【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


52幽境編 15・16:事務局設営と浄化の呼び水、清潔な白手袋の挑戦状と総大将の守護

●15

 

「よぉし! それではここをキャンプ地とぉ──もとい! 妾が今からここに大祓大会の事務局を設立するのじゃ!!」

 呪力カウンターなど機材が次々と設置されていく。

 "天元の眼"としての妾の見せ場がついにやってきたとほくそ笑む天内理子。

 しかし周囲スタッフのテンションは低い。

「なんじゃなんじゃーお主らー? もっと盛り上げていかぬかー?」

「……天内さんは不安じゃないんですか? 暴露組が勝ったら世界中に呪霊の存在が知らされてしまうんですよ?」

「んー?」

 腕を組んで考え込む天内。

「ま! なんとかなるじゃろ!!」

 笑って不安がる相手の背中を叩く。

 

 天内理子の明るさが事務局設営メンバーの沈んだ空気をほぐしていた。

 

 ──

 

 そよかは、新宿の超高層ビルの屋上に立っている。

 夜の風が冷たく頬を撫でる。下界のざわめきは遠く、まるで世界が次の瞬間を息を潜めて待っているかのようだ。

 天高く吹き上げる風がスーツのスカートを揺らす。少し後ろには、冷静な面持ちの七海建人が立っている。

 眼下には、夏油傑が仕掛けた大祓大会の戦場が広がり、結界に覆われた新宿の夜闇を、「白」と「黒」の二色の呪力が照らし出していた。

 白い呪力、黒い呪力。遠くから見れば、闇夜に咲く白銀の火花のようだ。隠匿組が纏う白は秩序の守護を、暴露組が放つ黒は変革への意思を意味する。しかし、この戦いの本質は、思想の対立だけではない。

「まるで、白と黒のオーケストラね。旋律を奏でているのは呪力──建人さんは、あの二人がこんな単純な構図の裏で何を企んでいるか……少しは気になっている?」

 顔の横の髪を耳にかけて、そよかは淡々と口にした。

「この大祓大会の本当の役割は、呼び水よ。傑の呪霊操術で千の呪霊が放たれることで、これまで隠れていた新宿と京都の地下に溜まった全ての呪霊たちが興奮し、一斉に地上へ誘い出されている」

 ──七海は静かに応じる。

「なるほど。確かにこれはただのテロではありません。広域の浄化作戦である、と。しかし、上層部はそれで納得するでしょうか?」

「ええ。そして、この呪力の渦が巻き起こることで、最も隠したがっている呪いも、ついにその核を露わにする……それが、悟と傑の望み──」

 その時、ビルの屋上を突き抜けるように強い突風が吹き荒れた。

 突如の強風に、そよかの体が大きく煽られ、バランスを崩す。

「っ!」

 倒れかけたそよかの体を、七海が即座に手を伸ばして強く支えた。七海の掌の冷たさが、そよかの腕を通して伝わる。

「危ないですよ、そよかさん」

「──ありがとう。この風、まるで警告のようね」

 七海はそよかを離さず、そのまま眼下の戦場を見据える。夜の新宿には、白と黒の光が、まるで運命の選択のように激しく交錯し続けていた。

 

 

●16

 

 新宿の高層ビルの陰。ビル風が唸りを上げる中で、日下部篤也はビルの壁に背を預け、静かに息を潜めていた。

「チッ、全く面倒なことになりやがって……」

 日下部は、周囲の呪力の流れを注意深く探っていた。夏油傑の「大祓大会」が始まって以来、新宿は「白」と「黒」の呪力が混じり合う地獄絵図と化している。一級術師として駆り出されたものの、日下部の目的はただ一つ。安全な場所で静かに時間が過ぎるのを待つことだ。

 彼は人通りの少ない裏通りや、呪霊の発生が少ないエリアを渡り歩き、慎重に隠れていた。大祓なんて五条悟のように規格外のバカに任せておけばいいのだ。

 その時、周囲の呪力の気配が完全に消失したことに気づき、日下部は思わず目を見開いた。

「え……?」

 このエリアに点在していた、十数体の黒い呪霊の気配が、まるで掃除機で吸い取られたように一瞬で消え去っている。

 まさに音が消えた。風も、遠くの爆音も、まるで世界が息を止めたように──そして、耳障りなほど明るい声が響いた。

「日下部さん、見つけましたよ!」

 その声に、日下部はギョッとして顔を上げた。

 そこに立っていたのは、鮮やかな黒の呪力をその身に纏った、笑顔の青年。灰原雄だ。彼は、血も呪いの欠片もついていない、清潔な白い手袋を嵌めた両手を、快活に日下部へ向けて差し出していた。

「灰原じゃねぇか! 何でお前がこんなところに……いや、お前『黒』かよ! 高専卒業生のくせに!!」

 日下部は思わず半歩後退する。灰原は夏油傑に懐いている様子だった、つまり「暴露組」だ。

「はい! 僕は夏油さんの理想に共感して参加してます! 日下部さんこそ、こんな新宿の隅っこで何をされてるんですか。さっきまでこの辺りにいた呪霊は僕が綺麗に片付けておきました!」

 灰原は屈託のない、いつもの笑顔で言った。その目の奥には、心底楽しそうな、しかし一級術師同士との手合わせへの強い期待が宿っている。

「いや、俺は別に──」

「それは良かったです! ここならもう邪魔も入りません!」

 灰原は周囲を見渡し、再び満面の笑みを日下部へと向けた。

「せっかく会えたんですし、日下部さん。僕、以前から日下部さんの刀捌きを間近で見てみたかったんです!」

 灰原は腰に下げた刀の柄に手をかけながら、まっすぐ日下部を見つめた。

「さぁ、是非一戦! 手合わせをお願いします! 命を奪い合うつもりは毛頭ありませんよ! 呪術師同士、本気でぶつかり合って、お互いを高め合いましょう!」

 日下部は、そのあまりにも健全で、あまりにも面倒な熱意を前に、顔を引き攣らせた。

「えぇ……? ウソだろ……」

 彼は、最も安全な場所を選んだはずが、最も厄介な人物に絡まれたことを悟り、天を仰いだ。

 

 ──

 

「パンダ……見つけた」

「イェーイ! 今日こそひん剥いてやる!」

 新宿の呪霊討伐中、美々子と菜々子に追い詰められるパンダ。棘は少し離れた場所から呆れた様子で見ている。

「ちょ、いま取り込み中! そういうの後にしてくんない?」

「問答無用……」

「あはは! 吊っちゃえー!」

「うおー!!」

「おかか!」

 どこからともなく現れた縄に吊るされるパンダ。

「おーい君たち、一旦休戦してくれ」

 そこに片手を上げながら五条悟がやってくる。

「はぁ? なんで──」

「せいら絡みって言ったら聞いてくれる?」

 顔を見合わせる美々子と菜々子。

「ホントにせいら絡みなら……」

 術式が解かれて雑にパンダが床に落ちる。

「ぐぇ」

 五条悟は手早く他者転移の術式を組んだ。

「今から二人を高専に送る。流れが変わった。なんとか憂太を守ってくれ」

「憂太を?」

「しゃけ」




ここまでご覧いただきありがとうございました。

●メインはpixivで活動しています。
 幽境編の続きもオマケ付きの一気見もあるので、
 もし少しでも気に入った方がいれば見にきてください。
https://www.pixiv.net/users/2225877
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