「カナ友のみんなー、あれ見えるー!?
伝説のポケモンがタワーとガチバトってるよー!!多分もう金輪際見れないよー!!」
「最近はどこもかしこもそういう現象が起きとるような気もするのう」
「じーちゃんしゃらっぷ!!」
ジガルデが細胞…サウザンアローと呼ばれる技を放ち、アンジュフラエッテの気を引く。
カナリィはそれにスマホロトムを向けながらも、相棒のメガシビルドンに指示を飛ばし、暴走メガシンカポケモンの群れを捌いていく。
「石変人さんスパチャありがとー!
メタグロスとバシャーモが飛んでるのによく気づいたなー!アレがよく話してる工務店のクソ強おねーさん!
ホウエンチャンピオンのライバルとかいうわけわかんねー経歴してんのにウチみたいな安月給で経理してる残念な人ー!」
「聞こえてますからね!?」
残念な人呼ばわりされたオトギリが、メタグロスの背から怒鳴り声をぶつける。
かなりの数を叩き落としたが、空には隔てる壁がない故か、ミアレの外から来たピジョットやハッサムなどのポケモンが暴走メガシンカし、絶えず突っ込んでくる。
そのことに焦るオトギリを気遣う余裕は、カナリィにもない。
彼女は画面の向こうにいる視聴者に現状を伝えるべく、オトギリに問いかける。
「おねーさん、タワーの方どんな状況ー!?」
「トレーナーの1人がタワーから伸びる花を潰して回ってます!
ジガルデが攻撃する隙を作っているのかと!」
「あーもー、暴走メガシンカ邪魔っ!
そっちの方に加勢できれば、歴史的バズの匂いがするのにぃ〜っ!!」
「んなこと言ってる場合ですか!?」
ストリーマーの宿命だろう愚痴を吐くカナリィにツッコミを入れるオトギリ。
と、それを遮るようにアンジュフラエッテが軽く軋んだ。
「今度はなに!?」
「隙ができたみたいです!ジガルデが技を放つから、タワーの近くに居る人はどいて!!」
オトギリの指示に従い、近くにいた面々がタワーの近くを離れていく。
瞬間。大地から噴き出した緑色の光が、アンジュフラエッテの体を穿った。
「お、おぉー…。でっけーだいちのちから…」
「いや、ありゃ違うのう。
あれはジガルデのみが使うとされる技…『グランドフォース』じゃ」
「じーちゃん、なんで知ってんの?
神話詳しかったっけ?」
「年の功じゃよ」
ジガルデの一撃がかなり響いたのだろう。
アンジュフラエッテはその蕾を開き、天へと数多の光を放つ。
何をしているのか、と皆が疑問に思うも、その答えはすぐにわかった。
「あ、あれはなんじゃ…!?」
「『はめつのひかり』という技を雨みたいに降らしています!
みなさん、身を守ってください!!」
「はかいこうせん並に字面がヤバい技をそんな使い方すんなーっ!!」
アンジュフラエッテにその文句を聞き入れるだけの知性はない。
降り注ぐ雨が再びミアレを揺らす。
ひかりのかべや瓦礫を使ってなんとかそれを凌いだ彼らは、慌ててそばにいた皆の安否を確認する。
「カナ友のみんな、だいじょーぶー!?
アレを凌げるほどの知性がお前らにあるとは思えないんだけどー!?」
「だから燃えますって!!」
「こりゃ、終わった後は忙しくなるのう」
「なにやってんだジガルデー!伝説のポケモン名乗るならワンパンで倒せーっ!!」
「無茶振りするカナリィもかわいいのう」
いくら伝説のポケモンといえど、この規模の災害を一撃で屠るほどの力はない。
カナリィが無茶振りをかます横で、スマホロトムを開いてワナワナと震える影が1人。
「な、生配信を間近で見れた喜びで覚醒してしまったのでござるか…!?
見えた…っ!あの雨の動きが…っ!全て…っ!
カナリィのおかげで生き残れた…!カナリィが吾輩を生かしてくれた…!
であれば、感謝の赤スパを今送らずしてなにがカナ友!」
「いつメンのキミ、赤スパありがとねー!
でも、配信見るのはそこそこに生き残ること優先してくれないかなー!?
ぼくの配信見ながらくたばられたら寝覚め悪すぎんだけどー!?」
命の危機に瀕した状況だと言うのに、スマホロトムを操作し投げ銭をかます小太りの男…熱狂的なカナリィファン、マニーに注意するカナリィ。
そうしてるうちにもアンジュフラエッテが大きくのけ反り、隙を晒す。
ジガルデはそれを見逃すことなく、緑色の波でアンジュフラエッテの体を削っていく。
「なにあれ!?緑のなみのり!?」
「いや、違う!アレもまたジガルデのみが使えるという技…『サウザンウェーブ』じゃ!」
「おぉーっ!もうぐったりしてんじゃん!
さっさと決めちゃえーっ!」
あと少し、と皆が希望を抱くも束の間、アンジュフラエッテが再び破滅の雨を空へ放つ。
「だーーーーっ!?またやりやがった!?」
「もう少しじゃ!乗り切れよ、お前たち!
