【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●9
「なに、この服?」
また猫耳執事衣装かと思ったら全然違った。
「これじゃ、ほとんど高専の制服じゃん」
くるりとまわって傑に見せる。
「あぁ、それは……悟、更にこれを羽織るんだ」
「は? この暑さで更に着るの? 意味わからん!」
手渡された羽織りに袖を通す。
「髪をセットするから少ししゃがんで?」
「へーへー」
傑が整髪料を手に取り、俺の前髪を撫で付ける。
「あとはこれだね」
包帯を手にしていた。
「包帯? それをどうすんの」
「目元のあたりに巻く」
「なんで?」
「そりゃ、今大ヒット連載中の異能バトル漫画"呪滅の剣"の主人公"溝口 悟次郎(みぞぐち さとじろう)"がそういう格好をしているからだよ」
「はぁぁ?」
──二人で着替えを終えて更衣室を出た。
着替え終えた時から、やたらと視線を感じる。
「これ、俺は問題ないけどパンピーはどうしてんの?」
これというのは目元を覆う包帯のこと。
「小さな穴を開けるとか、色々工夫していると思うよ」
「ふーん。俺のこの格好が、そのなんとかってやつの主人公のコスプレになってるわけ?」
「私も漫画をじっくり読んだことはないけど、前田さんの指示書通りになってるんじゃないかな。ほら、あそこにも呪滅の剣の大きな広告もあるし」
「そ、ならいいけど。傑の格好は?」
「私は溝口悟次郎の無二の親友"傑之(すぐゆき)"だよ。詳しくは知らないけど」
「傑之ってあれじゃないの? ツノ生えてて刺青みたいなのがあるみたいだけど、傑は髪型しか変わってなくない?」
「そうだね。私の今の格好はいわゆる離反前と言うらしいよ。あと彼より少し髪が短いから、お団子が小さくなってしまったけど」
知らない漫画のコスプレをしていることに違和感しかなかったが、視線を浴びながら前田のスペースまで戻ったきた。
「あ、おかえりー」
せいらが手を振る。
「ほほぉぉぉーー!! お二人ともよくお似合いですーーー!!」
前田が高速でスケッチをしていた。
「そよかー」
そよかが帰っているのを見かけてすかさず声をかけると、
「……はっ、はぁっ……!?」
そよかは思わず手で胸を押さえ、よろけそうになる。
「お、おい。大丈夫か?」
長机を飛び越えて、慌てて駆け寄りそよかの身体を支えた。
「……ううっ、悟? その格好……! ちょ、ちょっと近寄らないで……っ」
口に出すのがやっと。汗をかき、冷や汗も滲む。蒼白になった顔が会場の喧騒の中でひときわ目立つ。
俺はぽかんとなった。
「え? どうした? 怖がってるのか? これ、ただのコスプレだぞ?」
「コ、コスプレじゃない……これは……溝口悟次郎……!」
改めてそよかの顔を覗き込む、目は完全にハートマーク状態だった。なにその表情……。
「あー……やっぱり」
せいらがぽつりと。
「やっぱりって?」
「そよか、口には出さないけど悟次郎推しっぽかったからー」
「わ、私……私……!」
そよかは悟の腕の中からじたばた逃れようとするも、まともに力が入らない様子で。
「無理に離れようとしないで! 倒れちゃう!」
せいらに言われてはっとするそよか。
俺はやっと状況を理解して、ニヤリと笑った。
「……なるほど、これが推しの威力ってやつか」
「──違う」
「?」
「悟次郎はそんな話し方しないわ」
そよかは急に冷静さを取り戻すと、俺の顎に頭突きをして距離を取った。
●10
「オーケーオーケー。俺のコスプレの完成度は高いわけだろ? じゃあさ、あとは中身の理解を深めればもう完璧ってわけよ」
前田まるこの愛読書、そして布教用に持ち込まれた"呪滅の剣"に高速で目を通す俺。
「話し方は七海っぽい感じで一人称は僕な! よし! 理解した! そよかっ! そよかはどこだ!」
きょろきょろと見回す。
「今は接客中だよ」
段ボールを折り畳んで片付け中の傑に教えてもらいダッシュでそよかに近付く。
「そよかさん──僕です。悟次郎ですよ」
「…………」
耳元で優しく囁くと──。
「そよかーーー!!!」
せいらが叫ぶ。そよかは俺の腕の中に満足そうな顔でパタリと倒れ込んだ。
「五条さーーん!? こんの忙しい時に! なにしてくれるんですかーー!! そよかさんのかわりに会計係として入ってくださいっ!!」
山のようなスケッチブックと格闘している前田までもが絶叫し、俺はそよかを腕に抱きながら様々な本やグッズが置かれた長机の前に立った。
「あはは! なんか悟が悟次郎してると脳がバグってくるーー!!」
せいらが楽しそうに笑っている。
「そよかの意識を失わせるとか、なにしてくれてんの!!」
硝子には真面目に怒られた。既に開場しており、スペース前には長蛇の列が出来ている。
「だってさー! 試したくなるじゃん! そよかが喜んでくれるならさ!」
笑い合いながらもなんとか午前中を乗り切り、順にお昼に出かけることになるのだった。
『お昼ついでにコスプレ広場でサークルの宣伝してきてください!』
前田から密命を受けてコスプレ広場にやってきた。
「あ、あの……公式コスプレの方ですか?」
控えめに、際どい衣装を身にまとった女連中に声をかけられる。
「いえ、違います。そんな風に見えますか? なら良かった」
隣にいた傑がにこやかに言葉を返す。
「キャー! 傑之! 離反前だ!」
「カッコいい!」
顔を見合わせて何やら喜んでいる。
「ふーん。傑之、人気じゃん」
「悟の悟次郎のクオリティが高いから、相乗効果だよ」
いつものように傑の腕が肩にまわされると、それだけで周囲に人だかりが出来る。
「あ、ここで撮影されるんですか?」
「私たちも撮影させてください!」
「あぁ、どうぞご自由に。あと私達はここのサークルの手伝いをしておりますので、お時間あれば見に来てくださいね」
手慣れた手付きで周囲を囲っている面々に名刺を渡していく、その名刺には前田まるこの壁サークル"前田屋"の今日のスペース情報やHPアドレスが書かれている。
「準備がいいもんだな」
「流石は前田さんだよね。
ポーズに関しては素人なので、何かあれば教えてください」
ここまで写真を撮られるのも珍しいなと思いつつ。しばし傑と共に写真を撮られまくった。
「悟次郎のコスプレなんて、顔面偏差値の低い奴がやる筆頭ですな」
「そうそう、包帯で顔面ほとんどぐるぐる巻きですし」
「この囲みだって包帯を取ったら一気に散るでしょうな」
わざわざ俺たちまで聞こえる声で、太って大汗をかいた男達がニヤつきながら話している。
「…………」
「悟、落ち着いて」
「別にそこまで気にしちゃいねーよ」
「ならいいんだけどさ」
「……傑、さっき漫画のページチラッと見せたけど"解願"の本気の抜刀ポーズいけるか?」
「あぁ、あの悟次郎が目元の包帯を片手で下にずらすやつね。いいんじゃないかな」
さっきたまたまこのポーズカッコいいなーと、傑と漫画を読みながら話していて良かった。
「はーい皆さん! それじゃあ最後に特別なポーズをとるからカメラ構えてね!」
手を振ってアピールしてから傑と二人抜刀してポーズを決める。コスプレ広場に大音量の黄色い歓声が響き渡った。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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遷光編の続きもオマケ付きの一気見もあるので、
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