【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


60煌宴編 9・10:影絵の孤独と石油王の動揺、砂漠の船と最強の独占欲

●9

 

 ふかふかのベッドに潜り込んだものの、なかなか寝付けない。豪華な晩餐のおかげで、お腹は満たされているのに、何だか心がポカンと空いている感じがした。

 

(うにゃー……いつもの抱き枕もってくればよかったなぁ。そよかに抱きつくと何故かそよかが魘されるし……あれがないと、やっぱり寂しいよぅ……ぴえん)

 

 眠れないこともあっていつもより聴覚が鋭くなっていた。

 遠くに聞こえる小さなドアの開閉音と足音。

「すぐるだ!!」

 起き上がり、小声で叫びきょろきょろする。

 

 そっとベッドを抜け出す。そよかと冥さんは気持ちよさそうに寝息を立てている。

 

 静かに部屋を出て、広い廊下に出た。

 遠くで"カツ、カツ"と硬い靴音が響いている。すぐるの足音だ。こんな時間にどこ行くんだろ?

 すぐるの呪霊に寝巻きを引っ張られる。

「大丈夫! すぐるの後を追うだけだから! 心配なら一緒に行こう!」

 呪霊を抱き上げて、てちてちと薄暗い廊下を歩き始めた。

 

 少しだけ心細くなって、足音を追いかけるように廊下を曲がる。このお屋敷は広すぎて、すぐに方向が分からなくなった。

 いくつもの巨大な扉と、無駄に長い廊下。豪華すぎて、夜に見ると少し怖い。

 

「うにゃー……どこ? すぐるー」

 広いホールを抜け、さらに奥の、少し薄暗いエリアへと迷い込む。

 

 ──そこに、ぼんやりと光る部屋があった。

「あっ……」

 

 その部屋の壁には、オレンジ色の光で影絵が映し出されていた。幼い男の子と、手を広げて笑う王様の影。そして、その足元には二匹の猫の影が、ゆらゆらと揺れている。

「これは……誰かの思い出?」

 影絵に見入っていると、背後から急に、低い声が聞こえた。

「──こんな時間に一人で散歩ですか?」

 振り返ると、そこには少し肩の力が抜けた様子のサーミルが立っていた。ローブではなく、シンプルなアラビア風の寝間着のような白衣を纏っている。

 彼もまた、目が覚めてしまったのか。

「ごめんなさい、すぐるの足音を追いかけていたんだけど、迷子になっちゃった!」

「構いませんよ。砂漠の夜は寒いでしょう。これをどうぞ」

 羽織っていたガウンをわたしの肩にかけてくれる。

「ありがとう。サーミルさん」

「私のことはサーミルとお呼びください。せいら──さぁ、私と一緒に部屋へ戻りましょう」

 優しくわたしの手を引き、出口へと案内してくれた。

 

 ──

 

 その帰り道、きらびやかなコレクションルームの前を通った。

「あっ! わたしとそよかが作ったやつ!」

 中央の台座に、せいら猫とそよか猫が並んでいる。

 せいらはサーミルの手を振りほどき、猫人形の前に駆け寄った。

「…………」

「どうかしましたか?」

「あのね、サーミル。この子たち、ここで飾られているだけだと寂しそうだなって」

「寂しそう?」

 サーミルの赫い瞳が、一瞬、大きく揺らぐ。彼の顔から、いつもの余裕の笑みが消えた。

「……なぜ、そう思うのですか」

「うーんとね……だって、抱っこしてもらったり撫で撫でしてもらえないと、寂しいもん! あとね、影絵の部屋もなんか寂しかった。あの王様、笑ってたけど……ほんとは一人なんじゃないかって思ったの」

 せいらが彼の心の一番深い場所を突いた瞬間、廊下の角から、少し乱れた黒髪の傑が駆け寄ってきた。

「せいら! こんな時間に何をしている!」

 傑は、せいらの安全を確認し、肩の白衣を直し、すぐに冷静さを取り戻した。

「すぐる!」

「──おや、失礼。彼女は、あなたを心配し探して迷子になっていましたよ。ちょうど今、お部屋までお送りするところでした」

 しかし、その赫い瞳は、先ほどの動揺をわずかに残していた。

 せいらの無自覚な優しさが、強靭な石油王の心に、最初の一筋のヒビを入れた瞬間だった。

 

