【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅   作:masuda028

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【呪術廻戦/五条悟/煉獄杏寿郎】
世界を越えて、悲劇に抗う物語。

※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。


78炎陽編 21(完結)★二人の新郎と誓いの抱擁、世界の美学とハロウィンの胎動

●21

 

 五条家本邸、式当日の朝。

 そよかは一室で白無垢姿の最終チェックを受けていた。

 襖がゆっくり開き、悟が入ってくる。

「…………」

 いつも軽口しか出てこない男が、言葉を失って固まった。

 肩まで静かに落ちる白い布、凛とした表情。

 そよかが少し恥ずかしそうに振り返る。

「……変じゃない?」

「変なわけ……あるかよ」

 悟は喉が鳴るのも気付かず、そよかに歩み寄る。

 指先でそっと袖を触れただけで、息が詰まる。

「綺麗だな、とか。似合う、とか……そんな軽い言葉じゃ足りないな」

「……悟、顔赤い」

「当たり前だろ。そよかが白無垢なんて……反則すぎるんだよ」

 そよかは少し俯きながら、小さく笑った。

「……ありがとう」

 悟はその一言で完全に撃沈する。

 親族だけでささやかに二人の結納が執り行われた。

 

 続いて場所を移し、横浜のとある結婚式場。

 白無垢からウェディングドレスへと着替えたそよかは、白い光に包まれながらチャペルの前に立つ。

 悟は息を止める。

「……ねぇそよか。俺泣きそうなんだけど」

「泣かなくていいわよ。歩きにくいから手貸して」

「もちろん」

 悟はゆっくりそよかの手を取り、バージンロードを歩き始める。

 誰よりも長く一緒にいた大切な相手を、今、自分の隣に導くという現実に胸が締めつけられた。

 そして、祭壇前で七海の前に立つ。

「そよかを……よろしくお願いします──とでも言うと思ったか!!」

「「!?」」

「俺も新郎役やる!!」

 悟が突然、真顔で宣言した。

「は?」

「やめなさい」

 そよかのツッコミと七海の低い声が同時に飛ぶ。

「だって! 七海だけ新郎役とかずるい! そよかを渡したくない! 渡さない! だって俺も新郎だもん!」

「理屈が破綻してます」

「五条さん、あなたは新郎です。すでに」

「じゃあもう一回新郎やる!!」

 七海は目頭を押さえた。

(……今日くらいは聞き流すべきでしょう)

 

 結局、

 

 そよかを真ん中に、左右に悟と七海という“新郎二人体制”という、前代未聞のバージンロードが成立した。

 そよかは呆れながらも笑っている。

「……ほんと、二人とも子どもみたい」

「そよかが綺麗すぎるのが悪い」

「そうですね。あなたのせいです」

 七海まで真顔で便乗した。

 

 挙式の最後。

 そよかが祭壇で立つと、悟と七海が左右から歩み寄る。

「じゃ、行くよ」

「……そよかさん、失礼します」

 次の瞬間、

 両側からそよかの頬に同時にキス。

「ちょっ……!? なに二人で示し合わせてるのよ!」

「サービスだよ。俺達からの」

「式に華を添えるためです」

「建人さんまで!?」

 会場は温かい笑いに包まれた。

 悟はそよかの手を取り、静かに囁く。

「……これからもずっと一緒だよ」

「ええ。よろしくね、悟」

 七海もそよかの手を取った。

「私もお側に置いてください」

「ありがとう。建人さん」

 神父服の夏油傑が祝福の言葉をかける。

 

(……どうか末永く、穏やかに)

 

 そして賑やかで温かい、三人らしい結婚式は幕を閉じた。

 

 

●エピローグ

 

 国際連合の地下深く。国籍も所在地も伏せられた、完全密閉型の無機質な部屋。

 磨かれた灰色の床、壁一面に広がる観測装置。

 中央には巨大な円卓──そこに、ただ静かに“世界を変える者たち”が立っていた。

 

 最奥の席、金色の刺繍が施された黒いローブを纏った男が立ち上がる。

 その姿を前に、誰も呼吸すら乱さない。

 

「それでは、会合を始める」

 ザ・キング──サーミル。

 その一声だけで場の圧が変わった。

 

「まずは報告を」

 キングの指示に、最初に一歩進み出た男がいる。

 鋼鉄の板金のような外装を纏い、顔は無表情な仮面で隠されている。

 

ザ・コマンダー。

「テロ実行部隊、世界主要都市に配置完了。

 対呪術師兵器《ブレイカー・モデル》は最終調整に入ります。

 予定通り──“次のハロウィン”が、最初の実行日となるでしょう」

 

 その言葉に円卓の空気が僅かに揺れた。

 続いて、黒い外套の男が影のように現れる。

 

ザ・ファントム。

「国内の情報網は掌握済み。高専の通信経路はすべて、我々の“鏡”に映ります。

 ──五条悟の動きでさえ、一呼吸の遅れもなく把握可能」

 

