【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●13
ぐぅーと、自身のお腹の鳴る音で目を覚ますせいら。
「うにゃー?」
「せいら、起きた? そろそろ夜会の時間だよ。部屋に戻って準備しないと」
傑に声をかけられてハッとする。
「もうそんな時間なの!? 急がないと」
ガバっと起き上がり、自分の部屋にダッシュで戻ると使用人二人がにこやかな圧で出迎えてくれた。
「さぁ、せいら様、まずはご入浴を」
「今夜のせいら様はプリンセスになられます」
「安心して私たちに全て任せてください!」
「ひゃい……」
既にせいらは腰が引けていたが、有無を言わせぬ迫力で圧倒されてしまった。
淡桃色のシフォンドレス。
胸元には金糸の猫の刺繍。
大鏡の前でせいらがターンするとふわりと裾が広がった。使用人たちも口々にせいらを褒め称える。
こんこんとドアがノックされた。使用人が確認し、傑がにこやかに入ってくる。
「すぐる〜。みてみてー!」
傑を前に嬉しそうにくるりと回ってみせた。
「うん。よく似合っているよ」
鏡の前で、せいらが小さく呟く。 「えへっ! でも……こんなの、わたしじゃないみたい」 「違うな。そういう“姿”を見たい奴がいるんだ」
「…………」
「ではプリンセス、お手をどうぞ」
「はい!」
傑が優雅に曲げた腕に、せいらは小さな手をそっと添える。二人はプリンセスと騎士のように、夜会へと続く廊下を静かに歩み出した。
──一方その頃そよかの部屋にて。
「おーい着替え終わったのか?」
軽くノックをしてドアを開ける五条悟。
「──っ!?」
そよかが下着姿で腰を抜かす。
「悟、大丈夫?」
「おいおい、そよか……そういうつもりならそういうつもりって声かけろよ」
「そういうつもりって、何よ? ただドレスを身につける前に変な呪術が編み込まれてないか確認してほしかっただけたけど?」
腕を組んでぷいと顔を背ける。
白のタキシードの襟を整えて、サングラスを外した悟。
「……オッケー。ドレスは深群青(ディープネイビー)、銀糸で刺繍がやたらとあるが呪術的な意味はないな。呪力的な仕掛けもない。ただし、変な呪いが編み込まれていなくても、そよかの胸の鼓動はすげぇ高速稼働してんな。見られると興奮するタイプ?」
そよかは顔を真っ赤にして、
「うるさいわね! ドレスに問題ないなら着るから手伝って!」
「はいはい、お姫様……」
そよかは静かに背を伸ばし、最後に背中のジッパーを悟に上げてもらう。
「──変じゃない?」
前に流していた髪を後ろに流しつつ小さく問いかけた。 「……似合ってる。けど、あんまり見せたくないな」 「悟、何を言ってるの?」
「おっとそよか。最後に忘れ物だ」
振り返ったそよかの首筋にほんの一瞬、強く吸い付く。
「いたっ」
唇を離すとニヤリと笑い、そよかの深群青のドレスの銀糸に触れる。
「早く行こうぜ、シンデレラ。俺から目を離すんじゃねーぞ。……サーミルに"そよかは俺のもの"だって、はっきりわからせてやらねーと」
そよかは口ごもりながら、
「わかったわよ……」
悟の曲げた腕に、そよかは手を添え、夜会へと続く廊下を静かに歩み出した。
●14
巨大な扉の前に、七海建人と冥冥が既に立っていた。七海は格式あるタキシード、冥冥は深紅のチャイナドレス姿。
落ち着いたトーンで七海が話しかける。
「五条さん、遅いですよ。そよかさん、深群青のドレス……よくお似合いです」
視線はそよかの首筋の赤い痣に注がれていた。そよかは七海の鋭い視線に気がついて、思わず痣のあたりを片手でおさえて赤くなる。
「ふふ。身体のデータを提供をした覚えもないのに、ここまでフィットするドレスを用意してくるとは。我々の身体のスキャンは完璧。そこから推測される運動稼働域もしっかり計算されているだろうね」
冥冥がフッと笑う。
その時、廊下の奥から傑とせいらが現れた。淡いピンクのシフォンドレスのせいらは、漆黒のローブコートを纏う傑の隣で、ひときわ可憐に輝いていた。
傑は七海たちに静かに頷き、悟に近づきながら小声で囁く。
「悟、くれぐれも衝動的な行動は慎めよ。敵の目的はデータの収集と、そよかとせいらの確保だ」
悟はそよかの腰に手を回し、傑の忠告を無視するように言った。
「わかってるっつーの。……さ、行こうぜ、そよか」
──巨大な扉がゆっくりと開かれる。
ホールは黄金と大理石の豪華さに溢れていた。シャンデリアの輝き、アラビアの伝統的な旋律、そして何よりも濃厚な"美"の呪力が、訪問者の五感を麻痺させる。
会場の中央。最も高い玉座のような席に、黒を基調とした豪華な正装を纏ったサーミルが、静かに座っていた。彼の衣装は、漆黒の夜のような深みと威厳を放ち、白のタキシードの悟と鮮烈な"光と影の対比"をなしている。
悟の袖を無意識に強く握りしめるそよか。
「……悟、ここ、空気が重い。まるで、無理やり美しいものを見せつけられているみたいな──」
七海は周囲を観察しながら小声で言う。
「これが"富と美学の強制"です。呪いの影響下では、この豪華さが絶対的な正義に感じられる。皆さん気を確かに──」
サーミルは、ゆっくりと立ち上がり、会場中の視線が五条一行に集まる中で、静かに告げた。彼の赫い瞳は、深群青のドレスのそよかから離れない。
悟はそよかを背中に隠すように半歩前に出て、鋭い眼光をサーミルに向ける。
「へぇ、随分と張り切ってんな。そよかは"商品"じゃねぇぞ」
サーミルは悟の挑発を意に介さず、優雅に一礼した。
「ようこそ、私の“楽園”へ。君たちは芸術の創造主、そして……私の探していた『欠片』だ。
五条悟。その姿とても良く似合っているね。白銀の夜明けのようで実に美しい。しかし、コレクションは焦ってはならない」
サーミルは、会場全体に響き渡る声で続けた。
「今宵の宴は長い。遠路はるばる、この砂漠の館まで来ていただいたのだ。まずは、この館が誇る最高の美食を堪能し、異国の文化と美学に浸っていただこうではないか」
彼が手を打つと、楽団の演奏が一層華やかに響き渡り、数十人の使用人が一斉に料理を運び始めた。
「さあ、席について。"次の対話"は、食後のデザートといたしましょう」
冥冥は感心した様子で言う。
「さすがだね。我々の分析通り、即座に戦闘に入らない。これは、我々を"美学の強制"で縛りつけ、時間をかけて判断能力を奪うための心理戦だ」
傑はせいらを席にエスコートしながら、
「七海、冥さん。食べ物に仕掛けがないか、念のため常に警戒を。せいらには何も口にさせない」
せいらは目を見開いてずっこける。
「何も口にさせないって言ったぁ!? すぐるぅ!?」
悟はサーミルを鼻で笑い、そよかの手を引いて最もサーミルに近い席へと進んだ。
「チッ。対話なんてするつもりないんだろ。価値観の押し付けなんて、聞いてやるつもりもないね」
ここまでご覧いただきありがとうございました。
●メインはpixivで活動しています。
煌宴編の続きがあるので、
もし少しでも気に入った方がいれば見にきてください。
https://www.pixiv.net/users/2225877