【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


炎陽編 三角関係の決着
68炎陽編 1・2:世界への暴露と公開プロポーズ、論理的求婚と最強の天井破壊


●プロローグ

 

 あふ……と口元を隠しながら、眠そうにあくびをするそよか。

 午前の陽光が柔らかく差し込む、呪術高専の一室。執務室として使っているその空間には、書類と紅茶の香りが心地よく混ざっている。

 

「お疲れですか?」

 護衛兼秘書の七海建人が、いつも通りの落ち着いた口調で紅茶を差し入れ、一言。

「悟のスピーチ原稿の添削をしていたら、遅くなってしまって……ありがとう」

 そよかがテレビのリモコンを手に電源を入れると、画面には眩しい照明とともに記者会見の様子が映し出された。

 

 ⸻

 

『全世界の皆さん、どーも! どーも!呪術師代表の五条悟でぇす!

 えー、つい先日、世界を揺るがすような出来事がありまして。ニュースでご覧になりましたよね?

 皆さん今まで得体の知れないナニカに命を狙われたりしてたと思うんですが、アレ、これからは隠しません!

 皆さんにもちゃんと理解できるようになりまーす!』

 

 フラッシュが一斉にたかれ、白い光が会場を包む。五条の眩しい笑顔が、それ以上に明るく画面いっぱいに映った。

 

『泥棒や悪い人たちからお巡りさんが皆さんを守るように、呪霊という得体の知れない化け物からは、私たち呪術師が皆さんを守ります。

 特に、この最強の僕と傑がいますから、安心してくれていいですよ〜』

 

 会場から笑いが起き、同時にまたフラッシュが瞬く。

 

『これまで隠していたのは、皆さんを混乱させないため。ですが、もう心配いりません。僕たちが完全にケリをつけました。

 今後は透明性を高め、今は誰もが知る”呪術師”が皆さんを守る世界に変わります』

 

 目隠しを外して六眼で記者たちを見回すと、その美貌に会場内で感嘆するようなため息が。

 

『──っと、こんなもんかなー?』

 

 五条が軽く肩をすくめる。後ろにいる関係者たちは、誰もが微妙な顔で見守っている。

 

『はい、最後に一つ、僕個人から皆さんにご報告です』

 

 ざわつく会場。五条が真顔になった瞬間、記者たちの指が一斉にシャッターに触れる。

 

『この五条悟、結婚します。お相手は、長年僕のそばにいてくれた、僕と同じ呪術師の女性です。そよか見てるー?』

 

 そよかは口に含んでいたお茶を勢いよく吹き出した。高専内のあちこちでどよめきが、そして次第に歓声に変わる。

 七海は冷静にハンカチを差し出しながら、

「──ハンカチをどうぞ、そよかさん」

 五条悟の規格外さを、七海建人はもはや達観したように受け止めている。

「なっ、なんでいきなり世界中に言うのよ!? しかも断りもなく!!」

 

『この僕、最強の五条悟が守りたいものは、ただ一つ。僕の愛する人と、その人が愛する平和な世界です!!』

 

 大歓声とフラッシュの中、五条は満面の笑みで締めの言葉を口にする。

 

『イェーイ! ピース! ピース! そよかー!!』

 

 両手でピースサインを作り、カメラに向かってウインク。

 

『……というわけで! 最高のニュースは終わり! 今から最高のプロポーズをしに行くからねー!』

 

 次の瞬間、五条悟の姿は記者会見会場から跡形もなく消えた。

 

「なっ、消えた!?」「どこだどこだ!? 瞬間移動か!?」

「上!? ビルの上にいるぞ!」「待て、あれは……飛んでる!?」

 

 記者会見会場から外へ飛び出した記者たちの目に映るのは、東京の空を一筋の青い光となって一直線に飛んでいく五条悟の姿──。

 

 ⸻

 

 悟が記者会見で世界中にプロポーズ。

 記者会見会場のカメラの中から消え、青い光となって飛んでいく。

 

 呪術高専の執務室。

 テレビの前で、そよかがまだ口をぱくぱくさせていた。七海が淡々と紅茶を注ぎ直す。

 

「……お茶を淹れ直しました。どうぞ、そよかさん」

「ど、どうぞじゃないわよ! なに今の!? もう……!」

 

 ふぅと深呼吸して落ち着こうとするらそよかに、七海が静かに言葉を重ねる。

「実は私からもお渡ししたいものがありまして──」

 