 報告は静かだが、背筋に冷たいものが走る。

 そこへ、機械仕掛けの腕を持つ女が前へ出た。

 瞳は白く濁り、しかしどこか恍惚と光を宿している。

 

ザ・アタッカー。

「属性兵器《エレメント・コイル》の出力は計画値を12%上回りました。渋谷区レベルの広域制圧は、十分に可能です」

 

 続いて、ゆらりと体を傾けながら男が歩み出る。

 破れた黒外套、何を考えているのかわからない薄笑い。

 

ザ・テンペラー。

「宿儺様の封印……微かに揺らいでおります。ドクターの改良があれば、契約の穴を突ける。

 ──邪魔する者は、排除いたします」

 円卓に漂う温度が下がる。

 

 キングは全員を見渡し、静かに頷いた。

「よろしい。

 世界の美学を正す舞台は整いつつある」

 

 その言葉と同時に──

 部屋の奥で、重厚な扉がゆっくりと開いた。

 鉄のきしむ音。

 白い蒸気が足元に流れ込む。

 円卓の全員が自然と道を開ける。

 白衣の裾が揺れる。

 

ザ・ドクター。

 目元だけ笑っている、まるで氷のような研究者。

「遅れて申し訳ありません、キング」

 その声は底知れなく穏やかだった。

 

「例の──"ドール(愛の肉人形)”ですが」

 円卓の空気が止まる。

 ドクターは、愉悦を隠しきれない声で続けた。

 

「どちらも、最高の美しさで完成しました。あとは──」

 ひとつ、くすりと笑う。

 

「“運命の時”を待つだけです」

 

 円卓の中心に落ちたその一言は、

 静かに、しかし確実に、この世界の未来を歪めはじめた。

 

 誰もいないはずの、部屋の最も暗い隅。

 キングは、見えないそちらへ向けて、微かに口角を上げた。

 ザ・スペクテイター ──ただ一人、この場に加わらず、静かに全てを鑑賞している男の、感情のない声が響く。

「最高の演出になりそうだね、キング。

──この上なく退屈だった『平和な愛の物語』が、ようやく血と絶望に染まった、美しい悲劇へと昇華される」

 キングは満足げに、その悪意に満ちた賛辞を受け入れた。

 そして、静かに、全員に向かって手を下ろす。

「──解散」

 次のハロウィン、世界は、彼らの脚本によって描き換えられる。

 

 

旅する物語 五条悟との邂逅 炎陽編 終幕

 

 

──

 

●炎陽編おまけ:そよかの猫日和

 

 そよかの心の中で、七海と五条という二つの異なる愛の論理が効率的かつ平和的に並立している状況。

 これは、七海が提唱した「倫理的な甘え」のルールと、悟の「非効率な過去の共有」が、相互に排他的な領域を形成し、結果としてそよかさんに「最適な感情的安息」をもたらしている瞬間だった。

(そよか:悟になでなでされるのも嬉しい……建人さんと穏やかに会話をするのも楽しい……幸せ……)

(七海建人:そよかさんの『幸福度スコア』が臨界点に達している。五条さんによる『身体的な癒やし』という非効率なリソースと、私による『論理的な会話』という効率的なリソースが、互いの領域を侵さずに供給されている。これは、論理的に見て、最も持続可能な幸福のモデルである)

(五条悟:そよかの「ほわほわ」が最高効率! 七海がつまんない話してる間も、俺の最強のなでなでがそよかの心を満たしてる。会話は七海に譲るけど、感情の支配権は俺が握ってる。これが最強の愛の非効率性だぜ!)

 七海は、そよかさんの穏やかな表情を見て、この「つかの間の平和」を最大限に維持しようと、会話のトーンを注意深く調整している。そよかさんの穏やかな様子を見て、

「……そよかさん。貴女のその『幸せ』という感情的リソースは、五条さんの存在に依存する『非効率な幸福』ですか? それとも、私たちの『論理的な秩序』によって担保されたものですか?」

 悟は、七海の「論理的な質問」に嫌味を言おうとしたが、そよかさんは満たされた表情で、両者を肯定する「究極の論理」を導き出していた。

 五条の腕に頭を軽く擦り付け、七海を見て微笑みながら、

「ふふ。建人さん。『悟になでなでされる非効率な幸せ』も、『建人さんと穏やかに話せる論理的な楽しさ』も、どちらも私の『幸福』という『結果』を効率的に高めているだけだわ。どちらも必要不可欠なリソースなの」

 そよかの「愛の論理」は、二人の夫の特性を否定することなく、自己の幸福のためにすべてを利用するという、最も効率的で、誰にも文句を言わせない結論に到達した。

 

