短い間でしたが、応援ありがとうございました。
あとがきを追加しました
「あいよ!いつものもえつきローストな!」
「ありがとう」
アンジュフラエッテの暴走から少し。
ミアレの復興は驚異的なスピードで進み、特に変わらない街並みにまで戻っていた。
クエーサーがほとんどの費用を賄い、方々から数多の業者を呼んだおかげか。…まあ、それで許されるわけではないけど。
潰れた家は数知れず。プリズムタワーなんて、2000年ものの骨組みだけになった上、しばらくは残ったエネルギーの影響で20番目のワイルドゾーンになった。
株価は大暴落。従業員は大勢が辞職。社長には引責辞任の話も出ているとニュースでやってた。
誰もやりたがらなかったミアレの再開発を担っただけだというのに、ひどい貰い事故だ。同情はする。だが許さん。
今辞任したら、誰が後を継ぐんだろ。こんだけ盛大にやらかしたら、M&Aで引き受けてくれる人なんていないだろうし。
順当に考えるとマスカットさんあたりか。
クエーサーの今後の展望を予想していると、ワイルドゾーンの下にエムゼット団、そして件のクエーサーの2人が集まっているのが見える。
私はもえつきローストを啜り、グリーズさんに問いかけた。
「なんだ?ホテルZをどうするかの話し合いか何かか?」
「いや、そっちの話にクエーサーを巻き込んだりしますかね…?」
「そーかぁ?」
AZさんは今、3000年の命を終え、カロスの大地に眠っている。
アンジュフラエッテが暴走したあの日。AZさんは騒動後の炊き出しに参加し、皆に料理を振る舞ってくれた。
それから復興が進み、街が元の活気を取り戻してきたころ、自室のベッドでフラエッテを抱えながら亡くなっていたのをガイくんが見つけたらしい。
「安らかな顔だった」と涙ながらに語ってくれた。
ホテルZは遺言に則って、今はエムゼット団の資産となっている。
今後の展望は詳しく決まっていないものの、しばらくは残しておくことにしたと聞いた。
それをクエーサーに投げる、なんてことをするほど、彼女らは考えなしではない。
となれば、彼らがここにいる理由はなんなのか。
そんなことを思っていると、グリさんが呆れを込めてため息を吐く。
「今日はZAロワイヤル最強決定戦の日です。先週、告知されていたではありませんか」
「…………ああ、そうだったな!
いやぁ、ここ最近忙しかったからすっかり忘れてたぜ!」
「そんな大事なこと、もっと早く思い出しませんか?」
グリーズさんも確か、ZAロワイヤルに参加してたよな?
しがらみを気にすることも、果たすべき使命も無くなってから、おおらかになりすぎてるような気がする。
彼女に呆れていると、マスカットさんが声を張り上げた。
「皆さん、長らくお待たせしました!
これより、ZAロワイヤル最強決定戦を執り行います!」
その声を聞いてか、みるみるうちに人々が集まっていく。
やはりミアレ最強が決まる戦いというだけあってか、注目度は高いらしい。
よくよく見ると、社長やカナリィちゃんたちも観客の中に紛れている。まるでガラルのリーグ戦のような熱狂だ。
囲まれた2人…ガイくんとセイカちゃんは互いに笑い、軽くストレッチをする。
「最強決定戦がここかぁ…。
知ってるか?AZさんもここでバトルをしたことがあるらしいぜ」
「カロスを救った少年少女を讃えるパレードの日、だったっけ。
デウロのお兄ちゃんも出席してたっていう」
「そう、それ!運命を感じるよな!
アンジュの暴走を止めて、復興が進んで、それを祝うために俺たちがここで戦うなんてさ!」
彼らのスマホロトムがかち合い、試合の開始を知らせる。
2人は縮んだ状態のボールを取り出し、軽くボタンを押して元の大きさに戻した。
「セイカ、お前はミアレの救世主だ!
お前がミアレに来てくれて本当によかったって思ってるぜ!」
「私も、ガイと会えてよかったと思ってるよ」
「でもな!最強のメガシンカ使いはオレだ!
これだけはお前にも譲れない!」
「こっちもその称号だけは渡したくない。
最強って称号にときめくのは、男の子だけじゃないんだよ」
2人に緊張はない。
まるで思い立ってバトルをするように、互いにボールを投げた。
「ゆけっ、オーダイル!!」
「いくぜ、メガニウム!!」
──────メガシンカ!!!
♦︎♦︎♦︎♦︎
「ZAロワイヤル∞ってなんだよ…」
その日の夜。私は呆れを吐きこぼしながら、自宅へと戻る。
「叶えたい願いが思いつかないので、無難にZAロワイヤルの続行で」じゃないんだよ。「金策に丁度いいし」でもないんだよ。寝れないっつってんだろ。
…と、少し前の私なら荒れていただろう。しかし、今の私は違う。
なんと此度、私の住むアパートが一から建て直しとなり、念願の耐衝撃加工が施されたのだ。
ZAロワイヤルでどれだけ騒いでも揺れない。音が響かない。普通に寝れる。これだけで全ての悪が許せる。
ああ、世界はこんなにも素晴らしい。
バトルゾーンを潜り、自分の部屋に向かう。
クエーサーからふんだくった慰謝料で買い替えたベッドが私を待ってる。
軽くなる足取りに身を任せ、自分の部屋へと戻った私を出迎えたのは。
なんか見覚えがある輪っかだった。
「……………これ、あのトゲトゲ鳥が出てきたやつじゃ…?」
確か、あのトゲトゲ鳥、これと似たような輪っかから出てきたような。
それが私の部屋の出入り口に被さるように鎮座している。
試しに腕を突っ込むと、向こう側にあるはずの扉の感触はなく、尋常じゃない熱気が肌を撫でる。
私が思わず腕を引っ込めると同時、輪っかの中から現れた影が吠えた。
「ぐらぐらぅるぅぅぅぅぁぁあああッ!!!」
その影にも死ぬほど見覚えがある。
黒い外殻。ぐつぐつと煮えたぎるように脈動する紋様。そして、両腕に浮かぶ「Ω」。色は違うが、間違いない。
あの時、故郷を蹂躙した超古代ポケモン…ゲンシグラードンが私に威圧を叩きつけた。
「ふざけんなこのやろーーーーーッ!!!」
やっぱ嫌いだこの街。寝たい時に寝かせてくれないもん。
オトギリ…このあと、気合いでグラードンを捕獲。手持ちは全滅したが、腹の部分を執拗に殴ってなんとか弱らせ、ボールに押し込んだ。ボールから出ようとしたら力技で押さえつけた。
それ以来、頻繁に部屋の前に空間の歪みが現れるように。助けて。寝たい。
グラードン…色違い個体。このあと、「でかいサンド」と書かれたプレートを首からぶら下げ、カナリィぬい担当の横に四六時中立たされることになる。仕事中はちょっとでもひでり状態にすると拳が飛んでくるため、泣きながらマスコットをしてる姿が観れるという。
ランクAの2人…どちらが勝ったかは定かではない。
ホウエンにもあった輪っか…ORASにて、ホウエン各地で見られた謎の輪っか。中からは伝説のポケモンが出現することがある。時たま、色違いの個体が出ることも。
結構反省が多い作品でしたが、こうして書き上げることができました。皆様、応援ありがとうございます。