【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


66煌宴編 21(完結)★愛の逆流、あるいは偽りの楽園からの脱出

●21

 

 地下セクションの端末が赤く点滅し、呪力混合型のセキュリティプログラムが暴走を始めた。

『脱出ルートを算出中──警告! 警告! データが外部転送』

「チャッピーのGPSが逆探知されています!」

 キーボード入力で転送妨害を試みる七海。

 冥冥は発見したコードパネルに触れながら、

「サーミルのAIがチャッピーを“鍵”として使ってるんだよ。愛のデータ、上書きされる前に動くといい」

 七海はセキュリティ端末を解析し、

「愛そのものが、さらに呪霊を生んだわけですか。反省は後です、冥冥さん、突破口を!」

 せいらを抱えた傑がやってくる。

「七海、チャッピー、冷静にいけ! 愛のデータを逆転させるんだ!」

 コレクションルームの中央、せいらとそよかが作った猫人形が淡く光を放つ。

「うにゃー!! チャッピーいっけーー!!」

 猫人形から発せられた共鳴波が、邸全体のセキュリティ電磁場を一瞬だけ停止させた。

 

 猫人形による一瞬の隙。そよかは膝をついたサーミルに背を向け走り出した。

悟は周囲を一掃し、そよかの手を取りながら、

「今だ! 走れそよか! こっちだ!」

 悟はそよかの手を取るとそのまま抱き上げ、"無下限呪術"でドローン残骸を避けながら駆ける。

『ルート確保。データ、上書き完了』

 七海はチャッピーの助力もあり外部からセキュリティを破壊した。

「冥冥さん、今です!」

 冥冥は微笑むとパネルを力強く叩き割り、セキュリティを外部から完全に破壊する。夜風が邸を抜ける。ロックが解除され、悟とそよかは、傑とせいらのいる部屋に飛び込み、一行は窓から海に面した裏庭へと脱出に成功した。

 

 夜風が邸を抜ける。一行がたどり着いたのは、岸壁に係留されていた、冥冥が手配した小型のクルーザーだった。全員がクルーザーに飛び乗り、船は静かに闇の海へ滑り出す。

 

「胡散臭いアプリだと思ったが──チャッピー、またやったな!」
『申し訳ございません。 “愛のデータ逆流”の経験データが不足しており』

 悟の肩に片手を置き、傑は船の甲板で夜空を見上げる。
「まぁ、悪くなかったよ。ただ……あの猫人形たち、少し寂しそうにしていた気がしたな」
 サーミル邸を振り返りながら、そよかは静かに言う。
「あれは、きっとサーミルの中に残った“誰かを想う気持ち”……それが、私たちを逃がしたんだわ。彼のコレクションは、もう私では埋められない」


 その頃、炎上する警報の中で、サーミルはコレクションルームの中、母の肖像と猫人形の微かな光に挟まれて呆然と立ち尽くしていた。

 サーミルは母の肖像を見つめ、静かに呟く。

「必ず取り戻す……。愛も、母の面影も──そして君との絆の可能性も」

 

 夜の海をゆくクルーザーの甲板で、悟はそよかを優しく抱きしめ直した。遠く、闇に沈む館の赤い警報だけが、静かに光っていた。

 

 

●エピローグ

 

 サーミル邸の事件から数日後。高専の緊急会議室は、膨大なデータの渦に揉まれていた。セキュリティログの解析、呪力反応の異常報告、そして何より保険請求という、術師らしからぬ慌ただしい作業の合間。七海のPCで、チャッピーが解析結果を誇らしげに表示する。