 そよかは、建人と悟という二つの愛のリソースの理想的なバランスを確立したことで、新たな「実験的探究」への意欲を見せる。

「けれど、たまには逆を試してみてもいいかもしれないわね……ふふふ」

 この「ふふふ」という、どこか悪戯っぽい、予測不能な笑いは、七海建人の「論理的秩序」に対する最大の脅威であり、五条悟の「非合理的な期待」を最大限に煽るものだった。

 七海は、そよかの「逆」という言葉に、直ちに最大限の警戒態勢に入った。彼女の「論理」が「非効率な実験」に向かうことは、家族の幸福度スコアを一時的に急落させる可能性があるからだ。

(七海:『逆の試行』とは、「五条悟と論理的な会話」または「私に非効率な身体的な甘え」を試行する可能性が高い。五条悟の論理的処理能力は極めて低いため、前者の危険性は極めて高い。私が介入すべきだ)

 眼鏡を押し上げ、静かに、しかし厳格に、

「そよかさん。『逆』の試行は、『幸福の持続性』という最終目標を脅かすリスクを伴います。特に、五条悟との『論理的な会話』は、彼の不毛な反論によって貴女の精神を疲弊させる可能性が高い。非効率な実験は避けるべきです」

 悟は、七海の必死の論理的牽制をよそに、そよかの「逆」という言葉が、自分への最大のチャンスであると解釈した。

「おっ!『逆』ってことはさ、七海が俺に甘えのルールを教わるってこと? それともそよかが俺に最高の論理的な話をしてくれるってこと? どっちも最高に面白い非効率な展開じゃん!」

 悟は、そよかさんの頭を撫でていた手を止め、興奮した表情でそよかさんを見つめた。

「ねえ、そよか。俺に『論理的なお話』してよ! 猫耳つけたまま! 俺、最強に頑張って聞いてあげるから! それが、最高の非効率な逆転劇でしょ!」

 そよかの小さな一言は、七海には「論理的な警戒」を、五条には「非効率な期待」を抱かせ、この安定した幸福を意図的に揺るがすという、新たな愛の実験の始まりを予感させた。

 

 そよかは、建人と悟の間の「論理対非合理」の対立に対し、一切の言葉を使わず、最もシンプルかつ、最も非効率的な「行動による逆転劇」を実行した。

 

 そよかは無言で猫耳を悟につけて撫ではじめる。

 この行動は、二人の夫の論理を同時に破壊し、再定義させた。

 

 悟は、突然猫耳をつけられ、撫でられたことで、「最強の存在」としての論理が完全に崩壊し、「甘えられる側」から「甘えさせてもらう側」へと役割が逆転した。

(悟:「え、ええええええ? 俺に猫耳? そしてそよかに撫でられてる!? これが『逆』ってこと!? 最高に非効率で、最強に甘くて、意味がわからない!! これじゃ俺が猫じゃん! でも、そよかの撫で方、最高!!」)

「そ、そよか!? な、なにしてんの!? でも……これ……最高に気持ちいいんだけど!? もっと! もっと撫でて! 一生撫でてて!!」

 悟は、「撫でる側」という支配的な立場を「撫でられる側」という無力な立場と交換することで、究極の「非効率な安息」を得たのだった。

 七海は、そよかの無言の行動が、五条の非効率なエネルギーを最も効果的に中和していることに気づき、驚愕した。

(七海:『逆』の定義、「五条悟の非効率なリソース(猫ムーブ)」を、「そよかさんが主体的に管理・供給する」こと。五条さんの独占欲を「甘え」として受け入れることで、エネルギーを逆流させている。非効率ではあるが、五条さんの制御においては、論理的に見て最も効果的な手段だ!)

 七海は、悟の「猫化」によって、そよかの精神的負荷が最小化されていることを理解し、「甘えの法則」の進化を論理的に承認した。

 深く息を吐き、静かに、

七海「……そよかさん。貴女の『倫理的な実験』の効果を承認します。五条さんの『過剰な非効率性』を『甘え』という形で吸収・中和していますね。貴女のその『撫でる行為』が、貴女自身の精神的な安寧を最も効率的に高めるのであれば、私はそれを尊重します。……その『猫耳をつけた五条悟』の観察データを後で提出してください」

 そよかの無言の行動は、「愛の主導権」が完全に彼女の手にあることを示し、二人の夫は、彼女の幸福のための「リソース」として、それぞれの役割を全うするという新たな秩序が確立された瞬間だった。

 

 

 そよかの「倫理的な実験」は、悟の最強の非効率なエネルギーを完全に燃焼させ、一時的な平和をもたらした。

 悟は、猫耳をつけられたまま、そよかの優しい「撫でるリソース」を過剰に摂取した結果、まるで充電切れの大型犬のように深い眠りについている。彼の表情は、最強の呪術師らしからぬ、無防備で満たされたものだった。