 机の上に置かれたのは、丁寧に用意された封筒。

 そして婚姻届。しかも──既に七海の署名が入っている。

 

「……えっ、これ……?」

「先日、呪術界限定で施行された新法により、一夫多妻および一妻多夫が認められました。

ですので、法的には何ら問題ありません」

「いやいやいやいや!! そういう問題じゃ──!」

 悟がいないのをいいことに、七海は珍しく一歩前に出る。

 

「問題があるとすれば……」

 優しくそよかの頬に片手を触れさせ、七海の声が柔らかく震える。

「私の気持ちです。私は五条さんのように"最強だから貴方を守れる"わけではありませんが、私は──貴女がいないと、きっともう、まともに立っていられない。

そよかさん。私の人生には、どうしても貴女が必要なんです」

 そよかが息をのむ。

 

 ──沈黙。

 

 そよかの心臓が跳ねる音だけが響いた。

 そのまま、顔が真っ赤に染まり──

「ちょ、ちょっと待って建人さん、それはずるい……!」

 次の瞬間、そよかの視界がぐらりと揺れて、ふらりと倒れそうになる。

 

「……そよかさん!」

 七海が慌てて抱きとめる。

 

 そこへ──

 

 青い閃光が天井を突き破るように差し込み、

 五条悟が降ってくる。

 

「たっただいまー!……って、おい!!」

 五条の目隠しがずれる。

「俺がそよかに今からプロポーズするって世界中に言ったばっかだろ!! 何してんだ!! 七海ぃぃぃぃ!!」

 

 

●1

 

 崩落した自身の執務室一角を少し離れたところで眺めながら、そよかはぽつりと言った。

「で?」

「──申し訳ございません。こうなることは予測できたのに」

 地面に正座をして、深々と頭を下げる七海建人。

「だってさー! そよかが七海に抱き付いてるの見たらそりゃショックじゃん?」

「抱き付いてない! あれは倒れそうになったところを支えてもらっただけだから!」

 同じく地面に正座をしてはいるものの、まったく反省した様子のない五条悟。

「……それで? 悟は全世界に向けて私と結婚するなんて言い出すし。そもそも私が考えた原稿は? なんで最後まで話さなかったの? ……建人さんは悟の中継を見たというのにプロポーズしてくるし……どういうつもり?」

「七海ぃぃぃ!? お前また俺に断りもなく抜け駆けを──!!」

「待ちなさい悟」

「はい」

 すんと真顔で正座をし直す悟。

「一旦状況を整理しましょう。悟は私と結婚するって言ってるけど、五条家の許可は貰えているの?」

「そんなの関係ないよ! 当主は僕だし!」

「…………」

 指先で額を抑えながら、苦々しくはぁとため息をつくそよか。

「建人さんは、なんでまたプロポーズを」

「そよかさんに、改めて私の気持ちを認識していただきたかったんです。五条さんとの結婚は避けられなくとも呪術界の特例で一妻多夫の制度が合法となった今、私のプロポーズを受け入れるメリットは数多くあります」

 メリットという言葉にそよかはピクリと反応した。

 七海建人は眼鏡のブリッジを軽く押し上げながら、静かに語り出す。

「──そよかさん。冷静に、論理的にお聞きください。五条さんとの結婚は百歩譲って避けられないものだとしても、更に私と結婚することには、数多くの実利的メリットが存在します。