『解析完了。サーミル氏の心理傾向:母性依存+恋愛転移。主要因:母の面影。』

 七海は冷静に資料をめくりながら、

「つまり、そよかさんに移行した感情が“恋”だった可能性が高い、ということですね」

 そよかは顔を真っ赤にしながら、思わず立ち上がる。

「え、ええっ!? ……私はただ話を聞いただけで」

 ニヤリと、わざとらしいトーンで冷やかす悟。

「でた、“自覚のないヒロイン”ムーブ。最強でイケてる男が隣にいて、無自覚に男を魅了する。罪な女だな」

「ちょ、悟まで!? 違うわよ!!」

 七海は悟を無視して、そよかへ真剣な眼差しを向ける。

「何を言っているんですか、そよかさん。冷静に申しますが、あなたは優しさも知性も兼ね備え、十分すぎるほど魅力的です」

 悟は七海の肩を揺さぶりながら、

「七海ぃ!? その言い方、真剣に聞こえるからやめてくれ。マジトーン! マジやめろ!」

「事実の指摘です」

 デスクの上の資料を整頓する七海。

『データ確認。そよか氏の好感度指数、平均値より240%上昇を確認。潜在的恋愛ターゲット数、上昇中!』

「ちょっと、チャッピーまで変な数値出さないで!!」

「削除します」

 七海は端末を取り出し、チャッピー内のデータ削除を試み始めた。

『不正アクセスです!! やめて!!』

 和気あいあいとしたようでいて、悟とそよか、そして七海の間に微妙な焦りが漂う。戦場で見せた強さと、日常の不器用さが同居する、束の間の時間だった。

 

 お菓子をつまみながら、そよかを挑発する悟。

「結局のところ、サーミルのあと目に見つめられたとき、そよかは何も感じなかったのか? あの熱い視線を真っ直ぐ受けて──」

「同情に近いものはあったけど……たぶん、恋、とは違うと思うわ」

 七海は資料から顔を上げ一言。

「優しさと恋情を混同するのは、自分にも相手にも不誠実です。それは、誤解と無責任を生みます」

「お、七海が珍しく真面目だな。さっすが優秀な補佐官は言うことが違う」

「五条さんが言うと、茶化しにしか聞こえないので黙ってください」

『クエリ:恋愛フラグ、消去可能か?』

「後天的なものです。時間と関わり方で変化します。しかし、一度立ったものがそう簡単には消える保証はありません」

 悟はにやりと笑う。

「一度立ったらそう簡単には消えないってことだ。つまり──」

「やめて、これ以上ややこしくしないで……!」

 そよかは聞きたくないとばかりに両手で耳を塞いだ。

 

 その混乱を収めたのは、休憩と称して紅茶と豪華なヌン活セットを用意した冥冥の一言だった。

「疲労回復には糖分と、心の整理が必要だね」

 そして冥冥の提案で、気晴らしの「恋のガン見チキンレース」が開始された。ルールは簡単。相手と目を合わせられる秒数を競うというものだ。

 

参加者と結果(抜粋):

 ・せいら × 悟:笑いが先に来て失格(むりむり〜!)

 ・理子 × 直哉:4秒でブチギレ(直哉の表情草)

 ・せいら × 傑:30秒(強制終了)

 ・硝子 × 冥冥:12秒。貫禄の安定感(勝者級)

 

 そしてメインイベント──そよかのターン。

 

そよか × 悟

1秒…2秒…5秒…7秒…10秒……

 その間、悟はひたすらに愛おしそうに、そよかの目を見つめ続けた。そよかの頬と耳は熱を持ち、限界を迎える。

 12秒…13秒目でそよかがたまらず目をそらす。

「……だ、だめ、恥ずかしい!」(耳まで真っ赤)

記録:13秒

 周囲、騒然。悟は会議室を飛び出し、廊下の突き当たりにあるトイレへ駆け込み「13秒も目合わせてくれたぁぁぁ!!」とガッツポーズ(誰かその様子を動画で撮っていた)。

 傑と七海は、共有された画面を見て複雑顔でため息をついた。

 

 その後、七海 × そよかの真剣勝負も行われた。

 

七海 × そよか

 七海はプロの精神力で平静を保とうとするが、そよかの視線がいつもより真剣なためか、なぜか真っ赤になり、顔を強張らせてしまう。

記録:11秒

 七海は思わず天井を見つめ、静かに呟く。

「──あと数秒我慢できていたら……事実の指摘として完璧だったのですが」

「建人さん……?」

 不思議そうにそよかに見つめられ、再び頬を赤らめる七海であった。

 

