【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●5
せいらに何してたの? って聞くと『お師匠に会いに行ってたー』ってよく言っていた。
特別会いたいと思ったことはなかったけど、せいらが師と仰ぐ人がどんな人なのかなと興味を持つことはあった。
「え? お師匠様がどんな人かって?」
せいらが腕を組んでうーんと声に出して悩み始める。
「私のお師匠はねー。すごい人なの!!」
「すごい人?」
ざっくりとした答えに思わず笑ってしまう。
「どうすごいの?」
「なんでも知ってるしー。不思議な力でなんでも出来るんだよ〜。キラキラぴゅーん! って」
せいらはほんの一瞬、何かを思い出すように真面目な顔になる。
「なんでも? たとえば?」
「なんでもはなんでもだよー」
ふにゃっと柔らかく微笑むせいら。
「そっか。いつか私もご挨拶できるかな」
「すぐる、私のお師匠様にご挨拶したいの?」
「そりゃあ、せいらのお師匠様なら……せいらの家族みたいなものだろ?」
「じゃあ言っておくね!!」
ぱぁと明るい表情でせいらは言った。
──
「──ここよ」
ドアをノックして部屋に入っていくそよか。
空き教室のひとつが"科目準備室"として作り替えられていた。一体いつから? まるで今までの認識外にその空間があったかのように、不思議な気持ちになる。
「入って」
促されて部屋の中に歩みを進め、周囲を観察し──部屋の中は書斎のような本棚に区切られた部屋と、応接室のような高級そうな椅子と机が置かれていた。
「…………」
室内に人の気配はなく、椅子の上に白い猫が一匹丸くなって目を閉じている。
「今は不在中かな?」
振り返ってそよかを見た。彼女はドアの近くに立ったまま、ちらりと私を見て目を伏せる。
「──ようこそ。夏油傑」
驚いて声のした方を振り返ると、先ほどまで一匹の猫がいたところに、一人の女性が座っている。
初めて会ったはずなのに、なぜか懐かしさを感じ胸を締め付けられるような……。
「あなたを歓迎しましょう。良ければ席に座って?」
にこりと微笑む。その表情にどこかせいらの面影を感じた。
席に座るよう言われて、腰掛ける。問いたいことはいくらでもあった。ただ彼女の機嫌を損なうようなことはしたくない。
「──あなた。本を読むのは好きよね」
「は?」
突然の声かけに言葉に詰まる。
「子供の頃にあったでしょう。知らない物語を初めて絵本で読むような、そんな感覚を心地良く感じるタイプ」
「…………」
「せいらをどうしたのかとか、私が何者なのかとか……聞きたい事は多いわよね。ただ私の話を聞くということは……もう聞く前には戻れないけれど──」
じっと私を見透かすような瞳。自然と息をのんでしまう。
「あなたは"せいらを選んだ"のだもの。今更背を向けたりはしないでしょう?」
彼女の眼差しは、もう私の心の奥底を見透かしているようだ。せいらが師と仰ぐ存在……甘くみすぎていたかもしれないな。
●6
「これは何かな? 乙骨憂太君」
刀身が栓抜きのようにぐにゃぐにゃになったナイフを拾った。
「ナイフ……だったものです」
お札が周囲に貼られ、たったひとつ置かれた椅子に膝を抱えて座った乙骨憂太が答える。
「死のうとしました。でも、里香ちゃんに邪魔されました」
「暗いねぇ。ずっとそのキャラクターでいくの?」
顔を覗き込むようにして近付く。
「キャラクター? どういう意味ですか」
「今日から新しい学校なんだしさ! パーっと盛り上げていかない?」
憂太は新しい学校という言葉に顔を引き攣らせ、
「行きません」
また暗い顔で俯いた。
「もう誰も傷付けたくありません。だからもう外には出ません」
「ずっと一人でいたいの? 一人でいたら本当に誰も傷付けないのかな?」
「──何が言いたいんですか」
「君の両親、小さい頃の友達とかさ。もう一度会いたい人とか、いるんじゃないの?」
「…………」
憂太は少し遠い目をした。まるで昔を思い出すみたいに。
「僕は東京都立呪術高等専門学校で教師をしてます! 五条悟です!!」
僕の大声を聞いて憂太はビクリと驚く。
「東京都立? 専門学校っていうのはわかりましたけど、じゅじゅつって?」
「──さてここで問題です! 日本国内で年間どれだけの人が怪死、または行方不明になっていると思う?」
「え? えぇと……千人とか?」
「惜しい、一万人だよ」
惜しいってどこがという表情をしている。はい、掴みはOK。
「そのほとんどが人の肉体から抜け出した負の感情"呪い"の被害だ。中には呪詛師が原因の悪質なケースもある」
「…………」
「呪いに対抗できるのは呪いだけ。その呪いを使いやすくしたものがさっきも耳にしたね──呪術ってわけさ。呪術高専は呪いを祓うために、呪いを学ぶ学校」
「僕は呪われてるんですか?」
「そうだね。君は呪われている。そしてその呪いはとても強力なものだよ。だからこそ──」
憂太は黙って僕の次の言葉を待った。
「その呪いを呪術として扱えるようになったら、君はきっと強力な呪術師になるだろう」
「……強力な呪術師」
正直、呪術師なんて言われてもピンとこないだろうなとは思っていた。でも、何者かになれると言われたら嬉しいよね……俺もそうだったもん。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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幽境編の続きもオマケ付きの一気見もあるので、
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