田舎出身ミアレ民「寝れない」   作:鳩胸な鴨

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ガイには怒ってくれる大人が必要だったと思うんだ

ちょっと修正しました

あとがきを追加しました


経理のプロ、キレた!!

3日後。様々な事情がひっ絡んで連日連夜バトルゾーンの馬鹿騒ぎに巻き込まれ、私の疲労は限界に達していた。

どれだけ叩き落としてもキリがない。それほどまでにZAロワイヤルは盛り上がってる理由はなんなのか。

見慣れたスマホロトムの通知を横目に、私は工務店の扉に手をかける。

 

「お疲れ様です…」

「お、お疲れさん…。

今日は寝れるといいな…」

「今日もバトルゾーンに入ってます」

「……………ホテル、取ってやろうか?」

「それやると二度と家に帰れなくなりそうなのでお断りします」

 

社長の気遣いはありがたいけど。今の私が贅沢を覚えてしまうと、取り返しのつかないことになりそうだ。

憂鬱な気分に肩を落とし、工務店を去ろうとすると。

待ち構えていたのであろう、2人の少女と目があった。

 

「セイカちゃんに、デウロちゃん?どうしたの?」

「オトギリさん。経理のプロフェッショナルと見込んで、ご相談があります」

 

私の前に、2人の少女が頭を下げる。

彼女らは得意先のホテルZで活動する組織…MZ団のメンバー2人。

デウロちゃんは元隣人、セイカちゃんは親戚であるため、砕けた口調で問いかける。

しかし、彼女らは普段のフランクさを全力で隠し、神妙な様子で私の返事を待った。

 

「もう仕事終わったし、別にいいけど…、どうしたの、そんな改まって」

「ガイが借金してたんです。サビ組に。騙される形で」

「十万の借金があら不思議、数日で100万に膨れ上がってました。

そのせいでなーんも関係ない私らがタダ働きさせられることになりまして」

「…要するに、サビ組に首輪を付けられたと」

「まぁ、そんな感じです」

 

ガイくんじゃなくて、セイカちゃんたちに利息を払わせる?最近のMZ団の飛躍を見かねての行動だろうか?

サビ組の動向を疑問に思いつつ、私は彼女らに問うた。

 

「その件、ガイくんはなんて言ってたの?」

「ゴメンの一言で済ませてました」

「は?」

「顔怖いですって」

 

何にも言わず借金して?何も知らない仲間に迷惑かけて?ゴメンの一言で済ませる?

許さん。ナメてるとみなす。

 

「デウロちゃん。ダイビングやなみのりを覚えてるポケモンはいる?」

「何させる気なの!?」

「『他人に迷惑かけて反省もろくにしない野郎はたとえ命の恩人でも水底に沈めろ』という格言がアローラにあってね」

「アローラに謝れ!!」

「アローラに住んでる親戚が掲げてる家訓だよ」

「そうなの!?!?」

 

セイカちゃんの補足に目を剥くデウロちゃん。

実際はカントーから越してきたカントー生まれなのだが、それは言わないでおこう。

怒りに燃える私を、デウロちゃんは恐る恐る宥めにかかる。

 

「そ、その、血生臭いのはナシの方向で…」

「……わかってる。さっきのは流石に冗談。

でも、お金の話というのはそれほどまでにデリケートな問題なの。

ガイくんがやったのは、殺されても文句を言えない所業だということは頭に置いといてね」

「それはまあ、はい」

 

法が許せば私がやってる。可愛い妹分に迷惑かけやがって。

怒りをなんとか抑え、私は彼女らの現状を整理した。

 

「しっかし、サビ組に借金かぁ…。

モグリとかならまだなんとかなっただろうけど、手慣れてる人相手だとどうしようもできないよなぁ…。

契約書も法に則った上で作成してるだろうし」

「う、うぅ…。ど、どど、どーしよぉ…」

「デウロは気にしなくていいよ。サビ組の仕事は私が引き受けるから」

「そうは言ってもぉ…」

 