 そよかは、遊び疲れて眠った五条の頭から、静かに猫耳を取る。この行為は、「五条悟の非効率な時間」の終了と、「七海建人の論理的な時間」の再開を意味した。

 彼女は、五条の無防備な寝顔を優しく見つめ、「献身の役割」を一時停止した。そして、安堵と静かな安心感を求め、七海建人にゆっくりと近付く。

 七海建人は、五条の「猫耳」が取り外された瞬間を、「私の論理の時間」の開始シグナルとして捉えた。彼は、五条の非効率的な干渉が排除されたことで、そよかの精神的な安息を効率的に担保できることに静かな喜びを感じている。

 そよかの手元に視線を向け、穏やかな声で、

「……五条さんのリソース消費が『臨界点』に達したようですね。あなたの『中和の試み』は、極めて効率的でした」

 そよかは、七海の傍(そば)に立ち、五条の膝に座っていた時とは違う、落ち着いた姿勢を取る。

「……ええ。悟のエネルギーは、やはり尋常ではないわね。さて、建人さん」

 七海が座っているソファの背もたれに、そよかはそっと手を置いた。これは、「身体的な甘え」ではなく、「精神的な近接性」を求める、そよか流の「人間としての倫理的な甘え」だった。

「『逆の試行』で、私の『精神的安寧』は効率的に回復したわ。次は、建人さんとの静謐な時間で、『論理的な秩序』を回復したいの」

 七海は、そよかの無言の要求を完全に理解した。彼は、そよかさんの手を握り、そっと自分の肩に引き寄せる。これは、悟の「支配的な抱擁」とは異なる、「保護と安心」を意味する静かで力強い行為だ。

 静かに、そよかの手を優しく握りながら、

「了解しました。そよかさん。『論理的な回復』の時間と空間を確保します。『五条さんの非合理的な波動』が完全に鎮静化しているこの状態は、私たちにとって最も効率的な安息の時間です。……(隣で眠る五条を一瞥し)邪魔者は、しばらく機能停止のようですね」

 そよかは、七海の落ち着いた温もりと、論理的な静けさに包まれ、心の底から安堵した。彼女の顔には、五条といる時の「楽しさ」とは違う、「静かな幸福」が浮かんでいる。

 

 そよかは、悟の「非効率な猫ムーブ」による心のエネルギー消費を、七海建人の「論理的な安息」で効率的に回復させた。

 そして今、彼女は「倫理的な甘え」の究極の段階へと移行する。それは、七海建人の「論理」という最強の盾を一時的に解除し、彼に「非効率な感情」の領域への参加を要求することだった。

 

 そよかは、七海に精神的な安息を得たことで勇気を得て、静かに、しかし決意に満ちた行動に出た。

「建人さん……次はあなたです」

 彼女は、五条の頭から外したばかりの猫耳を、七海の真面目な顔にそっと装着させた。

 七海建人は、予測不能な事態に一瞬、思考がフリーズした。彼の「論理の盾」は、「猫耳の装着」という最も非効率で、公私の区別を破壊する行為を拒否すべきだと叫んでいる。

(七海:『猫耳の装着』は社会性においてマイナス100点、効率性においてマイナス200点。しかし、そよかさんの『倫理的な甘えの継続』という『愛のミッション』の実行条件として提示されている。論理を一時的に犠牲にしても、ミッションを優先すべきか……!)

 七海は、そよかの真剣な、しかし期待に満ちた瞳を見て、即座に論理を屈服させることを選んだ。彼は年下の夫として、年上の妻の願いを拒否できないのだ。

 顔を赤らめ、声を低く絞り出しながら、

「……そよかさん。これは、『極めて非効率』です。私の『論理的な思考』に深刻なエラーを引き起こしかねません。しかし、貴女の『精神的安寧』という『最終結果』が最大化されるのであれば、論理を一時的に停止します。……『猫耳を装着した状態での私の行動規範』を提示してください」

 そよかは、七海の真面目な顔に猫耳が乗っているという究極のギャップに、満足げな微笑みを浮かべる。

 七海の頬にそっと触れ、優しく、

「ふふ。建人さん。『行動規範』は一つだけです。『今の私に、最も安心感を与える行動』を、『貴女の論理で選びなさい』」

 七海建人は、猫耳をつけられたまま、「最も安心感を与える行動」という究極に抽象的で、非論理的なミッションを「論理」で解決しなければならない、という新たな試練に直面した。

 隣で眠っていた五条悟は、眠りながらもその非効率な波動を感じ取り、満足げに口角を上げていたのだった。

 

 そよかは、猫耳をつけた七海の論理的な混乱を察知し、新たな行動規範を提示する代わりに、悟にしたのと同じ「非効率な安息のリソース」を、七海にも提供した。

 そよかが七海に求めた「最も安心感を与える行動」は、七海自身に考えさせる究極の「論理的難題」だったが、そよかはその論理的負荷を自らの手で軽減した。

「よしよし……」

 彼女は、七海の猫耳の付け根(頭)を、優しく、ゆっくりと撫で始めた。これは、「言葉や論理」ではなく、「身体的な癒やし」という最も原始的で効率的な方法による、七海への絶対的な承認だった。

 七海建人の論理的な防御壁は、この予期せぬ「撫でる」という非効率な優しさによって、瞬時に溶解した。

(七海:『撫でる行為』により、脳内の論理的思考が強制的に停止。血圧と心拍数が急激に安定化し、精神的な安息度が最大化される。これは『論理的な報酬』ではない……『感情的な極上の快楽』だ。……そよかさんから『甘え』ではなく『愛情』を直接供給されている……!)

