【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●11
暗い暗い闇の中。
──思っていたより苦戦したかな。
傑を呼んで取り込ませようかと思ったけど、そんな余裕もないか。
最後に休んだのはいつだっけ……。
疲れが溜まっているのか上手く思考がまとまらない──また脳みそを一度潰して再生させるか、そんなことを考えているとぽんと肩を叩かれた。
「やっ」
「傑!?」
五条袈裟を身に纏った傑だ。
「上手い具合に弱ってるじゃないか。これならいけるね」
傑が手を翳すと、呪霊は吸い込まれるように球体になっていく。
「五条さん、あなたの任務は今日はこれで終了です。お疲れ様でした」
「はっ!? 七海まで!」
「悟、帰るわよ」
がしりと後ろから腰に腕を回される。
「そよかー!! 来てくれたの〜?」
「後処理と報告は私と夏油さんで行いますので、五条さんはしっかり休んでください」
そよかにずるずると後ろに引っ張られた。向かう先にはそよかの作った"猫の道"っていう瞬間移動の術式。俺の移動とは違ってルートとか考えなくていいのが羨ましい。
瞬きする間に、俺の部屋の玄関まで戻ってきていた。
「ほら、早く。まずはお風呂に入ってきて」
「え〜。せっかくならおかえりなさいの流れやってよ〜。お風呂にする? 食事にする? それともーってえぶし!!」
そよかの容赦ないパンチが顔面を襲った。顔面パンチはご褒美です!! 俺は鼻歌しながら服を脱ぎつつ風呂場に向かった。
味噌汁の香りを嗅ぎながら食卓に着席する。
ほかほかの白いご飯。豚肉の野菜炒めからはニンニク醤油の香りが。サラダもあるし、美味しそう。
「わー。そよかの手料理、久しぶり! いただきまーす!」
箸を持って手を合わせた。
「ちゃんとよく噛んでね……」
「にしても、なんでまた傑と七海連れてきたの?」
「最近、悟の任務が続いていたみたいだから。労働基準法に基づいて介入しただけよ」
「えへへ。そうなんだ」
「明日も休みね」
「そうなの!?」
「休日出勤が続いているようなものだから、本来もっと振替休日をとらないといけないのよ。その分給与に上乗せするように手配しておいたけど」
「おー」
「ゆっくり噛んで食べて」
「はーい」
そよかも小さくいただきますと手を合わせてから食事をはじめた。
「何、にやにやしてるの?」
「そよかと一緒に食事が出来て嬉しいなぁと思ってさ。今日はこのまま泊まっていくんだろ?」
ススス……とテーブルの下でそよかの足を、足の指先で撫でる。
「……さぁ、どうしようかしら」
サッとそよかは自分の足の位置をずらす。
「泊まっていくだろー? そよかがいつでも泊まれるようにお泊りセットがせっかくあるんだし。明日はそよかも休み?」
「──休みだったらどうするの?」
「当、然っ!! デート一択でしょ」
ニッと笑う。
「……仕方ないわね」
少し困った様子で微笑むそよか。
そよかの返事を肯定と捉えて、俺は明日のデートプランを脳内で高速で組み立てた。
「時期的に夜はイルミネーションは見に行こう!」
「寒くない?」
「当然、俺があっためてあげるよ」
「……ばか」
──
──夜中、目を覚ますと俺は一人でベッドで寝ていた。
起き上がって、そよかの姿を探す。
いた……ソファーの隅っこで毛布被って丸くなってる。猫みたいに。
『せっかくダブルサイズにしてるんだから、気にせず入ってくればいいのに』
そよかを静かに抱き上げてベッドの上に運ぶ。
『今日ぐらい抱き枕にしてもいいよね』
──そよかの香りに包まれて、俺は深い眠りに落ちていった。
●12
みんなで高専の校舎に向かっていた。
12月に入ってからは急に寒くなったな……今年ももう終わりかと考えていると。
「どーした憂太?」
「えーっと、なんかちょっと嫌な感じがして……」
「気のせいだ」
「気のせいだな」
「おかか」
みんなから気のせいだなって言われる。
「えぇ、ちょっと皆ぁ」
小走りにみんなに追いつこうとした。
「だって憂太の呪力感知超ザルじゃん」
パンダ君が手をひらひらさせて歩いていく。
「まぁ、里香みたいなのが常に横にいりゃ鈍くもなるわな」
「ツナ」
頭上からバサバサと鳥の羽ばたく音が聞こえてきた。
「珍しいな。憂太の感が当たったか?」
「?」
みんなが警戒するように呪具を手に構えようとした──けれど、五条袈裟の人物を視認すると肩の力を抜く。
「なんだ。夏油さんか」
「なんだ……って、えっ? どういうこと?」
「呪術高専のOB。五条先生の同期」
「お、美々子と菜々子も一緒じゃん。おーい、今日は任務じゃなくて休んでんのかー?」
「すじこ」
二対の翼を持つ大きなペリカンの口から二人の女子学生が姿を現す。パンダ君の声かけに微笑んで手を振り返していた。その女子学生以外にも何人かペリカンの口から出てくる。みんな面識があるみたいだった。
