田舎出身ミアレ民「寝れない」   作:鳩胸な鴨

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あとがき追加しました


パーフェクトジガルデ

『■■■■■■ーーーーーッ!!!!!』

『申し訳ありませんでした!!!!』

『人語忘れてもうてるがな』

『サビ組の私が言うのもなんですが、絶対にカタギの顔じゃないですって』

『にらめっこなら伝説のポケモンにも勝てそう』

『ムク、それは失礼だと兄にもわかります』

「う、うるさい…」

 

エムゼット団をはじめとするミアレに住まう勢力一同の作戦会議を終えて少し。

全ての事情を把握したオトギリの怒鳴り声に、マスカットが平謝りする構図がかれこれ10分ほど続いていた。

多忙を極めていたとは言え、マスカットはクエーサー社で責任を持つ立場。本来は彼女のような人間の怒りを受け止めるべき立場であるジェットが方々の対応に追われてる今、そんな彼に怒りの矛先が向くのは無理もない話だった。

 

『ZAロワイヤルでさんざっぱら睡眠妨害された上!2年間毎日毎日毎日毎日クレーム入れても碌に改善されず!挙句の果てには生活基盤すら台無しにされて怒らない奴がどこにいる!!??』

『そ、それはそうなのですが…、今は一刻を争う事態なので…』

『わかってるし協力はする!!でも文句は言わせろ!!私は!!お前らの!!被害者!!

これまでの2年でどんだけのクレーム入れたと思ってんだこのやろーーーーーーッ!!』

「オトギリさん、作戦に集中できないから落ち着いて。トチッたら最悪ミアレ消し飛ぶんだから」

『………………わかった』

 

もしこの状況でAZと連絡が繋がっていたら、もう少し怒鳴り声が続いただろう。

渋々ながら怒りを抑え込んだオトギリに同情を送りつつ、セイカは空を見上げる。

 

「バシャーモ、ブレイズキック!!」

「しゃもォオっ!!」

 

メガカイロス、メガピジョットなど、空を飛ぶ暴走メガシンカポケモンを手隙のトレーナーの元へ叩き落としていくバシャーモの姿が見える。

作戦通り、メタグロスに乗って指示を出すオトギリを一瞥し、セイカはジガルデの元へと向かうべく足を早めた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「バシャーモ、まだまだ来るよ」

「しゃもっ」

 

この街にこんなに野生ポケモン居たっけ?これ、確実によそからも来てない?

メガエネルギーに釣られたのか、それともアンジュフラエッテの力なのか。

ミアレを取り囲む塀を越えてやってくる暴走メガシンカポケモンを見やり、その推察が正しかったことを悟る。

それはまだいい。いや、全然良くないんだけど、いいことにする。

 

問題は、アンジュフラエッテがやけに静かなこと。

 

周りにクソデカアスレチックを作られても微動だにしていないのには、何か理由があるように思えてならない。

AZさんのフラエッテが頑張って抑えてるのか、それとも力を溜めてるのか。

前者だったらいいが、後者だったら最悪だ。事態がこれ以上悪化することが確定してる。

それすらも覆せる可能性があるとすれば、ただ1人。

瓦礫を伝い、アスレチックを潜り抜け、追手を振り切り、人間梯子を登り、ローズ地区近くの屋上にまで辿り着いたセイカちゃんと目が合う。

 

どんな覚悟であそこに居るんだろうか。伝説のポケモンに選ばれるとは、どれほどのプレッシャーなんだろうか。

疑問に思っていると、彼女めがけて10匹ほどのメガカイロスが突っ込むのが見えた。

 

「バシャーモ、ブレイズキック!!」

「しゃもぉおおおっ!!」

 

湧いては消える疑問を振り払い、メガカイロスたちを足場がわりにして叩き落としていくメガバシャーモ。

露払いはこれで終わっただろうか、と安堵した矢先。

その隙を縫うようにしてメガメタグロス、メガフーディン、メガプテラがセイカちゃんを襲った。

 

「セイカちゃ…」

「リザードン、フレアドライブ」

「カエンジシ、ハイパーボイス!」

 

焦りのままに叫ぼうとするより先、聞き覚えのある声が響く。

セイカちゃんを守るようにして現れたのは、メガシンカした相棒を連れたグリさんとグリーズさん。

彼女たちは私と目を合わせた後、オーダイルを出したセイカちゃんと並ぶ。

 