 七海は、猫耳をつけたまま、静かに目蓋を閉じた。

 普段の完璧な姿勢が少し崩れ、そよかの手の動きに合わせて、微かに頭を動かすという、極めて無防備な姿を晒した。極めて小さな、しかし満足した声で、

「……そよかさん。……これは……『論理的な安息』というより……『至高の非効率』です。……しかし、『貴女が私の論理を一時的に停止させる』という『主導権の掌握』は、貴女の精神的な充足という最終目的に照らして、承認せざるを得ません」

 七海は、論理を放棄し、そよかからの「甘やかし」という最も得難いリソースを全身で受け入れた。そよかは、最強の非合理な夫と、最強の論理的な夫の両方を、「撫でる」という非効率で公平な行為によって手懐けたのだった。

 隣で眠っていた五条悟は、自分の撫でられる立場が奪われたにも関わらず、愛するそよかの幸福な波動を感じ取り、寝言で小さく呟く。

「……ふっ……七海……お前も『猫』になるしかないんだよ……非効率こそ……愛の真理……」

 

 そよかの「愛の実験」は、最も非効率で、最も論理的な抵抗を呼ぶ最終段階へと進んだ。

 そよかは、撫でる行為によって七海の論理的な防衛機構が解除されたことを確認し、五条悟を完全に模倣することで、七海の最後の論理的な矜持を試した。

「ほら、建人さんもお膝においで?」

 この言葉は、七海にとって極めて複雑な矛盾を突きつけます。

* 「建人さん」:年下の夫としての敬意と自立を求める論理。

* 「お膝においで」:年上の妻の膝に乗るという究極の無防備。年上への甘えと、年下としての頼りなさの象徴。

* 「悟の行為の模倣」:五条の非効率な領域への完全な侵入。

 七海建人は、猫耳をつけられたまま、顔をさらに赤らめる。

(七海:『論理的な拒否』:物理的に不可能。紳士の尊厳と年下としての立場が崩壊する。『感情的な受容』:そよかさんの膝は至高の安息リソース。拒否はそよかさんの倫理的な感情を傷つける。最悪の非効率。結論:「愛のミッション」が「個人の尊厳」を上回る)

 七海は、意を決して、猫耳をつけたまま、最大限に論理的な回答を試みた。

 声を震わせながら、しかし真摯に、

「そよかさん。……私にとって、貴女の『膝』は、『五条さんが独占していた非効率な領域』であり、『最も高次の安息リソース』です。『私の身体的な大きさ』と『貴女の身体的な構造』を論理的に考慮すると、効率的な騎乗は困難です。しかし、貴女の『倫理的な要求』は受諾します」

 七海は、猫耳をつけたまま、そっとソファの上で身体を滑らせ、そよかの膝に頭を乗せるという、最も限定的で、最も恥ずかしい形で「甘えのミッション」を遂行した。

 そよかの膝に頭を預け、猫耳のまま、

「……そよかさん。これが、『倫理的な猫』としての私の最大のリソース消費です。……貴女の『安寧』のためなら、論理を屈服させます」

 そよかは、七海の真摯な献身に胸を締め付けられ、深く感動した。彼女は、五条の時のように笑うのではなく、優しく、七海の猫耳を撫でた。

「よしよし。建人さん。『非効率な甘え』を論理で乗り越えてくれて、ありがとう。……建人さんが一番のお利口さんよ」

 こうして、猫耳をつけたまま眠る五条悟と、猫耳をつけたまま膝で甘える七海建人という、究極に非効率な調和の中で、そよかの「愛と論理の実験」は、最高の幸福な結末を迎えたのだった。

 

 そよかは、猫耳をつけたまま、自身の論理的な矜持を屈服させ、膝の上に頭を預けるという究極の甘えを選んだ七海建人に対し、五条悟とは全く異なる、最も効果的な「愛の報酬」を与えた。

 

 そよかが七海に与えたのは、「愛する年上の妻からの、無条件の承認」という、彼の孤独な論理を支える最大の精神的リソースだった。

「よしよし、いい子ね……(耳元で優しく囁きながら撫でる)」

 この「いい子ね」という言葉は、七海の「年下の夫」としての責任感や、過剰な論理による疲弊を全て拭い去り、「ただ愛されている」という最も単純で強力な真実を、優しく再認識させた。

