【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●17
シェアハウスの談話室。
「俺、教師になろうと思って」
大事な話があると呼び出されらせいらがいたから、なんだ……と思ったら進路の話だった。
「──面接の問答としては好印象かもしれないわね」
「いや、本気だって!! 本当の本心!!」
「さとるが先生かー」
テーブルに頬杖をついてせいらがにんまりと笑う。
「いけてるだろ」
「調子に乗らないでくれる?」
じろりと目線を送ると、悟は背筋をピンとさせた。
「それで? 教師っていっても色々あるけど……」
「そりゃあもちろん呪術高専の教師!!」
「──務まると思うの?」
「それは、これから努力するってことで……」
悟は私たちの顔色を窺うように視線を向けてくる。
「どうかな?」
「わたしはいいと思うよー!」
「……そよかは?」
「これからしっかり努力するなら……なれるんじゃない?」
ぱぁと悟の表情が明るくなる。
「ただ、あなたは傑によく言われているけど今後はなるべく一人称を私か僕にするべきだわ」
「それについては問題なーし!! "呪滅の剣"のコスプレで鍛えた"悟次郎"の話し口調でいくから!」
「や、やめなさい!!」
呪滅の剣の溝口悟次郎といえば、公にはしていないが私の推しなのだった。悟のコスプレ姿を思い出してしまう。
「あー! そよか赤くなったー!」
せいらが徐に立ち上がり、私の頬を人差し指でぷにぷに指差してくる。
「せいら!」
「僕の評価も上がり、そよかもドキドキさせられる! まさに一石二鳥!!」
立ち上がりカッコいいポーズを決める悟。
「よーし! じゃあ傑と硝子にも話してくる!」
「待ちなさい!」
「?」
歩いて部屋を出て行こうとした悟を、立ち上がって呼び止める。
「……高専教師、あなたは向いてると思うわ。六眼で本人よりも術式を理解することが出来るのだもの。あとはわかりやすく教えるためのスキルとか、心理学とかも学ぶといいんじゃないかしら?」
悟の袖を小さく掴んで言うと、
「ありがとう」
微笑んでからぽんと私の頭に片手を置いた。
──大学編入は全員合格。
私たち呪術高専メンバーは特例で、よほどの成績や態度じゃなければ不合格になることはないと、後から聞いた悟がずっこけていた。
建人さんは飛び級の編入試験だったから、私たちより努力して成し遂げたわけだけど。
「それでぇ? 君は伊地知くんだっけぇ? 宜しくねぇー?」
睨め付けるように悟がシェアハウスメンバーのなぜか床に正座している伊地知くんに絡んでいた。
一年生は実家から通っている人が多い関係で、シェアハウスメンバーになったのは彼一人だったから、自ずと悟や他のメンバーと話す機会も彼が人より多くなる。
「悟、やめなさい。なんでそんなに圧をかけるの」
「別に圧なんてかけてないけどー? こいつがやけに怯えるもんだからさー」
「そういうのが良くないって言ってるの!」
ぺしりと悟の頭を叩く。悟は唇を尖らせて不満そうにしている。
「傑にもう少し友好的な人との付き合い方について教えてもらいなさいよ」
「それいいかも! 傑〜」
うきうきと悟は傑の部屋へと向かった。
「ごめんなさいね。悟があんなんで、先輩があんな態度じゃ話しづらいわよね」
髪を耳にかけて微笑み話しかける。
「…………」
伊地知くんの表情が、ホッと緩んだような気がした。
「そよかさん」
スッと音もなく建人さんがやってくる。
「危険です」
「え? 危険? 何が──」
「……危険です」
伊地知くんを後ろに庇うように、建人さんは私と伊地知くんの間に立った。
「?」
ちらりと建人さんが伊地知くんを見た。彼の頬は微かに赤らんでいた。
●18
「異変〜。異変〜。異変はどこかな? どこですかー?」
猫を頭に乗せたまませいらがきょろきょろと周囲を見回す。異変を見つけたら引き返す、異変がなかったら先に進むで正解なら行った先の◯番出口の番号がひとつずつ増えていくことがわかった。
「でもさー。8番出口まで行ったら出られるって書いてあったけど、外に出られるだけなら意味ないよね?」