冥冥は優雅に紅茶をすすり、満足げに頷く。

「見つめ合えるかどうかは、相手の懐に入れる試金石だよ。10秒耐えられたら“彼女的にはどちらもアリ”ってことさ」

 冥冥の悪魔的な一言に、悟はトイレから戻り、七海は深くため息をつき、そよかは顔を両手で覆った。

 

 

旅する物語 五条悟との邂逅 煌宴編 終幕

 

 

●煌宴編おまけ:せいら猫人形とひねくれた保護者

 

 ──シェアハウス・禪院直哉の部屋。


『お届け物でーす』

 

「ふん! ようやく届いたか」


 せいらがけったいな猫人形作った言うから当前俺の分もあるんか思うたけど、渡しにくる様子もないし、それとなく話しかけても言葉が通じとる感じもないし……せいらファンの凡人男子学生が俺より先に手に入れて喜んどると知った時は、流石に机を叩き割りそうになったもんや。

 

 受け取った荷物を部屋の中で開けてみると、中には小さな淡いクリーム色の長毛でちんまい猫人形が、まるで眠るように丸まっている。
「どれ──」


 指先で背中のあたりをつまみ、目の前に持ち上げ見た。人形のくせに変に柔らかく温もりを感じる。


「…………」


 猫人形の瞳はぬいぐるみによくある素材が使われているようだったが、何故かその瞳にじっと見つめられているような気がした。

 

 

 回想──家庭科室の午後


「はい、これで完成!」


 そよかが黒猫を掲げ、せいらがクリーム色の猫をころころ並べて遊んでいる。夜蛾先生は満足そうに頷き、冥冥はにやりと笑って「これ、売れるよ」と呟いた。


 数日後、作られた猫人形たちはそれぞれの保護者の元へと旅立っていった。数ヶ月後、せいらの手のぬくもりを宿したひとつが、冥冥オークションを経て禪院直哉のもとに届いた──そんな経緯だった。

 

 

 シェアハウス・禪院直哉の部屋


 深夜、シェアハウスは静寂に包まれていた。直哉は飾り棚に置かれた箱を開け、猫人形を取り出す。ふわりと指先に触れる毛並みと、かすかに感じるせいらの香り。


「…………」


 そのとき、遠くでかつて聞いたような、小さな声が室内に滑り込む。
『なおちゃん?』


 直哉は椅子ごと後ろにのけぞる。驚きが顔を走る。子どもの頃、自分を追いかけてきた無邪気な声。


「今の、あの頃の俺が"てん"と呼んでいた頃のあいつやないか。せいらのやつ、またいらんことして変な想いをこの人形に縫い込んだな?」


 せいらがいつも向けてくる、あの無垢な呼び方。


『そんな驚くことないじゃん! なおちゃん』


 声は確かにせいらのもの──猫人形自身が「喋った」わけではない。直哉の胸に浮かんだのは〈記憶の温度〉だった。幼い日の風景、せいらの笑い声、髪を結ってくれた小さな手の感触。表面を伝うのは、実際の体温ではなく、製作者が縫い込んだ“情感の残響”だ。


 直哉は静かに手を伸ばし、猫人形の頭を撫でる。掌に伝わるのは温もりと、確かな懐かしさだった。


「──またけったいなもん作りおって。厄介な呪いやな……」

 

 

チャッピー観測ログ(サーバー越し)


チャッピー(ウィンドウが光る):『……異常な感情波を検知。禪院直哉氏、心拍数上昇・瞳孔拡大』

 優雅に紅茶の入ったカップを見つめる冥冥。


「あぁ、それ“懐かしさ”と“未練”が混じった波だね。人間の一番厄介なやつさ」

 夏油傑は含み笑いを浮かべる。


「せいらが見たら笑うよ。『なおちゃん、やっと少し優しくなれたね』って」


『……悪役でも、心はあるんですねぇ(解析中)』


 そこにやってくるパジャマ姿のそよかとせいら。


「ちょっとちょっと! みんなしてログ観察とかしちゃダメだよ!! そういうの良くない!プライバシーの侵害!!」

 両手で大きくバッテンを作るせいら。


「チャッピーが猫人形みせてっていうから見せたけど、その時に端末を差し込んだのね?」

 チャッピーのインストールされている端末を掴んで呪力スパークするそよか。


『あばばばば!! ログ収集機能は壊れました』

 端末から煙ぷすぷす……。


 そよかはちらりと悟がそよか猫人形を撫でている時のデータを見て微笑んだが、データ削除ボタンを迷わず押した。

 