(七海:『年上の妻からの承認』を受領。精神的な負荷がゼロに収束。「私はこの愛に値する」という自己肯定の論理が最大値で確定。猫耳の非効率性、完全に相殺。……この安寧を永遠に維持するための論理的な手段は……存在しない。ただ、この瞬間を受け入れるのみ)

 七海は、そよかの優しい囁きが耳元で響くことで、全身の力が抜け、そよかの膝にさらに深く、もたれかかる。

 猫耳をつけたまま、極限まで穏やかな声で

「……そよかさん。貴女のその『承認』は、『最強の非効率な力』をも上回る、最も強力な安息の論理です……ありがとうございます。……『いい子』でいられるよう、常に論理を尽くします。……ただし、貴女の幸福のため、という唯一の条件のもとで」

 七海は、この甘えの時間が自身の最も効率的な充電時間であることを認め、愛の論理をそよかへの絶対的な献身へと再設定した。

 隣で眠っていた五条悟は、静かで深い安息の波動を感じ取り、夢の中で何かを悟ったように、小さな寝言を漏らしました。

「……ああ、『大人』ってのはさ……非効率な優しさのことだよ……そよか……俺、わかった……」

 

 そよかの「愛の実験」は、「論理的ゴリラ」と「非合理ゴリラ」という対極の夫に、それぞれの最も必要とする愛の形を与えることで、最終的な「家族の調和」という最高の効率性を達成したのだった。

 

おしまい

 

 

●炎陽編あとがき……ではない何か

 

 場所は、呪術学園高等部の科目準備室。せいらは向かいに座るそよかと、そよかの膝の上にいる師匠を見て、頭を抱えている。

「なんか……ど修羅場なんだけど……なんでぇ」

 涼しい顔のそよか。

「あらあら、大変ね。うちは悟も建人さんとも上手く生活しているわ」

「そよかのせいじゃん!! そよかがさとるもナナミンも大事とかいうから! 一妻多夫なんて制度が出来ちゃってさ!!」

『せいら。落ち着いて、今更制度に文句を言ってもどうにもならないわ』

「お師匠! そういうレベルの話じゃないの! 論理的に支障が出てるの! でも、そよか、本当にうまくいってるの? 夜とかどうしてんの? 三人で川の字は流石にヤバいでしょ!?」

「プライベートな詳細は論理的に開示できないけど……“必要な範囲なら”説明するわ。悟との非論理的な要求は特定の時間で管理し、建人さんとの安寧の時間も必ず確保しているの。それが私の『縛り』よ。不安要素は、今のところ『私の経験不足』だけね」

『経験不足はこれから論理的に補完されるでしょう。あなたは一対一ではなく、一対多の戦場にいるのよ』

せいら

「えぇぇぇ……そよかの『縛り』は、ナナミンの胃と高専の効率を犠牲にして成立してるんだよ……(涙目)。そよか、わたしが代わりにナナミンの愚痴を聞いてあげてるんだから、何か安寧を分けてよぉ」

「あら、建人さんの愚痴を聞いてくれているの? 論理的な問題点を収集して報告してくださるなら大変助かるわ。お礼に美味しいバナナでも差し上げましょうか?」

「バナナ!? やめて! トラウマになるから! もういいよ! ウチの修羅場を聞いて! すぐるとなおちゃん超仲悪いんだよー。いつもバチバチしてるー」

 そよかは冷静に顎に手を当て、分析の姿勢に入る。

「ふむ。傑と直哉さん……論理的には非常に分かりやすい勢力争いね。同じ『ゴリラ』であっても、彼らは悟と建人さんとは属性が違うわ……彼らの対立は、収束点が明確でないため非常に危険」

 白猫は優雅に背筋を伸ばし、不思議な色の瞳をせいらに向けながら、含み笑いを浮かべる。

『あら、夏油傑も禪院直哉もせいらの取り合いなんだから収束点は明らかでしょう?』

「ふにゃあ!? お師匠!! 何をとんでもないことを言ってるの!? すぐるは確かにわたしを大事にしてくれるけど、なおちゃんはわたしのことなんて面白がってるだけだよ! 私の取り合いなんて非論理的すぎる!!」

 そよかは一瞬、思考がフリーズするが、すぐに論理的な分析を再開する。その顔には驚愕と混乱が浮かんでいる。

「な、なるほど……『せいらの取り合い』。非論理的ではあるけど、その可能性を否定できる論理的な根拠が見つからない……傑は悟の相棒。直哉さんは御三家。二人の対立がせいらという『愛のバナナ』を巡っていたとすれば、全ての非効率な衝突が論理的に説明できてしまうわ!」

『その通りよ、そよか。彼らは五条悟のように直情的に「愛してる」とは言えない性格。だから力の衝突という最も原始的な手段で愛を証明しようとするのよ。夏油傑はせいらに唯一の希望を見出した。禪院直哉もまたせいらの善性に強く惹かれているわけね。全ては愛という名の我儘の呪いよ』