労災になると面倒じゃからのう!!」
「「「押忍!!」」」
再び降り注ぐ雨をなんとかやり過ごすトレーナーたち。
と。メタグロスに乗って状況を見ていたオトギリが、焦りのあまり身を乗り出して叫んだ。
「まずいです!ミアレの外からメガエネルギーに釣られたであろうポケモンたちが!!いつ暴走メガシンカするかわかりません!!」
「対処はできるか!?」
「あの数は無理です!!トレーナーとオーダイルだけでは、花の処理も間に合いません!!」
「ぬぅっ…、こちらも手一杯だと言うのに…」
詰みが近いか。絶望がミアレを駆け巡る。
そんな中、カナリィはふと、いつの間にかメガシンカが解けていたバシャーモへと目を向けた。
「………おねーさーん!!メガネのキーストーン、エネルギー溜まってる!?」
「は、はい!!」
「セイカに渡して!!」
「……………はい!!」
空を飛ぶメタグロスから、キーストーンの光がタワーの麓へと落ちていく。
言葉はない。あったのかもしれないが、聞こえない。
どうなったのか、とカナリィが問おうとしたその時。
蔦の破片を纏い、飛び上がった三つの影が見えた。
「リザードン、だいもんじッ!!
オーダイル、アクアブレイクッ!!」
メガリザードンY、メガオーダイル、そして、そのトレーナーであるセイカ。
落下とともに残った花を吹き飛ばし、その衝撃がアンジュフラエッテを大きく揺らす。
ミアレを一望できる場所に降りたセイカは、同じく降り立ったジガルデと視線を合わせ、頷く。
「いっけー!!ジガルデーッ!!」
その叫びを受け、アンジュフラエッテの蕾と対峙するジガルデ。
彼は両手を広げ、高密度のエネルギーを貯め始める。
アンジュフラエッテがそれに対抗すべく、身を軋ませた刹那。
その体に『Z』の紋様が刻まれた。
「───────!!!!」
アンジュフラエッテが叫び、その体から光が抜け落ちていく。
暫しの沈黙。
暴走メガシンカしていたポケモンたちも解放され、その場にぐったりと倒れ込む。
全てが終わった。その実感に身を任せ、人々が歓喜に打ち震える。
「…………お、ぉお、おぉーーーーっ!!
止まった!止まったよオトさーん!!
カナ友ども、生きてるかー!?生きてこの光景見れるだけの力、お前らにあったかー!?」
「だから燃えますって」
「今から立役者のとこに凸してくる!お前ら、きちんと感謝の赤スパ送れよ!
ま、このチャンネルに送ったら全部ぼくに還元されるんだけどな!!」
「ネットでキャンプファイヤーでもしてるんですか?」
「ちゃんと導線作るよー」と言い、ホロキャスターアプリを起動するカナリィ。
皆で苦労を労う光景を見下ろし、オトギリも地上に降りようとメタグロスを撫でる。
「………メタグロスもバシャーモもおつされさま。私も一言…、ん?」
ぎしっ、と一際大きな音が響く。
はて、何事かと思って皆がそちらを見ると。
止まったはずのアンジュフラエッテがその蕾を開き、太陽とみまごうほどの光を溜め込んでいるのが見えた。
「はーーーーーーーーっ!?!?
止まったんじゃねーのかよ!?!?」
「あの光…、5年前に放たれた最終兵器に似とらんか…!?」
「無理無理無理でござるーーーー!!」
本来ならばフラエッテの力を分け与えるはずの装置は、溜め込んだ力が突き動かすがまま、終わりをもたらす一撃を放とうとする。
と。それに対抗するようにして、セイカがビルの柵に飛び乗った。
「ジガルデ!!」
煌めく何かを投げると、それを攫うように現れたジガルデが彼女と視線を合わせる。
セイカはそれに応えるようにメガリングに指を添え、頭上へと移動したジガルデに掲げた。
「メガシンカ!!!」
光の繭がジガルデの巨体を覆い隠していく。
やがてそれが剥がれると、そこには。
細胞のほとんどを「大砲」へと変化させたジガルデが佇んでいた。
「………マジ?」
「うっそぉ…」
夜を照らす光が二つ。
その一つ…アンジュフラエッテが放つ「はめつのひかり」が天へと放たれ、落ちていく。
その光景は嫌でも5年前を想起させる。
あの時は一つの町に大穴を開けただけで終わったが、今回は確実にそれだけでは済まない。知識がなくとも、想像できるだけの絶望がそこにあった。
対する光…メガジガルデは頭上の砲身を前に突き出し、落ちてくる光へ照準を合わせる。
「ジガルデ!!」
セイカがジガルデの名を叫ぶ。
メガジガルデがそれに頷くと同時、砲口に刻まれた紋様が煌めく。
X、Y、Zが交わり、がばっ、と開く砲口。
そこから放たれるのは、すべてを無に帰す光。
圧倒的なエネルギーの奔流が、アンジュフラエッテの最後の足掻きを穿つ。
残ったのは、夜空を彩るだけの光。
全てが終わったことを悟らせる美しいそれを前に、ミアレに住まう人々は安堵と歓喜に打ち震えた。
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「いつだって現在が未来を創る」
ホテルZの屋上から光を見上げ、微笑むAZ。
胸にあるのは、感謝。
動けぬ身となってから後始末をしようなどと考えた自分の愚かしさに、最後まで付き合ってくれた若人たち。
言葉だけで贖い切れるわけではないが、それでも言わずにはいられなかった。
「エムゼット団よ。心より感謝…」
──── 『最期の仕事』という点です。私みたいなぽっと出の客を世話するより、世話になった人やポケモンに感謝を伝えることが相応しいと思います。
「…いや、これは直接言うべきだな。
………まずは、ホウエン料理でも作ろうか」
3000年生きた中で覚えた数々の料理。それを作れるだけ作ろう。
これが感謝になるかはわからない。この溢れんばかりの気持ちが伝わるかもわからない。
しかし、ただ言葉を残して逝くよりはマシに思えた。
AZ…この後の炊き出しにて、さまざまな地方の料理をエムゼット団含む皆に振る舞った。その後、ミアレの復興を見届け、旅立った。
次回、最終回