【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●5
──私は卑怯で臆病な人間だ。
壁に貼られた成績表を見て、証券会社に務めていた頃を思い出す。
「エージェントK! 相変わらず真面目っすね!
成績表なんて見て、何を考えているんですか?」
「──少し昔を思い出していました。こんな風に壁に成績を貼り出していた会社に務めていたもので」
「へー。そうだったんすね」
さほど感心した様子なく、上辺だけの受け答え。
しかし、そういう言葉の掛け合いが大事なのだと言われた。
「Kもそろそろ一度目のリクラメーションっすか?」
「リクラメーション?」
聞き慣れない単語に反応する。
「個性の修復っす! 誕生した物語に帰るんすよ。ほぼフルオート。あっという間に終わりますよ。俺たちみたいな物語の調整役は個性を失うと弱体化するんですよ。研修で習ったでしょ?」
「それは……また赤ん坊の頃からやり直すって事ですか?」
「キャラクターにもよりますけど、物語の出番からってことが多いっすね。Kなら高専時代からでは?」
「…………」
──あの頃を思い出す。鈍く胸の奥が痛むような。私にとって、高専はそんな記憶が蓄積された場所だった。
──知らなければ良かった。
そんなことは生きていれば山ほどある。
気がつくと私は高専の図書室にいた。
懐かしい空気で肺を満たす。昔よくここで一人で勉強していたな──。
……そうか、確かこの後に新入生歓迎会というものがあって五条さんたちと初めて出会ったんだったか。
エージェントとしての記憶、あの頃の記憶が混ざっているような不思議な感覚。
本の背表紙を視線で追いながら、図書室の奥へとゆっくり歩みを進める。
図書室の奥にある自学スペースに、見覚えのない女学生の姿があった。
「…………」
私に気がついて、顔の横にあった髪の毛を耳にかけながらゆっくりと顔を上げる。
「あら、あなたは新入生?」
「そうです」
「そう。私は五条家でお世話になってる"そよか"よ。これから任務で九州の方に行かないといけないから、歓迎会には参加できないけれど──」
「……そうなんですか」
長い黒髪に、憂いを帯びた深い蒼色の瞳。
エージェントとしての記憶が警鐘を鳴らす。
『え? ウィッチ? あぁ、研修中に聞いた内容からが気になってるんすね。ディザスターなんて神話クラスっすよ。遭遇なんて滅多にないっす』
『俺たちが関わるのはファミリアとか、もっと下級の……ノイズみたいなものです』
『でも、最近ちょっと変わったウィッチが観測されたとかなんとか──』
胸が高鳴り、緊張する身体。
「大丈夫?」
いつの間にか、彼女は立ち上がり軽やかに私に歩み寄っていた。
「緊張しているの? それはそうよね。私も初めて会う人と話す時は少し緊張するから」
穏やかな彼女の声。
「あなたのお名前は?」
微笑んだ彼女の顔。
「七海、建人です」
「そう。七海さん。ここに来たっていうことは、本を読むのが好きなの? それとも自学で使うのかしら? 帰ったらまたゆっくりお話ししましょうね」
彼女が机の上に置いていた勉強道具を片付けはじめると、丸くなった消しゴムがわたしの方へ転がってくる。
拾おうとしゃがむと同時に、触れ合ってしまう指先。なぜか甘く感じる彼女の香り。
「ありがとう」
「……いえ」
──知らなければ良かった。
『リクラメーションに特殊装備なんて支給されませんよ。任務じゃないんですから』
エージェントとしての記憶や経験に、ゆっくりと蓋がされていく。
史実こそが正しいと思っていた。
──時に甘く、優愛に歪む物語。
思い返せばこの時にはもう、始まっていたのかもしれない。
●6
「や、お疲れ様〜」
何度も試験会場に出入りできるわけもなく、傑とそよかは試験会場を出たところで待っていてくれていた。
「すぐるー!!」
「…………」
「そよかー!!」
試験会場から出るなり傑に飛び付くせいら。そよかに飛び付く俺。
「暑苦しい……」
とは言いつつも、抱き付くのを許して貰えているのが嬉しい。調子に乗って顔を近付ける。
「そよか〜! むちゅー」
「やめなさい…………やめろって、言ってるでしょー」
そよかは俺の髪をむんずと掴むと引っ張りはじめた。
「いだだだだ。髪の毛引っ張るのやめてぇ!」
そんな俺とそよかを尻目に。
「試験はどうだった?」
せいらに話しかける傑。
「全力で頑張ったよー」
そうかそうかと嬉しそうにせいらの頭を撫でていた。
「悟もどうだったのよ」
そよかに聞かれて。
「全力で頑張ったよー」
せいらと同じ口調で返したら額にチョップされた。ひどい!
「お疲れー」
片手を上げて硝子もやってくる。
「どうだった?」
「ヤニが欲しい」
両手をわきわきと動かす硝子に。
「気持ちはわかるが」
「やめとけやめとけ」
傑と顔を見合わせて言った。
「上手く片付いたみたいだな」
ちらりと俺に視線を向けて、硝子が言う。
「けど、途中で七海やそよかが出て行ったのは──」
「後処理は建人さんが対応中よ」
「ふーん」
ジト目の硝子の視線を感じつつ。
「仕方ないだろ、一人で相手をしてたら時間のかかるやつだったんだから」
再び全員で車に乗り込んだ。
「今日はこれからどうすんの?」
そう口にすると、何を言っているんだという視線が全員から向けられる。またか!!
「今日はもう一箇所寄るところがあるからな。昼食もそこで食べる予定だ」
夜蛾が車を発進させた。
また俺だけ知らない展開!?
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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遷光編の続きもオマケ付きの一気見もあるので、
もし少しでも気に入った方がいれば見にきてください。
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