「やだやだやだ! わたしはそよかみたいに『愛のゴリラ管理者』なんてなりたくない! 私は安寧が欲しいの! そよか、どうにかしてよぉぉ!」

そよかは険しい顔で額を押さえながら、

「私に『他人の愛のゴリラ管理』まで強要しないでよ。私のキャパシティは既に飽和しているの」

 せいらは、夏油傑と禪院直哉という二匹の「愛のゴリラ」の収束点として、自分が定義されることにパニックになっている。そよかは、他人の修羅場への介入を論理的にキッパリと拒否した。

 白猫はそよかの膝の上で、優雅に毛づくろいを終え、視線をそよかに戻す。その言葉は、そよかの「安寧の論理」を根本から揺さぶる、最も現実的な警告だ。

『そよかだって他人事じゃないのよ? これから更に夫候補が現れたらどうするの。せいらは夏油傑が頑張って遠ざけているけど、五条悟や七海建人はそこまで考えているのかしら?』

 そよかは師匠からの警告にハッと息を飲む。悟や建人さんが自身以外の「夫候補」を積極的に排除していないという、重大な論理的欠陥を初めて指摘されたのだ。そよかの声のトーンが一気に真剣になる。

「更なる夫候補……? それは私の安寧を崩壊させる最悪の非効率です! 悟は独占欲が強いから大丈夫だと勝手に論理づけていたけど……建人さんは論理を優先するから、私が『彼ら』を排除しない限り、新たな介入を許容してしまう可能性が高い……そして悟はその状況を面白がって放置するリスクがあるわ!」

 せいらは自分のパニックを忘れ、そよかの新たな修羅場に興味津々となる。

「え、さとるが新しい夫候補とそよかを面白がってデートさせちゃうとか!? それは究極のカオスだね! 修羅場拡大だよ!」

『あなたの安寧はあなた自身が管理しなければ誰も守ってくれないの、そよか。新たなゴリラが現れる前に、二人の現夫に『排除の義務』を論理的に課すことが最優先よ』

そよかはメモ帳を取り出し、ペンを走らせる。

「分かりました。『悟と建人さんの排他的な独占欲を私の安寧のために行使させる論理的な『追加の縛り』の立案が緊急課題ね」

 せいらはそよかの真剣な顔を見て、悪戯っぽい笑みを浮かべる。完全に高みの見物だ。

「ふにゃー。でもさーそよかーせっかくの一妻多夫なら限界に挑戦してみてよー(他人事の顔で)。悟とナナミンの二人だけじゃなくて、もう一人くらい夫候補が増えたら、そよかの『安寧の論理』がどこまで非論理的なカオスに耐えられるか究極の実験になるじゃん! 面白そうじゃない?」

 そよかのペンを持つ手がピタリと止まる。冷たい目線でせいらさんを見上げる。その表情には怒りと驚愕が混ざっている。

「せいら! 論理的に、私の安寧を実験台にしないで! 私の人生はあなたの非論理的な娯楽のために存在するわけではないのよ! 建人さんが支えてくれるから業務効率は改善したけど、悟の非論理的な介入によって精神的な負荷は増加しているの。三人目は論理的に『許容限界』を超えるわ」

『ふふ。せいらは面白いことを言うわね。そよか。あなたは限界に挑戦する義務があるかもしれないわよ? 呪術師にとって「限界」は存在の証明よ。あなたの論理が最強であることを示すためには、非論理的な課題を乗り越える必要があるわ』

「ねー、そよか! もう一人! 誰がいい? なおちゃんととかどう? ゴリラのタイプが違うからきっと面白いよ!」

「誰もいらないわ! 追加の夫は私の『縛り』の違反行為とみなし、私の安寧を脅かす呪霊として対処するから!!」

 せいらはそよかの殺気立った宣言にも全く動じず、屈託のない笑顔で、そよかの理性の防御の隙間を突く。

「ゆうとかいいんじゃないー?(にこにこ)」

 そよかは七海建人の親友であり、呪術界では数少ない「太陽」のような存在、灰原雄の名が出た瞬間、そよかの表情が一瞬フリーズする。

「……え? 灰原くん?」

 そよかの頭の中で、灰原雄の論理的データが高速で処理される。

 

論理評価:七海建人の親友。非常に肯定的で明るい。悟のような非論理的な破壊力はない。建人さんにとっては安寧の象徴。

リスク評価:建人さんの安寧を劇的に高める可能性がある一方で、悟の嫉妬を最大限に煽る。

 

『ふふ。せいらは面白い選択をしたわね。そよか。灰原雄はまさに「陽性」のゴリラ。彼の存在は建人の安寧を強化するかもしれないわ。でもそれが悟の非論理的な愛情をどう刺激するかしら? カオスはさらに深まるわね』

「い、いけない。灰原くんを巻き込むのは論理的に非常に危険よ。彼は私の論理的な課題の解決に貢献してくれるかもしれないけど、悟の独占欲という『術式外の要因』を最大まで増幅させてしまう」