「すぐる! どこ行ってたの! こんな夜中に!」

 傑に近付いて、ふんふんと鼻を鳴らすせいら。

「なんか知らない人の匂いがする!」

 ぐりぐりと頭を傑の脇腹に擦り付けながら、せいらは傑と手を繋いで部屋に帰っていった。

 

 

●10

 

 ──翌朝。

 一行は、大理石のバルコニーで豪華な朝食を楽しんでいた。

「全部甘いのに、不思議と重たくない」

 そよかが信じられないといった様子で呟く。

「おいしーぃぃぃ!! おいしーよぉぉぉ!!」

 デーツ、カルダモンコーヒー、ザクロのジュース、色とりどりのフルーツにふかふかのパンケーキなどなど……陽光を受けて白く輝く邸宅と、遠くに見える砂丘の景色が美しい。

 

「ふにゃー! おいしかった! もう、動けない……」

 せいらは大量のデザートまでも平らげ、傑の膝に頭を乗せ、完全に無力化している。

「ほどほどにしておかないと、今夜の宴席で食べられなくなるよ、せいら」

 七海と冥冥は既に席を立ち、情報収集と警備状況の分析に向かっている。

 悟は、そよかをエスコートしようと、そよかの顔を覗き込んだ。

「そーよかっ! せっかくアラビアまで来たんだから、デート行こうぜ」

「はぁ? デートって……。今は宴席の準備とか、情報収集があるでしょう」

「そんなのは七海や冥さんに任せとけばいいんだよ。俺たち最強はいざという時のために力と気力を溜めとくもんだろ。ほら、アラビアのロマンを体験しないと。この高級ラクダサファリのパンフレット見てみろよ。サンセットでキスとかロマンチックだろ?」

「なんでよ!? 破り捨てて!!」

 悟はそよかの手を掴み、少し力を込めて引き寄せると、バルコニーを強引に出て行く。

傑(やれやれとため息をつき):「悟め。サーミル氏に先んじたい一心だろうな。七海、悟を頼む」

七海(通信機越し):「……大変迷惑ですが、五条さんの六眼がある限り、護衛は可能でしょう」

 こうして、悟とそよかのアラビアン・デートが始まった。

 

 二人がやってきたのは、砂漠のオアシス近くの高級サファリポイント。

「なんだがこの子……悟に似ているわ」

 ラクダの中で一番緊張感のないラクダをそよかは選んだ。そよかが指を立てて首筋を撫でるとラクダはにんまりと笑う。

「どこが俺に似てるってー?」

 間近でラクダにくしゃみをされるが、無下限呪術で唾液が空中で止まる。

「余裕って感じで澄まし顔してるところなんてそっくりじゃない?」

「そうかぁ?」

 悟はラクダの背にそよかを乗せ、自分も隣のラクダに跨った。

「……ラクダって、思ったより背が高いのね」

「砂漠の船だからな。揺れが気持ちいいだろ? ほら、この景色、最高だぜ。誰にも邪魔されねぇ」

 広大な砂丘を、ラクダの背に揺られながら進む二人。風の音以外は静寂に包まれ、ロマンチックなムードが漂う。

「──砂漠って、思っていたより静かね」

「だろ? まるでこの世界に二人だけみてぇじゃん。誰も邪魔しねーよ。サーミルだろうが何だろうが、俺の眼からは逃げられねぇしな」

 悟は楽しそうにそよかの顔を覗き込み、一気に距離を詰める。そよかは迷惑そうに悟の口元を手で覆う。

「悟……私たちがここにいるって、もしサーミルに知られたら──」

「知られて困るか? 知られても別にいいだろ。 俺がお前を必ず守るし、そよかは俺のものだって知らしめてやる」

 その言葉に、胸の奥が一瞬だけ熱くなった。

 でも──今は、それを上手く言葉にはできなかった。

「誰が誰のものですって?」

 そよかは悟の耳を強めに引っ張る。

「いたたたた!」




ここまでご覧いただきありがとうございました。

●メインはpixivで活動しています。
 煌宴編の続きがあるので、
 もし少しでも気に入った方がいれば見にきてください。
https://www.pixiv.net/users/2225877
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