【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●15
電話の相手は悟だった。
「──高専の屋上で待ってる」
着信はしつこかったが、通話の内容は一瞬で。内心今から? と思う気持ちもあったが、今しかないという気持ちもあった。
「いってきます」
「──はい」
建人さんに見送られ、靴を履いて玄関のドアを開けると同時に、
「!?」
よく知った香りに包まれる。
「きちゃった!」
「悟!? きちゃったって何!」
私の身体が抱きしめられて、ふわりと感じる浮遊感。瞬きの間に私と悟は高専の屋上に到着していた。
黒い帯状の目隠しを指で下げて、私の顔を覗き込む。
「…………」
「何よ」
「そよかが俺と結婚してくれるんでしょ? でも条件があるんだって?」
六眼を細め、少し怒ったような口調で。
「俺、言ったよね──あーだめだ。つい言っちゃう。黙る。黙るからそよかしゃべって」
両手で自分の口を塞いだ。
私は小さく溜息をついて──
執務室で業務をしていると、つい手が止まる。
『そよか……また悩んでいるの?』
白猫姿のお師匠様が、音もなく現れた。ろくに毛づくろいをしている様子もないのに、相変わらず優雅な毛並みをしている。
「私、どうしたらいいんでしょう」
『私に助言を求めるの? それはやめなさいと何度も教えたでしょう』
「…………」
『思っていることを口にしてみなさい。頭の中で考えているだけでは最良の選択はしづらいものだから』
ぽつりぽつりと自分の想いを口にした。
お師匠様はじっと私を見つめていた。私が悟を選べば建人さんとは今まで通りの関係ではいられない。しかし、建人さんを選べば悟との関係は破綻する。
いっそ私が二人ならこんなに苦しまずにいられるのではないかと考えてしまう。
『やってみる?』
含んだような笑みの響きがあるお師匠様の声。
「……私が二人になっても『こっちもそよか? そっちもそよか? 両方本物のそよかなら当然、両方俺のそよかでしょ!』って悟が言って連れて行くでしょうから」
想像の中の悟が『わーい』と二人になった私を両小脇に抱えて走り去った。
『そうね。ならどちらも選ばなかったら?』
その選択も地獄。むしろもっと混沌とする。
『なら外見だけでも老化してみる?』
ヒッ……。お師匠様はまたとんでもないことをさらりと言う。外見を老化させて私がお婆さんになったって、悟は気にしないし建人さんだってそれが理由で離れていくとも思えない。
『──ならもう答えは出てるじゃない』
──そう。答えはとっくに出ていた。
でも、その答えを口に出せずにいたのは私の想いが足りていたかったから。
大きく息を吸い込む。
「悟、私はあなたが好き。でも──」
悟は好きと言われて目を輝かせ、でもという言葉に影を落とす。
「建人さんも好き。どちらかを選んだら、どちらかが不幸になる。だから私は悟と建人さんを"一妻多夫の縛り"で幸せにする!!」
●16
「待って!」
そよかの真っ直ぐな浮気発言に目眩がした。待てという言葉にむぅというという表情で黙り込む。
俺は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「それで? 七海はなんて言ってんの」
「建人さんは、私の安寧のためなら受け入れるって」
──悔しい。既に七海に、よりによって先に返答を貰っているのが。
俺に先に話したら反対されるってわかってて進めたんじゃないかって勘繰ってしまう。
「悟?」
心配そうな声で俺を呼んで、そよかが近付いてくる気配がする。
「そよか知ってるよね。俺はそよかを選んだって」
「……うん」
「でもそよかが言ったことは、俺も七海も選ぶってそういうことだよ? ありえなくない?」
「…………」
ちらりとそよかを見ると傷付いたような表情をしていた。きっと俺も似たような表情をしているだろう。
言いたいことは沢山ある。でも、それを言ったってそよかを傷付けるだけだっていうこともわかる。
小さく息を吐いて立ち上がって、そよかを見下ろした。
「そんな結婚認めないって言ったら、そよかは七海とだけ結婚するんだろ」
「それは……そう、かも」
「なら俺もオッケーするしかないじゃん!!」
嫌だよ! そよかをよりによって七海と分け合うみたいなさ! 倫理とかあるじゃん! そよかも七海も俺より頭がいいのになんでそんなこと──。
「本当に今より幸せになれる? いま俺、だいぶ機嫌が悪いよ」
俺は世界のすべてを操れるのに、そよか一人の心も、七海の存在も"術式でどうにもできない"なんて──クソ。
「う、うん。わかる。すごくわかるわ……」
七海はどんな気持ちでOKしたんだよ……。本当にありえない。
「どっちが正夫になるかとか、そういうのももう決めてんの?」
「それはまだ──」
「ふーん」
俺に見下ろされて、そよかは居心地悪そうにしていた。
「「…………」」
一人で顔を赤くしたり青くしたり、色々考えているのかそよかの表情がころころ変わる。そんな様子が面白くてつい吹き出して笑ってしまう。
「!?」
そよかの身体をお姫様抱っこで抱き上げた。
「仕方ないな」
「なに!?」
「惚れた弱みだ。我慢するよ。ただ七海にはだいぶ嫌がらせ出来そうだな。なにしろ俺のそよかと結婚したいって言うんだから」
「!!」
「そよかにも色々してもらおーっと、スケスケの下着着てもらって一緒に寝たりー。二人で温泉宿に泊まって混浴風呂に二人で入ったりー」
「ちょ、ちょっと!!」
「いいよねー? 俺は我慢して一妻多夫に加わるんだからさー」
にっこりと笑ってそよかの顔を覗き込む。
「悟ーー!!」
そのまま俺はそよかの口を自分の唇で塞いだ。そよかの反論や抵抗の言葉が声になることはなかった。