セイカちゃん、こんなにイケメンだったっけ。女だけど惚れそう。

 

「やっぱり、ガイくんは謝るだけで済ませるべきじゃないと思う。反省するまで、ちゃんと怒った方がいいよ」

「やっぱそう思いますよね…。

でも、お金はホテルZの宣伝用途だったから文句も碌に言えなくて…」

「…………動画配信に費やしたとかじゃないよね?」

「それです」

 

ぶっつん、と何かがキレる。

もう無理。口を出さないでおこうかと思ったけど、本当に無理。

私の顔を見た2人が「ひっ」と悲鳴を漏らして抱き合う。

それに軽くショックを覚えるも、私は努めて冷静に振る舞った。

 

「ガイくんを呼び出してください。すぐに」

「お、オトギリさん…?」

「ホテルZはお得意様ですし、あまり経営に口を出すべきではないかと思いましたが…。

彼がそれを握っている以上、本格的に説教が必要と判断しました。呼び出してください」

「………は、はい」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「どうしたんだよ、オトギリさん。俺に話って」

 

数分後。近場で人助けをしていたらしいガイくんが不思議そうに首を傾げる。

場所はラシーヌ工務店の会議室。「あまりこう言う話を外でしない方がいいだろう」という社長の気遣いに甘え、使わせてもらうことにした。

私はデウロちゃんからデータを送ってもらい、プリントしたサビ組との契約書を彼に見せた。

 

「サビ組からの借金。これについて少し、ラシーヌ工務店経理…いえ。経理のプロとしてお小言を、と思いまして」

「それかぁ。心配かけてゴメンな。

いやぁ、見事に騙されちまった。

もちろん、きっちり返す予定だぜ?ただ、今は他の用事が立て込んでてさ…」

「それはいいんです。問題は…、デウロさん、セイカさんに尻拭いさせるに至ってしまったことです」

「ゴメンって思ってるし、謝罪もしてる。

今すぐは難しいけど…、ちゃんと償いもするつもりだ」

 

申し訳ないとは思ってるのだろう。

しかし、いかんせん楽観的すぎる。…まあ、若いから仕方ないのかもしれないが。

早いうちに説教できたことを喜ぶべきか、と思いつつ、私は先ほど買ってきた『あるもの』をガイくんに見せた。

 

「……言いたくありませんでしたが、言いましょう。借金が膨らめば、お二人はこうなる可能性があります」

「んなっ…、なんてもん見せるんだオトギリさん!!」

 

顔を真っ赤にして狼狽えるガイくん。

そりゃびっくりするよな。いきなり『えっちなビデオ』のパッケージを見せられたら。

わたわたと慌てる彼に、私は淡々と続ける。

 

「冗談ではないですよ。お二人ほどの美貌なら、借金なんてすぐ返せるでしょうね。

でもね、ああいう人たちは金のなる木を手離すことはないんですよ。

お二人はきっと、心身ともにボロボロになるでしょうね。夜も眠れない日が続いたある日、これが日常なんだ、ひどい目に遭うのは普通のことなんだと心から思うんでしょうね。誰が原因かも、夢のこともさっぱり忘れて」

「お、オトギリさん…、流石に怒るぜ…?」

「そうなった原因が言うんですか?」

「……………」

 

自分がやったことを反省するに至ったのだろう、顔からいつもの明るさが消える。

仕事モードはここでおしまい。ここからは、セイカちゃんの親戚として忠告することにする。

 

「ガイくん。人に迷惑をかけるかもしれないと思ったときは、まず報告しなければいけないの。それが杞憂に終わったとしても、きちんと言うべきなの。

お金の問題なんてまさにそれ。お金はいろんな人の思惑が絡むから、どう巡って人に迷惑かけるかわからない時がある。

しかも、お金の増減は目に見えやすい。納得しない形で減ると嫌な気持ちになる。それが重なって、信頼を損ねることも多々あるの。

だから、お金のやり取りは軽い気持ちでしちゃいけないの。わかった?」

「あ、ああ…」

 