「地上は私たちが担当します。オトギリさんは空のポケモンに専念を」

「私だけすんごい重労働だなぁ…」

「地上に叩き落とすだけなら慣れてるだろ、妖怪ポケモン落とし」

「妖怪ポケモン落とし!?」

 

いつの間にかひどいあだ名を付けられてた。なんだ妖怪ポケモン落としって。

そのことにショックを受けるも気を取り直し、迫るポケモンたちへと向かった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「ゼドッ」

 

タワーが一望できるビルの屋上にて。

合流したジガルデに連れられたセイカは、あちこちで技や咆哮が轟くミアレを見渡す。

 

「……………」

 

感傷に浸れるほど長く居たわけではない。

思い入れはあるが、恐らくはこの街に住む誰よりも少ない。

大して平和を愛す心もなければ、ガイのように強い使命感があるわけでもない。

流されてるうちにここまで来た、と言えばそれまでだろう。

 

しかし、この街が好きだという感情はある。

ジガルデに選ばれた理由だって、気にしなくていい。

ただ、この感情のままに戦うだけ。

そう自分に言い聞かせるセイカを励ますように、スマホロトムが躍り出た。

 

『セイカ、ここから見えるけど、ジガルデと会えたようだな!

オレたちが出会った日を思い出せ!

フラエッテの「はめつのひかり」……、あのヤバい技がめちゃくちゃパワーアップしてるから気をつけろ!』

「ありがと、ガイ。

…ジガルデ、私と一緒に戦ってくれる?」

「ゼドア…!」

 

ジガルデとの合流を果たしたことを喜ぶガイと短く言葉を交わし、ジガルデに語りかけるセイカ。

ジガルデは軽く吠えると、セイカ、アンジュフラエッテとは違う方向へと目を向ける。

そこに立っていたのは、白んだ髪の壮年男性。

フラダリ…今はFと名乗る彼は、ジガルデとセイカを交互に見やり、がさがさな口を開く。

 

「セイカよ。君はジガルデの信頼に応えましたね」

 

険しい顔だが、敵意はない。

彼は懐から謎の道具…セイカは知らないが、ジガルデキューブと呼ばれるものを取り出し、掲げる。

 

「わたしが集めたジガルデ・セルは99…。

あと1%です。あと1%でジガルデは完璧となります。

だがそれであの猛り狂うタワーを本当に鎮められるのですか?

暴走するタワーに抗うフラエッテを…、あの中に入ったものを救えるのですか?

あとは君次第です」

 

ぎしっ、とタワーが軋む音が響く。

もう動き出してしまう。そう予感させる揺れがミアレに伝播する。

 

「わたしはかつて奪う側に回りましたが、それでは世界を救えませんでした…」

 

記憶が戻ったのか、それとも起きた事実を情報として認識してるだけなのか。

Fは懺悔するように吐露し、一つ残った瞳をセイカに向けた。

 

「であれば君は与えるしかないのです!

トレーナーとして大切なものをジガルデに与えてください!

君自身で戦う勇気を!ジガルデが攻撃するチャンスを!」

 

Fの叫びに呼応するように、ジガルデが屋上出入り口となる屋根の上に乗る。

瞬間。Fの持つジガルデキューブ、そしてセイカの肩からジガルデ・セルが嵐のように舞い上がり、ジガルデの体を覆い隠していく。

舞い上がる緑の風がやむと、中にいたジガルデがベールを剥がすように『剛腕』で光を薙いだ。

 

「ゼドアーーーーーーーッ!!」

 

パーフェクトジガルデ。

その姿は、博物館で開催されていたヒスイ展にて展示されていた伝説のポケモンの一体…シンオウの巨神「レジギガス」に近い。

その気配を感じてか、首をもたげたアンジュフラエッテがジガルデとセイカを睨む。

セイカはジガルデと共に屋上から飛び、ボールを投げた。

 

「ゆけっ、オーダイル!!」

「だぃるっ!!」

 

──────メガシンカ!!!




オトギリ…可哀想な人。これまでのポケモン叩き落としが影響し、空を飛んで襲ってくる暴走メガシンカポケモンを叩き落とす役割を押し付けられた。その役目については不満はないものの、クエーサー社には不満爆発。

クエーサー社…可哀想な人。真面目にみんなが嫌がってやらなかった仕事してただけなのに。オトギリのクレームに対応できなかったのは、ワイルドゾーンとかプリズムタワーの不安定化とかが重なりまくってそれどころじゃなかったため。
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