 まず第一に、生活の安定です。

 私は五条さんのように突発的に天井を破壊したり、テレビ中継を通じて世界へ愛を叫んだりはしません。

日々、定時で帰宅し、規則正しい生活リズムを維持しています。朝は淹れたてのコーヒーをお出しし、夕方には温かいスープを添えます。

 生活のリズムが整うことは、精神の安定にも直結します。これは呪術師としても非常に重要です。

 第二に、経済面の安定。

 ご存じの通り、私は呪術高専の給与に加え、複数の合法的な投資先を確保し資産運用をしております。

 仮に五条さんが衝動的に家を吹き飛ばしたとしても、私の貯蓄口座と保険で十分に補填可能です。

 生活において"五条さんの行動に振り回されること"が経済的ダメージにならない。──これは極めて大きな利点でしょう。

 第三に、精神的サポートの質です。

私はあなたが無理をした時、無理をしたと口に出さずとも察し、休ませるタイプの人間です。

 強く叱ることもなく、ただ静かに、そっと休息を促す。

 五条さんのように派手な言葉で励ますことはありませんが、私には、寄り添うという持続的な優しさがあります。

 第四に、社会的信頼です。

"五条悟の妻"となることで、世間は確かに騒がしくなるでしょう。マスコミも絶えません。

 しかし、普段は"七海建人の妻"としての顔を持てば、表の世界では静かに生活できます。

 昼は落ち着いた喫茶店で過ごし、夜は報道に追われることもなく、ただ静かに並んで本を読む。

 ──その時間を、私は守ることができます。

 最後に、長期的幸福の保証。

 五条さんは"永遠の最強"ですが、私は"変化する現実の中で共に老いる男"です。

 年齢を重ね、皺が増え、白髪が混じっても、あなたを変わらずに愛する。

 五条さんの“奇跡”ではなく、私の“継続”であなたを守るのです。

 ……それに、私と結婚すれば、あちらの天井の修繕費は確定申告で経費として処理できます」

 眼鏡の奥の瞳に静かな光が宿る。

「──どうか、前向きにご検討ください」

「七海!! なんかずるいぞ!! 経済とメンタルと老後の話で攻めるな!! 俺はそよかの老化だって止める自信があるんだからな!!」

「そうですか。私一人老いるならそれも本望……論理的に考えれば、当然の帰結です」

 

 

●2

 

 何か考え事をしている様子のユリに気がつく胡蝶しのぶ。

「あら、何か悩み事ですか?」

「……そう見える?」

 平和な世界になった後でも、彼女たちの交流は続いていた。一室に集いお茶とお菓子を持ち寄り会話を楽しんでいると。

「まぁ! 悩み事なら相談しあいましょう!」

 今回の手土産である草餅の山に気を取られながらも、甘露寺蜜璃も会話に参加してくる。

「なら、しのぶも蜜璃もそれぞれ義勇と小芭内というお相手が今はいるけど、もう一人同じぐらい好きな人がいたらどうする?」

 しのぶも蜜璃も顔を見合わせる。

「今面倒をみている子がね。ちょっと厄介な感じの二人に好かれていて困っているのよ」

「その子から見てその二人は好き嫌いでいうと?」

「どちらも好きよ。目に見えてわかるぐらいには」

「ふむ……どちらも好き、ですか」

 しのぶは茶を一口含んでから、静かに微笑んだ。

「それは、理屈では整理できないものですね。どちらかを選べばもう片方を傷つける。けれど、選ばなければ自身が苦しくなる」

「わかるわ!」と蜜璃が身を乗り出す。

「好きって気持ちは、どんなに内に秘めようと思っても溢れちゃうものだもの! 止められないわ!」

「そうね……」ユリはうっすらと笑った。

「その子も、まさにそんな状態なの。好きが止まらないのに、誰も傷つけたくない。たぶん、それが一番の悩みなんだと思う──しのぶや蜜璃だったらどうする?」

「「戦わせて強い方」とか?」

 しのぶも蜜璃も再び顔を見合わせる。鬼殺隊の柱になった彼女達のシンプルな生存戦略だった。

「元々、種の保存という意味では強い方を選ぶというのはわかるのよ。でもね、片方は戦力的に最強……例えるなら鬼殺隊の柱レベルのね。もう片方は凄く知性が高いとしたら?」

「そうですねぇ。知性が高いのなら柱を相手にしても上手く立ち回れる可能性はありませんか?」

 しのぶは真面目に考えてくれている様子だ。

「……ただ勝敗をつけてどちらかを選びたいという様子もないのよねぇ」

 あぁとしのぶと蜜璃が察したような雰囲気になった。

「それは……やっぱりその子はどちらも同じぐらい好いているということなのよね!!」

 目をキラキラさせて身を乗り出す蜜璃。

「同じぐらい好いてるのかしらねぇ。それとも情に厚い子だから、選ばれなかった時の相手の反応を見るのが怖いのかも」

「あらあら……」

 チュンチュンチチチと鳥のさえずりが聞こえてくる。穏やかな昼下がり、女子柱の集いはまだまだ終わらない。

 

 ──

 

「──くちゅん」

 そよかが小さくくしゃみをする。

「どうぞ」

 横にいた七海建人にそっとハンカチを差し出した。

「ありがとう……花粉症かしら」




ここまでご覧いただきありがとうございました。

●メインはpixivで活動しています。
https://www.pixiv.net/users/2225877
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