田舎出身ミアレ民「寝れない」   作:鳩胸な鴨

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オトギリがミアレに来るまでまともなバトルしてこなかった理由が今、明らかとなる…!

ちょっと修正しました


戦闘!オトギリ(後編)

「は、は、はぁぁあああっ!?ずっる!?ズルでしょあんなん!?」

「こりゃ、たまげたのう…」

「はっはっはっ!おもろい戦い方するなぁ嬢ちゃん!ジプソもダンバル育ててみぃや!」

「勘弁してくださいあんなん無理です」

「……こ、これは、じゃ、す、てぃす…?」

「妹よ!タイレーツがジャスティスなのですから、アレもジャスティスです!」

「数もジャスティス…!」

「ぐっ…、うちも参加すべきだったか…!」

「ハルジオ?」

 

思ったより好印象だ。地元でこれやると、カナリィちゃんみたく「ズルだろそんなん」って非難轟々だったから新鮮な気分。

無論、メガシンカしなくともパージはできる。総数も能力もガクッと落ちるが、逃亡阻止にはこれで事足りる。

パージは過去、メタングに進化した時、「問題児どもを止めるには手が足りない」と愚痴った私のリクエストに応じて会得した技術だ。学者からは「なにそれ知らん。こわっ」と怖がられた。

セイカちゃんは倒れたアブソルをボールに戻し、最後の1匹を繰り出す。

 

「あ、アブソル…、ご、ごめんね…。

踏ん張って、リザードン!」

「ばきゅあぁっ!!」

 

リザードンか。テレビや動画では2種類のメガシンカやキョダイマックスなど、様々な個体を見たが、生ではヌーヴォカフェで客引きしてるやつしか見たことない。

意外とかわいいんだよな、リザードン。ヌーヴォカフェに行く目的にするくらいには。

私が感心している隙に、セイカちゃんは腕にはめたメガリングへと指を押し当て、声を張り上げる。

 

「勝とう、リザードン!メガシンカ!!」

「ばぎゅぁああああっ!!!」

 

リザードンが繭に包まれ、そのシルエットを変えていく。

以前見た、黒のメガシンカとは違う。

雄々しく伸びた翼とツノ。羽ばたく度に肌を撫でる熱気。

メガリザードンY。画面の向こうでしか見なかった存在が、飛び回っていたダンバルたちを睨め付けた。

 

「回転しながらかえんほうしゃ!!」

 

ぶわっ、とリザードンより放たれた炎が、飛び交っていたダンバルたちを無作為に襲う。

気づいたか。いや、気づくよな、そりゃ。

パージしたダンバルは強大に見えるが、その実、一体一体の実力はそこまで大したことはない。分断されたら攻撃が通用しない上、1体でも倒れたらメガシンカで増えた分が消えるという特大のデメリットがある。

石変人やトゲトゲの鳥ポケモンのような実力者の前でこれをやると、1体ずつ処理されるのがオチだろう。

セイカちゃんも発展途上ではあるが、その片鱗がある。才能って怖い。

 

「ひかりのかべ」

 

八つに重なるひかりのかべが、かえんほうしゃを散らす。

セイカちゃんはそれに怯まず、続け様にリザードンへ指示を飛ばした。

 

「フレアドライブ!」

「いわなだれ」

 

いわなだれを掻い潜り、近場にいたダンバルへと向かうリザードン。

このままいけば私の負けは確定。

が、しかし。そうは問屋が卸さない。

 

「ダンバル、4体合体してヘビーボンバー」

「へっ?」

 

フレアドライブの軌道上にいたダンバルに、3体のダンバルがくっ付く。

瞬間、それはメタグロスへと姿を変え、フレアドライブを避けるように天高く飛んだ。

 

「リザードン、そのまま駆け抜けて!!」

「残ったダンバルも合体、しねんのずつきで迎え撃て」

 

ヘビーボンバーをスカされた挙句、合体余りのダンバルを処理しにかかられた。ここは潔く怯みに賭ける。

リザードンともう1体のメタグロスがぶつかり、衝突音が響く。

競り勝ったのは、リザードン。

倒れたメタグロスは増えた分のダンバルだけで構成されていたためか、そのまま光となって消えてしまった。

よく育ってるリザードンだ。Yだとそんなにこうげきが上昇しないと聞いていたのだが、とくこうとこうげき、どちらも鍛えていたのだろうか。

メガシンカが解けたメタグロスがちょっとだけ嬉しそうな顔するのを無視し、声を張り上げる。

 

「メタグロス、しねんのずつき!」

「リザードン、だいもんじで迎え撃て!」

 

リザードンと残ったメタグロスの距離は離れてる。

メタグロスが慌てて距離を詰めるも遅く、リザードンが放つだいもんじがしねんのずつきのエネルギーを砕き、直撃した。

 

「ぐろぉ…、す…」

 

流石にメガシンカして上昇したとくこうによるだいもんじに耐えきれず、崩れ落ちるメタグロス。

それを確認したハルジオさんは手を上げ、声を張り上げた。

 

「そこまで!!勝者、セイカ様!!」

 

苦い経験全てを出し尽くした。

正直、思い出したくもない過去を振り返ってきたが、セイカちゃんの成長の糧になってくれたのなら意味があったのかな。

そんなことを思いつつ、私はへたり込むセイカちゃんに歩み寄る。

 

「ありがとう。みんな、楽しくバトルできたみたい」

「は、ははっ…。そ、そっかなぁ…?

