【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●9
「……どうして? どうしてこんなになるまで、すぐるはなおちゃんを傷つけたの?」
せいらの両目から涙が溢れる。
「違うんだせいら、これは……直哉君が、私とせいらの二人きりの時間を邪魔しようとして──」
「だからって!! こんな風に傷つけていい理由にならない!!」
ピリピリとした空気が周囲に満ちた。
「すまない……本当に……」
「すぐる。わたしに謝っても意味ないから」
「いや、君が今怒っている原因は私が彼をそこまで傷付けたことだから。謝るよ……本当にすまなかった。直ぐに救急車を手配しよう。それとも硝子に頼もうか──」
携帯を取り出して連絡先から硝子の名前を探す傑。
「…………」
「せいら?」
「──お師匠様、きて」
ちりんと鈴の音を立てて白猫が空中から姿を現した。
「なおちゃんの怪我を治したいの」
『あなたの呪力は反転術式には向かないのよ』
「それでも!! 治したいの! お願い!」
『……わかったわ』
せいらが白猫と額同士を合わせると、白猫の姿がせいらの中に消えた。
莫大な呪力がせいらを中心に渦巻き始める。
『其は長き旅の果ての到達者、其は厳しくも温かい運命導き手、開門せよ──癒しの力を、私に!』
まばゆい光が視界を埋め尽くす。
強い光を感じて、直哉が目を覚ました。
「なんやこれ? ……どないしたん?」
直哉は身体中の痛みが消えているどころか、すこぶる調子が良いと感じる。すぐ近くには魔法少女のような格好をした顔色の悪いせいらが。
「おいおい、なんや随分可愛らしい格好しとるのに顔色がごっつ悪いやんけ」
「わたしは──大丈夫だから。すぐるとちゃんと話し合って」
「わかったわかった。けどな、男同士の話し合いっちゅーもんはこれでするもんや」
すっと直哉は拳を掲げる。
「ほんの少し痛い目みよか? なぁ夏油」
1対1の殴り合いであれば、直哉には初めから勝機があった。そして──
「ふにゃあ」
せいらが間の抜けた声を上げてパタリと倒れた時、傑もまたせいらに注意を向けてしまった。
直哉の投射呪法で研ぎ澄まされた一撃が傑に入り、勝負は決着する。
──夏油傑は禪院直哉の足元に倒れた。
「はぁ……これで俺の勝ちってことでえぇんかいな。おーい誰か、人呼んでくれー」
誰も来ない。再びため息をついて、直哉は上を一枚脱ぎ、せいらの身体にかけて抱き上げる。
倒れている傑を一瞥してから部屋を後にした。
●10
「ありがとうございました」
伏黒恵が高校の校舎を歩いていると、お礼を言ってお辞儀をしてドアを閉める津美紀の姿を見かけた。
「あ、恵!」
ぱぁと表情を明るくして駆け寄ってくる。
「どうしたの?」
「それはこっちの台詞だ。俺は来年からこの校舎で過ごすから、どんなもんかなって思って……家入さんに見てまわれって言われたんだよ」
「家入さん? 家入さんって家入先生のことだよね? 恵、もしかしてどこか怪我したの?」
「大したことない。任務中に怪我とかしたら家入さんとか視るのが得意な人にみてもらうことになってんだ」
「そうなんだ。大丈夫だったんだね?」
「あぁ……」
「なら良かった──ほっとした」
津美紀の横顔を、つい横目で見つめてしまう。
「恵はすごいね。呪術師なんでしょ?」
「別にすごくはねぇよ」
「そうなの? あ、でもこれ──」
津美紀はポケットから眼鏡ケースを取り出した。
「えへへ……買っちゃった」
「それは?」
「高校に入ったら呪いや呪霊に関する事を教えてもらえるようになるから、希望者には見えるようになる眼鏡が販売されるの!」
『どう? 似合う?』と眼鏡をかけて嬉しそうに笑う。
「わー!」
校庭の片隅で式神を呼び出した。
「本当に恵の影から出てきたね! 初めまして!」
にこにこと津美紀は白と黒の身体を両手を使って撫でている。
「ふふっ、人懐っこい」
「──津美紀が見えてなかっただけで、そいつらは津美紀のこと知ってるぞ」
「えっ!? そうなの!? じゃあ初めましてなんて失礼だったかな。ごめんね……」
白と黒は特に気にした様子もなく嬉しそうだ。
「それで? 津美紀はさっき何していたんだ?」
「あ、話せてなかった。あの部屋ユリ先生の部屋なんだけど──」
手を開いて口の前に翳す津美紀。
「ユリ先生?」
「知らない? 一般クラスの養護担当してくれていて、私みたいな特殊な呪いがかかっている生徒を──」
「ちょっと待て、特殊な呪いがかかっている生徒って言ったか? 津美紀が呪いに?」
「……うん。そうなんだって、表面じゃなくて生まれる前から定められたようなそういう呪いとかって」
「聞いてないぞ!」
津美紀の肩を掴んで恵は声を荒げる。彼は五条悟をこの後どう問い詰めるかと思考を始めていた。
「私もつい最近まで知らなかったもの……お父さん……甚爾さんのおかげでこの呪術学園で生活できて良かった。恵のお母さんも、私の両親も一度に帰ってきたから本当はもう私たち今は姉弟(きょうだい)じゃないのにね」
「──津美紀。俺は、初めから」
『姉弟だなんて思ってない』という恵の言葉を、一際強く吹いた風がさらっていく。