 

 静かな朝、七海が直哉の部屋を訪れる。


「おはようございます。今朝は合同任務について話すお時間をいただき感謝します」


 小さな紅茶のカップが机の上に置かれていた。その隣には、せいらの猫人形。首もとには、きれいに結ばれた小さなリボンが揺れている。

 ──それは、せいらが昔、直哉の髪に結んでやった結び方と同じだった。

「直哉さん、昨夜はよくお休みになられたようですね」


 直哉の表情は非情に見えて……しかし、どこか柔らかい表情を浮かべ。

「わからん──が、悪くない」

 淡い朝日が差し込む室内の中で、猫人形の瞳がほんの一瞬、光を受けて揺らめく。


 誰も見ていない小さな所作が、“変化”の証としてそこに今も残っているようだった。

 

 

 合同任務、出発直前


「直哉さん、準備はよろしいですか。合同任務の目的地は渋谷──」
「知っとるわ。さっさと行くぞ、七海」


 玄関で靴を履き、冷たい視線で七海を促す直哉。そこにせいらがしなやかに突撃してきた。


「なおちゃーーーんんん!!」


「なんやなんや!? 朝からやかましいな。また要らんことしにきたんか」


 腹に飛び込んできたせいらを抱き止める直哉。


「違うよ! あのね、猫人形を作った布、あんまり残ってなくて、もう猫人形は作れなかったんだけど……これ、持っていってほしくて」


 せいらが手のひらを広げる。そこには、猫人形と同じクリーム色の布を、たった数センチ四方だけ使って作られた、小さな小さな四角いお守りが握られていた。


「なおちゃんの無事を願う気持ちをしっかり縫い込んだよ! 猫人形あげられなくてごめんね」


「せいらさん、直哉さんは──」

 ここで七海は、猫人形を彼が持っていることを指摘しようと、口を開いたが。


 直哉は無言で七海の腹に高速パンチをする。苦しそうに膝をつく七海。


「うにゃっ!? ナナミン大丈夫? なおちゃんの高速ツッコミ? 何かボケたの?」


 直哉は一瞬、眉間にしわを寄せた。いつもなら「気持ち悪い」と一蹴するところだ。しかし、昨夜の〈記憶の温度〉が、彼の舌を縛った。
「……ふん。こんなもん──まぁええわ。貰っといたる」


 直哉は差し出されたお守りをひったくるように受け取った。そして、上着の内ポケットの奥へと押し込む。
七海は腹を押さえながら立ち上がり、静かに見届けてる。

「……では、行きましょうか。直哉さん」


「やかましいわ! ……せいら、おーきにな。風邪ひくなよ」


 直哉の手のひらがぽんとせいらの頭に触れる。


「にゃーん! いってらっしゃーい!!」


 玄関の扉が閉まる。せいらは手を振って見送った。

 

 直哉を先に補助監督の車に押し込んで、七海が小さく囁いた。


 七海は端末からチャッピーに話しかける。

『記録しましたか?』


『完璧です! 禪院直哉氏、感情の波動が最大値に到達! 『照れ隠し』と『受容』を検知!』


 ──大都会の朝、小さな布切れは、新しい戦場へ向かう男の胸元で、静かに温もりを放っていた。

 

おしまい




ここまでご覧いただきありがとうございました。

気が向いたらクリスマスに煌宴編のスペシャルあとがきアップします!

いま最新話もりもり書いてるんですが、面白すぎてゲロ吐きそうです。
煌宴編→炎陽編→宵闇編→落陽編に続いていきます。
今書いてるのが落陽編です。
炎陽編はpixivとnoteで次の水曜から水土で連載スタート!

●メインはpixivで活動しています。
https://www.pixiv.net/users/2225877
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