【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●19
【地下:最短ルートの闇】(社エージェント、七海建人、前田まるこ)
社(やしろ)に属する“調整者”。
物語の逸脱を正すことを使命とする存在。
「……優秀なエージェントは"妄想劇場"で休暇を楽しめるんですよ! つまり! この物語は"私の妄想劇場"でもあるわけです!!」
前田まるこの絶叫が、地下通路の湿った空気を震わせた。
七海建人は、眼鏡の位置を直しながら深く、深く溜息をつく。
「……前田さん。相変わらず、あなたの正気は計り知れません」
「褒め言葉として受け取っておきます! さあ七海さん、さっさとその『お邪魔虫』を片付けて、そよかさんのところへ! 私は獄門疆から出てきた彼女が、五条さんに抱きしめられて赤面するシーンを拝むまで死ねませんから!! あ、七海さんがお相手でも構いません!!」
調整者の放った炎が、前田の放つ「妄想(意志)」という名のノイズに干渉され、一瞬その形を歪めた。
「……エージェントM。君の認知バグはもはや看過できん。物語の修正と共に、君のメモリも初期化する必要があるようだ」
調整者が手を振るう。
熱線が、七海と前田を同時に飲み込もうと迫る。
だが、七海はすでに一歩前へ踏み出していた。前田の「妄想」が作り出したわずかな計算の狂い──そこに、七海の鉈が「7対3」の比率で吸い込まれていく。
「……仕事は時間内に終わらせる主義です。……十劃呪法」
闇の中で、青白い火花が散った。
調整者の放った「消去」の炎を、前田まるこが妄想の奔流でねじ伏せる。
「いいですか自意識過剰の価値観押し付け野郎! 局長だって『一人ぼっちの観劇は寂しい』って言われて、鼻の下伸ばして帰っていったんですよ! 現場の私たちが萌えを追求して何が悪いんですか!!」
「……っ、貴様、局長を引き合いに出すとは……!」
調整者の動揺。その一瞬の隙を、七海建人は逃さなかった。
鉈が漆黒のスーツを切り裂き、調整者の「物語の修正権限」を物理的に剥奪する。
「今っ!!」
そして更に前田まるこの拳が調整者の股間を直撃する。
「「!?」」
「前田さん……あなたは何を……」
「くっくっく……この攻撃を受けてまともに立っていられる男はいませんよ……」
調整者の股間は驚くほどに白く眩い輝きを放っている。
「ば、馬鹿な……」
「あなたの股間はいかなる場面でも白く輝きシーンを台無しにするでしょう。そんな状態ではどんな真面目な話もチープなギャグになるでしょうね」
「なっ! ……なんなんだこの光は……! 私の権限が……尊厳が……消失していく……!」
股間から放たれる圧倒的な光(修正の輝き)に包まれ、調整者は膝をついた。もはや彼の発する言葉のすべてが、その発光のせいで滑稽な独り言にしか聞こえない。
「さあ七海さん! ギャグキャラになった奴に用はありません! 早く最深部へ!!」
「……ええ。同情はしませんが、視覚的に非常に不愉快です。急ぎましょう」
七海は光り輝く調整者をゴミを見るような目で見捨て、闇の先へと駆け出した。
前田まるこがデバイスを操作しながら、反対側の通路へと身を翻す。その瞳は、すでに本来の補助監督の顔に切り替わっていた。
「わかりました! ありがとうございます!」
七海の返答が暗闇に響く。
彼は一人、五条悟と、そして獄門疆が待ち受ける最深部へと、鉈を手に疾走した。
【渋谷駅・地下五階ホーム】(そよか、五条悟)
「悟! 来てくれたのね!」
そよかが嬉しそうに両手を広げた。
「…………」
五条悟の六眼は冷静に目の前のそれが、本物のそよかではないことを見抜いている。
「どけよ偽物、俺のそよかをどこへやった!!」
悟の咆哮と共に、凄まじい呪圧が地下五階の空気を弾けさせた。
●20
【地上:渋谷・明治通り付近】
禅院直毘人は、酒瓶を放り捨て、高速で迫るドールの群れに「投射呪法」を叩き込んでいた。
「……チッ、数だけは揃えおって! 真希! 野薔薇! 離れるなよ!!」