みんなすごい怖い顔してたけど…」

「うん。負けたのは残念だけど…、楽しく戦えたと思うな」

 

メタグロスたちが戦う時はいつだって、何か大きな不満を抱えている時だった。

しかも、戦法を編み出した経緯から、戦う度に彼らは嫌な思い出をほじくり返す。バトルでかかるストレスは、私が想像するよりもはるかに大きいだろう。

私がミアレに越した理由の一つだ。彼らの嫌な思い出を刺激しない場所が欲しかった。

実家はダメだし、兄が来れないような場所が望ましかった。

 

ミアレ…いや。世界は5年前、フラダリという資産家の暴走によって危機にさらされた。

 

兄は自分がフレア団にとって不倶戴天の敵だと気づいたのだろう。各地を放浪するも、カロスには一度も行こうとしなかった。

たぶん、残党に出くわすのが怖かったのだろう。

フレア団の活動理念と絶対に相容れないとわかっていたから。

幸い、今はアローラの刑務所で規律正しく暮らしてる。彼らがはじまりに抱いた思いを少しは理解してくれることを願おう。

 

…話を戻す。

もう一度言うが、私の手持ちは戦う度に大きなストレスを抱えている。

最近なんて私の個人的な不満に付き合わせてストレスを溜め込んでいただろうに、今日のバトルではそれを見せなかった。見せたのは、メタグロスが直前になってもメガシンカを嫌がった時くらい。

 

セイカちゃんとバトルする中で、彼らが一度もキレた様子を見せなかったのがその証拠だ。

 

彼らは戦闘中、常にストレスが溜まっている。中には嫌な思い出を振り払おうとしてやり過ぎてしまう子もいるくらいだ。

だから、今日のバトルは楽しかったのだと思う。嫌な思い出すら振り切れるほどに。

 

「頑張ってね、ZAロワイヤル。

早くAランクになって終わらせてくれると嬉しいな」

「あ、あはは…。もし続行になったら、オトギリさんちはエリアから外してもらうから…」

「絶対だからね」

 

私はメガネを外し、セイカちゃんとグータッチを交わす。

私も嫌な思い出なんて振り返らず、楽しく戦えたらよかったのに。

今更なことを思いつつ、私は席へと戻った。

私を出迎えたのは、あり得ないほどムスッとしたカナリィちゃん。

カナリィちゃんは私が戻ってくるや否や、ズカズカと距離を詰め、捲し立てる。

 

「オートーさーん…!?『仇取って』ってぼく言ったよね!?なに爽やかに負けてんの!?

それでもチャンピオンのライバルかーっ!!」

「……………いや、この流れでそれ言います?」

「言うよ言うよ言いまくるよ!!

ぼくは!!負けると!!つまんないのっ!!」

「えぇ……」

 

わがままな妹を持ったみたい。下は弟しかいないはずなんだけど。

「むぎーっ!!」と地団駄を踏んで怒るカナリィちゃんを宥めつつ、私は社長を見る。

 

「あ、あの、社長…、たすけ…」

「わしらが負けるとな、ああやって自分のことのように悔しがってくれるんじゃ。ええ子じゃろう?」

「カナリィ…♡」

「そうじゃろうそうじゃろう。怒るカナリィも最高にかわいいじゃろう」

「……………………」

 

私のセンチメンタルな時間返して。




オトギリ…バトルになると嫌でも兄の顔が浮かぶため、あまり積極的にバトルをしてこなかった。強敵相手だと思い出を振り返る暇もないので、ダイゴとのバトルは好きだった。セイカとのバトルは力量差を見誤って回想に耽っていたことが敗因。セレブに目をつけられた。
縁を切ってるため、兄が行方不明になったことは知らない。ZAロワイヤルは嫌い。

オトギリの手持ち…治療中、「あんなちっちゃかった子が立派になって…」と親戚のおばちゃんみたいな気持ちでセイカを見ていた。嫌な思い出を振り返る暇がないポケモンバトルは大好き。ZAロワイヤルは嫌い。

セイカ…このあとは原作通り、Bランクに昇格。セレブに目をつけられた。ZAロワイヤルは大好き(金が入るため)。マイブームはブティック巡り。別人のようになってもみんなが自分のことを特定することに恐怖を覚えてる。
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