夏油さんと呼ばれた人物は口元は柔らかく微笑んでいるのに、視線はふと空の一点を見据えるように鋭く、どこか遠い計算がちらついているように見えた。その目の奥にはどこか冷たく研ぎ澄まされた光が宿っているようだ。
「はじめまして、乙骨くん。私は夏油傑」
一瞬の間に距離を詰めて、にこりと微笑んだその人は僕の手を握り自己紹介をしてくれた。
「えっ、あ……はじめまして」
「君はとても素晴らしい力を持っているね。私はね……大いなる力は大いなる目的のために使うべきだと考えている」
「?」
「今の世界に疑問はないかい? 一般社会の秩序を守るため、呪術師が暗躍する世界さ」
「傑!」
五条先生と、夜蛾学長たちが走ってくる。夏油さんはちらりとそちらに視線を向けたけど、すぐに視線を戻し僕に向かって言葉を続ける。
「呪術師の犠牲の上に成り立つ世界なんて、嘆かわしいと思わないか? そろそろ人類も生存戦略を見直すべきだと思ってね……だから君にも手伝ってもらいたい」
「何をですか?」
「呪霊の存在を世界中に知らしめたいんだ」
「……えっ?」
「上層部は当然反対するだろう。だから、ここでひとつ──呪霊の大祓大会を開こうじゃないか」
周囲の空気が張り詰める。誰もが息を呑むほどの静けさの中、五条先生の白い髪だけが微かに揺れた。
「本気なのか」
五条先生が真剣な様子で話しかける。
「もちろんさ。上層部の傘下は隠匿組として大会に参加してもらう。私の呪霊と家族たちは暴露組として大会に参加する。多くの呪霊を祓い勝敗は“祓った呪力の総量”で判定する──命を奪うことは禁じる。これは暴力の肯定ではなく、関係性の再構築を狙うためだ」
真剣に訴えかけるような様子で、夏油さんは言葉を続けた。
「互いの目的は“殲滅”ではなく“理解”だからね。命を奪う戦いにしてしまえば、呪霊と人との関係は永遠に断絶したままになるだろう? ただ、少しぐらいは罰(いたみ)がないと能力の向上が期待できない」
真希さんがうんうんと頷いていた。まさか夏油さんの教えだったの?
「硝子は暴露組に入ってもいいと言ってくれたけど、彼女の能力特製上中立の立場で参加してもらうよ──さて」
夏油さんは僕たちを囲んでいる人たちに向き直り、声を張り上げる。
「お集まりの皆々様!! 耳の穴をかっぽじってよーく聞いていただこう!!」
夏油さんが視線で何か五条先生に訴えかける。五条先生が顎に手を当て、真剣な表情で夏油さんの視線を受け止めた。
「更にこの大会には、総大将を立てる! 総大将の活動停止は、その陣営の士気を大きく下げるだろう。我々暴露組総大将は、この私、夏油傑が務める!!
そして隠匿組総大将は──」
全員の視線が五条先生に注がれる。
「憂太! 君が担当してくれ」
五条先生が僕を指さし、有無を言わせぬ表情で言い放った。
「えぇぇぇ!? 僕ぅ!?」
「来たる12月24日!! 日没と同時に!! 我々は百鬼夜行を行う!!
場所は呪いの坩堝、東京・新宿!! 呪術の聖地、京都!! 各地に千の呪いを放つ。それらの呪いを呼び水に、思う存分……祓い合おうじゃないか──。
もちろん、細かい時間設定や、総大将戦のルールについては、書面をもって上層部の承認も得てから正式に取り交わす。ルールに不服のある者や、私的な怨恨で命を奪おうとする者がいれば、所属陣営に関係なく、私が許さない」
「あー!! 夏油さん! お店閉まっちゃう!」
「急がないと……」
先ほど美々子、菜々子と呼ばれた女の子たちが携帯を見てそわそわとし始める。
「もうそんな時間か、すまないね。今はせいらとの思い出を巡るツアーの途中なんだ。今日は竹下通りのクレープを食べないと」
「クレープ!?」
真希さんたちが目を輝かせる。
「君たちも行くかい?」
「行く行く!」
「しゃけ!」
「パンダも行っていい?」
え? え? みんな行く気みたいでキョロキョロしてしまう。
「お前、校外に行くならそれ脱げよ」
真希さんが呪具ケースでパンダ君のお腹を小突く。
「いやんエッチ」
身体の前で手をクロスさせるパンダ君。
「ちょっと待ってパンダ君、それ脱げるの!?」
「校外学習なら教員の付き添いも必要ですよねー? 学長〜」
これは……五条先生もついてくる気だ。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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幽境編の続きもオマケ付きの一気見もあるので、
もし少しでも気に入った方がいれば見にきてください。
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