またせいらが変に感のいいことを口にする。
「せやなぁ、俺たちがやらなあかんことはここにいる呪霊を祓うことやからな──」
進む先に気配を感じてせいらの前に腕を出す。せいらも気付いたようや。
「誰かいるね。異変かな?」
小声でせいらが言う。かもしれへんが。
「わからんな」
警戒しながら進むと呪術師が二人倒れとった。
「あー!」
せいらが心配そうに近寄っていく。
「おいおい、そんな不用意に近付いて大丈夫か?」
「あぁ、せいらさん……来てくれたんですね」
「何があったの?」
「ずっとここから抜け出せなくて、彷徨い歩いてました」
安心したのかガクリと気を失う。
「どないする? このふたり。ここに置いていくか?」
「助けに来たのになんで置いてくの!」
ぷーと頬を膨らませるせいら。
「こんな時のためのまーくんだもーん。お願いしまーす」
「んなーーーうぅぅぅ」
まーくんと呼ばれている猫が下に降り立つと、倒れている二人にテシテシと蹴りを入れる。すると二人の身体はみるみる縮んでいき、最終的ににはその猫があぐあぐと食べてもうた。
「おいおい、なにしとんねんこいつ!!」
「何してるって、人命救助?」
「喰ってもうたぞ!?」
「大丈夫! 大丈夫! ちゃんとした訓練を受けてます! 外に出たらぺっ出来るんだもんね」
猫は誇らしげにふんぞりかえっとる。いやむしろホンマわかっとんのんか? この畜生めが。
「ちゃんとした訓練だぁ? まさか俺も行動不能になったら同じようにするつもりやったらドン引きやで!?」
「えー? だめぇ?」
「駄目に決まっとるやろがい!!!」
──
「異変〜。異変〜」
そして再び異変を探す。
「さっきの異変はわかりやすかったな。通路にふたり立っとるっちゅー」
「そうだね。歩いてくるおじさん以外にも人が出てくる異変あるんだーって感じ。でもさ、私わかったよ!」
えっへんと胸を張るせいら。
「さっき救命対象がいたところでは、異変なしで進んだら数が増えたじゃない? つまりー。異変はこの呪霊が用意したものが異変ってことなんだよ!!」
「そーやろなー」
「反応薄っ!!! わたし悲しい!!!」
猫を頭の上に乗せたまま地団駄を踏む。
なんかつまらんなー。せや、せいらのことからかったろ。
「こういうループ系の領域に囚われとると……あれやのぉ、外に出たら浦島太郎状態になっとったらどないする?」
「ほぇ? ──それはそうなった時に考えればいいんじゃない?」
意外とまともなこと言うやないか。
「お前の好きな夏油も死んどるかもしれんし、もしかしたら他の奴と結婚してたりもするかもしれんぞ?」
「うーん。流石にそこまで私が取り残されるなら、お師匠も助けてくれるんじゃないかなぁ」
腕を組んで、うむむと考え込んでる。
「師匠? 五条家にはそんな呪術師がおるんかいな」
「あー。まぁわたしのお師匠はお師匠なので、なおちゃんは知らないと思う」
「なんやそれ」
「すぐるが他の誰かと幸せになるのは、それはそれでいいかなー」
ぼんやりと遠い目をして言った。それは俺の知ってるせいらとしては意外な言葉やった。
「へぇ、意外やな」
「わたしより選んだその人と幸せになれるってすぐるが判断したんだったら、応援してあげたいし幸せになってほしいなーって思うよ」
力無く笑うせいら。
「なんで──なんでそう思うん? 嫌なら嫌って言えばえぇやないか。自分を優先する以外に大事なもんなんてあらへんやろ」
「……なおちゃんはそうなんだね。それもひとつの考え方だよ。きっと一番大事にしていることが違うから、判断や答えが違うんだと思う」
「…………」
「わたしの一番はすぐるだからさ、すぐるの幸せがわたしの幸せ。それでいいんだ!」
「不器用なやっちゃな」
せいらの身体を抱きしめる。
「泣きながら言う奴あるか──この阿呆」
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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