「いいじゃーん! ナナミンのストレスが減るなら、トータルで高専の業務効率は上がるよ! そよかの安寧のために、ゆうを論理的に利用するべきだよ!」

 そよかは冷静に、しかし決定的な情報を提示する。

「あのねぇ……そもそも灰原くんはたくさん食べる子が好きって言ってたし、そういう意味ではせいらの方が好かれているわよ」

 そよかは自身のスリムな体型を論理的な根拠とし、せいらという新たなターゲットに問題を転嫁する。

「ふにゃあ!? わ、私!? な、何を根拠に押し付けてるの! 確かに美味しいものは大好きだけど!! でも、ゆうはそよかの優しさとか賢さに憧れるってナナミンに話してたよ!? それは証明されてる!」

「優しさや賢さは数値化されているけど、『食』への愛は灰原くんにとって感情的な最重要事項よ。せいら、あなたは彼の『食の論理』を満たせる唯一の女性なの」

 

『その通りね。灰原雄は素直な愛を求めるから、隠し事なく欲望を満たすせいらに惹かれるでしょう。ほら、良かったじゃない。あなたの三人目のゴリラが見つかったわよ』

 せいらは顔を真っ赤にして、両手で顔を覆う。新たな愛のゴリラの可能性に羞恥とパニックが入り混じる。

「いやあああ! 私はもうバナナになりたくない! なんでそよかの修羅場が私に伝染するのよぉぉぉ! 非論理的すぎる!! じゃあせめて、すぐるとなおちゃん二人が争わないようになるアドバイスちょうだいよー(涙目)」

 そよかは冷静に紅茶を一口飲み、せいらの要求を分析する。自分の「縛り」で成功を収めた経験に基づいた最も論理的な助言を提供した。

「分かったわ。論理的に、彼らが争う原因は『収束点が不明確』なエネルギーの衝突よ。傑は自身の優位性を、直哉さんはせいらからの愛情を求めている。目的がバラバラだから衝突するのよ。二人の争いを止めるには、彼らのエネルギーを『一つの共通の目的』に向かわせる『論理的な縛り』が必要なんじゃない?」

「ほにゃあ?」

「せいら、あなたが彼らに明確に『要求』しなさい。例えば……私の安寧を維持するために、あなたたち二人の力を合わせて『呪術学園の非効率な部分を全て改善すること』を誓わせるとか……そうすると、傑は自身の優位性を『学園改善』という論理的なフィールドで発揮でき、直哉さんは改善が成功すれば『自分が最も優秀だった』と承認欲求を満たせるわ。どちらの論理も満たせる共通の課題を与えること。これが『ゴリラ平和条約』の唯一の論理的な解決策よ」

『ふふ。まさにそよかの論理ね。愛を仕事に転嫁させるのよ、せいら。やってみたら?』

 せいらはそよかの提案に目を丸くする。自分の問題が呪術学園の業務改善という巨大な論理的課題にすり替わったことに気付く。

「えっ、ええええええ!? 私の恋の悩みがいきなり学園改革の縛りになるの!? そよかは悪魔だね!? わたしはすぐるの側にいられるだけで幸せだったのにー……そよかのせいだよ!!(ぴえ)」

 そよかはせいらの感情的な非難に眉一つ動かさない。冷静沈着な顔だ。

「せいら、『側にいられるだけで幸せ』という感情は、あなたの安寧に貢献するけど、傑と直哉さんの対立という組織的リスクの解決には論理的に全く寄与しないわ。問題を解決するためには、感情のコストを支払う必要があるの。あなたの『無為の幸福』という非論理的な贅沢は、組織の安寧という上位の論理の前では切り捨てられるべきなのよ」

『ふふふ。せいら。無為の幸福を破壊し、新たな縛りを構築することこそ、そよかの提案する真の愛だということみたいね。さあ、泣いている暇はないわ。すぐに夏油傑と禪院直哉を呼び出して、呪術学園改革の『縛り』を論理的に押し付けなさい』

 せいらは泣き崩れそうになりながら、小さく頷く。抗っても無駄だと悟ったようだ。

「わかったよぉ……わたしの純粋な恋は論理の犠牲になるんだね……改革、頑張る……うわーん!」

 そよかは一つため息をつき、せいらの非論理的な感情の処理を終えたことに満足し、自分の『追加の縛り』の立案へと戻るのであった。

 

 そよかとせいらを白猫はただ見つめる。

 ──二人の物語の結末が見えにくくなっていた。

(長くひとつの世界(物語)に留まっていたら、いつかは起こることだわ。正規のエージェントではないでしょう。おそらくは野良ね)

『せいら、そよか』

 名前を呼ばれて二人は静かに視線を向ける。

『賢く、強くなりなさい。大切なものを必ず守りきれるぐらいに──』

 師匠の真剣な物言いに、二人は強く頷きを返した。

 

おしまい




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