:白鷺のキャンパスと幼少期の記憶、星空の問いかけと最強の編入試験
●プロローグ
「おっはよー! みんなー!」
朝、いつもの調子で挨拶をしながら教室に入った五条悟。しかし教室は何とも言えないピリピリとした空気で満ちていた。
「えっ、みんなどうしたの? 今日、小テストとかあったっけ?」
話しかけながら悟は自席についたが、誰も返事をしない。
そよかやせいらすらも悟を無視して集中している。
「──そろそろ出発するぞ」
担任の夜蛾が、車の鍵を手に教室に入ってきた。
「夜蛾セン! 何!? 出発ってどこに!?」
「今日は大学の編入試験を受ける日だぞ。何を言っている」
「大学!? 編入試験!?」
「各自荷物をまとめろ、お手洗いは済ませておけよ」
すっと廊下に、やや目の下にクマのある七海建人が現れる。
「七海、時間通りだな。お前ならやれる」
夜蛾は七海の肩にぽんと手を置いた。
「……はい」
鞄を手に各々席を立つ。
「あうう……頭が重いよ……」
ふらふらと鞄を肩にかけるせいら。
「せいら、鞄は私が持とう。つかまって」
せいらを抱きとめ鞄を預かる傑。
「ありがとう。すぐるー」
「……なんだ。お前は行かないのか?」
呆然とする悟だけが教室に残されていた。
「行くよ! 行くに決まってる!」
慌てて席を立って、五条悟も後に続く。
「いやーにしても皆さん? もう準備万端って感じだけど、そんなに勉強してたの?」
「……ここ数日まともに寝てないよ」
疲れきった顔でせいらが微笑み悟が顔を青くする。
「すぐると一緒の大学に行けないんじゃ嫌だよー」
「まぁまぁ、きっと大丈夫だよ」
すがりつくせいらを支え、安心させるように背中を撫でる傑。その後、悟と傑の会話の邪魔にならないようにとそよかにさりげなく促され、せいらは車外に注意を向けた。
「ちょっと! ちょっと待って、硝子は『医学部も経験しておくかー』って前から言ってたけど、なんで傑も大学編入なんて──」
「呪術師としてやっていくにしても、大卒はしておいた方がいいからさ」
「もしかして教師にでもなるつもりか!?」
「それもいいかなとは思うんだが、私は宗教法人を立ち上げようと思って」
「宗教? なんか胡散臭いこと考えてんのかよ!?」
「ちゃんと呪術界の未来を考えているつもりだよ。呪術師、非術師、呪詛師……私はね、悟。呪術師としてただ熟練していくよりも、非術師や呪詛師すら呪術師の活動にいかせるような流れをつくりたいのさ」
ちらりと今は窓の外に夢中になっているせいらに視線を向ける。
「彼女の高専に幼等部や小等部を作りたいって活動も応援したいし」
悟は傑の発言に衝撃を受けていた。
「もしかして呪霊が世界からいなくなったら、傑と漫才コンビデビューするって前言ってたの、本気だったわけ」
そよかに冷静に突っ込まれるも「ちげーし!!」と叫び返しながらも、内心かなり動揺している悟だった。
●1
五条家の最奥の一室は、常に帳に守られた場所だ。そこで、幼い五条悟は一日の大半を無為に過ごしてきた。しかし──
「にゃはははは!! にゃはははは!!」
その狭い室内でふわふわの金髪を振り回し"せいら"が走り回っていた。
「おい、お前。やめろ……もうやめろって!」
障子は穴だらけになり、襖にも先ほど大穴が開いた。
「その子は"せいら"よ。いい加減に覚えたら?」
涼しい顔をして"そよか"が言うが、そよか自身も畳に柱にガリガリと爪を立てている。
「おま、お前もいい加減にしろ! さっき爪切りと爪やすりまで貰っただろうが!」
ぶすっとそよかが顔を顰める。
「……だって使い方がわからないんだもの」
「だったら聞けよーー!!!」
俺以上にふたりは常識の理解が不足していた。
「にゃはははは!! にゃはははは!!」
「いい加減に! 走り回るのをやめろーー!!」
『坊ちゃん、本当にその二人と今後一緒に過ごされるんですか?』
身の回りの世話をする使用人達に五条悟は何度も確認された。
『こいつらを呪霊から救ったのは俺だ。実害がないことを証明しないと──』
呪術界の上層部が、厄介なものと判断すると簡単に対象は処分されてしまう。それは幼い五条悟でさえ理解できることだった。
『こいつら、本当は猫の妖怪か何かなんじゃないか?』
そんな風に思わせるほど、せいらとそよかの言動は時折強く猫っぽさを感じさせた。しかし、自分だけは六眼でふたりが人間だとしっかり認識できるわけだが。
