【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


65煌宴編 19・20:哀惜の呪霊と母の面影、覚醒の拒絶と最強の反撃

●19

 

 七海建人は、今、目前で繰り広げられる"交渉"という名の心理的虐殺を、静かに見守っていた。

 サーミルの暗示波がそよかの理性を侵し、悟が怒りに耐えながら血を流している。

(昨夜の情報がなければ、私もきっとひどく取り乱していたでしょう)

 

 ──昨夜、この狂気の宴が始まる前、七海は冥冥と共に館の"核"を探っていた。

 

 コレクションルームの中央。異様に空気が重く、湿っている。七海は眉間に皺を寄せた。

「──ここだけ、空気が違いますね」

 冥冥は静かに周囲の呪力を観察しながら、

「愛着の“呪詛”ってやつかな。触れてもいないのに、引きずられるような感覚がある。まるで、未練の澱が凝り固まった、ひどく甘ったるい呪いだね」

 展示棚の中央には、一枚の古びた油絵。他に見る者を圧倒する呪具や美術品とは異なり、何の変哲もない、普通の肖像画だった。

 描かれているのは、サーミルの母と見られる女性──柔らかな微笑みを浮かべているが、その瞳の奥はどこか虚ろで、生気に欠けていた。

 七海は油絵を凝視し、

「これは……」

 片手をかざし、思わず呟く。

「そよかさん? そんなまさか──」

 七海はその油絵の女性に、そよかの揺るがない知性とどこか遠い目をする瞬間の面影を重ねた。

 それだけその女性はそよかによく似ていたのだ。

 

 七海は真顔に戻り、呪力を反応させる。

 《検知:未登録呪霊。属性──哀惜/母性/執着》

 冥冥は小さくため息をついた。

「……どうやら彼は、母親の形をした呪霊に囚われているようだね。その呪霊が、この館の"愛着の呪い"の核になっているようだ」

「生きた術師ではなく、呪霊が潜んでいたようですね」

「あぁ。そして、その呪霊は"母親の面影"と"そよかの容姿"を重ねて、更にサーミルの歪んだ愛着を増幅させている。つまり、そよかには、"母親の代理"と"コレクションの核"という二重の価値があったわけだ」

 

 悟がグラスを割った音を思い出し、七海は一瞬目を閉じる。

「やはり、私たちが想像していたよりも、遥かに個人的で、そして悪趣味な呪いだ」

 

(──サーミルがそよかの心に暗示波を放った今、あの哀惜の呪霊が、そよかの心象に直接干渉しているに違いない)

 七海は、ダンスを続けるサーミルとそよか、そして怒りで静かに震える悟を見つめる。

(五条さんが、あれほどまでに怒りを露わにするのは、彼が"最強"であるが故の"全能感への裏切り"だけではない。あの暗示波は、そよかさんの最も脆い部分を突いている──この状況を打開するには、外部からの介入が必要だ)

 七海は再び、壁や床に目を向けた。この"愛着の呪い"の核となる哀惜の呪霊"をどうにかしない限り、交渉はサーミルの意のままに進んでしまうだろう。

 

 お菓子の家をサクサク食べ進めるせいら。

「うにゃっ!?」

「せいら、どうした?」

 ほお袋のお菓子をごくりと飲み込み。

「いま映像が流れ込んできたの! そよかとサーミルがダンスしてた! ……そよか、大丈夫かな。なんだかぞわぞわする……(ブルブル)」

 心配そうにせいらに寄り添う傑。
「うん。けど……なんとなくわかったよ。彼は“孤独”なんだ。愛を知らない人間が、愛の形を真似ようとした結果だろう」
「それでも、そよかに手を出すなんて……」
「悟や七海が許さないよ。もちろん私たちもね」

 

 

●20

 

 サーミルとそよかのダンスは、会場の中心で静かに続いていた。柔らかな照明の下、サーミルはそよかを優雅に回転させながら、囁くように言葉を紡ぐ。彼の声は、暗示波の作用により、そよかの意識に直接流れ込んでいく。

「そよか。君の猫人形に宿る"愛”。それは、孤独な私に唯一、失われた母の愛を再現できる奇跡だ」

 そよかの瞳は虚ろだが、足取りは正確にサーミルのリードをなぞる。

 

 ──遠く、まるで水の中にいる私に誰かが話しかけているようだった。

 あたたかく、心地良い水の中……このまま何もかも手放してしまいたくなるような。

 

 首筋がチクリと痛んだ。

 同時に思い出す。身体を強く抱きしめる温もり。

 唇に火がともる。

 

「あなたは私を代わりとして選んでいるだけ。私は、あなたのコレクションにはならない」

 私の口から拒絶の言葉が紡がれると、

「──は?」

 サーミルの動きが止まった。照明が静かに変わり、彼の影が壁に二重に伸びる。
「違う、君は特別だ。君の知性が、私の“愛”を完成させる」
「それは愛じゃない。所有よ」
「では、なぜ君はそんな目で見る? あの人(母)も、私を──哀れみと、拒絶で──」
 一瞬、また心地良い揺らぎを感じる。私は歯を食いしばった。
「私の声を受け入れろ、全て委ねるんだ」
「──いや!!」

 サーミルの身体を突き飛ばし距離を取る。

「よし! そよか良く言った! 今助けてやるからな!」

 悟の嬉しそうな声が聞こえてくる。

「術式順天 出力最大! "蒼"!」

 

「五条さん!?」

 しかし、悟が呪力で部屋を荒らすと舞踏曲も終わり七海や冥冥が感じていた重圧も消えた。

「お菓子の家に続く扉も上手く壊れたようだね」

 傑に覆い被さられ、伏せていた顔を上げてせいらが喜びの声を上げる。

「うにゃー!! みんなー!!」

『デバイス起動! 脱出経路を検索します!』

 七海の持っていたパソコンからチャッピーの起動音が。

 

 会場を揺るがす悟の呪力。そして警報音と同時に邸全体が自動ロックダウンし、天井からセキュリティドローンの群れが降り注いだ。

 悟は傑と協力してドローン群を一瞬で停止させながら。

「よぉ、コレクター。お前の“愛”ってやつは、展示品の一部になっちまってるぞ」

 青い光を浴びながらも、立ち尽くすサーミル。

「黙れ! 部外者が! 私は母を救いたかっただけだ!」

「母親は、檻の中の作品になんてされたいわけねぇよ。──傑、お前はせいらを連れて先に逃げろ」

 悟の言葉が、サーミルの心の核心を揺さぶる。

 その隙に、そよかは背を壁にしてサーミルと対峙した。暗示波の虚ろさは完全に消えている。

「あなたは自分から孤独になった……絆を見失ったんだわ──」

 そよかは、かつて彼が愛の代替品と見誤ったその瞳で、サーミルをまっすぐに見つめた。

「私の中に、あなたの母はいません。そして、あなたの求める愛は、母親からの愛の代用品でしかない。“愛”を奪うんじゃなく、誰かと“分け合う”ものにして。それが、生きている者の絆なの」

 サーミルの顔から血の気が失せ、彼は膝をついた。そよかの言葉が、彼の歪んだ「愛のアルゴリズム」を破壊したのだ。




ここまでご覧いただきありがとうございました。

●メインはpixivで活動しています。
 煌宴編の続きがあるので、
 もし少しでも気に入った方がいれば見にきてください。
https://www.pixiv.net/users/2225877
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