今回の件はサビ組の手口が上手かったこともあるが、ガイくんにも落ち度があった。

しょんぼりするガイくんに、私は心を鬼にしてもう一つ釘を刺しておく。

 

「あと、宣伝ナメすぎ。

素人が十万ぽっちでホテルの宣伝できるんなら、広報なんて部署は会社に存在しないの。

広告代理店なんて商売はこの世にないの」

「そ、そりゃそうだろうけどさ…。でも、ホテルZにそんなもの雇う余裕ないぞ…?」

「そのために借金ってシステムがあるの。宣伝がしたいんなら、お金を借りてプロに頼みなさい。

今回の借金は完全にダメな借金だからね」

「借金にダメもいいもあるのか…?」

「あるよ。闇金はもちろん、今回は使い方もダメ。こういうのは普通、ノウハウが豊富な広告会社にお願いするの。

そこらへんもみっちり叩き込んでもらうから」

「えっ?」

 

ホテルZを有名にしたい気持ちはわかる。

だが、経営が気持ちだけでうまく行くことは絶対にない。

その気持ちばかりが先走ってるガイくんに、

大人として経営がなんたるかを叩き込まなければ。

私はメタグロスを出し、ずい、とガイくんが逃げられないように肩を抑えた。

 

「反省は学ぶことから始まるってのが私の実家で掲げてる社訓でね。お勉強の時間だよ」

「い、いや、俺、人助けがあって…」

「それは素晴らしいことだと思う。

でもそれ、今絶対に優先させなきゃいけない用事?デウロちゃんたちの人生売っぱらってでも行かなきゃいけないこと?」

「…………………ち、違い、ます」

「じゃ、勉強しよっか。そのつるっつるの脳に『お金』ってシワが浮かぶくらいに」

「はい……」

 

ガイくんは私とメタグロスの圧に負け、がっくりと項垂れた。

 

「………オトギリさんから怒り方を学ぼうかな」

「やめといた方がいいぞ。最終的にポケモンを屋根から叩き落とすバケモノになる」

「タラゴンさんが言うと説得力あるなぁ」

「埋めますよ」

「「「ごめんなさい」」」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「ってなことがあったんですけど、実際のとこどうなんですか?」

「やらへんよ、そんなリスク高い商売。

セイカたちにゃもちろん、サビ組にも全く関係あらへん世界やから気にせんでええよ」

「へー…」

「ま、借金っちゅう前科をダシにガイに首輪かけるんやったら黙ってた方がええな。

オトギリの嬢ちゃんもそのつもりで大袈裟に言うたんやろ」

「わー、カラスバさんすっごい悪い顔してる」

「悪い人には最高の褒め言葉や」




セイカ…女主人公。相棒はオーダイル。オトギリのまたいとこ。この日以降、ガイを尻に敷き始めた。実際に「そういうの」に出されるんだろうかと思ってサビ組事務所まで乗り込んでって聞くくらいにはクソ度胸持ち。

デウロ…元々住んでた部屋がオトギリの隣だったため、彼女とはMZ団の次に付き合いが長い。たまにカフェを奢ってもらってる。

ガイ…作者に今回の話を書かせた借金持ち。この後、連日連夜オトギリにみっちりお金について勉強させられた。借金騒動後、ホテルZの売上はちょっと上がった。

オトギリ…金のトラブルは絶対に許さないタイプ。今回の対応はかなり優しい方。過去に億レベルの借金をして会社や家族に迷惑をかけた兄を素手で半殺しにしたことがある。

メタグロス…オトギリの実家で経理を手伝っていたため、金のトラブルとオトギリの兄が大嫌い。

カラスバ…説教のとばっちりを受けた人。オトギリのことは「夜中に叫び散らしながら暴れるバケモンがいる」とタレコミがあって調べ、一方的に名前を知ってるだけ。嬢ちゃん呼ばわりしてるのはオトギリの生まれが社長令嬢だから。

AZ…ある事情でフラエッテともども留守だった。
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