しかし、不思議な雰囲気を纏った白猫相手にどこか神妙な面持ちでうにゃうにゃ言われている様子はあまりにも理解し難く。
「だから、そこに乗るなって!」
天袋に身を隠すせいら。どこか満足げだった。
『だめだ。ここままじゃ──でも、どうしたら?』
結果、選んだ道は三人で外の世界に飛び込むことにした。
ランドセルを背負って向かう小学校への道のり──
少し離れた場所で白い猫がじっとこちらを見ていた。
「──悟?」
頬の横にあった長い黒髪を耳にかけて、そよかが五条悟の顔を覗き込んでいる。
「今日は試験だけだから、それほど気負う必要はないわ。むしろちゃんと眠れたのなら、試験に集中できていつもより良い点が取れるかもしれないわね」
「さとるー! がんばろーねー!」
せいらがバーンと悟の背中を叩く。
なぜだか初めて小学校へ向かおうとした時の二人の姿とイメージが重なって見える。
『──いつだってお前らは、俺と一緒にいてくれたんだよな』
いつからか支え合うように生活するようになった。
……お互いに少しずつ出来ることも増えて、もしかして家族っていうのはこういう存在なのかなって思えるぐらいに。
どこかであの頃と同じ姿をした白猫が、俺たちのことを見守っている。なぜだがその時もそう思えた。
●2
夜蛾の運転する車が、朝靄の中を抜けて到着したのは、都心から電車で1時間ほど離れた緑の丘に建つ巨大キャンパスだった。
大きな駐車場の中で、受験生専用に確保されていたスペースに停車させる。
「……でか……」
ぼそりと漏らす悟。
「悟は、白鷺大学(しらさぎだいがく)に来るのは初めてね」
そよかが言った。
「そうか。大学体験会の時は、悟はいなかったな。確か任務が入っていたんだっけ」
「…………」
傑の言葉に沈黙を返す悟は、車を降りると白を基調とした巨大な建築群を見上げていた。
「……白鷺大学……」
地形をそのまま活かした造りで、正門からでもキャンパスの端はまったく見えない。丘の上には、天守閣のような白い建物が霞の中に佇んでいる。
「……あれが、白鷺城ですか?」
傑の問いに夜蛾はうなずいた。
「大学本部はあの奥だ。白鷺城を保存したまま、中枢の研究機関として再利用してるらしい。AIによる情報管理と、呪術的な保全が融合されているそうだ」
駐車場から校舎内に入ると、すぐにホログラムの案内板が出現し、編入試験会場へのルートを示す。
施設内ではAIアナウンスが常に稼働し、ドローンが試験資料などを運搬、警備は無人型のゴーレムAIが担当。
「近未来すぎて意味わかんねー……」
硝子がぽつりと言う横で、そよかが一言。
「無駄がなくて、いい大学じゃない?」
「かもね」
にやりと硝子が笑った。
「……そろそろ時間ですね」
七海が腕時計を見て告げると、一同はそれぞれの決意と受験票を胸に、校舎へと歩き出した。
全員が歩き出す背中を見送っていると、悟はそよかと語り合ったあの時間を思い出す。
星空の屋上。
ベンチのひとつに寝転がって夜空を見上げていた。
「悟、図書室で待っていたんだけど──」
怒りや呆れを通り越して、そよかの言動は無感情。
その言葉を受けて悟はいつも少しだけ後悔するが、いつもすぐ忘れる。
「あなたはまだ学生よね? 勉強もしないで、将来どうするつもり?」
「俺はほら最強だし。五条家の跡取りだしさ」
「……勉強もしないで跡取りだからって家を継いで、そのまま呪霊を祓って一生過ごすの。まぁそれはそれは有意義ですこと」
そよかの言葉の棘に気付いて悟は苛立ち。
「文句でもあるのかよ」
「もしもの話よ。私やせいらがいなかったら?」
悟の脳内に一人で過ごす幼少期が容易に想像できた。
「灰原くんや傑がいなかったら?」
「…………」
──灰原を失い、傑の内面の変化にも気付けずにいる自分自身がありありと想像出来てしまう。何故か、ありえないことだと一蹴できなかった。
「もしもの可能性を考えることだって、ちゃんと勉強をしていないと出来ないことよ。
私はね、悟。あなたにしか出来ないことがあると思っているわ。でもそれは、あなた自身が気付いて手を伸ばす覚悟をしなければならない」
悟はそよかの言葉に耳を傾けた。彼女の背後に広がる夜空には、遠く星々が輝いている。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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