【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
●19
どうして人は繋がろうとするのだろう。
ずっと一人で気ままに暮らしていた私には、誰かと繋がる利点が理解できなかった。
特に男女の情というものは、移ろいやすく脆いもののように感じた。
お師匠様と一緒にいくつか呪霊を祓ってまわることもあった。
「──結局、怨むならどうして自分を犠牲にしたんでしょう」
『あら、理解できない?』
せいらは小さな社に手を合わせている。この場所は土地が悪く、遠い昔に人柱を立てた。けれどその内、人柱があったことも忘れられて人々が幸せであれば──そんな願いが呪いに転じた。
「幸せを願って呪いになるなんて、非効率です」
『そうね。その通り──人の気持ちなんて、移ろいやすいものだからね』
「…………」
『でもだからこそ、信じているものに裏切られたら傷付くし……本当に大切なものを見つけたら、何を犠牲にしても大切にしたいと思うのでしょう』
閉じていた目を開く。真っ暗な空間──私はきっと起きているけど、自分がどういう体勢でいるのかもよくわからない。
──みんなが幸せでいればいい。
そう思ったことは本当。今もそう思っている。
私が外にいるより、悟がいた方がいい──その考えも変わってない。
でもぽっかりと胸に穴が空いたような息苦しさを感じる。
(やっぱり私、弱くなったのかな……)
建人さん……悟……三人で暮らし始めた部屋を思い出すと涙が溢れそうになる。
(泣いちゃだめ。泣いてもなんの解決にもならない!)
歯を噛み締めて泣くまいとすると、余計に涙が溢れそうになった。
「──おまたせ、そよか」
力強く私の身体が抱きしめられた。
ガラスが割れるような大きな破砕音。
世界が光で満たされる。
「……泣きそうになってた? 間に合ったでしょ? 後で沢山泣かせてあげるから、今は我慢してね」
お姫様抱っこされたそよかは、真っ赤になって悟の両頬を引っ張っていた。
「いひゃいいひゃい」
●20
砕けた獄門疆の残滓が、空間に霧のように漂っている。
そよかを抱えたまま着地した五条悟は、わずかに息を吐いた。
頬が、ほんのり赤い。
「……はいはい、そよか無事救出」
照れ隠しのように軽く言う。
「先生、顔」
乙骨憂太が、真顔で指摘した。
「赤いです」
「うるさいな!? 今はそういう場面じゃないでしょ!!」
悟が即座に言い返す。
虎杖悠仁はその様子を見て、状況を飲み込んだのか飲み込めてないのか分からない顔で呟いた。
「……助かった、ってことでいいんすよね?」
「もちろん! 百点」
悟は雑に親指を立てる。
その時だった。
空間の奥──
“観測席”のように張り出した場所に、影が生まれる。
「……集まったね」
白衣の男。
顔立ちは整っているが、どこか作り物めいている。
瞳の奥に、人間特有の“揺らぎ”がない。
「ドクター・ゼロ」
悟が名を呼んだ。
男は、ゆっくりと手を広げた。
「歓迎しよう。
君たちの“絆の結末”を観測できるなんて、光栄だ」
その背後。
床から、壁から、空間そのものから──
人型の影が、次々と立ち上がる。
「……人形?」
虎杖が息を呑む。
「ドールだよ。私の最高傑作……」
ドクター・ゼロは淡々と言った。
「呪力によって構築された、最適解の再現体」
影が、輪郭を持つ。
⸻
ドール①:五条悟
蒼い瞳。
同じ背丈、同じ術式構造。
“無下限”の気配すら、ほぼ同一。
「……は?」
悟が一瞬、素で声を出す。
「ちょ、待って。僕を作るの、コスパ悪くない?」
「最高効率だよ」
ゼロは即答した。
「最強は、最強で潰すのが一番早い」
ドール悟が、一歩踏み出す。
「先生、来ます!」
乙骨が叫ぶ。
「うん、分かってる」
悟は笑った。
「でもね──」
バンッ
瞬間、空間が弾ける。
本物と偽物の“無限”が、正面衝突した。
「コピーはコピーだから」
悟の声だけが、軽い。
「“守る理由”が入ってない」
ドール悟の動きが、一瞬、鈍った。
⸻
ドール②:乙骨憂太
次に現れたのは、白い制服の少年。
呪力の総量、質、波形──ほぼ一致。
「……僕、ですか」
乙骨が息を詰める。
ドール乙骨の背後に、リカの影が揺らぐ。
「大丈夫。君は“選んだ”側だから」
悟が横目で言った。
乙骨は、深く息を吸う。
「……はい」
刀を構えた瞬間、
ドール乙骨が先に動いた。
呪力と呪力が、正面からぶつかる。
拮抗。
だが──
「憂太はね」
悟が言う。
「誰かのために力を使うことを、もう怖がらない」
踏み込む。
ドールの構造に、微細なズレが走る。
⸻
ドール③:虎杖悠仁(※不完全)
次に立ち上がった影は──歪だった。
形は虎杖。
だが、芯がない。
「……あれ、俺?」
虎杖が眉をひそめる。
「フィジカルギフテッドはね」
ドクター・ゼロが肩をすくめる。
「呪力だけでは再現しきれない」
ドール虎杖は、動きが遅い。
攻撃が、重いだけ。
「なら!」
虎杖は拳を握る。
「遠慮なく殴れるってことだ!!」
真正面から、拳を叩き込む。
ドールは、呆気なく砕け散った。
「……はい、次」
虎杖が振り返る。
悟が笑った。
「いいね、その調子」
ドクター・ゼロがニヤリと笑う。
「──しかし、数は沢山作れるよ」
不完全な虎杖悠仁たちが次々と生み出させる。
⸻
少し遅れて到着する面々
空間の端が、ずるりと歪む。
「やれやれ」
黒髪の男が現れる。
「派手にやってるじゃないか、悟」
「傑!」
悟が声を上げる。
続けて──
「遅れてすみません」
七海建人。
「面白そうやん」
禪院直哉。
「うわー……すごい現場ですね!」
灰原雄。
観測席の端で、
天内理子と前田まるこが、目を輝かせている。
「中継、入ってますよ!」
「うわー、あれがドクター・ゼロ!?」
ドクター・ゼロは、初めて眉を動かした。
「……想定外だ」
「でしょ」
悟が肩を回す。
「人ってさ、一人じゃ完結しないんだよ」
ゼロの背後で、新たなドールたちが立ち上がる。
夏油傑のドール。
七海建人のドール。
禪院直哉のドール。
灰原雄のドール。
だが──
「模倣はできても」
夏油が呟く。
「“積み重ね”までは作れない」
七海がネクタイを直す。
「労働時間外ですが」
「付き合いましょう」
悟は、そよかをそっと下ろした。
その背中に、軽く触れる。
「ちょっとだけ待ってて、すぐ終わらせるから」
イケメンウインクにそよかは目潰しを狙った。
「あぶな!」悟は光速で避ける。
振り返った瞳は、
もう完全に“戦場の最強”。
「さあドクター・ゼロ」
悟が笑う。
「観測してみなよ。人が繋がった結果ってやつを」
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