「言われなくても分かってんだよ!」
真希が呪具でドールを薙ぎ払い、野薔薇も共に応戦するが、ドクター・ゼロの放った「改造ドール」の波は止まらない。
そこへ、上空から精密に制御された術式の弾幕が降り注いだ。
ドールたちが一掃されると同時に、タクティカルスーツに身を包んだ集団が音もなく着地する。
「……失礼。救助に来ました。"国際呪術機構代表"サーミル様の指示で参りました。執行班リーダーのマイクと申します。禅院直毘人殿ですね?」
マイクと名乗った男が、迅速に周囲の警戒を固めながら、直毘人に短く事務的な挨拶を交わす。
「国際呪術機構か──ようやく重い腰を上げたようだな」
「事態の把握に時間がかかりました。これより本エリアの制圧を我々が引き継ぎます。皆さんは地上の怪我人保護を優先してください」
「待ちなさい!」
野薔薇が鋭く声をかける。
「駅の中には私の……クラスメイトもいるんだから! 飛び道具で傷付けられたら許さない! 私も行く!」
「釘崎、勝手な真似をするな!」
真希が制するが、野薔薇は引き下がらない。
「私一人守りながら戦えないようじゃ、この事態の制圧なんて出来ないでしょ!」
マイクが、野薔薇の気迫に押されるように、あるいは何か考えがある様子で頷いた。
「そうだな、なら私も行く。後輩の無事は自分の目で確認したいからな」
真希が呪具を構え直し胸を張った。
【地下五階ホーム:最深部】
ドールの残党を退け、静寂が戻りつつあるホーム。土煙の向こうから、一人の男が静かに歩いてくる。
「……五条、先生?」
悠仁の声が響く。
そこに立っていたのは、目隠しを外し、どこか遠くを見つめるような瞳をした五条悟だった。だが、彼の隣に、救うべきはずだった"そよか"の姿はない。
「先生! 無事だったんだな! ……あれ、そよかさんは? 一緒じゃないのか!?」
悠仁が駆け寄ろうとするが、悟は足を止め、無機質な視線を教え子たちに向けた。
「…………」
返事はない。ただ、悟は自分の手元を一瞬だけ見つめ、それから悠仁たちの顔を一人ずつ確認するように視線を動かした。
「先生……?」
恵が、その異様な沈黙に息を呑む。
悟は、何かを言いかけて飲み込み、最後に絞り出すような声で一言だけ告げた。
「……ごめん」
その言葉を最後に、悟の姿が空間の歪みの中に消える。
「待てよ!! 先生!!」
悠仁の叫びが虚しくホームに反響する。そこへ、地上からマイク率いる国際呪術機構の執行班、そして野薔薇と真希が駆け込んできた。
「悠仁!! 恵!! そよかさんは!? 五条先生はどこよ!!」
野薔薇の切実な問いに、悠仁はただ呆然と、先生が消えた空間を指さすことしかできない。
「……一人だった」
恵が、掠れた声で呟く。
「先生は……一人で現れて、謝って、消えた。……そよかさんは、一緒にいなかった」
その事実が、マイクたち国際呪術機構の『演出』に完璧な根拠を与えてしまった。
「……その光景が全てですよ」
マイクが、静かに、だが冷酷に断じる。
「やはり先ほどの映像の通り五条悟氏は彼女を見捨てた。そして、我々国際呪術機構の追跡を逃れ、ドクター・ゼロと手を組んだのではないでしょうか。目的はおそらく……『両面宿儺の指』の強奪。以前からドクター・ゼロは宿儺の指を集めていると噂されていました。悠仁くん、君はもう、五条悟を師と呼ぶべきではない」
悠仁は崩れたホームの床を拳で叩き、真希は唇を噛み切るほど強く結んだ。
最強の師を失った絶望の中、若き術師たちは、国際呪術機構の用意した「対・五条悟」の陣営へと組み込まれていく。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
あとがきの下の方にオリキャラのイラストを掲載しました。
イラストと同じ場所にはキャラクター説明っぽいものがあります。
●メインはpixivで活動しています。
https://www.pixiv.net/users/2225877